著者
CARNINCI Piero サクセナ アルカ SAXENA Alka
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究の主要な目的は、レット症候群にみられる重篤な症状の原因となっている異常を、ゲノムワイドに明らかにすることにある。具体的には、レット症候群関連遺伝子と考えられているmecp2遺伝子欠損マウスにおいて、可塑性に異常が認められた大脳視覚野のトランスクリプトームを正常マウスのそれと比較することと、MeCP2やFoxg1の標的と考えられるゲノム領域を特定することである。前者については、mecp2遺伝子欠損マウスを繁殖させることの難しさから、共同研究者からのサンプルの到着が遅れたものの、現在はすべてのサンプルがそろい、そこからヘリコスCAGEライブラリーを作製しているところである。これをシークエンスすることで、mecp2遺伝子欠損マウスがレット症候群を発症する前後のトランスクリプトームを比較する。後者に関しては、前年度に引き続き、ChiP-seq法を用いて、大脳視覚野におけるMeCP2やFoxg1の標的領域を調べた。ひとつのサンプル量が少量のため、ChiP-seqのプロトコールをそれに最適化する必要があり、時間がかかったが、最終的に900ヶ所以上のFoxg1ターゲットを特定できた。現在、これらのターゲット候補を定量PCRにて確認中である。その最終的な確認を待たなければならないが、Foxg1はゲノム中の繰り返し配列に結合する傾向を見出した。この少量のサンプルにChiP-seqを最適化したプロトコールは、現在投稿準備中である。さらに、共同研究としてFoxg1の発現量の確認を行い、その結果は現在投稿準備中である。これらに加えて、今期は共同研究としてsRNAライブラリーを作製し、sRNA依存的なDNAダメージ応答を明らかにした。
著者
土方 裕子
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

文章を理解するためには,文章内の指示表現が指すものを特定する必要があるが,第二言語 (L2) における照応理解についての研究はあまり行われていない。そこで本研究は,日本人英語学習者の読解中における意味処理の深さと照応理解,動詞特性の関係を調べた。処理時間の測定と文産出課題から,日本人英語学習者は動詞特性を照応理解の際に十分に利用できていない可能性が示唆された。
著者
青木 弘行 ZAFARMAND Seyed Javad
出版者
千葉大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

研究実施計画に従って,2年目は調査対象/調査内容の再構築を行い,その枠組みを3種類[【○!a】ライフサイクルが短く短期間の使用で買い換えが行なわれる製品(具体的には携帯電話),【○!b】長期に渡って使い続けられる製品(伝統的工芸品や家具類),【○!c】両者の中間に位置づけられる製品(乗用車)]の製品と社会的文脈比較[日本,イラン]の3×2=6水準として展開した,そして,(1)[日本における【○!a】【○!b】【○!c】とイランにおける【○!a】]に関しては評価対象者の属性をさらに拡充して既得知見の信頼性向上と,(2)[イランにおける【○!b】【○!c】]のデータ収集を目的とした.一方,(3)[日本における【○!a】【○!b】【○!c】比較イランにおける【○!a】【○!b】【○!c】比較,両国【○!a】【○!b】【○!c】における社会的文脈比較]を使用シーンから分析し,各製品における感性評価構造の推移を明らかにした.最終的には,味わいや愛着をはじめとした感性的要因を明確化し,(4)美的サステナビリティに対する概念モデルの構築,(5)感性評価構造と社会的文脈に配慮し,人工物設計のためのガイドライン構築の可能性を検討した.サステナビリティに関する既往研究の大部分は,未だ概念的な域を脱しきれていないのが現状である.それに対して申請者らが行った研究内容は,サステナビリティに関する概念を具体的にどのように製品展開に反映すべきかという視点を提示するものとして,次世代におけるモノづくりのあり方を規定する大きな要件になると考える.大量生産・大量消費・大量廃棄時代が終焉を迎えている今日的状況において,製品を[つかいこなす]行為を実現する設計方法論の構築が,社会的・環境的・経済的負荷を可能な限り軽減することに大きく貢献するはずである.このことは,次世代の問題解決手法と期待され胎動しつつある学術領域[サービス・デザイン]のありようにも大きな影響を及ぼすことになり,新たなブレーク・スルーに繋がると確信している.
著者
宮下 遼
出版者
東京外国語大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

採用最終年度である本年は、本研究の集大成として、これまでの宮廷詩人という研究対象から離れ、イスタンブル庶民の心性と人的社会結合の様態を「描写の書」と呼ばれ、庶民の行状を椰楡的に詠む文学作品群、および17世紀のムスリム系イスタンブル人であり、庶民的、通俗的社会観察を残すエヴリヤ・チェレビー『旅行記』と同じく17世紀のアルメニア系イスタンブル人であり、聖職者でありながらもアルメニア正教徒、ならびにギリシア正教徒の俗人社会の内情を記したエレミヤ・チェレビー・キョミュルジュヤン『イスタンブル史』という地誌的旅行記2点を用いつつ、研究を遂行した。まず、酒場、珈琲店、サロンといった人的社会結合の場で活動する庶民と、それについての王朝の支配階層の庶民像を検討した。そして前記の2点の地誌的旅行記史料に共通し、なおかつ両史料にのみ記載された庶民的要素としてイスタンブルの津々浦々に宿る「俗信」を抽出し、これを検討した。以上の成果については残念ながら年度内に発表することが叶わなかったが、王朝支配階層の庶民像を検討した論文「16世紀オスマン朝「描写の書」に見る古典詩人の庶民像」については年度末に投稿、現在掲載審査中であることを付記しておきたい。
著者
加藤 省吾 飯塚 悦功 水流 聡子 進藤 晃 杉辺 瑠美子 末政 憲司
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

療法士がリハビリ訓練計画を立案する際の合理的な思考プロセスをモデル化し,プロセスを実行するために必要な知識ベースを設計した.具体的な知識ベースの構築を行い,知識ベースを実装した支援システムを開発した.開発したモデル・支援システムを用いることにより,用いない場合よりも優れた計画を立案できることを検証によって確認した.本モデル・支援システムを用いることにより,医療の質・安全保証への寄与が期待できる.
著者
高橋 徹
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ロボットによる,音源定位,音源追跡,音源分離,分離音声認識の精度を改善した.これらの改善により,ロボットの動作により音源の方向変化に追従した音源分離が可能になった他,ロボット動作に起因するロボット自身の動作音の影響を受けにくくなり,ロボット動作中の分離音声認識が可能になった.つまり複数音源下でのアクティブオーディションのための身体動作制約が,ほとんどなくなった.音源に近づき信号対雑音比を改善し,複数音源間の方向角度差を広げるように移動し,分離音声認識精度を改善可能になった.音源とマイクロホン間に身体が入り込むような特別な場合を除き,動作中の認識精度を低下させることなく,分離音声認識が可能になった.
著者
池添 隆之 西岡 千恵 楊 晶
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

血管内皮細胞上に発現し、凝固を負に制御しているトロンボモジュリンが、シグナル伝達経路ERKを介して抗アポトーシス蛋白Mcl-1の発現を誘導して、サイトカインや免疫抑制剤による細胞傷害から血管内皮細胞を保護することを明らかにした。また、その活性部位は上皮細胞増殖因子様領域に局在し、抗凝固作用とは無関係であることを明らかにした。
著者
上田 彩子
出版者
日本女子大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究目的は、人は正確に"顔を読む"ことができるのか?という問題を基に、細かいレベルの人間の顔認識能力の正確さを検討することであった。顔パーツの表情認知に関する研究では、顔の情報をひとまとまりとして処理する過程で表情も処理されているという問題を基に、顔の部分表情の認知の際の顔の他領域の果たす役割について、眼と口に注目して比較検討した。表情間で顔を部分的に入れ替えた合成画像を用いて検討した結果、顔パーツの表情認知で顔の他領域が影響したため、表情認知においても顔の全体処理が起きることが示された。その影響度合いはパーツによって異なり、口と比較して眼の方が強く影響を受けることが示された。表情認知には男女間の脳の機能的な違いに由来する性差が存在するが、これまで顔認知過程と表情認知過程の相互作用の観点から性差を検討した例がないという問題に基づき、顔認知・表情認知過程間の相互作用における性差について検討した研究では、表情を表出した顔に対する相貌印象の評価に表情が及ぼす影響に性差が認められるかどうか観察した。その結果、女性は魅力を判断する際に刺激の表情に強く影響を受けたが、男性は女性ほど刺激の表情に影響を受けなかった。この性差は脳の顔処理過程の性差を反映した可能性が高い。化粧は美しさのような相貌印象以外の顔が発信する情報にも影響を及ぼしている可能性が高いという問題を基に、化粧が人物同定課題に及ぼす影響を検討した研究では、化粧パターンの変化で顔の再認課題成績がどう変化するか観察した。その結果、素顔からの変化の最も大きい濃い化粧での人物同定が最も難しく、他方、素顔よりも軽い化粧での同定が最も容易であることが認められた。また、顔とメイク顔の変化が大きい場合において、物理的に同じ変化量であるにも関わらず、メイク顔から素顔を同定する方が、素顔からメイク顔を同定するよりも困難であることが示された。
著者
田辺 秀樹
出版者
一橋大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

本研究は、19世紀末から現代にいたる時代のさまざまな種類の大衆歌謡について、その歴史的変遷、作品としての構造(歌詞および曲)、地域による相違、社会的影響、〈高級文学〉との関連などを、幅広い視点から考察しようとするものであるが、本年度はまず基本的な資料の収集、機材の購入を行なった。具体的には、19世紀ドイツ・ベンケルザング関係、世紀転換期から20世紀前半の時代のウィ-ン・オペレッタ、カバレット関係の文献(書籍ならびに楽譜)、音声資料(レコ-ド,CD等)の購入、これらの資料を活用するためのコンピュ-タ-本体の購入が中心となった。これらを利用してのデ-タ入力,分類等は、今後長期的な計画にしたがって進められる予定であるが、すでに作業は開始されている。本研究の遂行のためには、今後さらに20世紀の大衆歌謡文化(具体的には大都市のカバレットの歌、ベルリン・オペレッタ、1920年代以降の流行歌、映画主題歌、第二次大戦後のLiedermacherやロック歌手のヒット・ソング等)についても資料を集め、政治、経済、社会情勢、外国文化の影響、いわゆる〈エリ-ト文化〉との関わり等に目を向けながら、総合的な考察をしてゆかなくてはならない。その意味でも、本研究への補助金が1年で打ち切られてしまったことは残念であるが、自費による研究を続行し、機会があれば再度の申請をしたいと考えている。なお、本研究のひとつの成果として、論文「陽気なミュ-ズの世紀末ーー世紀転換期ウィ-ンのオペレッタとキャバレ-」を執筆、これは木村直司編著『ウィ-ン世紀末の文化』(東洋出版)1990年10月発行)に発表された。
著者
木村 雄一
出版者
埼玉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

「両大戦間期のLSEにおける経済学の生成と発展」について、(1)LSEにおける大陸経済学の受容と展開-「ロビンズ・サークル」の役割、(2)LSEとケンブリッジ-対立と協調、LSEのケンブリッジ疎開(3)LSEにおける「ケインズ革命」の群像-カルドア、ヒックス、ラーナー、(4)「プラント・グループ」(プラント、コース)による企業組織・企業理論の研究(5)国際的な経済学研究機関-講義科目、LSEの施設拡張、招待講演、特別講義の調査、(6)Academic Assistance Councilの創設-ベヴァリッジ、ロビンズ、ミーゼスによるユダヤ学者救出、(7)LSEの知性史-ドールトン、キャナン、ロビンズ、ラスキ、カルドア、ヒックスらの知的交流、の観点から明らかにした。
著者
岩本 純明 大鎌 邦雄 坂下 明彦 松本 武祝 加瀬 和俊 坂根 嘉弘 藤田 幸一 生方 史数 仲地 宗俊 杉原 たまえ
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

共有資源の管理システムを、林野・漁業・水利に焦点を当てて比較制度論的に検討した。調査地は、海外 8 カ国、国内 12 カ所で行った。主な知見は以下の通りである。(1)共同体をベースにした共有資源管理制度は、市場経済の浸透のもとでもまだ広汎に残っている。(2)しかしながら、共同体的関係の弛緩とともに、従来は内部で吸収できていたコストが顕在化している。(3)資源管理に関わる技術革新も制度変容の重要な要因となっている。
著者
岡田 信弘 常本 照樹 笹田 栄司 佐々木 雅寿 宮脇 淳 棟居 快行 浅野 善治 武蔵 勝宏 小野 善康 稲 正樹 木下 和朗 齊藤 正彰 新井 誠 高見 勝利 深瀬 忠一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

近時、わが国の法体系や立法過程の在り方に「地殻変動」が起きているとの指摘があるが、こうした現象は日本に特有のものとは考えられない。グローバル化の圧力の下で、多くの国が政治・経済・社会のあらゆる分野での改革を余儀なくされているからである。本共同研究は、このような状況認識の下に、変革期における立法動向と立法過程を国際的な視角から実証的かつ総合的に分析することを通して、日本の新世紀における立法や立法過程のあるべき方向性を追究したものである。
著者
片岡 一忠
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

漢文史料の解読と出土官印実物の分析の結果、隋唐にはじまる陽刻朱印の官印制度は、五代を経て宋代には、旧制度の陰刻白文の官印を脱し、清朝まで継承される官印制度の基本形が完成したことを確認した。すなわち、印文の文字が九畳篆と呼ばれる独特の篆法となり、正方形・長方形の両方の印形が官職によって明確に区別して用いられた。さらに、印背に「印款」と呼ばれる鋳造部署名や鋳造年月の文字が刻され、官印の使用現場では「印牌」がつくられ、官印管理が厳格になったことが史料・実物の両面から明らかにされた。
著者
丸茂 文幸
出版者
東京工業大学
雑誌
特定研究
巻号頁・発行日
1985

岩石学上重要な系である【F_0】(クドカンラン石)-Di(透輝石)-An(灰長石)-Si【O_2】系に少量のTi、Cr等岩石中にも少量含まれている遷移金属元素を加えた時に生ずる相平衡関係の変化及びこれ等の微量成分元素の構造化学的役割りについての正確な知見を得ることはマグマの発生あるいはその後の進化を知る上で極めて重要である。本年度はまず、上記の部分系である【F_0】-An-Di系に【Cr_2】【O_3】を加えて、液相面上での相平衡関係を調べた。Cr量が増加するとスピネルが晶出する領域が広がり【Cr_2】【O_3】約0.2wt%のとき、透輝石、灰長石、スピネル及び液が共存する不変点を生ずる。【Cr_2】【O_3】量が0.2wt%以下のときは灰長石とカンラン石が共存し得るが、0.2wt%以上になると、両者は共存し得ない。また【F_0】-An-Si【O_2】系に【Cr_2】【O_3】を加えた場合もスピネルの初晶領域が著しく拡大し、灰長石の領域が極端に減少する。その結果、従来は熱力学的に越えることができないと考えられていた組成中の壁を、0.2wt%程度の【Cr_2】【O_3】が存在する場合には越えることが可能となることが明らかにされた。この結果はマグマの分化を考える上で重要である。珪酸塩融体の構造と晶出する結晶の関係を明らかにする目的で、An-Di系及びこれに【Cr_2】【O_3】を加えた系の熔融体を急冷して作成したガラスの構造をX線回折法により調べた。【An_(50)】【Di_(50)】組成のガラス中ではSi及びAlは総てO原子による四面体配位をとるが、【Cr_2】【O_3】を5wt%加えたガラスでは、可成りの割合のAlが6配位をとるという結果を得た。スピネル中でAlが6配位であることと考え合せて興味深い。また熔融法によるガラスの構造と比較する目的で、衝撃圧縮による灰長石ガラスの構造を調べた。衝撃圧縮ガラスにおいてもSi及びAlは熔融ガラス中と同様、四面体配位をもつが、Caの配位の不規則性が増している。上記の他、β-【Mg_2】Si【O_4】の構造、テクト珪酸塩中のSi及びAlの配列に関する研究も行った。
著者
竹中 正 永田 肇 晝間 裕二
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

近年、環境保全に対する意識の高まりを受け、電子部品におけるPb、Hg、Cd、Cr6+などの有害元素の使用が規制の対象となり、ヨーロッパでは、2006年7月1日からそれらの使用禁止法令(いわゆるRoHS指令)の施行が開始された。本研究では、電子材料の高機能化に重要な役割を果たす酸化鉛(PbO)を含まない環境に優しい非鉛圧電アクチュエータ材料を開発しようとするもので、長年に亘る膨大な基礎的データを基にして、ペロブスカイト型酸化物強誘電体セラミックスを用いて、圧電歪み(アクチュエータ動作)が大きく、かつ、動作温度範囲の広い非鉛圧電アクチュエータ材料を新しく開発した
著者
伊理 正夫 今井 敏行 久保田 光一 室田 一雄 杉原 厚吉
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

本研究は,代表者伊理正夫が1983年に発案した高速自動微分法のためのソフトウェア試作と実際問題への応用を発展させ,実用技術として確立することを目的とした。本研究によって得られた成果をその目的に沿って述べると次のようになる。(1)プリプロセッサの改良:C++による処理系を試作し,既に製作してあったFORTRANによるものとともに改良を重ね,実験用ソフトウェアとしては一応の完成をみた。それらを移植し,種々の計算機上で高速自動微分法を利用可能にした。さらに,勾配の誤差も計算できるようにするなど改良を加えた。現在,サブル-チン等の副プログラムに対する処理,ベクトルプロセッサ向けの処理を導入すべく,処理系をさらに改良中である。(2)丸め誤差の推定の理論の厳密化,丸め誤差の推定値を積極的に利用する算法の開発・実験,実際的な問題への応用:理論的に従来の区間解析よりも優れていることを証明しただけでなく,応用時に問題になる計算グラフの作成方法の改良の必要性を指摘し,解決のためグラフの縮小法を開発した。実用面では,演算増幅器の直流解析などを例にした非線形方程式系解法への応用や,幾何的アルゴリズムを利用した地理的最適化問題に適用し,精度,速度,特に収束性を詳しく調べることを通じ,従来の方法に比べて高速自動微分法が有効であることを確認した。(3)高速自動微分法と数式処理システムとの融合:プリプロセッサが改良中であること,実用面での高速自動微分法の有効性の証明を精密に行なうのに時間と労力を費やしたため,この方面に関する研究は,完成しておらず,今後の課題として残された。上記の成果をふまえて,国際数理計画シンポジウム,京大数理解析研研究集会,情報処理学会研究会,SIAM Workshopなどでの発表,内外の研究者との交流を行い,本研究の成果が国際的に先導的地位にあることを確認した。
著者
渡部 潤一
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

流星群を生み出す母天体である彗星あるいは小惑星の活動史を、流星群の活動から推定する新しい方法を確立し、いくつかの実例について研究を行った。また、枯渇彗星の可能性のある近地球小惑星の中から、既知の流星群と軌道が一致する天体を抽出し研究した。特に2003WY25とほうおう座流星群について研究し、この小惑星が枯渇彗星であることを明らかにし、その上で19世紀には彗星活動が少なくなった活動史を、実際の観測を踏まえて明らかにした。
著者
後藤 晃 WOOLGAE LeeRichard WOOLGAE Lee Richard
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

この研究テーマは、日本の国立大学は法人化後、どのような方針や組織改革を導入しているかという研究である。大学の研究結果が社会と民間企業に貢献することが期待されている。このことに基づいて、大学の産学連携組織と産学連携戦略的な方針が重要になった。研究は21の国立大学産学連携担当副学長、産学連携組織の長、産学連携コーディネーターへのインタービューと、国立大学、私立大学へのアンケート、さらに公開された資料とビブリオメトリクスにもとづいておこなった。これにより、国立大学における産学連携戦略目標(研究機会の増進)、重要な産学連携の相手となるセクター(医薬、農業・食品)があきらかになった。また、個々の大学による多様な大学改革の取り組みがわかった。この改革は政策的なものと組織的なものとがあり、組織的な改革としては「知的財産戦略本部」、「産学連携委員会」や「産学窓口一体化」、政策的な改革は「知的財産政策」、「産学連携方針」、「利益相反ガイダンス」の導入などがある。そのほか、大学の産学連携に関しての報奨、スタッフの採用と評価などについても調査した。産学連携の促進のためには、「産学連携に関する業務の職員のスキル」が重要な問題である。2003から2005年までの間に、国立大学が多様な改革を導入しているが、政府からの助成は依然として財政的には圧倒的に重要である。しかし、2005年から2010年までの期間においては、共同研究が重要となってきているという変化も見られる。
著者
小熊 誠
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近年、日系企業の中国進出に伴って、中国に在住する日本人の数が増加している。中国在住の日本人は、企業活動の他に県人会を組織して、さまざまな活動やネットワークの形成を図っている。その中で、沖縄県人会は、若者を中心とした個人的ネットワークによって活動が展開され、他県人会の組織が年功序列的であり、形式的であることと比べて異なる特徴が見られる。この違いは、沖縄人が自分の意志で就職先を中国に求めることや元来友人などヨコの関係を重視する性格をもつことなどによると考えられる。