著者
末盛 慶
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.103-112, 2002-03-31 (Released:2010-11-18)
参考文献数
28
被引用文献数
2

本研究では, 母親の就業が子どもに与える影響に関する諸理論と先行研究を概観した上で, 母親の就業が子どもの独立心にどのような影響を持つのかを実証的に明らかにする。本研究では, 母親の就業状態だけでなく母親の職業経歴の効果も検証し, また社会階層や母子関係を統制した上で母親の就業の効果を検証する。分析対象は, 東京都郊外地区から多段無作為抽出法でとられた長子の中学生とその母親451組である。分析の結果, 母親の就業状態によって子どもの独立心に違いはみられなかった。しかし, 母親の職業経歴によって子どもの独立心に有意な差異が生じていた。結果は, 就業継続する母親の子どもの独立心が他の群に比べ有意に高いことが示された。ここから, 母親の就業状態だけでなく母親の職業経歴を捉えることの重要性, および母親の就業継続が必ずしも子どもに対して否定的な影響を及ぼさない-むしろポジティブな影響さえ及ぼしうる-ことが明らかになった。
著者
足達 薫
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、イタリア・ルネサンス期の美術様式としてのマニエリスムの造形的論理の源泉を考察することを主目的とした。その際、フリウリの記憶術師・キケロ主義文学者ジュリオ・カミッロ・デルミニオによる美術論に焦点を当て。その言説の再構成に基づき、同時代の絵画や彫刻や版画がいかにして形成され、また同時にいかにして受容されたかを推察しようとした。ジュリオ・カミッロの主テクスト『劇場のイデア』、『模倣論』、『雄弁のイデア』を精読し、不明な箇所についてはイタリアの各研究機関および図書館等を訪れて原典資料と比較し、マニエリスム美術の「時代の眼」(マイケル・バクサンドール)を浮き彫りにすることができた。
著者
龍崎 英子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.33-39, 1983-02-20 (Released:2013-04-26)
被引用文献数
1
著者
八板 昭仁 青柳 領 倉石 平 野寺 和彦
出版者
日本コーチング学会
雑誌
コーチング学研究 (ISSN:21851646)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.189-199, 2022-03-20 (Released:2022-05-09)
参考文献数
43

The purpose of this study was to develop a knowledge test for in-game situational awareness to evaluate the presence or absence of knowledge about fast-break situations in basketball. Because the amount of knowledge, which is the basis for making decisions, reportedly affects the superiority of decision-making ability in ball games, the presence or absence of basic knowledge for athletic performance is thought be related to in-game decision-making ability. First, we developed a 44-scene, 88-question original test that included plays on the backcourt and frontcourt for three typical fast-break offensive situations. Seven coaches who had participated in the all Japan intercollegiate championships and 190 college basketball players classified into national championship and local tournament groups completed the original test. As a result, 33 scenes and 45 questions were selected that satisfied the criteria of reliability, internal consistency, and criterion validity. A cross-validity evaluation of this 33-scene, 45-question test conducted by 60 different college basketball players found a significant difference between the national championship group and the local tournament group, thereby validating the test's applicability. This test, which evaluates the presence or absence of knowledge about decision-making for tactical actions in basketball games, could be used to determine the acquisition of necessary knowledge for appropriate decision-making in fast-break situations in basketball games.
著者
小畑 純一 室町 泰徳
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.493-498, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
17

本研究では、地下鉄道における震災時の避難計画に資することを目的とし、通勤ラッシュ時における地下鉄道の運行状況、及び地下鉄道利用者の震災時における意識や行動意向を検討した。地下鉄道利用者の震災時における意識、及び行動意向を把握する目的から行ったアンケート調査結果からは、地下鉄道利用者の多くは、震災時の地下鉄道の安全性に対し否定的な評価を持っており、地下鉄道は大規模地震に対して比較的安全な空間である点を十分に認識していない点、利用者の多くは震災時に「駅員の指示に従う」といった落ち着いた行動を取るという意向を持っているものの、いざ自分の周囲が地上へ避難し始めると、利用者はその行動に同調することになり、およそ70%以上の人が地上へ避難することになる点が示された。しかし、地下鉄道に対する安全評価の高い人は、地上へ避難することへの同調率が低下することがわかった。また、平日朝の通勤ラッシュ時のように混雑率が非常に高い列車に乗車している場合、震災後、待機可能な時間は20分程度である。この時間を過ぎると、一部の利用者が列車外へ脱出し始め、最終的に半数以上の乗客が車外へ出てしまう可能性が示された。
著者
筒井 昭仁 中村 寿和 堀口 逸子 中村 清徳 沼口 千佳 西本 美恵子 中村 譲治
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.341-347, 1999-07-30 (Released:2017-11-12)
参考文献数
23
被引用文献数
2

社会人の歯科的問題の程度を企業の生産性および経済面から把握することを目的とした。福岡市に本社を置く電力供給に関連する大型電気機械を製造する企業の工場部門の全従業員421名を対象とした。年齢は20〜65歳に分布していた。質問紙の配布留置法により過去1年間の歯科的問題に関連した1日休,半日休,遅刻・早退,作業効率の低下の情報を収集した。これらの情報から労働損失時間を算出し,さらに金額にも換算することを試みた。質問紙回収率は96%であった。工場全体で歯科的問題に関連する労働損失経験者は22%で,全損失時間は年間1,154時間,日数換算で144日であった。1人平均労働損失時間は年間2.85時間であった。この労働損失は生産高ベースで約1,200万円,生産コストベースで約800万円,人件費ベースで約400万円の損失と算定された。一企業を単位に歯科的問題に関連した欠勤や生産性の低下を把握,収集したとき社会・経済的損失は多大であることがわかった。DMFTやCPIなどの客観的指標にあわせてこれらの情報を明らかにすることは,労使双方に強いインパクトを与えるものであり,産業歯科保健活動の導入,展開に寄与するものであると考える。
著者
加藤 大地 橋爪 祥光
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.927-932, 2017 (Released:2019-06-25)
参考文献数
8

小型ハッチバック車を対象に,エアダムスポイラー装着による空気抵抗低減に伴う流れ場の分析を風洞試験および数値流体解析を用いて行ない,空気抵抗低減の流体力学的な機構を明らかにした.エアダムスポイラーは車両床下流の運動量流量を減少させ,車両の後流構造を変化させることで空気抵抗を低減することを明らかにした.
著者
三好 真千 上月 康則 山中 亮一 山口 暢洋 坂下 広大 田中 千裕 山口 奈津美
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1246-1250, 2009 (Released:2010-03-05)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

Large volume of mussels attaches on the coastal structure in eutrophic area. The dropped and died mussels accelerate the depression of dissolved oxygen in the bottom layer. This study revealed the relationship between fluctuation of salinity and temperature and their attaching activity on the wall. Result of our investigation at Amagasaki Harbor in Osaka Bay showed that the mass of mussels dropped out at the bottom after the salinity and temperature had extensively changed. It was also observed in Komatsushima Harbor that the salinity and temperature jumps initiated the dropout of the mussel. From laboratory experiments in different environmental conditions; salinity and temperature, we cleared the ecological cycle of the mussels in which the changes in salinity and temperature mainly influenced their activities.
著者
三嶋 和也 内海 友加利 池田 彩乃 安藤 隆男
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.185-196, 2018-03-31 (Released:2018-10-06)
参考文献数
11

本研究は、特定の地域における義務教育段階にある肢体不自由児の就学先ごとの彼らの障害の状態等の実態を明らかにした。肢体不自由特別支援学校とその通学区域にある小・中学校の通常学級、知的障害特別支援学級、知的障害特別支援学校を対象に質問紙調査を実施した。その結果、障害部位では、どの形態においても下肢障害の割合が最も高かった。移動の自立度が高い児童生徒が通常学級に多く在籍するのに対して、肢体不自由特別支援学校では、独歩や移動の自立度の割合が低かった。また、肢体不自由特別支援学校では、独歩の割合は中学部段階で増え、自立度も高くなる傾向があることから、小学校等から肢体不自由特別支援学校の中学部へと就学先を変更している可能性が示唆された。本研究において得られた結果は地域における肢体不自由児の多様な学びの場における指導の連続性を考究する基礎的な資料となると考えられる。
著者
張 蘇平 平野 隆雄 村島 直哉 廣瀬 俊一 北川 龍一 奥村 康
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.300-306, 1991-06-30 (Released:2009-01-22)
参考文献数
10

肝硬変症患者血清中の免疫複合体(IC),とくにC3ネオアンチゲンに結合するC3b結合免疫複合体(C 3b-IC)とiC 3b/C 3dg結合免疫複合体(iC 3b/C 3dg-IC)の産生,およびそのクリアランスに重要な役割を担っている補体リセプター(CR 1), factor Iおよびfactor Hの動態について検討した.肝硬変症患者血漿中において,高率にC 3b-ICが検出されたがiC 3b/C 3dg-lcは正常人,慢性肝炎患者との間に有意な差は認めなかった.また,肝硬変患者において,補体リセプター(CR 1)と血漿factor Hは高値を示したが, factor I値はコントロール群と比較して低値を示した(p<0.01).このことは,肝硬変患者において免疫複合体(IC)の異常産生,そのクリアランスに重要な補体C3カスケードのメカニズムの異常の存在が推測された.すなわち, factor I値の低値による機能不全のためC 3b〓C 3dgへの変換が障害され,それを補うためCR 1, factor Hの産生充進として働いていることが推察される.このように肝硬変患者におけるC3カスケードの異常評価の検討をすすめることは,肝障害時における補体系動態の解析に重要であることが示唆された.
著者
五味 麻美 大田 えりか
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
pp.JJAM-2022-0027, (Released:2023-03-03)
参考文献数
30
被引用文献数
1

目 的ムスリム外国人女性の日本での妊娠・出産経験を明らかにし,助産ケア向上のための示唆を得ることである。対象と方法日本で妊娠・出産を経験したムスリム外国人女性3名を研究参加者として,質的記述的研究を実施した。インタビューガイドを用いた半構造化面接によってデータを収集し,質的帰納的に分析した。結 果日本で出産することを決めたムスリム外国人女性たちは,日本人やムスリム仲間の評判を頼りに【安全で安心できる出産施設を選択】していた。そして,産育習俗や言語,医療従事者の対応など様々な場面で【母国との違いに戸惑う】経験を重ね,【試行錯誤しながら宗教上の規範を守(る)】っていた。女性たちは新たな生命を宿した重要な時期に,最善の形で自らの信仰を体現することができない現状に対する葛藤と受容を幾度となく繰り返しながら,自分なりの妥協点を見出して折り合いをつけ,【現状に合わせ規範の解釈を柔軟化】するプロセスを辿っていた。そうしたプロセスを経て,母子共に安全に産みたい,宗教上の規範を守りたいといった【ニーズを満たせたことに感謝】する経験をしていた。結 論本研究により,ムスリム外国人女性の日本での妊娠・出産経験として【安全で安心できる出産施設を選択】【母国との違いに戸惑う】【試行錯誤しながら宗教上の規範を守る】【現状に合わせ規範の解釈を柔軟化】【ニーズを満たせたことに感謝】の5つのコアカテゴリーが抽出された。ムスリム外国人女性に対する助産ケア向上のためには,専門性を発揮し,エビデンスに基づいた安全で安心できるケアを提供するとともに,ムスリム女性たちが外国人妊産婦に共通する不安や戸惑いに加え,宗教上の葛藤も抱えていることを理解したうえで宗教を含む文化や価値観を尊重し,個別性や多様性に配慮したケアを提供し,肯定的な出産経験に繋げることが必要であるとの示唆を得た。

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出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.9, pp.602-606, 1983-09-25 (Released:2009-05-25)
被引用文献数
1