著者
虫明 眞砂子 財満 健史 大脇 雅直
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

アマチュア合唱団員とプロ合唱団員は,合唱歌唱の発声をそれぞれどのように捉えているのか。まず、アマチュアとプロ合唱団員に対して質問紙調査を行った。その結果、両合唱団員は,ソロ歌唱と合唱歌唱それぞれの特質を認識し,両歌唱に適した発声技術で歌唱しようとしていることが明らかになった。次に、プロ歌手4名に発声を依頼し,合唱歌唱とソロ歌唱で,発声をどのように変化させているのか,歌い方の違いでどのような音響学的な差異が出るのかを,聞き取り調査と音の可視化装置によって,より客観的に捉えることを試みた。その結果、和音発声,旋律発声のいずれでも,4名の合唱歌唱では,音の到来方向が中央に収束する傾向が確認された。

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出版者
日本音樂雑誌
巻号頁・発行日
1946
著者
宮内 哲
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.106-114, 2016-06-01 (Released:2017-07-01)
参考文献数
54

その2で述べたように, 最初にヒトでの脳波記録に成功してから5年間の年月をかけて, 自らが記録した脳波がアーチファクトではないことを検証して論文を出したにもかかわらず, Bergerの脳波は当時の神経生理学には受け入れられなかった。その3では, Adrianによる追試をきっかけにして脳波が神経生理学や臨床医学に受け入れられていった過程と, その後のBerger, 特にナチスとの関係と自殺の原因, テレパシーを信じるようになった経緯, Bergerがノーベル賞にノミネートされていたことなどについて述べる。
著者
田中 美樹 布施 芳史 高野 政子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.71-77, 2011-04-01
参考文献数
13

本研究の目的は,父親が「自分は父親になった」と自覚した時期や出来事と,児への愛着や子育て行動にどのように影響しているのかを明らかにすることである。対象者はA市内の保育園に通う3歳未満の子どもをもつ父親で,属性,父親として自覚や子どもへの愛着に関する無記名自記式質問紙法を行った。愛着に関する項目は,大日向により信頼性が確認された愛着尺度を用いた。父親の自覚がある者は97.1%で,自覚をもった時期は「子どもを初めて見たとき」32.9%,「初めて抱っこしたとき」30.0%であった。子どもへの愛着得点が高い父親は低い父親に比べ,父親としての自覚で「強く思う」と答えた割合が高く,父親としての自覚と子どもへの愛着に関連を認めた(P<0.05)。さらに,育児参加への自覚の認識が高い父親は父親としての自覚も高かった(P<0.05)。多くの父親が出生直後の子どもに触れることや顔を見ることで父親としての自覚を感じていた。父親としての自覚と子どもへの愛着,育児参加の自覚とも関連を認め,父親が父親としての役割を果たすとき,その根底にあるものは,父性の芽生えや「父親になった」という自覚であることが示唆された。
著者
林 智 林 美代子
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン (ISSN:18849644)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.397-409, 1967-06-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
58

テレビジョン受像機から漏洩するX線の, 衛生学的諸問題を考察したもので, X線の人間への作用, 管理基準, 測定について概説したのち, 研究の歴史, 線源ごとのX線の性質と漏洩レベルを検討し, 最後に, 実際にセットから漏洩しているX線の現況と, 今後の見通しを考察, さらに対策についても言及している.
著者
Eunok Lee Jun Miyazaki Shinya Yoshioka Hang Lee Shoei Sugita
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
ORNITHOLOGICAL SCIENCE (ISSN:13470558)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.59-64, 2012 (Released:2012-07-03)
参考文献数
18
被引用文献数
14

We investigated the origin of the iridescent violet-bluish feathers of the adult Jungle Crow, Corvus macrorhynchos, using microscopic and optical techniques. A single layer of melanin granules was found below the surface of the barbules in the feathers of male crows. Although the barbule microstructure was clearly sexually dimorphic, neither the appearance nor the optical measurements were notably different between the sexes, which indicated that the single layer of melanin granules did not contribute to the iridescent color of the feathers. We also found a thin layer, which we refer to as the epicuticle, at the surfaces of the barbules of both male and female feathers, indicating thin-film interference as the most likely cause of the iridescent color. We investigated this possibility by measuring reflection patterns and spectra. Our results suggest that the weak violet-bluish feather color of the feathers of the Jungle Crow is caused by thin-film interface due to the presence of an epicuticle on the feather barbules.
著者
青塚 圭一
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.41-55, 2018 (Released:2018-05-11)
参考文献数
112

過去30年間における多くの鳥類化石の発見によって,鳥類はジュラ紀後期には出現し,白亜紀には世界全域に放散していたことが明らかになった.鳥類は飛翔能力の向上に伴い,尾端骨の形成,竜骨突起のある胸骨の発達,高度な翼の発達,そして歯の消失など,その骨格を変化させてきた.また,近年の研究により性戦略や成長形態など様々な生態的な発達があったことも明らかになってきている.中生代に無飛翔性の鳥類の多様性が乏しいことや新鳥類が大量絶滅事件(K-Pg境界)を生き延びた理由は未だ不明であるが,これらは環境面や生理面での制限による可能性がある.本稿では飛翔能力,内温性,そして消化器官の発達が鳥類の繁栄に影響を与えたものであると結論付ける.生理的な特徴は化石として残りにくいものであるが,新たな化石の発見や軟組織を復元するような研究が進むことで,絶滅した鳥類の詳しい生態が明らかになることを期待する.
著者
土屋 貴志
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.125-129, 1994-10-20 (Released:2017-04-27)

オーストラリアの哲学者ピーター・シンガーは選好功利主義に立って、重い障害をもつ新生児の安楽死を擁護するが、この主張はドイツ語圏の人々に、ナチスの「安楽死」の苦い記憶を想起させることになった。シンガーを招いたシンポジウムは障害者を中心とする広汎な抗議行動のために軒並み中止に追い込まれ、ドイツのマスコミはシンガーを「ファシスト」呼ばわりした。攻撃はさらに生命倫理学や応用倫理学、果ては分析哲学全般にまで飛び火し、これらの分野の研究者は学問的生命すら危ぶまれている。日本国内にも、バイオエシックスを弱者を切り捨て生命操作を押し進めるためのイデオロギーとみなす見方が一部にある。「シンガー事件」は、バイオエシックスの本質と意義を再考し、今後の日本の生命倫理学のあり方を考える上で、看過できない重大な問題を提起している。
著者
岡本 兼佳
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.182-194,248, 1955-08-30 (Released:2009-04-28)
参考文献数
8
被引用文献数
1

For the approach to the reasons of dwelling dispersion, it is fundamentally necessary that the settled order should be made clear by tracing back to the early stage of the reclamation and throughout the progress. From this point, the writer researched into the dispersed settlement on the deltaic plain between two rivers, the Edo and the Furutone, Kanto lowland. The following conclusions were reached:1. The pioners located their homes apart from one another and rarely adjoined besides the line villages. This dispersion of the pioneers resulted from selecting the highest island-like embankment in order to secure their farmsteads from flood waters. When the embankment was too lower to avoid flood, the dweller still more raised up the ground artificially.2. The community in this region is chiefly organized with the relation of head and branch, so the reasons for the dispersed dwelling can be attainable through the branching of the families. Distinguishing the families in the same lineage and ranging them in settled order, and then drawing them on the map, the settlement growth and especially where the branch families select as the house sites are made clear. These distribution types are classified as follows; (A) scattering type of branch families, (B) adjoining type of a branch family to its head family, (C) adjoining type of a branch family to another.3. Classifying the own-fields of the dispersed branch families by distribution, two types are recognized; (a) concentrated type around the house site or stretched type in front of his house site, and (b) remote type. The latter is subdivided into three types; (1) scattered type, (2) distant and yet concentrated type, (3) two groups type in front and at a distance. Each of these types is exemplified in Fig. 3, 4 and 5. When the dwelling is located in the center of the own-fields the most convenience of farming is given. In this region, however, some of the dispersed branch families have the fields in type of remoteness and scattering, because they can not get at will the favorable elevated house site everywhere.4. The adjoining type of a branch family to its head family has also two distribution types of the own-fields; (a) stretched type in front of both families in their way, (b) remote type in the branch family's fields. The latter is classified into the same three types as the case of the dispersed branch families. The examples are given in Fig. 6 and 7.5. The adjoining type of a branch family to another makes the distribution types of the own-fields as follows; (a) contrated type adjacent to the house site in each family or stretched type in front of both families in their way, and (b) remote type in the later settler. This dwelling type and the distribution types of fields are based on taking the elevated dry lots for the house sites.6. Subsequently some farmers removed from other places and they also settled in the types of adjoining and scattering. In that case, the settlers mostly looked for the elevated dry lots and consequently the same dwelling types were shaped.7. The ruined sites were scarcely resettled and were usually changed to the fields and even the lots leaved to the overgrowth with trees and grasses turned out. The inhabitants seem to have evaded such ruined sites psychologically.8. In Tab. 3 the elevated island-like lots are classified by size and are compared with the existence of dwelling. Inspecting this, the greater the lot area becomes, the more dweller it stands, conversely, the smaller lots are entirely used as the fields. By every size of the elevated lots, averaging the area of the house sites possessing on each, the home site areas increase in proportion to the elevated lot areas. This proves that the locating of the dwelling is adapted for the elevated lots. The changes of the landuse follow even the artificial changes,
著者
小泉 美緒 奥村 将之 玉木 彰
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0770, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】呼吸リハビリテーションにおける下肢の筋力トレーニングのエビデンスレベルは最も高いGrade Aに位置づけられている。しかし,呼吸器疾患患者では呼吸困難感などにより筋力トレーニングに必要な高強度負荷をかけられないという問題がある。そこで近年,骨格筋電気刺激(以下,EMS)が注目されている。これまでにEMSの生理学的効果に着目した先行研究は散見されるが,その効果が現れる実施頻度に関する報告は少ない。そこで本研究では,EMSの異なる実施頻度が下肢の筋厚,筋力,運動耐容能に与える効果を検証し,その効果の差を比較検証することを目的とした。【方法】対象は健常成人男女25名(男性9名・女性16名,年齢:20.3±1.2歳,身長:164.5±7.5cm,体重:56.6±8.2kg)とし,EMS非実施群(Control群)と,EMS実施群を週3日実施群(週3群),週5日実施群(週5群)に無作為に分類した。EMS実施群はベルト電極式骨格筋電気刺激装置を用い,非監視下にて1日1回20分の電気刺激を6週間継続して実施した。強度は対象者の耐えうる最大強度とし,毎回指定の用紙に強度を記入してもらうよう指示した。尚,全ての対象者は6週間のうち最初と最後の1週間の活動量をモニタリングし,日常生活における活動量を統一した。EMS介入前には,超音波診断装置を用い大腿部と下腿部筋厚,等尺性膝関節伸展筋力(膝伸展筋力)及び筋疲労率,体組成などを測定し,さらに運動耐容能として心肺運動負荷試験(CPX)を実施し,6週間後も同様の評価を行った。また,CPXと膝伸展筋力の測定日は別日とした。統計処理は各群のEMS実施前後における各測定値の差を対応のあるt検定で,3群間における各測定値の変化量の差を一元配置分散分析および多重比較にて分析した。さらに,大腿部筋厚と膝伸展筋力の関係をPearsonの相関係数を用いて分析した。有意水準は5%とした。【結果】EMS実施後の大腿部,下腿部筋厚は実施前より週3群,週5群で有意に高値を示した(p<0.05)。また,各群における筋厚の変化量はControl群と比較して週3群,週5群で有意に高値を示し(p<0.05),週3群と週5群間には有意差が認められなかった。EMS実施後の膝伸展筋力は週3群と週5群で有意に高値を示し(p<0.05),膝伸展筋力の変化量はControl群と比較して週3群と週5群で有意に高値を示した(p<0.05)。EMS実施後のpeak Wattと右脚筋肉量は週5群のみ有意に高値を示した(p<0.05)。さらに,大腿部筋厚と膝伸展筋力との間には有意な相関関係が認められた。【結論】6週間のEMSの実施により週3群では筋厚,膝伸展筋力に有意な増加が認められ,その変化量は週5群と比較しても統計学的に有意な差は認めなかった。このことから,EMSは週3日という実施頻度でも十分に下肢の筋力トレーニングとしての効果が得られることが示唆された。
著者
岡 寛
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.427-432, 2016 (Released:2016-05-01)
参考文献数
5

線維筋痛症 (FM) は, 2012年にpregabalinが, 本邦初保険収載され, さらに本年度にduloxetineの承認追加もあり, 薬物療法が浸透してきている. 本シンポジウムでは, FMの薬物療法中心に筆者の治療経験を紹介した. 通常, 300人の患者集団において, 薬物療法としてpregabalinおよびワクシニアウイルス接種家兔炎症皮膚抽出液含有製剤 (ノイロトロピン®, 以下NRT) を第1選択薬としている. 小児, 学生, 車の運転を必要とする患者, 精密機械を扱っている患者では, pregabalinの投与対象ではない. このような患者に対しては, NRTの高容量を最初に使用している. 他には, clonazepam, duloxetine, mirtazapine, tramadol, gabapentin enacarbilなどを組み合わせ投与している. ただし, FM治療においては単なる薬物療法のみに頼ることなく, 症例によってトリガーポイント注射, 温熱療法, 体質改善のための漢方治療, ストレッチングなどの運動療法, 心理カウセリング, 認知行動療法などのテーラーメイドの医療が必要である.
著者
小野寺 理佳
出版者
北海道大学アイヌ・先住民研究センター
雑誌
北海道アイヌ民族生活実態調査報告 : Ainu Report
巻号頁・発行日
vol.2, pp.123-142, 2012-03-31

現代アイヌの生活の歩みと意識の変容 : 2009年北海道アイヌ民族生活実態調査報告書. 小山透編著
著者
西本 豊弘 藤尾 慎一郎 永嶋 正春 坂本 稔 広瀬 和雄 春成 秀樹 今村 峯雄 櫻井 敬久 宮本 一夫 中村 俊夫 松崎 浩之 小林 謙一 櫻井 敬久 光谷 拓実 設楽 博巳 小林 青樹 近藤 恵 三上 喜孝
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2004

弥生時代の開始が紀元前10世紀末であることが明らかとなった。その後、日本列島各地へは約500年かかってゆっくりと拡散していった。さらに青銅器・鉄器の渡来が弥生前期末以降であり、弥生文化の当初は石器のみの新石器文化であることが確実となった。
著者
中島 利博 山野 嘉久 八木下 尚子 樋口 逸郎 赤津 裕康 川原 幸一 上 昌広 丸山 征郎 岡田 秀親 荒谷 聡子
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

われわれがリウマチ滑膜細胞より発見した小胞体関連E3ユビキチンリガーゼ シノビオリンは遺伝子改変動物を用いた研究により、少なくともマウスにおいては関節症発症の必要十分因子であることが証明されていた。また、関節リウマチの新薬である抗TNFα製剤の感受性を決定するバイオマーカーの可能性も示されている。一方で、シノビオリンの完全欠損マウスは胎生期において致死であることも明らかとなっていた。したがって、これまで成獣における同分子の生理機能の解析、並びに関節症における分子病態を明らかとすることが不可能であった。そこで、本研究事業により、同分子のコンディショナルノックアウトマウスを作製し、これらの点を明らかにすることを目的とした。その結果、シノビオリンのコンディショナルノックアウトマウスは胎生致死でのみならず、出生後に同遺伝子をノックアウトした場合でも致死であることを発見した。さらに、その過程で線維化・慢性炎症に非常に密接に関与することが示されている(論文準備中)。現在、その恒常性維持にシノビオリンが必要と考えられる関節などの臓器特異的なコンディショナルノックアウトマウスの解析を行っている。上記のようにシノビオリンの機能制御は関節リウマチのみならず、線維化・慢性炎症を基盤とする疾患の創薬標的であることは明白であろう。われわれの有するシノビオリン抑制剤がマウスにおける関節炎モデルに有効であることを証明した(論文投稿中)。さらに、本テーマは橋渡し研究として米国のユビキチンに特化した創薬系ベンチャー プロジェンラ社との創薬開発プロジェクトへと進展した。