著者
松河 秀哉 北村 智 永盛 祐介 久松 慎一 山内 祐平 中野 真依 金森 保智 宮下 直子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.307-316, 2007
被引用文献数
4

本研究では,高校生から得られたデータに基づいて,データマイニングを活用した学習方略フィードバックシステム「学習ナビ」を開発した.システムの試験運用をふまえ,(a)モデルの妥当性(b)学習ナビで利用したメタファの有効性(c)ユーザからの主観的評価の観点から評価を行い,以下の結果を得た.(a)モデルが仮定する学力差が評価モニタにもみられ,モデルの妥当性が示唆された.(b)学習方略の達成度を表す信号機メタファについて,解説画面の閲覧時間の差から有効性が確認された.学習方略の順序性を表す一本道メタファは,評価モニタの約半数の理解を得た.(c)一部のユーザからアニメーションの長さを指摘された以外は,システム全体として好意的な評価を得た.
著者
小林 康江
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.117-124, 2006-04
被引用文献数
2

本研究の目的は,母親が自ら「できる」と思える子育ての体験を記述することである。それにより,産後の母親のケアの示唆を得ようとするものである。研究方法は,退院後1ヵ月健診まで実家に里帰りをした初産婦5名を対象に,家庭訪問と半構成的面接法を実施した。分析は,母親が育児について語っている文脈を事例ごとに抽出し記述した。その結果,産後1ヵ月の母親は,母親自身で「できる」と思える子育ての体験がある母親と,「できる」と思える体験のない母親がいることが明らかとなった。「できる」と思える子育ての体験のある母親の状況は「自分の努力と導きから実母と同じように世話ができること」「消去法から体感覚を用いて子どもの泣きの理由がわかること」「余裕をもてること」「試行錯誤と,家族・看護者の支援によって効果を実感すること」であった。また「成長している子ども。成長していないながらも母親になっている私」「応援したくなるかわいい子ども。子育てに自信がもてた私」「私を必要としている子ども。子どものことをわかってあげられる,余裕がある私」と母親自身と子どもとの関係をとらえていた。一方,「できる」と思える体験がない母親は「こだわりをもち続けること」「子育てと生活をコントロールしたい」というように育児をしていた。そして子どもと母親自身の関係を「私を嫌う子ども。がんばりが足りない,取り残される私」「思うようにならない子ども。子どもから嫌われている私」ととらえていた。
著者
澤岻 英正
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:08272997)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.740-748, 2004-02-20

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
名和 小太郎
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.131-139, 2010 (Released:2010-06-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

グーグルはデジタル・アーカイブを構築するために,第一級の研究図書館のもつ膨大な書籍をスキャニングしつつある。この行為は著作者の許諾なしに開始されたために,著作権侵害訴訟を引き起こしている。ただし,現在提案されている和解案は,既存の著作権法よりも,許諾プロセスについて,より有効な解を示している。
著者
竹村 正仁
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学 (ISSN:00306150)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.g7-g8, 1997

根管の器械的清掃時には作業液を応用した根管の拡大・形成を進め, 拡大・形成後の化学的清掃には3〜5% NaOCl溶液および3% H_2O_2溶液による交互洗浄が一般に応用されている。しかし, 根管の拡大・形成の良否によっては根管内に応用する洗浄液の根尖歯周組織への溢出という危険性も考えられるため, 使用する洗浄液には可能な限り組織親和性を示すものが望ましい。最近, 水道水の電気分解で得られる強酸性水が広範囲な殺菌作用を示す一方, 細胞毒性が低く, 人体に何ら影響を及ぼさない水として注目されている。そこで本実験は, 根管拡大・形成後の根管洗浄液として強酸性水の根管壁スメアー層およびdebrisの除去効果を検索し, 臨床応用が可能かどうかを検討した。実験にはヒト抜去上顎中切歯120歯を使用し, 洗浄法に従いシリンジ洗浄群および超音波洗浄群の2群に60歯ずつを分割した。実験歯の髄室開拡後は, 通法に従いステップバック法にて根管の拡大・形成を終了した。なお根管の拡大・形成中は, 各群の60歯を15歯ずつの4グループにそれぞれ, 分割し, グループ1〜3は5% NaOClを, グループ4には強酸性水を作業液として応用した。根管の拡大・形成後, 各グループの根管洗浄を以下のように行った。すなわち, シリンジ洗浄群では22ゲージの注射針を装着した10 ml注射筒を用いて, グループ1の実験歯には精製水, グループ2には強酸性水, グループ3には15% EDTA, グループ4には強酸性水をそれぞれ用いて根管洗浄を行った。各グループはさらに5歯ずつの3つのサブグループに分け, 各洗浄液の使用量を10, 20および30 mlとした。超音波洗浄群では#30のファイルを超音波発生装置に装着し, シリンジ洗浄群の各グループと同様の洗浄液を使用して超音波洗浄を行った。超音波作用時間は各グループの実験歯をさらに5歯ずつの3つのサブグループに分け, 1分, 3分および5分間とした。全実験歯の根管洗浄後は歯冠部を切除したあと, 歯根を歯軸に沿って2分割し通法に従って電顕用試料とした。根管壁面の観察には走査型電子顕微鏡を用いて根中央部および根尖1/3部の写真撮影を行い, 根管壁面に残存するスメアー量ならびにdebris量を0〜3の数値にスコアー化し評価した。その結果, シリンジ洗浄法および超音波洗浄法ともに根管洗浄液の使用量および超音波作用時間の違いによる清掃効果には差を認めなかった。スメアー層除去効果については, 作業液にNaOCl溶液を使用した根管拡大・形成後に洗浄液として強酸性水をシリンジ清浄法で使用したグループ2は, EDTAを洗浄液として使用したグループ3と同程度の洗掃効果が得られた。しかし, 超音波洗浄法による清掃効果では強酸性水はEDTAより多少劣っていた。一方, NaOCl溶液を作業液として応用し根管拡大・形成を行ったのち, 精製水にて根管洗浄を行ったグループでは洗浄方法に関わらず根管壁面全体がスメアー層で覆われており, 明らかな歯細管の開口は認められなかった。この結果は, 強酸性水を作業液および根管洗浄液として用いたグループと類似の結果を示していた。Debris除去効果については, シリンジ洗浄法において, 強酸性水を使用したグループ2がEDTAを使用したグループ3より優れたdebris除去効果を示したが, 超音波洗浄法では両者の間に差はみられなかった。また, 作業液にNaOCl溶液を使用し, 根管拡大・形成後に根管洗浄液として強酸性水を使用したグループでは, 超音波洗浄法によって良好なdebris除去効果を示したが, シリンジ洗浄法では中等度の除去効果であった。さらに, 作業液および根管洗浄液に強酸性水を応用したグループでは, 洗浄方法に関わらず中等度のdebris除去効果を示したにすぎなかった。以上のことから, 根管拡大・形成時にNaOCl溶液を作業液として応用し, 拡大・形成後に強酸性水を根管洗浄液として応用すると根管壁面のスメアー層やdebrisの除去が十分に行われ, 強酸性水は根管洗浄液として臨床応用が可能であることが明らかになった。
著者
藤田 徹 北原 鉄朗 片寄 晴弘 長田 典子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.12, pp.199-204, 2008-02-09

本論文では,アーティストの音楽的特徴を抽出し定量的に扱う手がかりとして,テトラコルド論に着目した音楽分析の結果を報告する.テトラコルド論では,完全4度の音程関係にある2音(核音)と,その中間音(補助音)から作られる音列をテトラコルドと定義し,この音列の組み合わせで様々な音階が作られるとされている.本論文では従来のテトラコルドを内側テトラコルド,補助音が核音の外側にあるテトラコルドを外側テトラコルドと新たに定義し,全48種類のテトラコルドに対してそれぞれの出現確率を調べた.この分析を久石譲,坂本龍一,葉加瀬太郎,小室哲也,西村由紀江の5アーティストと日本民謡,沖縄民謡,クラシックの3ジャンルに対して行った結果, 日本民謡や久石,坂本の楽曲に高い確率でテトラコルドが出現した.また,内側テトラコルドが多いほどメロディの予期性が高く、外側テトラコルドが多いほど意外性が高いことが分かった.さらに得られた出現確率データに主成分分析,線形判別分析による多次元空間へのマッピングを行い,それぞれのジャンルやアーティストの区別にどのようなテトラコルドが寄与しているかを示した.This paper reports the result of a music analysis focused on Tetrachord theory in order to extract and quantify the characteristics of a musician. According to tetrachord theory, a tetrachord is defined as a series of three tones where two core tones are related by a perfect fourth and a single auxiliary tone is placed between the two core tones. From these chordal combinations various types of scales are derived. In this study, however, we define the traditional structured tetrachord as an "inside-tetrachord" and a tetrachord structure where the auxiliary tone is placed outside the perfect fourth as an "outside-tetrachord." We investigated the frequency in which all 48 tetrachords occur to analyse music composed by five Japanese musicians: Joe Hisaishi, Ryuichi Sakamoto, Taro Hakase, Tetsuya Komuro, and Yukie Nishimura, and in three genres: Japanese folk song, Okinawa folk song, and classical music. We found that tetrachords appear more frequently in Hisaishi and Sakamoto's music and in Japanese folk songs. Additionally, the more predictable a melody is the more frequently inside-tetrachords appear, while the more unpredictable a melody is the more frequently outside-tetrachords appear. Furthermore, we showed which tetrachord contributes to distinguish different musicians and music genres by mapping the frequency rate obtained into a feature space using PCA and linear discriminant analysis.
著者
春日井 真英
出版者
東海学園大学
雑誌
東海学園大学研究紀要. 人文学・健康科学研究編 (ISSN:1349161X)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-18, 2005-03-31

屋根の上にある鬼面の瓦、鬼瓦は日本人にはかなり馴染みがある。しかし、この鬼面の瓦は一般には寺院などでしか見ることができない。民家の飾り瓦には他の図案のものが存在するのである。また、屋根の装飾は瓦の図案だけではなく瓦の上に置かれた「留め蓋」、「置き蓋」によってもなされる。だがこれも民家では一般的なモノではない。しかし寺、神社という宗教的施設では獅子や牡丹の花などの置き蓋の飾りを見ることができる。だが、調べるうちに一般的な民家でもこの飾りが置かれていることが判る。それらは、獅子や牡丹の花といったものではなく、宝船、七福神、それに波頭といったものによってなされている。七福神や宝船などの屋根飾りの象徴性を分析することから、家という空間を日本人がどのように意識していたかを考察することができる。著者は屋根の飾りの意匠を通して、そこには富の招致もしくは富を護る呪術が隠されていると考えたい。
著者
柳井 啓司
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:18827810)
巻号頁・発行日
vol.48, no.16, pp.1-24, 2007-11-15
被引用文献数
68

「一般物体認識」とは,制約のない実世界シーンの画像に対して計算機がその中に含まれる物体を一般的な名称で認識することで,コンピュータビジョンの究極の研究課題の1つである.人間は数万種類の対象を認識可能であるといわれるが,計算機にとっては,同一クラスに属する対象のアピアランスが大きく変化するために以前はわずか1種類の対象を認識することすら困難であった.ここ数年,新しいモデル表現の提案,機械学習法の進歩,計算機の高速化などにより,急速に研究が進展しており,現在は101種類の対象に対して6割程度の精度で認識が可能となってきている.本論文では,一般物体認識研究のサーベイを手法に加えて,データセット,評価ベンチマークについて行い,さらにその今後について展望する."Generic object recognition" aims at enabling a computer to recognize objects in images with their category names, which is one of the ultimate goals of computer vision research. The categories which are treated with in generic object recognition have broad variability regarding their appearance, which makes the problem very tough. Although human can recognizeten thousands of kinds of objects, it is extremely difficult for a computer to recognize even one kind of objects. For these several years, due to proposal of novel representation of visual models, progress of machine learning methods, and speeding-up of computers, research on generic object recognition has progressed greatly. According to the best result, the 66.23% precision for 101-class generic image recognition has been obtained so far. In this paper, we survey the current state of generic object recognition research in terms of datasets and evaluation benchmarks as well as methods, and discuss its future directions.
著者
相川 充 吉森 護
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.63-72, 1995

Three studies were conducted to construct a scale to measure sensibilities to indebtedness and to examine the reliability and validity of the scale. In Study I, university students and adult non-students completed an original version of the Indebtedness Scale along with some other scales assessing tendencies theoretically correlated with sensibilities to indebtedness. Through item analyses, 18 items were selected as the final version of Indebtedness Scale (IS-18). The IS-18 showed a high internal consistency (α = .850) and a high test-retest reliability (r=.778). In Study I and Study II, significant correlations were observed between the IS-18 score and the measures of self-consciousness, formality ideology, social skills, and self-esteem. There was no correlation between the score and Social Desirability Scale. In Study III, university students placed themselves in the role of hypothetical students confronted with 7 different situations in which they had been helped from others. They answered a question regarding the magnitude of indebtedness in each situation. The total score of the magnitude of indebtedness in 7 situations was positively correlated with IS-18 score.
著者
早田 輝洋
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.25-33, 1998-04-30

This paper rejects Matsumoto's (1984, 1995) arguments that o_1 and o_2 in Old Japanese (OJ) are allophones of the phoneme /o/. Matsumoto claims that a restricted distribution of the phonetically unmarked o_1, its low frequency, and the anomalous direction of its merger with o_2 should be regarded as denoting their status as allophones, rather than two different phonemes. The phonological distinction of vowel quantity in OJ and pre-OJ, and Short-mid-vowel-raising in pre-OJ (Hattori 1976, 1979a, b) and Vowel-shortening, which shortens the vowel of the first syllable in a disyllabic morpheme containing two long vowels in pre-OJ, can explain all the alleged anomalies and serve to invalidate Matsumoto's arguments.
著者
原 悠歌 井上 智香子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.650-651, 2011-09-01 (Released:2012-09-01)

本研究は,日本農芸化学会2011年度(平成23年度)大会(開催地 京都)での「ジュニア農芸化学会」において発表予定であったが,残念ながら東日本大震災によって大会が中止となった.日本農芸化学会和文誌編集委員会によって本研究を優れたものと選定し,掲載することとなった.市街化が進む水田地域における外来種ミシシッピアカミミガメの生態を明らかにしたもので,在来種への圧迫や食物連鎖のバランスなど生態系に与える影響を考察する上で重要な知見を得ている.
著者
田中 謙
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大学経済学部研究年報 (ISSN:09108602)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.51-74, 2008-03
被引用文献数
1

湿地は,今日もっとも危機に瀕している自然生態系の1つである。1971年にラムサール条約が採択されたが,どのような湿地を,どの程度,どのような法制度で保全するのかについては,すべて締約国の自主的な判断に委ねられていて,日本においては,ラムサール条約の指定登録湿地は,鳥獣保護法の鳥獣保護区や,自然公園法における国立公園の保護地域などにすでに指定されている地域ばかりである。現行の湿地保全の法システムに対しては,(1)現行の法システムは,土地所有権を手厚く保護して規制を最小限度に抑える「財産権偏重」の法システムであるとともに,もともと自然はあり余っており,その利用を図るという前提でできているために,自然を保護しようと多少の修正を加えても,今日の自然環境保全の要請に応えることができない, (2)湿地の自然環境を保全するという機能が非常に弱い一方,自然を過剰に利用する結果,自然環境が破壊されている, (3)生態系を保全するという観点がとても弱く,過剰利用による生態系の破壊が絶えない, (4)登録湿地は水鳥重視で選定され,また地元合意を重視しているため,湿地保全の対象地域が適切に指定されていない, (5)ゾーニング手法が用いられ,また既得権が重視されている結果,土地所有者などに対する開発規制がとても甘い,などの問題点を指摘することができる。今後の課題であるが,湿地一般の保全を目的とした総合的な「湿地保全法」を策定する必要がある。なお,総合的な「湿地保全法」を策定する際には, (1)土地所有権を手厚く保護して規制を最小限度に抑える「財産権偏重」の法システムを転換し,土地利用規制を強化する, (2)環境保全機能を強化するとともに,過剰利用を抑制する, (3)生態系保全の観点を確保する, (4)ラムサール条約の「国際的に重要な湿地」の選定基準を踏まえて,保全対象地域を適切な方法で指定する, (5)湿地保全対象地域の公有化,戦略的環境アセスメントの実施,湿地の保全と「賢明な利用」を組み入れた利用計画の策定・実施などによって,開発規制を強化する,などの視点を盛り込むことが必要である。Wetlands are now in crisis. The Ramsar Convention on Wetlands was adopted in 1971. But the details about the conservation and the wise use of wetlands are referred to each Contracting Parties. In Japan, the wetlands registered in the Ramsar List are already designated under the current laws such as the Natural Parks Law and Wildlife Protection and Hunting Law etc. With regard to the legal systems on wetlands in Japan, I can point out five problems. 1) The problem is to make too much of property rights. 2) The problem is to make use of the surplus environment. 3) There is no viewpoint of ecological conservation. 4) The problem is not to designate the wetlands appropriately. 5) The problem is not to regulate the development acts strictly.
著者
花岡 健介
出版者
Waseda University
巻号頁・発行日
2004

近年,PDAや携帯電話などの組み込み機器は非常に高機能化してきている.それに伴ってOSも年々高機能化してきているが,同時に構造が複雑化してきている.本研究の目的は,比較的規模の小さなOSであるMINIXをARMアーキテクチャへ移植し,OSの基本的な動作を理解した上で,組み込み機器の持つ要求を満たすために必要なOSの機能について議論することにある.移植を行ったMINIXの性能評価として,プロセス管理において重要なforkおよびexecシステムコールのコストを計測し,同じARM上で動作するLinuxとの比較を行った.MINIXはLinuxと比較して30倍近く遅いという結果を得たが,MINIXのオーバーヘッドとなっている部分について考察を行い,組み込み機器への適用可能性を議論した.
著者
広井 勝
出版者
郡山女子大学
雑誌
紀要 (ISSN:13415840)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.41-52, 2010-03