著者
廣川 満良 鈴木 彩菜 川木 裕子 工藤 工 木原 実 宮 章博 宮内 昭
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.32-38, 2020 (Released:2020-06-16)
参考文献数
27

甲状腺穿刺材料を用いた補助診断法について概説する。穿刺針洗浄液を用いた生化学検査,たとえばサイログロブリン,カルシトニン,PTHなどは細胞診よりも診断精度が高く,比較的安価であることから,適応や評価を十分に理解したうえで積極的に用いるべきである。リンパ腫,特にMALTリンパ腫を疑った場合は,フローサイトメトリーによる軽鎖制限の確認は非常に有用である。遺伝子検査は本邦では未だ日常的には行われていないが,今後細胞診で濾胞性腫瘍や意義不明と報告された結節に対して行われていくことになるであろう。
著者
山中 裕太 村瀬 瑠美 本間 三和子 仙石 泰雄 角川 隆明 高木 英樹
出版者
公益社団法人 全国大学体育連合
雑誌
大学体育スポーツ学研究 (ISSN:24347957)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.152-161, 2021 (Released:2022-09-28)
参考文献数
24

水泳は,小学校から大学までの体育の授業で広く活用されている.小学校から高校にかけての学校体育の水泳の授業は指導要領に沿って行われているが,大学の水泳の授業では学習内容に規定はない.そのため,大学の水泳授業は各大学の教育理念に沿った独自の水泳授業が行われており,全国の大学でどのような水泳授業が行われているのかは不明である.加えて,大学水泳授業を実施するにあたっての問題点は明らかにされていない.本研究では,大学の水泳授業の現状把握し,担当教員が経験してきた問題点を洗い出すことで,大学の水泳授業の改善を目指すことを目的とした.データ収集は,オンラインシラバス調査とオンラインアンケート調査によって行った.その結果,分析した全大学(780校中244校)の31.3%が水泳授業を実施しており,そのうち約8割が教職やコーチングの学位を目指す学生のための専門課程の一環の授業として実施されていることが明らかとなった.大学の水泳の授業の標準的な学習内容は,4泳法の泳法習得である.専門課程の授業では,4泳法の指導方法と水中安全の技術についての学習を実施する授業が多く,教養課程の授業では,水球,シュノーケル,アクアビクスなどの学習を実施する授業が多かった.大学によって授業の内容や施設は異なるが,回答者からの授業の問題に関する指摘で最も多かったのは,大学所有の屋内プールがないため,天候や水温の影響で予定通りに授業ができないなどのプール環境についてであった.さらに,授業内容についての問題も多く確認され,時間数が足りない,学生数が多い,習熟度にばらつきがあるなどの問題点が指摘された.得られた大学水泳授業の実態を踏まえ,これらの問題に対処することで充実した大学の水泳授業の展開が期待される.
著者
岡 綾子 野津 哲子 Ayako OKA Tetsuko NOTSU
雑誌
島根女子短期大学紀要 (ISSN:02889226)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.32-39, 1973-03-28

大和朝廷の勢力は5.6世紀頃から増大し用明天皇の妹の推古天皇が即位され,聖徳太子の摂政となった。皇室勢力を基礎に統一国家の理念を確立せんとされたのが太子である。太子の事業は冠位の制定で勲功に従って人々に冠を与え,冠の色の相違によって位階の上下を示すようにしたものであり,これまでの姓が原則として氏に属し,世襲を本位としたのに対し冠位は個人に属し一身限り,門閥打破,人才登庸の意義の深いものであった。しかし位を12階に分け,これに6個の名称をあたえ大小を冠した。冠は朝廷出仕の際のかぶりものであり,公家の大小の儀礼行事,神事祭礼の奉仕にも用いられた。唐制の〓頭を継承した養老の衣服令所載の頭巾と呼ぶ4脚のかぶりものから変化したものである。地質に羅(ら)・紗(しや)などの薄物を用いたので,かぶってから髻(もとどり)との当たりをやわらげるために前に巾子(こじ)とよぶ壺(つぼ)を設け,これに髻を納めてかぶり,後部の2脚で引締め,結び余りを長く垂下して燕尾(えんび)といい,これが形式化して纓(えい)となった。また他の2脚は左右にあってかぶってから頭上にとり,巾子の前方で結んだがこれも面影を伝えて上緒(あげお)と後綱(うしろづな)になった。
著者
小谷内 郁宏
雑誌
静岡産業大学 情報学部 研究紀要 = Journal of Shizuoka Sangyo University
巻号頁・発行日
no.24,

太宰治の遺作とも言える『人間失格』(1948 年) のテーマについては、さまざまな解釈がなされている。CiNii( 学術情報データベース) サイトで、「人間失格」をキーワードに論文検索すると、この作品については「人間の営みへの違和感」、「生きることの困難」、「自己愛」、「道化であること」「宗教との相克」といったテーマ設定の論文が見受けられる。 筆者は、この小説の最終部分の章句よりテーマを「父から逃避」と仮定し、社会科学分野の計量テキスト分析、特にアンケート分析などでよく使用される分析ソフトKH Coderを用いテキスト分析をし、そのデータから仮定したテーマの妥当性を確認したい。
著者
小澤,正直
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究
巻号頁・発行日
vol.97, no.5, 2012-02-05

有限次元の状態空間をもつ量子力学系に対する測定で,可能な測定値が有限個の測定の一般論を解説する.理論の展開は公理的な方法を用い,(射影仮説を含まない)少数の量子力学の基本原理と測定に関する自明な仮説から理論を演鐸する.測定理論に不可欠なPOVMや完全正値インストルメント等の数学的方法は,それらの自明性の高い基本仮説から理論の結論として導かれ,数学的道具を出発点に理論を展開する方法はとらない.目標の一つは,それらの数学的方法が概念的に極めて堅固な基礎の上に打ち立てられていることを明らかにすることである.この方法の利点の一つは,物理的に可能な測定の全体を数学的に特徴付けることを可能にすることで,最適測定の特徴付けや測定誤差と擾乱とのトレードオフなど究極的な限界を導くための方法論を提供する.一つの応用として,Heisenbergがガンマ線顕微鏡を用いて提案したような測定精度と擾乱の間の関係を考察し,新たな普遍的な関係の導出を目標とする.
著者
山本 良太 池尻 良平 中野 生子 山内 祐平
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.31-49, 2022 (Released:2022-10-07)
参考文献数
20

本研究では,プロジェクト学習においてクラウドのアプリケーションを用いて教員がどのように学習者にフィードバックを与えているのか詳細を把握し,その結果から具体的方略を考察することを目的とした。Google スプレッドシートを活用したプロジェクト学習を実践した教員のフィードバックとその意図を分析した結果,生徒が記入したセルへの【色付けによる全生徒への即時フィードバック】および【生徒間の相互参照促進】というクラウドの高い同期性を生かした方略によって,教室全体のモニタリングとフィードバックを行っていた。また,教員は実践前には想定していなかったフィードバック方略を即興的に生成し,より踏み込んだフィードバックを行っていた。このことから教員はクラウドの高い同期性を生かすこと,またクラウドの特徴を踏まえつつ学習者との相互作用を通じて適切なフィードバックを探索し実践することが重要であることが分かった。
著者
安冨 潔
出版者
京都産業大学法学会
雑誌
産大法学 (ISSN:02863782)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1/2, pp.255-236, 2015-01
著者
Yoshiaki Seki Kiyoshi Ohishi Yuki Yokokura Toshiki Sano Yuji Ide Daigo Kuraishi Akihiko Takahashi
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
IEEJ Journal of Industry Applications (ISSN:21871094)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.73-82, 2017-03-01 (Released:2017-03-01)
参考文献数
32
被引用文献数
1 5

In the field of high precision positioning control, the position servo system must be highly robust against disturbance torque. A Permanent Magnet Synchronous Motor (PMSM) has various torque ripple components that degrade control performance. A portion of the torque ripple is caused by the harmonic current. The torque ripple can be suppressed using a highly robust current control system. The remaining torque ripple is defined as the disturbance torque and is compensated for using a Disturbance OBserver (DOB). However, it is very difficult for a DOB to perform the appropriate compensation because it uses a low-pass filter to reduce noise. To obtain highly robust performance, this paper proposes a new position servo system using a disturbance torque hybrid observer and a current control system in the α-β stationary frame. In addition, this paper uses the torque ripple equation instead of a torque ripple table so as to reduce the amount of Digital Signal Processor (DSP) memory. The effectiveness of the proposed position servo system is confirmed using numerical and experimental results.
著者
中野 博民 内藤 雅将 近藤 良
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.118, no.7-8, pp.1122-1129, 1998-07-01 (Released:2009-10-02)
参考文献数
11

Usually, analysis of a conventional symmetrical 3-phase feed-back control system can be done using a single-phase conventional transfer function. However, analysis of 3-phase system having rotating coordinate transformations is difficult by the conventional transfer function. Because, the conventional transfer function cannot deal with the control system having the rotating coordinate transformation inserted in the feed-back loop. Therefore, in this paper, the authors propose a novel extended transfer function with the rotating coordinate transformations and analyze the system having a rotating coordinate transformations.
著者
山本 敏充 斎藤 成也 打樋 利英子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

日本国内の地域集団及び日本周辺諸国の地域集団から採取されたDNA試料について、多数のほぼ均等に常染色上分布する4塩基リピートのSTRs(short tandem repeats)マーカーが型判定された。そのうち、105座位のSTRsが、日本人5地域(秋田・名古屋・大分・沖縄)、中国人(漢民族) 5地域(北京・陝西・湖南・福建・広東)、タイ人(バンコク)、ミャンマー人(ヤンゴン)、モンゴル人2地域(オラーゴン・ダランザドガド)、韓国人(ソウル)及び中国人(朝鮮族)(瀋陽)のDNA試料が型判定され、系統遺伝学的、構造遺伝学的、3次元的分布などの集団遺伝学的解析が行われた。その結果、日本人と中国人とが統計学的に区別できる可能性が示唆された。そこで、各座位のアレルごとの中国人に対する日本人らしさの割合を算出し、その割合を各個人ごとに積算した分布を正規分布に補正したところ、ある程度日本人と中国人とを確率的に区別できる方法が確立できた。また、同様に250以上のSTRs座位を型判定できるマルチプレックスシステムを構築した。このシステムを利用することにより、日本人と韓国人、あるいは日本人国内の地域差を調べることができる可能性が考えられた。
著者
村田 康常
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.43-64, 2018-12-20

本論文では、遊びを中心とする幼児の生活と成長過程のなかで言葉が生まれてくるプロセスの原初相を主題として、幼児の生活と成長のなかで言葉が発せられ交わされていく根源のところ、言葉がそこにおいて立ちあがってくる経験のなかで楽しさや喜びだけでなくさまざまな要因が働き合う幼児の世界の特徴を考察した。松居直が「言葉を楽しむ遊び感覚」と呼んだような幼児の躍動する感性のなかで言葉が生まれてくるとき、そこはさまざまな要因が働いており、研究者にとって広大な探求領域が開けている。その中から本論文では、「言葉を楽しむ遊び感覚」を生き生きと生じさせるような幼児の生活におけるいくつかの要因を取り上げた。これらの要因を論じるための手がかりとして、ピカートの「沈黙」、ハイデッガーの「世界内存在」やホワイトヘッドの「感じ」といった諸概念や、コッブの子どもの成長についての創造的進化の概念に基づいた理解、バージャーが提起した言葉に先立つ視覚イメージの原初性、イーガンらが示した教育における物語と想像力の重要性などの諸議論を渉猟しながら、子どもの生活と成長過程を通して言葉が生まれてくる原初的な経験を論究した。本論文では、この論究を通して、「言葉を楽しむ遊び感覚」をともないながら、自らの世界内存在の物語的な理解を子ども期に十分に内在化することの重要性を示し、結論として、抑圧された沈黙ではなく、活気づけられた沈黙こそ、保育・幼児教育の場の基本だという見解を提示した。
著者
須見 洋行
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.358-359, 2015-07-20 (Released:2017-06-16)

「納豆」という言葉が初めて登場したのは平安時代であるが,現在の「糸引き納豆」が紹介されたのは江戸時代に入ってからで,最も古い食べ物の辞典ともいうべき「本朝食鑑」にも記載されている。この糸引き納豆は日本人の多くが好きである一方,特に外国ではニオイや粘りを嫌う人も多い。しかし,蒸した大豆よりも栄養価が高く,さらに納豆にしか含まれない血栓溶解酵素ナットウキナーゼをはじめ各種効能成分が含まれている。本稿では世界に誇る日本の糸引き納豆の魅力について紹介する。
著者
宇都宮 由佳
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.271-286, 2006 (Released:2007-10-12)
参考文献数
32
被引用文献数
2

In a continuing study on the food eaten by the local people in northern Thailand, this report presents the results of a study into the characteristics and function of traditional confectionery from questionnaire, listening and literature surveys. The data were analyzed by the statistical method with SPSS software and also by some sociological methods. Khanom Thai, or Thai traditional confectionery, was originally made from rice and sugar in the court of the Thai dynasty as an offering to the Royal Family and monks. Influenced by the food culture of foreign countries, the confectionery was refined and disseminated from the central to local areas. Important characteristics of this confectionery in northern Thailand developed from making at home on special occasions of Buddhist and agricultural festivals, marriage ceremonies and housewarming parties. Glutinous rice is the main material, while sugar and coconut milk are not as frequently used as they are in Central Thailand. Compared with Khanom Thai from Central Thailand, the confectionery is simple in shape and taste. The people of northern Thailand can now obtain various types of Khanom Thai through development of the distribution channels. Home-made Khanom Thai strengthens the family bond and gives a deeper feeling of satisfaction and fulfillment, while offering Khanom Thai to the Buddha would greatly accentuate their virtue. Although those are the main features of the function of Khanom Thai, making and eating the confectionery will become a more significant trigger to recognition of the identity of Thai people in future.
著者
山口 直也
出版者
中小企業会計学会
雑誌
中小企業会計研究 (ISSN:2189650X)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.4, pp.34-46, 2018 (Released:2020-10-05)

本論文は,調査対象を限定することによる研究成果の限界を認識しつつ,新潟県燕三条地 域,東京都大田区,大阪府東大阪地域の3 つの産業集積地域を対象として実施した郵送質問票調査に基 づき,これら原価計算・原価管理実践の現状を解明することを目的としている。 分析の結果,回答企業の多くが原価計算,原価管理を導入していることがわかった。ただ,「製造原 価の引き下げ」や「全社レベルのコスト低減」を経営課題として挙げているにも関わらず,原価計算, 原価管理を導入していない企業も相当数存在した。 原価計算の導入状況について,予算の導入状況との関係性を分析したところ,統計的に有意差がみら れた。全社レベルの予算だけでなく,事業単位,製品・サービス単位,部署単位といった部分レベルで の予算も導入している企業は,財務諸表作成目的の原価計算に加え,製品・サービス単位での原価計算 も導入している企業が多かった。 原価管理の導入状況について,原価計算の導入状況との関係性を分析したところ,統計的に有意差が みられた。製品・サービス単位で原価管理を行っている企業は,財務諸表作成目的の原価計算に加え, 製品・サービス単位での原価計算も導入している企業が多く,原価管理を行っていない企業は,財務諸 表作成目的のみの原価計算を行っている企業が多かった。