著者
紀平 知樹 浜渦 辰二 大北 全俊
出版者
兵庫医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究課題は、環境問題とケアの問題は相互に独立した問題ではなく、むしろ共通の根をもつものであるという観点から、新たな社会のあり方を模索することを目的としていた。そのために生産志向の社会から定常型社会へ、そして生産へと方向付けられたケアから新たなケアのあり方について検討することを課題としていた。本研究では、定常型社会において、生産活動に対して一定の制約を課すために強い予防原則が必要であることを明らかにした。またケアについては、ケアを支える健康に関する政策、特にヘルスプロモーションの意味について問い直す必要があることを明らかにした。
著者
田代 久美
出版者
宮城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

都市戦略として「子ども・青少年にやさしいまちづくり(CFC)」を成功させている海外の都市を調査したところ、ユニセフが掲げる9つのCFC基本条件を元に行政内の横断的連携体制があり、子ども・若者の参画を地域の大人も支えていた。CFCの導入により地域全体が活性化している。日本で実施するためには、国際的な基準を踏まえつつも、日本の社会システムにあった評価スケールの開発や国内ネットワークの整備などが必要である。
著者
家高 洋
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ドイツの哲学者ガダマーは、理解を「問いと答えの弁証法」とみなした。ガダマーの考察に基づいて、本研究は、まず理解における言語の役割(媒体としての言語)を明らかにした。それから、理解を、言語に基づいた「問いと答えの弁証法」と考えることによって、(看護研究等の)質的な研究の前提と主題が、言語性と意味であることを示した。さらに、哲学カフェという「問いと答えの弁証法」の実践において、この弁証法の具体的なあり方を調査した。
著者
丸山 千賀子
出版者
金城学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

消費者庁の創設により、消費者政策も新しい局面を迎えることになった。そこで、本研究では、新しい消費者政策における消費者団体と企業の役割について、先進諸国との比較をしながらまとめた。海外調査は、アメリカ、フランス、オランダの主要な消費者団体、行政機関、事業者団体や企業を対象として行った。主な研究成果は、消費者政策の変革における消費者団体の態様の変化や最近の特徴、今後の発展といった観点からまとめた。
著者
安達 久博
出版者
宇都宮大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

本年度は、前年度に得られた、共起関係ペアを特徴観点とする特徴ビット・ベクトル間の類似性計算による対象オノマトペの同値類への分割結果を利用し、清音と濁音(半濁音を含む)間との対応関係を分析した。たとえば、「トントン」と「ドンドン」の関係は清音と濁音の違いだけであるが、この二つのオノマトペの基底概念(ものを叩く)は共通と考えることができ、強弱関係の差を提示していることが分かる。一方、同様に「ジロジロ」の基底概念は(ものを見る、観察する)であるが、その清音に対する「シロシロ」はオノマトペとは認定し難いものである。このように、必ずしも清音と濁音相互間で対応するオノマトペが存在するとは限らないといえる。なお、「クンクン」と「グングン」の関係ペアにみられる共通の基底概念は希薄で、別の概念をあらわしている関係ペアがあることが分かった。他にも「フリフリ」が様態を示すのに対して、「ブリブリ」は感情(負の)を示しているように、擬音と擬態の対比があるペアは興味のある結果である。これらの成果は外国人や聴覚に障害を持つ人々が日本語のオノマトペを学習する際に有益な知見を提示することができるデータベースとして機能し、日本語学習支援システムなどに有効利用できると考える。本年度は、この関係を検索・表示するシステムを試作した。検索システムは、オノマトペを含む例文コーパスをデータベースとし、オノマトペを入力すると、対応する例文コーパスを提示する。この例文の提示の特徴はオノマトペの意味を言葉で記述することの難しさを、複数の例文を提示することで、意味(概念)の差を理解させる、単語の見出しに対する、単語の概念見出しと捉えることができる。また、清音(フラフラ)の入力に対して、対応する濁音(ブラブラ)の例文も参照できる構造とすることで、概念の差を明示可能な構造とした。
著者
吉田 豊信 神原 淳 田中 康規 澁田 靖
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009

ウエーハ等価薄膜太陽電池製造を可能とする次世代シーメンス法開発に向け,製造装置や安全性も考慮したプロセスの低コスト化等の技術開発研究と,成膜前駆体としてのクラスターの成長・堆積過程の解明や励起水素原子密度の絶対計測等の学術研究との融合知を礎としたシリコン膜堆積の系統的実験により,シーメンス法の速度論的限界を超えた高歩留まり超高速エピ堆積を実証するとともに,メゾプラズマCVD法の特徴を明確化した。
著者
村松 潤一 柯 麗華
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

中国において日本型自動車流通システムは高く評価されている。本研究は、その背景と実態を中国の自動車産業政策及び自動車流通政策に焦点をあて、日系企業の戦略行動との関係から検討した。それによれば、中国の政策は、第1に日本型自動車流通システムの普及、第2に意図しない差異という重要な変化をもたらした。そして、この意図しない差異には、ふたつの自動車流通システムへの参画及び卸売り機能の外部化が含まれている。
著者
武田 弘資 野口 拓也
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

口腔領域の悪性腫瘍の大半を占める口腔扁平上皮癌については、診断ならびに治療法が着実に進歩しているものの、癌細胞の悪性度や抗癌剤に対する感受性などの多様性がいまだに治療の大きな障壁となっている。また、発癌機構についても不明な点が多く残されている。われわれは本研究において、ノックアウトマウスならびにマウス由来培養細胞を用いた解析により、新規ストレス応答キナーゼASK2が癌の抑制に働く機構を明らかにした。
著者
山川 稔
出版者
独立行政法人農業生物資源研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

昆虫由来抗微生物タンパク質を改変したペプチドが正常細胞には作用せず一部のがん細胞を破壊する機序を明らかにする目的で研究が行われた。改変ペプチドはがん細胞表面のマイナス電荷をもつホスファチジルセリンとペプチドのプラス電荷との静電的引き合いに起因する細胞膜の膜破壊が起きることが証明された。一方、タカサゴシロアリからがん細胞増殖抑制活性を示す新規化合物1,1'-biphenyl-3,3',4-triolが分離・同定された。この物質は既知の抗がん剤とは異なる作用メカニズムを有することを示唆する結果が得られた。
著者
保田 和則
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

微小流路内における流れによって誘起される高分子流体の内部構造変化について調べた。この測定のために独自の光学系を構成し,微小流路内において100μmステップの高い空間分解能で複屈折を測定することができた。また,速度分布も測定した。複屈折は流動による内部構造の変化と密接に結びついているので,複屈折分布と速度分布を知ることで,流動による構造変化を定量的に知ることができた。流れ場として微小円柱まわりの流れと急縮小流れとを取り上げた。その結果,円柱上流部の減速流れ場では円柱に近づくにつれて高分子の分子配向が流れと直交する方向に向くことで,いったん配向の程度が低下するが,円柱のすぐ上流部で高い配向度を示した。それに対し,下流部の伸長流れ場では下流に流れるにつれ配向度が急激に上昇し,内部構造の変化が伸長流れ場に大きく影響されることが明らかとなった。微小領域において光学的測定により流動誘起構造の変化を明らかにしたことはたいへん重要である。次に,ナノスケールの微細繊維からなるバクテリアセルロース(以下ではBCと称す)を分散させた流体の流路内流れについて検討した。4:1の急縮小部を有する矩形断面の流路内における流れを可視化し速度分布を計測した。急縮小部から十分に上流にある位置では,グリセリンは放物線状の速度分布を示すが,BC流体では中央部が平らになったプラグフローに近い速度分布となった。またBCの濃度が上昇すると,さらに台形に近い速度分布となった。また,急縮小部でも同様の傾向が見られた。急縮小部の上流角部に生じる循環二次流れの流れ方向の大きさを調べた。その結果,BC流体ではグリセリンよりも大きな渦となり,またBCの濃度が上昇するとともに渦も大きくなった。これはBC流体の伸長粘度特性に起因する現象であると考えられる。この研究ではナノファイバー分散流体の流動を初めて明らかにした点で重要な結果を得た。
著者
高橋 恭子
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

腸管のマスト細胞及び上皮細胞と腸内共生菌との相互作用の解析を行った。その結果、腸内共生菌がマスト細胞の最終分化過程に影響を及ぼすこと、腸管上皮細胞における菌体認識に関わる遺伝子の発現を調節することが明らかとなった。腸内共生菌によるマスト細胞及び腸管上皮細胞の機能の調節に関わるこれらの機構は、腸共生系の恒常性の破綻に起因する炎症反応を食品により制御するための有用なターゲットとなることが期待される。
著者
王 福林
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度には建物周辺における緑の日射遮蔽や蒸散は,どの程度の省エネルギーが達成できるか,空調システムの屋外機の効率向上にどの程度貢献するのかなどを明らかにすることを目的とする。そこで本年度には,植物の生育が制御しやすいサツマイモの葉を使う水気耕栽培屋上緑化を使用し,緑化による気温低減効果で空調熱源の効率改善にも寄与するようなシステムを構成し,そのシステムの気温低減効果・省エネルギー効果を実測・解析・モデル化した。それらを用いて,北方から南方までの代表都市4箇所において,本システムの省エネルギー効果がどの程度あるかをシミュレーションを用いて確認した。結果,1)水気耕栽培屋上緑化の日積算蒸散量:平均は6.3kg/m2であり,期間最大値は8.3kg/m2であった。既往研究と比較すると,期間最大の日積算蒸散量は潅水のない屋上緑化(セダム)の13.8倍,潅水のある屋上緑化(セダム)の1.8倍にあたり,単木にも匹敵する値であるということがわかった。2)冷却温度差:日射量が十分にある10:00〜16:00の冷却温度差の測定結果は,降雨日を除いた期間の平均冷却温度差は1.3℃であった。これに対し,散水実験日の平均冷却温度差は3.0℃と,約2.3倍になっている。3)冷房熱源の効率向上効果:オフィス用熱負荷標準問題に準じ,簡略化した建物モデルを作成し,札幌・東京・大阪・那覇の四地域にある建物の熱負荷をシミュレートし,提案したシステムが各地域でどの程度省エネ効果を得られるかを検討した。8月1日〜9月30日の期間において緑が成長し,冷却効果を利用できるとし,省エネ効果を試算した。結果,2ヶ月間の積算エネルギー消費量は,効率向上率の小さい空調機のグループが約1%,中のグループが約6%,大のグループが約8%,エネルギー削減できることがわかった。
著者
佐藤 茂 森田 重人
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

カーネーションでは,雌ずいで生成するエチレンが花の老化の「スターターエチレン」として働いている.本研究では,雌ずいのエチレン生成誘導因子がアブシシン酸(ABA)であることを,切り花の寿命の異なる3品種のカーネーションを用いてABA含量の変動,及びABA生合成と作用の鍵遺伝子の発現を調べて実証した.また,開花と老化を制御する薬剤の作用の解析を行い,ピリジンジカルボン酸が,スプレーカーネーションの老化を抑制すると共に蕾の開花を速めること,および本来開花せずに寿命を終わる蕾の開花を誘導することを発見し,この薬剤を「夢の薬剤」として提案した.
著者
大野 かおる レービガー ハンネス 野口 良史 石井 聡
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

オリゴフェニレンビニレンをアンテナとしてZnフタロシアニンをコアとするπ共役デンドリマーとC_60の分子接合系で光捕集電荷分離機構が発現することをTDDFTダイナミクス・シミュレーションにより明らかにした。また、1次元ピーナッツ型フラーレンポリマーの構造と電子状態の関係も調べ、カーボンナノチューブ内に直線分子が自発的に内包されることを示し、化学反応のシミュレーションや光吸収スペクトル計算も行った。
著者
水野 善文 藤井 守男 萩田 博 太田 信宏 坂田 貞二 臼田 雅之 石田 英明 宮本 久義 高橋 孝信 橋本 泰元 高橋 明 松村 耕光 横地 優子 山根 聡 萬宮 健策 長崎 広子 井坂 理穂
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

インドの多言語状況は、時代を通して地域的な多様性だけではなく社会的にも幾つかの層をなしていた。言語の差異を超えて愛好・伝承され続けてきた文学・文芸を対象に、古代から現代まで、多くの言語の各々を扱うことのできる総勢30名以上のインド研究者が共同して研究を進めた。その結果、民衆が自らの日常語による創作から発した抒情詩や説話、職業的吟遊詩人が担った叙事詩、それらをサンスクリット語で昇華させた宮廷詩人、さらには詩の美的表現法が現代の映画作りにも至っている、といったインドの人々の精神史の流れを解明できた。
著者
八島 栄次 古荘 義雄 飯田 拡基 古荘 義雄
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008-06-04

本研究では、未開拓の研究領域である二重ラセン構造を有する分子・超分子・高分子を創製するための一般性の高い方法論の開発、構造と物性との相関の解明、ラセン構造に由来する情報機能(複製、情報の保存)の発現、不斉触媒や光学分割材料等への応用を目指し検討を行った。その結果、人工二重ラセンを介したDNA同様の完璧な鎖長及び配列の認識と複製、不斉の伝搬(不斉増幅)、二重ラセン構造の顕微鏡による直接観察等に初めて成功した。さらに、バネのように可逆的に伸縮する分子スプリングを世界に先駆けて創製するとともに、ラセン構造に由来する実用的な光学分割材料や不斉触媒の開発、メモリーデバイスへの応用にも成功した。
著者
近藤 雅臣 今川 正良 田窪 芳博 西原 力
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

本研究ではBacillus megaterium芽胞殻外層の主成分, ガラクトサミンー6-リン酸(GalN-6-P)多糖と蛋白質について, 外層の形態形成過程での生合成・沈着の両面から検討した. 多糖生合成に関与する酵素, UDP-GlcNAc-4-epimerase(GEP)の合成時期を, 免疫学的方法により調べたところ, T6付近よりその合成が始まりT10でほぼ一定になることが分かった. 芽胞形成後期の中間代謝物の一つがFAB-MSスペクトル, 13C-NMPスペクトルよりUDP-GalNと同定された. 脱アセチル化酵素UDP-GalNAc-deacetylase(GDA)活性はGEPの活性発現時期より2時間遅れてT8より現れた. 外層に存在する48K, 36K, および22K daltonsの蛋白質(P48,P36,P22)のうち, P48とP36は主にイオン結合により, P22は強い疎水結合により芽胞上に沈着していると考えられる. また芽胞表層蛋白質の特異抗体を用いて芽胞表層蛋白について調べたとこたろP36が最表層にあることが, 一方P48はプロテアーゼに対する挙動から外層内部に存在すると考えられた. これらの蛋白質を欠損している外層欠損変異株MAEO5株の解析より, この株は母細胞原形質中ではP48のみが生合成されておらずP36, P22は生合成されていること, P36およびP22は前駆芽胞上には沈着しているが, 母細胞の溶解に伴って前駆芽胞上より消失することが明らかとなった. 蛋白質を消失させる因子は, 培養液の上清に認められ, プロテアーゼ様酵素と考えられる. 従ってP36, P22の前駆芽胞上への沈着にP48およびGalN-6-P糖鎖は必要ではなく, 前駆芽胞上の蛋白質の保持にGalN-6-P糖鎖が関与していることが推察された.トランスポゾンの挿入変異により得られた外層欠損変異株の解析結果より, P48遺伝子の発現とGEP, GDA両活性の発現は同一の制御を受けているものと考えられた.
著者
福田 桃子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究課題の採用最終年度となる本年は、プルーストと19世紀から世紀転換期の作家たちとの間テクスト性の研究を中心に据えた。アナトール・フランスは、若き日のプルーストにとって最愛の作家であり、『ジャン・サントゥイユ』『失われた時を求めて』における作家・芸術家像に投影されるとともに、その美学にも多くの共通点が見られる。パリの家庭で女中を雇うことは、言語、服装、料理、信仰などを介してパリに田舎を見出すことであるが、これはアナトール・フランスの作品に度々登場する女中の役割とも重なっている。これまで論じられることが少なかった影響関係について研究をすすめるなかで、プルーストが女中の言語を称揚するアナトール・フランスの美学に共感を寄せつつも(『失われた時を求めて』において、主人公がベルゴットの作品に共鳴するのは女中の描写を通してである)、パリという土地および時代の変化を通してこうした「美」が破壊される過程を描き、アナトール・フランスのユートピア的な価値観を乗り越える過程が明らかになった(論文3)。土地を介した貴族との呼応という点に関しては、バルベー・ドールヴィイの諸作品がとりわけ重要な参照項となった。「聖女」と「女中」のアナロジーについては、ユイスマンス『大伽藍』およびフロベール『純な心』との比較検討をおこなった。これまで数多のテーマ研究が示してきたように、プルーストは、文学史および同時代のコンテクストや常套句を作品に採り入れる手法の独創性と視野の広さにおいて特異な作家であった。今後も文学史が編み上げた「女中」という主題系の整理・検証と作品読解を相互補完的に行うことで、作家の文学的素地をなす諸作品を新たな視座のもとにとらえ、作家が19世紀および世紀転換期の文学に何を負い、いかにして独自の小説美学を構築するに至ったのかを詳らかにすることを目指したい。
著者
川合 知二 金井 真樹 田畑 仁 松本 卓也 SZABO Gabor LIBER Charle LIEBER Charl
出版者
大阪大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

レーザーアブレーション法は、誘電体、超伝導体など様々な種類の無機積層薄膜が形成でき、有力な機能性無機材料作成法である。レーザーアブレーション法をさらに発展させ、原子分子層制御無機機能性人工格子などの設計、合成に応用していくには、アブレーションのメカニズムを明らかにすることと同時に、レーザーアブレーション特有の特徴を薄膜形成に生かして新しい人工物質を実際に創成していくことが重要である。この様な背景のもとに、無機物質化学、表面界面化学で世界的に活躍しているハーバード大学Prof.Lieberグループと短パルスレーザーの科学で活躍しているハンガリー・ジェイト大学Prof.Szaboグループと川合グループが共同で「レーザーアブレーション薄膜形成のメカニズム解明と人工格子への応用の調査研究」を行った。平成6年度は、主に金属酸化物、特に強誘電体(BaTiO_3,SrTiO_3)と超電導体(Bi_2Sr_2CaCu_2O_8系)を中心にしてレーザーアブレーションのメカニズムと薄膜形成の決定要因の解明について調査研究を行った。既存のエキシマレーザーを用いて、上記物質群のアブレーションメカニズムを調べた。放出粒子の光強度依存性、及び、アブレートされた部分の微視的モルフォロジーなどからアブレーションが、主に光化学的プロセスであり、しかも内殻最高準位電子の多光子励起によって起こることが明らかになった。このメカニズムは、2つのレーザーパルスを遅延させてアブレーションさせる実験によって確認できた。アブレーションによって生成した粒子のエネルギーと薄膜表面と構造との相関を解析し、より良質の薄膜の形成要因を明らかにした。平成7年度は、レーザーアブレーションによる人工格子形成に調査研究の中心をおいた。BaTiO_3,SrTiO_3,Bi_2Sr_2CaCu_2O_8など異なったターゲットを用いて、格子定数の異なる層を積層し、強誘電体及び超伝導体の歪格子を形成した。強誘電性人工格子系では、最も誘電率の大きなBaTiO_3を基本層とし、これより格子定数の小さなSrTiO_3,CaTiO_3の層で挟んだ人工格子を作り、C軸を引き延ばすことにより、さらに大きな誘電率をもつ新物質(歪み誘電体人工格子)を形成した。又、PbTiO_3を基本層とする系でも、同様な歪みを加えることにより、分極の大きな新物質を系統的に形成して、物質の構造と特性との相関を明らかにできた。超伝導人工格子系では、Ba系超伝導体の異種元素の導入とCuO_2層数の調節を主に行った。CuO_2層数をレーザーアブレーションの原子分子層積み上げでコントロールし、その層数と超伝導転移温度との関係を調べた。その結果、金を導入した人工格子を作成できたこと、及び、その系でCuO_22層の系が安定であることを見出した。これらの無機機能性薄膜材料の設計、合成について、前年度に調査したアブレーション放出粒子のサイズ、エネルギーと各原子層分子層形成の温度、表面の平坦性の関連を調べ、高機能酸化物人工格子の形成条件を明らかにすることができた。当初計画した研究目的と研究計画については、大方計画通りに進むことができた。レーザーアブレーションのメカニズムが内殻電子の多光子過程を経ることなど重要な結果を得た。本研究の成果は、論文にまとめて公表する他、米国、及び、日本の物理学会、応用物理学会で発表した。特に、1995年度は、国内だけでなく、米国の物理学会に行き共同研究の成果を発表した。
著者
鴻巣 努
出版者
千葉工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では眼球運動計測により, 非漢字系孤立語の言語特性について考察した. タイ語読解においては,難易度の上昇により注視回数だけでなく,注視時間の増加が認められた.これは,日本語の傾向と異なっており,タイ語読解時では認知処理レベルが高くなる傾向が分かった.読解時の注視点分析より,タイ語には,日本語における漢字,英語におけるスペースなどの形態的に特徴を持った要素への注視は少なく, PSG(周辺探索誘導)が優位に機能している傾向は認められなかった.一方で,単語の末尾に存在するドーサコット(終末子音)に注視が集まる傾向が認められた.ドーサコットは,通常使われる子音と同じ形態で日本語や英語のように形態的特徴だけで通常子音かドーサコットかの区別ができない.視覚探索においては,CSG(認知探索誘導)を優位に働かせることが必要である. 一注視あたりの情報受容量は日本語やドイツ語のデータと比べて 20~30bits 程度多く,これはタイ語の認知特性に起因していると推察される.