著者
富田 正弘 湯山 賢一 永村 眞 綾村 宏 藤井 譲治 大藤 修
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、作成年代の明記のない紙を素材とする文化財(文書・典籍・聖教・絵図)の年代推定について、非破壊調査である光学的観察によって行う方法論を確立することである。そのため、これらの文化財特に文書の原本の料紙を所蔵機関に出向いて調査を行った。その主なものは、東寺百合文書(京都府立総合資料館)・上杉家文書(米沢市上杉博物館)・東大寺文書(東大寺図書館)・醍醐寺文書(醍醐寺)・東福寺文書(東福寺)・津軽家文書(国立国文学研究資料館)で、合計1万点ほどの調書を採った。また、前近代の文書等の料紙について、本研究グループが推定した製法で実際にその紙ができるのか確かめるために、高知県紙産業技術センターの協力を得て、大高檀紙の吊り干し製作等、前近代文書料紙の復元製作実験を行った。さらに、中国唐代以前の紙と日本の奈良時代のそれとの繋がり、宋代以降の紙と日本のそれとの関わりを考えるため、中国・韓国を訪問し、文書・聖教の料紙を調査した。その結果、まず成果として確認できたことは、前漢時代の紙は文字を書く素材としては未熟であるが、繊維を水中に拡散させ簀で漉き上げるという製法は製紙と同じ技法であること、蔡倫以後の紙は筆記用の素材として優れたものであること、宋代以降の宣紙・竹紙の白さと滑らかさは江戸期の製紙に与えた影響が大きいと思われること、等を確認できた。日本の文書等料紙の変遷としては、奈良時代の麻紙・楮紙、平安時代から南北朝時代の檀紙・引合、室町時代の杉原紙・強杉原、桃山時代から江戸時代の大高檀紙・奉書紙・美濃紙、南北朝時代と戦国時代の斐紙、戦国時代以降の椏紙等のそれぞれの時代の特徴的な料紙を捉えることができた。また、戦国時代の関東武士の発給文書の料紙は前時代に対し特異であり、それが江戸時代の製紙に与えた影響については、改めて考える必要があることが分かってきた。これらの成果は、料紙の時代判定の基準として充分に使えるものである。
著者
印東 道子
出版者
北海道東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、日本統治時代のミクロネシアから持ち帰られ、日本の研究機関に所蔵されている考古遺物の資料調査を行い、その結果を英文で刊行することを目的として行われた。昨年度は資料調査にあて、東京大学総合研究博物館および国立民族学博物館にて、所蔵遺物のカタログ化、実測図の作製、写真撮影、調査に関する文献調査などを行った。これらは、東京大学の長谷部言人、八幡一郎、松村瞭などの考古学および人類学研究者が、昭和初期にミクロネシアの島々で数回にわたって学術調査を行ったときに、発掘、表面採集、あるいは民族標本として採集されたものである。今年度は、咋年度得られた実測資料および写真資料を、カード型ソフトを使ってデータベース化し、英文の資料集成の刊行を行った。遺物は地域別に、西から東へと並べ、個々の採集年や採集者のデータおよび遺物にかんするコメントも書き加えてある。とくに、ポーンペイのナンマタール遺跡およびコシャエのレレ巨石遺跡からの発掘品は貴重である。これら、日本所蔵のミクロネシアの遺物に関する諸外国の関心は高く、とくに各島に設置されている文化財保護委員会からは、この研究成果の公表方法に関しての問い合わせがすでによせられている。
著者
末次 祐介
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、超音波モータに利用されている金属体表面に励起される超音波(表面波)を応用して、マイクロマシン等にも適用可能なマイクロ(極小)気体・真空ポンプを開発研究することが目的であった。当初の計画に従い、市販の超音波モータを選定・購入し、ポンプ(モータ素子)を収めるケース内に設置してその基本特性を調べた。その結果、[1]液体については、モータの回転方向(つまり表面波の進行方向)に液体が輸送されること、[2]気体(空気)については、モータ駆動中ケースに開けた小孔から気体が流出すること、が確認され、液体・気体の輸送が可能である感触が得られた。しかし、[1]市販の超音波モータでは表面波発生部が平面ではない(モータ専用のため)、[2]ポンプケースに隙間が多い(空気が漏れる)、等の問題から"ポンプ"としての性能を確認するまでには至らなかった。そこで、超音波モータ製作会社とも相談し、表面波発生部が平面である特殊なモータ素子を製作し、そのモータ素子に密着するケースも新たに製作して、再度動作確認試験を行うことにした。しかし、モータが特殊であるためその製作に時間がかかり、また、ケース設計にも多くの課題があったことから、平成21年度内には実験結果を出すことはできなかった。しかし、現在、特注モータおよびその駆動電源、新ポンプケース、そして真空ポンプとしての試験用の真空チェンバー、真空ゲージ等を購入しており、引き続き基礎実験を続ける準備は整っている。これらを使用して、今後も本マイクロポンプの開発研究を継続していく予定である。
著者
山田 房男 槙原 寛 岩田 隆太郎
出版者
日本大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

針葉樹一次性穿孔性甲虫類の中で個体密度変動が顕著と考えられるモミ属・トウヒ属害虫のオオトラカミキリXylotrechus villioni Villardについて,その[1]分布,[2]枝の食害,[3]幼虫の形態,[4]天敵,[5]誘引捕獲法の開発を中心に調査を続行した。1.分布:樹幹上の食痕の確認により,紀伊半島における分布を新たに明らかにした。また本種模式産地京都府産の個体を得て,種全体の亜種分類への足掛りを得た。2.枝の食害:長野県松本市扉鉱泉国有林(混交林)のウラジロモミ林分,山梨県鳴沢村富士山麓二合国有林ウラジロモミ造林地,などにおける枝に対する食害様式の調査を行なった。その結果,産卵はむしろ枝に対するものの方が幹に対するものより多く,またその大部分が幼虫期に死亡もしくは幹部へ移行し,羽化時には枝内からはほとんど姿を消すことが示唆された。3.幼虫の形態:本種幼虫は未だ知られていず,今回山梨県鳴沢村富士山麓二合国有林ウラジロモミ造林地において,同樹種から幼虫を複数頭得てその体表面微細形態を調べ,近似種すべてとの違いを明らかにした。4.天敵:本種の個体数の制限要因としては,寄生蜂・病原菌・宿生樹の樹液などが考えられるが,個体密度が極端に低いためその特定は困難を極める。しかし本種幼虫の枝における食痕が,キツツキ類の穿孔と見られるものによって終止しているものがかなりの数見られ,このことから,これらの穿孔性鳥類が天敵としてかなり重要であることが示唆された。5.誘引捕獲方法:市販甲虫誘引トラップ(カイロモンを装着)を用い,成虫出現期の夏期に神奈川県清川村札掛一の沢考証林(混交林)のモミ林分において誘引捕獲調査を実施したが,林分全体での個体密度が極端に低いためか,これまで同様捕獲には至らなかった。
著者
濱本 真輔
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

これまで、選挙制度改革の議員や政党に対する影響を検討している研究では、選挙制度と議員・政党に関する分析枠組みとそれに基づく体系的な実証研究が不足しており、選挙制度改革の評価も分かれている。これに対して、本研究は自民党議員を取り巻く環境、議員の認識と行動、政党組織を選挙制度改革前後で比較し、選挙制度改革の効果を網羅的に検証するものである。研究実施計画(平成21年度)では、前年度の資料収集およびレビューに基づいて、政党組織に関する論文を執筆することであった。具体的には、結党以来の自民党の党改革を4つの期間に分けて分析し、論文を執筆する予定であった。しかし、資料収集やレビューの不足もあり、リクルート事件以降の政治改革の過程と選挙制度改革後の党改革を比較した。分析では、選挙制度改革という制度変化だけでは広範な組織変化が発生しなかったことを明らかにした。また、組織変化の方向性を探る上でも、制度条件だけでなく、議員が並立制を受容し、(1)議員-政党間の目標の共有部分が拡大したこと、(2)選挙での敗北と世代交代などによって、小選挙区制に見合った政党組織改革(公募制度の導入、シンクタンクの創設、メディア対策)が進展していることを指摘した。前年度までの分析を含め、選挙制度改革は議員の認識や行動、政党組織改革に影響を及ぼし、自民党の集権化を促す要因となっていること、またその持続性を支持する結果が出ていることを明らかにした。
著者
御堂岡 潔
出版者
東京女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

地球社会的諸問題に対して、日本・日本人がグローバルな貢献をすることが期待されている状況から、日本人にとって、偏狭な自国意識から脱却し、グローバリスムにのっとった世界意識を養い、さらに、その世界意識と両立する適切な自国意識を培うことが、必要と考えられる。本研究の目的は、日本人の世界意識と自国意識のダイナミクスを、その相互関連をとらえつつ、かつ歴史的経緯を踏まえながら、意識調査により体系的に把握し、日本人にとって好ましい世界意識、自国意識のあり方とそこへといたる過程を、理論的・実証的に探究することにある。上記目的を達成するために、理論的検討を随時進めた。実証的研究としては、平成7年度は学生とその父母を対象に予備調査をおこない、(1)調査の枠組みの洗練、(2)世代差の検討、(3)世代間伝達の可能性の検討をおこなった。この予備調査の結果と理論的検討を踏まえ、平成8年度は、無作為抽出法により選ばれた一般個人合計1,550名を対象に、本調査(全国調査と首都圏調査)を実施した。その結果から、(1)日本人の世界意識と自国意識のダイナミクスの実態把握が明らかになり、偏狭な意識の存在が確認された。また、(2)首都圏調査から、首都圏の人々の世界意識と自国意識の時系列的変化が検討され、「国際化」「地球社会」などが唱道されてきたにも関わらず、この10年間で、偏狭な意識が薄れているということはなく、むしろ部分的には強まっていることが明らかとなった。
著者
田崎 美弥子 山本 幹男 小久保 秀之 小林 宏
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、喜怒といった対立する情動が混在するNon-Dialecticな東洋圏と混在しないDialecticな西欧文化圏において顔表情認知過程において差異があるかどうかを検証することである。本研究は4つの実験から構成された。実験1では、3名ずつの日本人と中国人との顔表情認知を喜び、怒り、驚き、軽蔑、嫌悪、恐れの顔表情と喜びを基点としてそれぞれの情動への変化する過程の中間表情を示す26枚顔表情刺激を使って、カードソーティングを実施した。また中国人学生には面接インタビューを行った。実験2では、同じ刺激材料を用いて、139名の日本人学生にスクリーンで刺激材料を8秒、白紙を3秒提示することを交互に26回繰り返して、その顔表情認知実験を行った。正答率の分析し、同じ日本人でも日本人の顔表情で正確に識別されるのは、笑い顔であり、「喜び、驚き、怒り」は「恐れ、嫌悪、軽蔑」より識別されやすいことがわかった。また実験3では、日本人と中国人に近赤外線、分光血流計OMN-3000を使い、実験1と2の刺激材料を提示したときの脳の血流変化を測定した。その結果、中国人は右前頭前野腹外側部の血流増加が顕著に認められた。日本人は相対的に血流増加が目立たず、課題負荷が少ないことが推測された。実験4では人種的にはヨーロッパ系であるものの情動表出が明確なラテン系の文化圏にあるブラジル人にとってどのように日本人の顔表情変化が認知されるかを検証した。その結果、喜怒哀楽が激しいブラジル人にとっては、日本人の笑い顔と驚き顔以外は識別が不可能であることがわかった。本研究から、笑い顔はともかくほかの曖昧な顔表情は同じ日本人にとっても難しいこと、さらに同じNon-Dialecticな文化圏であるアジア圏の中国人にも笑い顔と驚き顔以外は識別が難しく、Dialecticな文化圏であるブラジル人にとっては同じ結果が示された。以上から、日本人の曖昧な顔表情は特にほかの文化圏では極めて識別が難しく日本人の海外でのミス・コミュニケーションの一要因になっているのではないかと示唆された。
著者
長谷川 武光 細田 陽介 杉浦 洋
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

現在の計算機上での数値計算は倍精度(10進約16桁)で行われる。工学や自然科学の分野で高精度計算の要求が高くなっている。そこで本研究では8倍精度(10進約72桁)で数値計算を簡便に行えるオンラインシステムの構築を目指した。本システムはWeb上での8倍精度計算のための高精度電卓のような機能を提供する。さらに、専門家向けには通常の倍精度計算でのC言語プログラムを受け付けて8倍精度計算結果を提示する。
著者
木原 活信
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、ハーバード大学教授から知的障害者施設のアシスタントに転じた思想家、神学者、福祉実践家であるヘンリ・ナウエンの「創造的弱さ」(「スピリチュアルな生」)という概念をとりあげ、その思想と実践を研究した。彼は、パワーと強さに象徴される現代社会の逆説として「創造的弱さ」を提起したが、そこに新しい福祉の発想転換の可能性がある。援助する側の「弱さ」をネガティヴなものとして隠蔽するのではなく、むしろ積極的に開示・活用していこうとする哲学(創造的弱さ)こそが彼の社会福祉思想の原点であると結論づけた。
著者
望月 俊男
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

本研究では,高等教育におけるe-Learningの導入において一般的な,対面コミュニケーションとCMC (Computer-mediated Communication)が併用される教育場面を対象に,(1)対面協調学習における協調学習環境のあり方を検討し,学習者が参加しやすい学習環境をデザインする,(2)協調学習の学習活動の状態を示す学習環境を構築する,(3)協調学習の評価法を開発する,(4)これらの成果を実践的に評価する,ことを通じて,対面コミュニケーションとCMCの統合的な学習環境のあり方を実践的かつ理論的に提示することを目指している.平成15年度の研究では,これらの研究課題について以下の成果が得られた.(1)e-Learningにおける協調学習には,対面学習機会が強く影響しており,対面コミュニケーションの機会に学習者が学習内容を十分に理解できるような学習環境が必要であることが示された.それに際し,学習者全員が議論の内容・過程を理解し,誰でも編集可能な,オープンな学習環境を提供することが有効である可能性を示した.(2)e-Learningにおける協調学習では,学習者がコミュニケーションや分業等の学習の状態について振り返りを行えるような自己評価の支援環境を提供する必要性があることを,理論的に整理した.(3)(2)の結論をもとに,テキストマイニングの技術を用いて学習者コミュニケーションの内容を可視化する協調学習の評価方法を提案し,その有効性を予備的に検証した.(4)この協調学習の評価方法をもとに,学習者間のコミュニケーションを自己評価しリフレクションをするためのCSCL環境を開発した.そして,授業実践において,そのCSCL環境を用いて,学習者がコミュニケーションを振り返りながら,多様かつ活発に議論に参加できることを確認した.これらの研究成果は,学会論文誌主著3本,書籍分担執筆2冊に集約し,公刊した.
著者
菊池 和子 高橋 有里 石田 陽子 三浦 奈都子
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1.調査の同意を得た成人を対象として、(1)汎用超音波診断装置FFソニックUF-4100A(以下エコー)リニアプローブ7.5MHZによる筋肉内注射部位の三角筋部(肩峰3横指下部)、中殿筋部(ホッホシュテッター部位、クラークの点、4分3分法部位)の皮下組織厚測定、(2)身長、体重、体脂肪率測定、BMI算出、(3)皮下脂肪計(ヤガミMK-60)による肩峰3横指下部と上腕部背面の皮下脂肪厚の測定を行った。対象者数は男性174名、女性156名である。エコーによる皮下組織厚(cm)の平均は肩峰3横指下部で男性0.59±0.18、女性0.71±0.23。中殿筋部では65歳以上と18〜64歳で有意差がありホッホシュテッター部位の平均は男性65歳未満0.79±0.31、65歳以上0.58±0.28、女性65歳未満1.05±0.41、65歳以上0.76±0.29、クラークの点の平均は男性65歳未満0.85±0.34、65歳以上0.63±0.25、女性65歳未満1.16±0.42、65歳以上0.92±0.43、4分3分法部位の平均は男性65歳未満1.05±0.43、65歳以上0.68±0.30、女性65歳未満1.41±0.48、65歳以上1.20±0.68。エコーによる皮下組織厚と皮下脂肪計による値との間に強い相関関係があり、皮下組織厚を算出する回帰式を求めた。算出された数値以上に注射針を刺入する必要があると考える。2.実験動物(ウサギ)を用いて筋肉内注射用薬剤(プロゲデポー)の安全性を検証した。筋肉内に注射した結果、病巣(炎症、浮腫、筋壊死)は限局する傾向にあったが、皮下注射では広範囲に及んだことから、組織傷害性の強い油性注射液は確実に筋肉内に注射することの重要性が示唆された。3.山形大学医学部内藤輝教授(解剖学担当)の協力を得て解剖実習用遺体を用いて筋肉内注射部位の観察を行った。
著者
春日 直樹 小泉 潤二 中川 敏 栗本 英世 田辺 明生 石井 美保 森田 敦郎 中川 理
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は「社会的なもの」の構築過程をラディカルに再検討して、社会的なものと自然的なものとを同一水準で論じる方法を探求した。「社会」と「自然」が概念と実在としていかに一緒に構築されていくのかを問い、因襲的な二分法を超えるような諸関係と状況について、またそうした状況下でさまざまな存在がいかに生成するかについて、明らかにした。本研究は最終的に、人類学・科学技術研究・科学史・哲学が融合する次元を提供し、それによってあらたな実在の可能性と生成に寄与することを目指した。
著者
野尻 美保子 清水 康弘 CHEN Chuan-ren SHU Jing
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

LHC におけるハードプロセスに伴うジェットや、重い粒子の崩壊からくるジェットの内部構造など、 QCD プロセスに関わる性質に着目し、 LHC での新粒子の発見を確実にする方法を提案した。 特に縮退した新粒子を LHC で発見するために 制動放出を利用する方法や、ジェットの部分構造を利用して,トップの偏極を測定する方法を開発した。またこの方法をもちいて、スカラートップの混合の測定や、暗黒物質の探索可能性について解析をおこなった。
著者
小島 美子 山本 順人 桜井 哲男 八重樫 純樹 山口 修 藤井 知昭 樋口 昭
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

今、急速に衰減または変質しつつある日本の民謡をデータベース化するために、その基礎となる民謡分類法とデータベース化の方法を検討するのが本研究の目的である。I研究課題と研究経過 では、主に次のような研究経過について述べた。最初は通文化的な民謡分類の確立をめざしたが、これには問題が多いこと、また民謡のデータベース化に当たって情報検索に必要な項目を民謡分類は別の次元の問題であることがわかり、さし当たってデータベースの原データとしては文化庁の全国民謡緊急調査の調査票が適切であることがわかったため、これをもとにデータベース構築を考え、4葉の350曲についてのデータの試行作成を行った。IIには4項にわたって以上の経過を裏付ける研究報告を収めた。1日本の民謡分類法 では、日本の民謡分類を歴史的に検討し、文化庁の全国民謡緊急調査の分類法はその一応の帰結であることを明らかにした。2諸民族の民謡分類法 では、ベラウ、ハンガリー、アフリカなどの民族音楽をもとにした民謡分類について検討し、民謡の分類そのものが、それぞれの文化の性格の反映であり、通文化的分類法をたてることは難しいことを明らかにした。3民謡の検索 ではロシヤ、韓国の民謡をもとに、情報探索に必要な項目を検討した。4民謡のデータベース化 では、基本的な民謡データの分析をもとに、データ試行作成に至った諸段階について具体的に説明し、台帳案などを例示した。このようにして一応民謡データベースのデータ試行作成に至ったが、実際には5万曲以上と思われるぼう大な民謡をデータベース化するためには、すべての原データを確保できるかどうか、という問題も含めて、原データの情報をできる限り盛り込もうとするこの案が可能かどうかなど問題点も明らかになってきた。今後民謡のデータベース化についてはさらに共同研究を継続したいと考えている。
著者
石黒 直隆 村瀬 哲磨
出版者
岐阜大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

日本には本州、四国、九州にニホンイノシシが琉球列島にリュウキュウイノシシが生息する。最近、西日本を中心にニホンイノシシの固体数の増加と生息域の拡大が顕著である。それにより、中山間村地域での農作物被害や人的被害が拡大している。本研究の目的は、野生イノシシ中に拡散が懸念される家畜ブタ由来遺伝子の分布と家畜由来感染症の広がりを検出する検査手法を開発することである。さらに、開発した検査手法を用いて、日本に生息するイノシシ中での家畜ブタ由来遺伝子の浸潤動向を調査することである。その結果、以下の成績を得た。また、一部の成績を公表した。1.野生のニホンイノシシと家畜ブタとを区別するマーカーとして、ミトコンドリアDNA(mtDNA)574bpと核GPIP遺伝子多型を改良し、母系遺伝と父系遺伝の両方から家畜由来遺伝子を検知した。2.和歌山県下での現地調査:農作物被害が深刻な和歌山県をモデルに、生息するニホンイノシシ中の家畜ブタ由来遺伝子の浸潤状態を検討した。その結果、2005年と2006年の2年間で129サンプルを調査し、4型のmtDNA(J10,J15,J21,J22)を得たが、家畜由来のmtDNA型は検出されなかった。核GPIP遺伝子型別でもGPIP1,GPIP3,GPIP3aが検出されたのみで、家畜由来GPIP遺伝子型は検出されなかった。3.感染症の抗体価調査:2004年に調査した四国4県のイノシシ血清115サンプルに関して、ブルセラ菌の抗体価を調査した。その結果9サンプルで陽性であり、野生イノシシの中にブルセラ症に感染したイノシシが存在することが明らかとなった。今後、イノシシ肉を食する上で注意が必要である。本研究により、野生イノシシ中へのイノブタの浸潤頻度は、少ないものと考えられる。ただし、全国的にみて、イノシシの個体数は増加していることから今後とも注意深く調査する必要があろう。
著者
大木 裕子 柴 孝夫 高尾 義明 野長瀬 裕二 山田 英夫
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

楽器のブランドは楽器作りの長い歴史の中で形成されてきた部分が大きく、楽器を進化させてきたメーカーは確固たるブランドを築いている。更に必要とされるのは、トッププロの音楽家を囲い込むマーケティング力である。技術経営とマーケティングの相乗効果によって、ハイエンドユーザー向けの信頼性の高いブランドを獲得することが、ニッチな楽器メーカーにとって不可欠な戦略である。ハイエンドを狙うことができない後発のメーカーは、総合楽器メーカーとしてマス市場を狙う方法を取らざるを得ない。
著者
伊藤 毅志
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、棋風を模倣する手法として、以下の2つの手法を提案した。Bonanzaの評価関数の機械学習を利用して、特定の棋士の棋風を偏重させて学習させる手法を提案し、その実装を行った。具体的には、特長あるトッププロ棋士の棋譜を偏重して学習させることによって、その棋風をある程度模倣できることを示した。また、一般的な棋風である「攻めー受け」「重厚-軽快」「直線的-曲線的」などに着目し、それぞれの棋風を色濃く反映しているプロ棋士の棋譜を統計的に分析することで、棋風を形成している特徴要素を特定し、その要素を用いて模倣システムを構築した。
著者
飯田 弘之 吉村 仁
出版者
静岡大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

本研究ではゲーム情報学的な解析によってチェス種(特に将棋種)を相互比較した.顕著な貢献を以下に整理する.(1)原将棋として知られる平安小将棋では,「王金対王」終盤戦のコンピュータ解析によって,盤サイズの進化論的変遷を合理的に説明できた.将棋種の変遷を考察する上で,歴史的文献資料による調査を補佐する重要な役割を担い得る可能性を示した.(2)ゲーム情報学的にゲームを比較するための指標を考案した.探索空間複雑性(search-space complexity)と決定複雑性(decision complexity)の二つの指標に基づいて、ゲームを比較する.前者は,ミニマックス木の最小サイズに相当し,そのゲームの平均終了手数Dと平均合法手数Bに対してB^Dで近似される.後者はD/(√<B>)という指標である.つまり,平均合法手数と平均終了手数のバランスのとれたゲームほどより洗練されている.(3)チェス種は,進化の大きな流れとして,ルールがより洗練される方向へと向かっている.チェス,将棋,象棋でそれが異なる手法で実現されてきたが,それは,歴史的な文化背景と密接な関係がある.