著者
椎葉 康喜 内海 泰弘
出版者
九州大学農学部附属演習林
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
no.90, pp.99-111, 2009-03

九州大学農学部附属演習林宮崎演習林にはその設立以前から様々な人々が生活の場として活用されてきた歴史があり, 長い時間の中で多くの地名が付されてきた. これらの地名は現在でも教育・研究活動や森林管理業務などに活用されている. 地名があることで林班や小班といった一定の広がりを持つ指標では説明が困難な「点や線」としての位置説明が可能になり, 踏査や現場の状況説明が容易となる. しかし1939年の宮崎演習林設立以来, 地名に関するまとまった記載はこれまで存在していない. 地名に詳しい年長者達が少なくなり, 教職員や関係者の異動などが以前と比べて多くなったため, これまで口承されてきた地名が年々消失してしまう可能性が危惧されている. そこで本報告では現在使われている地名に加えて, 以前使われていた地名についても関係者に聞き取り調査を行い, 宮崎演習林内に在する92の地名についてその由来とともに記載した。Shiiba Research Forest, Kyushu University Forest, Kyushu University was settled on Okawachi area of Shiiba village in 1939. Okawachi area was one of the center of Shiiba village and has a long history from Muromachi Period. Number of geographical names in Shiiba Research Forest represent the history and these names are still used for research, education and forest management. This report describes not only the currently using geographical names but also the disappearing past names and their origin.
著者
田崎 直美
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、フランス第四共和政期(1946-58)の芸術音楽活動を国家による音楽政策との関連を考察する目的で、情報省管轄下で国内唯一の国営ラジオ局の音楽番組方針とその内容について調査を行なった。その結果、音楽監督の強力な主導のもとで、1)芸術音楽番組による国民啓蒙と教育、2)「メトリーズ」による児童合唱およびフランス音楽活動の振興、3)国際協調と並行したフランス音楽の栄光の強調、の実態を明らかにした。パリの「被占領からの解放」の記憶化はアメリカ亡命作曲家作品への高い評価の形で行われたこと、1950年頃までにドイツとの音楽交流を通じた親善の動きが出てきたこと、も明らかにした。
著者
新村 信雄
出版者
茨城大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

頭書テーマのモデルタンパク質としてDeath-associated protein kinase(DAPK)を選定1.(DAPK)の発現(1)宿主である大腸菌の使用コドンに従い最適化したDAPKリン酸化領域をコードするDNAをプラスミドベクターpET-20b(+)のNdel-Xholサイトにサブクローニングし、BL21(DE3)大腸菌株に形質転換し、大量培養する事によってDAPKを得た。(2)DAPKの精製はNi Sepharose FF担体を用いた金属アフィニティ精製とHiPrep Sephacryl S-100 HRを用いたゲルろ過クロマトグラフィーで行った。2.DAPKのATP結合状態、および非結合状態(Apo状態)の結晶育成(1)PEG1000、硫酸アンモニウム、硫酸リチウムの三条件を重点的に最適化し単結晶を得る事が出来た。(2)ATPアナログ物質としてアデニリル-イミド二リン酸(AMP-PNP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシンγチオ三リン酸(ATP-γS)を使用した。3.DAPKのATP結合状態、および非結合状態(Apo状態)での水和水構造の違い。(1)DAPKのX線結晶構造解析:DAPKに結合しているATPアナログ物質は10個以上の水分子と水和構造を形成している。これらの水分子は良くオーダーされており、はっきりと観測する事が出来たと言えるだろう。しかしAMP-PNP及びATP-γSのγ-リン酸基はディスオーダーしており、確実な原子位置を特定出来ているとは言い難い。(2)DAPKの中性子結晶構造解析:中性子回折法での見かけの水和水構造はその運動状態を反映して、ブーメラン状、棒状、ボール状にそれぞれ見える。ATP結合状態とApo状態での水和水配向の自由度(エントロピー)の差に寄与るると考えられる。ATP結合状態、および非結合状態(Apo状態)、非ATP結合タンパク質の水分子の構造を求め、3状態での構造の違いを比較し、ATPと水分子との相互作用を解明する。引き続き中性子結晶構造解析のための大型結晶育成実施中。
著者
堀江 重郎
出版者
杏林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

Pkd^<-/->マウスにおいて、腎嚢胞形成に関する遺伝子群を包括的に解析する目的で腎嚢胞形成前の胎生14.5日における、野生型およびPkd^<-/->マウスの胎児腎からmRNAを抽出し、約3,000の遺伝子を含むDNAチップで発現遺伝子を検討した。野生型及びPkd^<-/->マウスの胎児腎で3倍以上mRNAの発現が異なった遺伝子は23みられた。Pkd^<-/->マウスで増加していた遺伝子にはPOLD1(DNA polymerase delta catalytic subunit-1)が認められた。Pkd^<-/->マウスで減少していた遺伝子では、apoptosis driving genesとしてのcaspase 1、7、11およびIL-1β、Trancscription factorsであるGATA2、Lbx 1、cell cycle related genesであるjun D1が認められた。以上の結果から腎嚢胞形成には、適切なアポトーシス装置が作動していないこと、細胞周期回転の亢進が関与していることが示唆された。
著者
谷垣 紀子
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.139-152, 2011-04-25

Laughter is a research theme with two-sided nature and it is not easy to establish an all-inclusive theory of laughter, because it tends to depart from real laughter. In this paper, which focuses on laughter in myth and folktale, I have a view of both and try to demonstrate a point of view that is helpful to understanding laughter in the practice of psychotherapy. As a consequence, I obtain mainly three viewpoints for laughter. First, there will be arisen the movement such as sound, vibration or the internal movement in an individual by laughter. Second, it arises in the interaction between this world and another. That laughter can be both the entrance and the exit to these worlds. Third, laughter has a great tendency to make a person move passively without consciousness. So, laughter in psychotherapy sometimes has a chance to move dynamically. On the other hand, we need to consider the possibility that the laughter does force us to move.
著者
菅 真城 カン マサキ
出版者
全国大学史資料協議会
雑誌
研究叢書
巻号頁・発行日
vol.11, pp.31-55, 2010-10

大学史の社会的使命-2009年度全国研究会の記録 於:國學院大學-
著者
新野 宏 柳瀬 亘 伊賀 啓太 栃本 英伍
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

竜巻を生ずる温帯低気圧や熱帯低気圧の構造と環境場を解明すると共に、熱帯低気圧に伴う竜巻の可能性の評価には環境場の空気の連行を考慮した対流有効位置エネルギーが有効であることを見出した。また、稠密な地上観測網やドップラーレーダー観測網等のデータの同化により、竜巻を生ずるスーパーセルの下層メソサイクロン(LMC)の位置の予測の改善が可能であり、竜巻の強度はLMCの鉛直渦度や下層の相対湿度と相関が良いこと、従って竜巻のリスクを予測する上でアンサンブル予報によりLMCに遭遇する確率分布を求めることが有望であることを示した。さらに、超高解像度再現実験により現実事例の竜巻の多重渦構造の再現に成功した。
著者
徳岡 隆夫 大西 郁夫 高安 克已 三梨 昂
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.36, pp.15-34, 1990-11-30
被引用文献数
22

中海・宍道湖の自然史を, 8葉の古地理図として示した。完新統堆積前には西の大社湾に注ぐ古宍道川と東の美保湾に注ぐ二つの水系が存在した。縄文海進はこれらの二つの水系にそってすすみ, 古宍道湾と古中海湾が形成された。縄文海進高潮期には古宍道湾の中央部が埋め立てられ, 東の水域は古宍道湖となり, やがて西の中海湾へと排水するようになり, 現在の中海・宍道湖の原型ができあがった。宍道湖宅はA.D. 1600年頃を境としてそれまでの汽水環境から淡水環境へと変わった。中海では環境変化が複雑だが, 米子湾でみるとA.D. 1600年頃までは出雲国風土記にも示されている夜見島の南に美保湾に通じる水道が断続的に存在したが, その後は閉鎖的環境が急速に進んだ。これらの環境変化は中国山地の人為的な荒廃による土砂の大量流出によって起こったが, 中世の温暖期をへて, A.D. 1600年頃を中心とする寒冷期にいたる地球規模の環境変化が背景となっているものと考えられる。^<210>Pb, ^<137>Cs年代測定および過去25年間の地形変化からそれぞれ求められた宍道湖での埋積量は約0.1/gr/cm^2程度であり, 中海ではその1/3と見積もられる。
著者
三島 敦子
出版者
東北大学
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.93-104, 1996-09-30

仙台市立国見小学校の国際教室におけるフィールドワークを通し、外国人児童にとって理解しにくい「学習言語」を調査した。漢字や片仮名が読めないことが教科学習の大きな障壁になることがわかった。教科書の中に何度も出ている語でも理解できない語があった。教科書にルビをつける、片仮名を指導する、「学習言語」を指導するなどの支援が考えられる。
著者
槙場 政晴
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.25, pp.266-269, 2009-08-22

コミュニケーションツールとして開発されたPIC (Pictogram Ideogram Communication)のシンボル及びJIS絵記号を語彙の理解、文脈の理解を支援するツールとして利用し、LLブックの制作を試みた。本試みでは、単語にふりがなを付けるようにシンボル配置することにより、文字の固まり(単語)の意味の理解を促そうと考えた。その結果、文章の意味が捉え易くなった。また、注視や追視が苦手で、朗読がうまくできない対象児の読書に対する苦手意識を軽減することができた。
著者
中崎 清彦 苅田 修一
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

コンポスト原料中に含まれる油脂分の分解を促進する高速コンポスト化の研究過程で、油脂分が活発に分解されているときにアンモニア臭の発生が劇的に低減される。コンポスト化における窒素の収支を詳細に検討し、アンモニア臭の低減効果は油脂の分解中間体にアンモニアが中和されるためのではなく、油脂分解菌の菌体合成にアンモニアが使用されるためであることを確かめた。また、トリブチリンを含有するLBTR培地上で油脂分解微生物を計数したところ、油脂分解微生物はコンポスト化中盤以降に増殖し、アンモニア臭低減効果の発現とよく一致する結果が得られた。なお、LBTR培地上で優勢な好熱性細菌LT1株、およびLT4株を単離し同定した。さらに、微生物叢をDGGE解析装置で解析したところ、油脂分解菌LT1株、およびLT4株と協同して作用する微生物として、新たな微生物DOM-1の存在を確認するとともに、遺伝子の配列情報からDOM-1を同定した。DOM-1は油脂含有培地での生育が確認されず、現在まで純粋培養を確立するに至っていないが、油脂を含まず、アンモニア臭低減効果も見られないコンポスト化ではDOM-1が検出されないことから、DOM-1は油脂分解菌LT1株、およびLT4株との相互作用を及ぼしながら共存しているものと考えられた。また、油脂分解微生物、および油脂分解微生物と協同して働く微生物の初期濃度を高めるために、油脂が活発に分解されているコンポストの製品を種菌として返送したところ、油脂の分解を早めアンモニア臭低減にも効果があることを明らかにした。
著者
堀 元 秋田 次郎 三宅 充展 鴨池 治 芹澤 成弘 林山 泰久
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1)非家父長的利他性、すなわち、他者の判断基準を尊重した上で、他者が望ましい状態にあることを自らも望ましいとする他者への配慮、に由来する効用の相互依存関係の分析を非定常モデルへ拡張した。2)最適な自己資本比率規制を分析するために、自己資本比率が銀行収益に及ぼす効果を検討し、銀行の期待自己資本収益率と銀行の破綻確率の間にはトレードオフが存在することを証明した。3)アロンソ型離散土地市場モデルを分析し、競争均衡を計算するための有限アルゴリズムを導出した。4)地球温暖化問題に対処する「京都メカニズム」が京都議定書でとりまとめられたが、京都メカニズムには先進国と発展途上国の利害対立等、多くの問題が指摘されている。京都メカニズムの問題のうち特に争点となっているCDMについて分析を行った。5)環境を利用することから生じる総価値を補償的偏差および等価的偏差の概念で定式化し、総価値が利用価値および非利用価値の加法分離形で表現できることを示し、利用価値は、直接的利用価値および純間接的利用価値に分離可能であることを示した。6)制度・経済システムといったものに付随する「本質的な不確実性」は、伝統的なリスクによる分析を越えるものとして、ナイト流不確実性として捉えることが出来る。不確実性が高まれば留保価格が低下する、というこれまでのフレームワークでは説明できなかった主張を証明した。7)所有と経営が分離している企業とオーナーが経営上の意思決定を行うことの出来る企業を比較すると、役員に対して金銭的報酬を通じて株主の利益を追求するインセンティブが与えられているのは後者であるということを実証した。8)メカニズムに戦略的虚偽表明を防止するという条件を課した場合、純粋交換経済モデルにおいて、パレート効率性と最小消費保証条件の間にトレードオフが存在することを証明した。
著者
伊藤 章 小林 寛道 阿江 通良 飯干 明 藤井 範久 榎本 靖士 深代 千之 杉田 正明
出版者
大阪体育大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

第11回世界陸上競技選手権大会(大阪,2007)に出場した各種種目の世界一流選手と日本選手の動作分析とタイム分析をおこなった.これらの分析結果とこれまで蓄積してきたデータとを比較し,今回出場した世界一流選手たちの技術の特徴を明らかにするとともに,日本選手の技術の長所や改善すべき点を洗い出すことが出来た.多くのデータを収集できた種目に関しては,記録との相関関係をもとに普遍的ともいえる合理的技術を示すことが出来た.
著者
Hiromu Seko Kazuo Saito Masaru Kunii Masayuki Kyouda
出版者
(公社)日本気象学会
雑誌
SOLA (ISSN:13496476)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.57-60, 2009 (Released:2009-04-15)
参考文献数
11
被引用文献数
2 6 4

Energy Helicity Index (EHI), defined by the product of Convective Available Potential Energy (CAPE) and Storm Relative Environmental Helicity (SREH), is one of potential parameters to diagnose the possibility of tornado outbreak. In this study, probabilities that EHI exceed some criteria were examined with a mesoscale ensemble prediction system, whose grid interval was 15 km, in two tornado events in Japan (Nobeoka and Saroma tornado events). High probability regions (HPR, hereafter) of large SREH existed in the northeastern quadrants of a typhoon or a low-pressure system, while HPRs of large CAPE extended along the warm humid airflow from the Pacific Ocean. In the two events, the tornados were formed near HPRs of large EHI, where HPRs of large SREH and CAPE were overlapped. This result indicates the possibility of the probability forecast of the potential parameter for tornado outbreak.