著者
鈴木 一有 金山 尚裕 伊東 宏晃
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

研究代表者の鈴木一有らは、近赤外線分光法によるこれまで臨床症例において胎盤酸素濃度の測定を行い、胎盤酸素濃度が高かった症例の胎盤病理を詳細に検討した。その結果、chorangiosis(胎盤血管腫症)という胎盤の病態が、胎盤酸素濃度(TOI)の上昇と深く関連していることが判明した。つまり、chorangiosisのある胎盤TOIは75.3%であり、それがない胎盤TOIの68.6%よりも有意に高値であった。(Suzuki K et al, Chorangiosis and placental oxygenation, Congenit Anom. 49;71, 2009)またこれに引き続き、chorangiosis(胎盤血管腫症)という胎盤病理組織所見が臨床的にはFGRならびに臍帯卵膜付着などの臍帯異常と関連があることが判明したため、平成24年度の動物実験による研究をすすめた。 その結果、胎盤TOI上昇が、臍帯の血流不全と大きな関連があることが明らかになった。具体的には、妊娠中に臍帯血流を全圧迫遮断することにより胎盤TOIが上昇する病態を作成することに成功した。また、同時に測定した胎仔のTOIは低下することも確認された。(Suzuki K et al, Transient ligation of umbilical vessels elevates placental tissue oxygen index(TOI) values measure by near-infrared spectroscopy(NIRS) inclawn miniature pig animal model, Clin.Exp.Obstet.& Gyn.39;293,2012) この結果は、胎児の臍帯血流が、胎盤酸素濃度を規定する大きな因子である可能性があるという新しい発見である。
著者
宮腰 英一 森田 朗 大桃 敏行 高橋 寛人 若林 直樹
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、公財政支出の削減が推し進められる中で、わが国及びイギリスが「子ども・青少年」施策の効率化を図り、かつその意思決定と実施過程において責任体制を支える「ネットワーク型ガバナンス」を構築し、教育運営システムの改善を進めている実態を現地調査により明らかにした。(1) 英国バーミンガム市の「子ども・青少年」行政について市当局及び「子どもセンター」への訪問調査と職員へのインタビューを実施した。その結果、教育行政に隣接する福祉・医療・労働の分野を「子ども・青少年」行政として統合している実態がわかった。(2) 国内調査 : 太田市、佐賀市、出雲市、豊田市、駒ヶ根市、大分市等の「子ども行政」に見られる教育委員会の部局再編の経緯について情報を収集し、成果を関連学会において発表した。
著者
宮本 乙女
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

1.研究目的:ダンス領域で成果を上げてきた「主体的なダンス学習場面としてのグループ活動」を柔道の学習にも当てはめながら、2つの領域における有効な「活用-探究」の学びについて考察した。2.研究方法:お茶の水女子大学附属中学校の中学2年生の柔道全14時間、ダンス全14時間を対象とした。柔道「大外刈り」ダンス「序破急」のグループ活動を精緻に分析した。技能指導においては専門家の知見も得て「活用-探究場面」を意識した学習指導を実践した。学習者の活動は、授業全体、および生徒のグループ活動をVTR撮影した。教師行動は、発話記録とVTR撮影で記録した。学習者に対する毎時間の形成的授業評価の調査を行った。分析は高橋健夫らの研究に基づいて行った。3.研究成果:形成的授業評価と期間記録により、柔道もダンスも評価の高い授業と認められた。専門家の観察により、技能的な成果も十分であると認められた。抽出授業におけるグループ活動は、柔道、ダンスとも、身体活動を伴いながら行われ、教師のかかわりは頻繁であった。柔道では、学習者の発話を拾いながら多様な視点からひとつの方向の原則原理に導くような問いがかけられ、教師が後押しした意見が最終発表内容に生かされている場合が多かった。肯定的フィードバックが矯正的フィードバックの2倍であった。ダンスでは、極限をひきだしつつ各グループを多様な方向に広げる問いや、特に矯正的、肯定的フィードバックが半数ずつ行われていた。指導者の専門種目であるダンスの方が助言は具体的であった。共通課題から多様に広げる方向を持ったダンスと、技能を集約して身につける柔道、どちらも、技能のポイントを教師から教えるだけでなく、学習者が探究する活動を保証し、発表しあい、多様な視点を認めていく指導により、満足感と上達のある学習になると推測できる。
著者
小石 かつら
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

現在では演奏会の開始音楽として「演奏会用序曲」は一般的である。しかし、そもそもオペラの開始音楽であった「序曲」が、聴衆を惹き込むプロムナードとして「演奏会」のオープニングに用いられはじめ、次第に単独作品「演奏会用序曲」として作曲されるようになった経緯は、現在まで明らかにされてこなかった。また、「演奏会序曲」というジャンルが生み出されることになった社会的、文化的背景についても明らかになっていなかった。本研究では、ライプツィヒの演奏会記録を用い、演奏会用序曲の演奏状況を調査し、今日とは全く違う状況であったことを明らかにした。また、当時の出版目録を調査することによって、家庭での演奏会用序曲をはじめとするオーケストラ作品の受容も明かにし、演奏会用序曲の位置づけを試みた。これらを背景に、メンデルスゾーンの「演奏会用序曲」の中から、一番作曲時期の遅い2作品である《静かな海と楽しい航海》と《美しきメルジーネの物語》を取り上げ、詳細な成立史をまとめた。また、個々の作品の改訂に関して、楽曲分析をおこなった。このうち、《美しきメルジーネの物語》について、日本音楽学会の全国大会において発表した。2月には、研究成果をベルリン工科大学音楽学研究所にて発表すると同時に、ベルリン国立図書館音楽部門所蔵の書簡を用い、演奏会用序曲の受容について調査を行い、研究の全体を補完した。
著者
中澤 哲夫 別所 康太郎 坪木 和久 斉藤 和雄 榎本 剛 原 昌弘
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

2008年に行った航空機からの台風直接観測による進路予報へのインパクトについて調査を行った結果、ターゲット観測の予報改善効果が確認できたものの、台風第13号と第15号の二つの台風での限られた観測のため、有効性を十分に確認することまでは至っていない。高い感度領域でのデータ同化が、必ずしも予報精度の改善へ寄与していない事例のあることもわかった。台風周辺での観測のインパクトについては、数値予報の成績がよい気象庁やヨーロッパ中期予報モデルなどでは改善率が小さく、逆に米国のモデルなど通常の予報成績があまりよくない場合に改善率が大きいこともわかった。また、台風中心付近のデータをどのように同化システムに取込むかどうかによって予報精度が大きく影響されることが明らかになった。
著者
大庭 一郎
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、経営学の組織論と人的資源管理の理論を活用しながら、日米の公共図書館における専門的職務と非専門的職務の区分について分析・考察し、日本の公共図書館における新しい職員制度のあり方を解明することである。研究の結果、日米では労務管理と公務員制度に違いがあるが、図書館の専門的職務と非専門的職務を区分し、専門的職務とそれに必要な専門的知識を明確にし、図書館員が専門的職務に専念できる体制を整備する必要があること、が明らかになった。
著者
谷垣 勝己 野末 泰夫 山中 昭司 榎 敏明 木村 薫 寺内 正己 有田 亮太郎
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

総括班は、配列ナノ空間を利用した新物質科学の企画・調査研究報告書"配列ナノ空間を利用した新物質科学:ユビキタス元素戦略"ならびにH19年度の領域研究申請書をもとにして、H19年-23年の5年間に渡り本格的な研究体制の下で十分に審議して重点課、題を決定し、遂行してきた。また、現在の状況で進めるべき研究を審議して、遂行可能な研究を効率的に進めてきた。H20年度-H21年度、H22年度-H24年度の2回に渡り、採用された公募研究班を加えた研究者と連携して研究を国際的に発展させると共に、領域研究を効率的に推進するために、総括班会議ならびに年2回の領域会議を開催して、現状を把握するとともに今後の研究計画を議論してきた。H23年度の研究で本領域は5年間の研究活動を終結する事ができた。H24年度は、5年間の特定領域研究のまとめ年となる。そこで、本領域研究では、総括班を中心とした5年間の研究計のまとめを行うために、5年間に得られた研究内容のまとめを行うとともに、将来の研究活動につながる活動をした。特に、今年度は昨年度の年度末に開催して特別研究会を中心としたNewsletterを刊行するとともに、5年間の研究活動を総括した報告書を編纂する事が主な事業であった。そのために、研究計画班に属している研究者の方と連絡を密にとるとともに、5年間に渡り総括班ならびに研究計画班の研究を外部から眺めて助言ならびに指導を頂いた本特定領域評価委員の方々とも連絡をとり、5年間の研究成果をまとめる報告書を発行した。また、本領域研究の今後の活動につながる議論などを行い将来の研究発展に備えるための調査ならびに会合をもった。
著者
高橋 修 真山 茂樹 松岡 篤 竹村 明洋 真山 茂樹 松岡 篤 竹村 明洋
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

一般に,生きている放散虫類は共生藻をもっている.それらは黄緑色ないし黄褐色の微小な球状で,そのサイズは3~10マイクロメータの大きさである.共生体を持っている現生の放散虫類の大部分が共生体から光合成によって固定された炭素の供給をうけ,貧栄養環境下でその共生関係を維持している.この研究では、Euchitonia elegans (Ehrenberg), Dictyocoryne truncatum (Ehrenberg),およびSpongaster tetras Ehrenbergの分子系統および超薄切片観察により,Dinoflagellates、chlorophytes、およびhaptophytesなどの藻類がこれらの放散虫に共生していることを特定した.そのうえ,これまで共生藻をもたないとされていたDictyocoryne profunda Ehrenbergの表面に,数多くのシアノバクテリアが共生していることを明らかにした.本研究の結果,異なった種の放散虫は異なった共生体を持ち,それらは強い特異性もつことを示した.もし,仮に同じ放散虫が異なった藻類を複数,共生体として持つならば,それは選択の柔軟性があることを示すかもしれない.しかしながら,現在の結果はこの仮説を否定する.これらの間の柔軟性の欠如は,放散虫に共生体の認識と選別ための一般的なメカニズムがある事を示すものと考える.
著者
竹井 英文
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

今年度の研究は、これまでと同様、織豊政権による全国統一過程に関する研究、および戦国・織豊期城郭の基礎的研究を継続すると同時に、基礎史料の調査を重点的に行った。今年度活字化された成果は、以下の通りである。①「岩付太田氏と難波田城」(黒田基樹編『岩付太田氏』岩田書院、2013年5月)は、以前活字化された論文を再録したもので、東国城郭の基礎的研究の一環である。黒田基樹編『北条氏年表宗瑞・氏綱・氏康・氏政・氏直』(高志書院、2013年8月)のうち、②「天正十年~天正十八年」、③「コラム 北条氏の城郭その後」を執筆した。②は、拙著『織豊政権と東国社会』(吉川弘文館、2012年)の内容を踏まえて、より政治史の流れを意識して通史的に叙述した。③は、移行期城郭論の方向性を論じた。④「館山市立博物館所蔵「里見吉政戦功覚書」の紹介と検討」(『千葉大学人文研究』第43号、2014年3月)は、移行期政治史に関わる史料の全文翻刻と内容紹介・検討したもの。⑤「文化財講演会発表要旨 戦国前期の東国と史跡深大寺城跡」(『調布の文化財』第49号、2013年3月)は、2012年10月に行った同名の講演会の要旨である。⑥「2013年度歴史学研究会大会報告主旨説明 中世史部会 中世における地域権力の支配構造」(『歴史学研究』第905号、2013年5月)は、大会報告の主旨説明文である。⑦「戦国期(関東・甲信越・東北)」(『史学雑誌2012年の歴史学界―回顧と展望―』第122編第5号、史学会、2013年5月)は、昨年度の戦国期研究を整理・紹介したもの。⑧「書評 黒田基樹著『敗者の日本史10小田原合戦と北条氏』」(『織豊期研究』第15号、2013年10月)は、本研究に深くかかわる黒田氏著書の書評である。その他、受理された研究(研究ノート)として、⑨「真田と上杉を結んだ道―戦国・織豊期の沼田と会津―」(谷口央編『関ヶ原合戦の深層(仮)』高志書院、2014年5月刊行予定)がある。
著者
福島 茂
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1980年代後半以降、クアラルンプル大都市圏とバンコク大都市圏の二つのアセアン大都市圏はグローバル経済と国内経済を結ぶ結節点となり、その産業経済構造と社会構造を大きく変容させていく。大都市圏郊外部では製造業集積、工場労働者や新中間層の拡大と核家族化、モータリーゼーション、郊外住宅開発や商業開発は一体的なダミナミズムのなかで生み出され、郊外都市社会とそのライフスタイルを形成してきた。急速な居住形態の変化は住宅需給構造の変化に起因している。就業構造のフォーマル化が居住形態のフォーマル化を促していった。就業構造のフォーマル化と教育水準の向上は若年層から起こり、しかも、都市圏人口の拡大はこうした若い世代を中核としている。これが住宅需要構造を一変させた最大の理由である。居住形態の急速な変化は量的に圧倒する若い世代の住宅需要とそれに対する住宅供給によるものである。一方、住宅需要の質的な側面に目をむけると、両都市圏とも学歴による職業・職階の階層化がなされており、これが世帯所得と住宅格差につながっている。クアラルンプル大都市圏では中学歴化が進んだ段階でグローバル経済化に接合したのに対して、バンコクでは初等教育水準の労働力が圧倒的に多かった。バンコクの低学歴層の賃金上昇は抑制され、低学歴層の住宅取得をより難しくした。所得格差を住宅格差に直裁的に結びつくことを抑制する、あるいは低所得者層の居住水準を向上させるメカニズムには、(1)公共住宅政策(補助政策)・住宅市場介入策(リンケージ政策)、(2)賃貸住宅市場、(3)住宅市場動向における購入のタイミング、(4)住宅ローンによる過去からの補助金、(5)コミュニティ改善という5つのシステムが確認される。クアラルンプルとバンコクではそれぞれメカニズム(1)(3)(4)、メカニズム(2)(4)(5)が働き、住宅水準の底上げに寄与している。
著者
佐藤 みほ
出版者
東北大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、思春期の子どもたちの幼少期における家族の習慣と現在の家族機能、学校帰属感覚、学校充実度及び精神健康との関連を検討することである。山形県立X高等学校、福島県立Y高等学校、上山市立Z中学校に在籍する2010年度入学生を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した。調査の結果、Z中学校の男子を除いた対象者に対して、幼少期の家族の習慣の形成度は現在の学校帰属感覚に有意に関連することが認められた。
著者
浦 雅春 石光 泰夫 小林 康夫 杉橋 陽一 河合 祥一郎 高橋 宗五
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究は既存の国や文化の枠を超えてますますクロスオーバー化する現代の演劇の諸相を歴史的淵源にさかのぼって分析するとともに、近年著しい成果をあげているインターディシプリナリーな分析装置を手がかりに多角的に演劇の表象システムを再検討することを目指したものである。年度ごとの研究成果を記せば、以下の通りである。平成9年度においては、まず研究の端緒として広くヨーロッパ近代演劇の成立にかかわる各国の演劇理論を再検討し、個々の演劇理論が具体的にどのような舞台表象とつながりの中で発展してきたかを解明した。平成10年度には、「身体論」と「空間論」の観点から演劇の表象システムを考究した。おのおの文化に固有な身体観や空間意識がいかなる形式を演劇に与えるか、また逆に演劇という表象システムが演劇固有の身体や空間を形作ってきたか、その相互のダイナミズムを理論化した。平成11年度には、精神分析の立場から演劇に分析を加えた。たんに戯曲というテクストを精神分析的に解剖するのではなく、演劇と精神分析がきわめて類似した表象システムであることを分析し、演劇の中でヒステリー的身体がいかに抑圧され、また解放されてきたを歴史的に解明した。最終年の平成12年度には、これまでの研究成果の取りまとめの段階として、演劇という表象システムの歴史的変遷を総括した上で、演劇と他のメディアの相互作用、個別身体論や空間論との交叉から演劇のインター・カルチャー的本質を抽出し、演劇理論の新しいパラダイムを構築した。
著者
吉岡 章 嶋 緑倫 杉本 充彦 松本 雅則
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

心筋梗塞や脳梗塞をはじめとした致死的な病的血栓症は多彩な要因で成立するが、生体防御に本来必須である止血機構が発症トリガーになると考えられている。止血機構は血小板粘着、凝集相と血液凝固相の2つが協調的に機能して成立するが、興味深いことに各々の相で中心的役割をはたすvonWillebrand因子(VWF:血小板粘着、凝集)と第VIII因子(FVIII:血液凝固)の2分子は生体では複合体を形成して存在することが知られている。本研究では古典的な血小板生物学や血液凝固学の枠組みを越えた視点で、第VIII因子/VWF複合体の包括的な血栓促進機能を生理的血流下で解析し、この複合体の適正な制御による新しい抗血栓症戦略の構築を目標とした。(1)第VIII因子の制御:我々は、強力な生理的線溶因子であるプラスミン(Plm)の第VIII因子制御機能の解明をおこない、PlmがFVIII活性を初期段階で約2倍上昇させ、その後速やかに低下させることを明らかにした。これらの知見で、今まで注目されていなかった凝固系と線溶系の密接なリンクが判明した。(2)VWFの制御:VWFの生物学的機能に大きく関与するマルチマーサイズの制御はADAMTS13がつかさどっているが、今回、ADAMTSI3によるVWF切断活性発現メカニズムを生理的な前血流動状況下で解析した。その結果、ADAMTS13は高ずり応力下での血栓形成現場でVWFを切断し、リアルタイムにVWF機能ならびに血栓成長を制御していることが判明した。このADAMTS13のVWF切断メカニズムはずり応力依存性であり、血流に直接暴露される血栓外表面部に優先的であった。今回明らかとなったADAMTS13のVWF切断メカニズムは、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の病因論を明確に説明するのみならず、止血機転が機能した後に血管閉塞のみを特異的にブロックするユニークなものであり、止血機能と抗血栓機能とが両立する新世代型の抗血栓症戦略の可能性を示唆する。
著者
嶋本 伸雄 十川 久美子 永井 宏樹 HAYWARD Rich CHATTERJI Di
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本研究の最大の発見は、バクテリアにおいて初めてプリオン様の調節機構を発見したことである。この意外な発見のため、主要な努力をこのテーマに注ぎ込んだ。転写の大部分に関与する主要転写会誌因子の動態は、病原菌を含むバクテリアを制御するために重要である。大腸菌の主要転写会誌因子σ^<70>因子の細胞内の動態を観察するために、大腸菌のクロモゾーム上のσ^<70>の遺伝子(rpoD)を破壊した菌株を昨年度作製した。この株を利用して、プラスミド上の遺伝子の発現を制御することによって、野生型変異型のσ^<70>の細胞内量を調節した。この結果、σ^<70>は、高い増殖温度や増殖後期に、αヘリックスからβ構造の転移を伴うアミロイド繊維を形成して、転写の活性を低下させ、マイナーσによる転写パターンに切り替えることが明らかになった。アミロイド繊維を形成しやすい変異株、しにくい変異株に置き換えると増殖温度が変化したので、σ^<70>が大腸菌の分子温度となっている傍証を得た。また、σ^<70>の細胞内濃度を変化させながら観察すると、熱ショック遺伝子の定常的発現量と誘導的発現量はともにσ^<70>の存在量に反比例したので、熱ショックσとのスイッチングとアミロイド生成との関係を証明した。また、20年来謎であった、RNAポリメラーゼのωサブユニットの機能を明らかにした。ω欠損株は、野生株と同じ表現型を示すが、コア酵素には、シャペロニンGroELが結合していた。GroELを除いたコア酵素σ^<70>は結合することができず、活性が無かった。つまり、ωサブユニットはコア酵素の成熟因子であり、これを欠く細胞においてはGroELがその役割を代行することが明らかになった。σ^<70>のアミロイド繊維を含む封入体を可溶化する必要から、高濃度のグリセロールを用いた可溶化法を開発した。この手法を、各種生物の蛋白質を大腸菌で量産したときにできる封入体に応用し、8-200倍の改善を観察し、その一般性を証明した。
著者
山岡 健
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

1. 静岡県浜名郡雄踏町の青年団の創立は、明治43年2月11日である。村立雄踏実業補習学校卒業生と小学校卒業生を中心として、宇布見全体を統括した青年会が組織された。この青年団は昔から活動が活発で、現在(平成10年度)でも8支部ある。スキー教室・敬老会・浜名湖クリーン作戦・納涼祭・町内水泳大会・静岡県青年祭・三嶋神社祭典・町民体育祭・粗大ごみ回収・浜名郡青年学級などの行事を開催したり、参加したりしている。2. 長野県の上久堅村(現材の飯田市)の小野子青年会は、春(4月)と秋(10月)の神社(小野子諏訪社)の祭礼を取り仕切ることが、大事な仕事であった。それで、「祭事青年会」とか「お祭り青年」とも呼ばれた。青年会はステージを造って、男女一緒に芝居や舞踊などの余興をした。その池、盆踊りをしたり、集落の苗代田に消毒して回ったり、桑畑の手入れをしたりした。いわば、地域の奉仕活動をしたのである。3. 「若者組」は、伝統的文化に基礎づけられた独自のシステム特性が見出される。すなわち、若者集団の内部秩序は、「年輩序列」の原理により、厳しく統制されている。4. 「日本型システム」の特性、(1)日本型システムの人間的基盤は、「関係体」としての「間人」という新たな人間モデルに求められる。(2)「間人主義」の価値観は、「相互依存主義」、「相互信頼主義」、「対人関係の本質視」である。(3)日本社会の伝統的な基層をなす社会システムは、「間人」と呼ぶことが適切である「関係体」を成員とし、彼らに全面的な帰属と生活の場を提供する、高度に自律的・自立的な組織である。5. 「間人主義」の価値蜆が、「若者組」のシステム特性と、どのように関わるのか?このことについて、今後、分析・検討しなければならない。
著者
山崎 博子 本多 一郎 板井 章浩 白岩 裕隆
出版者
独立行政法人農業技術研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ジベレリン(GA)およびGA生合成阻害剤(UCZ)処理がネギの分げつ発生に及ぼす影響を調査した結果、分げつの発生はGA処理で促進、UCZ処理で抑制され、UCZによる抑制効果はその後のGA処理によって打ち消された。分げつ性の異なる複数のネギ品種について、内生GA濃度、GA関連遺伝子の発現量およびGAに対する感受性を調査した結果、分げつ性と内生GA濃度との間には正の相関はなかったが、GA処理による分げつ促進作用は、分げつ性の強い品種ほど強く発現した。これらの結果から、GAに対する感受性の違いがネギ品種の分げつ性を決定する重要な要素となっている可能性が考えられた。
著者
小城 勝相 市 育代
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

メタボリックシンドロームでは脂質代謝が重要であり、特にセラミドが重要な役割をもつことがわかった。シークワーシャーに含まれるノビレチンという物質が脂質代謝異常に関与するタンパク質の発現に影響を与え、メタボリックシンドロームを予防する可能性を見出したが、今後はこのような脂質代謝に影響を与える食品成分が重要であることがわかった。
著者
近藤 暁子 藤本 悦子 山口 知香枝 松田 麗子
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

大腿骨近位部骨折で手術を受けた患者のアウトカムに影響している看護援助として、早期離床を促す声掛けを行っていた場合は合併症の発生率が低く、荷重の許可が出た後、荷重をかけることの必要性の説明や、荷重をかけるよう声掛けを行っていた場合は、退院時の歩行能力のみならず、術後 3 カ月後の歩行能力が高かった。看護師がリハビリテーションにかかわることで、患者のアウトカムを向上させることができる可能性が示唆された