著者
金澤 悠介
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.221-224, 2022 (Released:2023-03-24)
著者
鮎川 瑞絵
出版者
生活経済学会
雑誌
生活経済学研究 (ISSN:13417347)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.49-67, 2022 (Released:2023-03-31)
参考文献数
19

本稿では、ふるさと納税制度において、ふるさと納税の受け入れにかかる地方政府の事務処理等のコストが、地方政府間での税率決定および各地域の税収など地方財政に対しどのような影響を与えるかについて考察する。 本稿では、加藤・柳原(2022)と同様に,自分が居住している地域に対する愛着がある下で、二つの地方自治体がふるさと納税の返礼品を加味した税率を基に租税競争を行うモデルを考える。特に本稿では、地方自治体が他地域からのふるさと納税を受け入れる際には,事務処理等のコストを必要とするものとし。それが地方政府間で決定される税率や,財政状況等にどのような影響を与えるかについて検討している。 本稿で得られた主な結論としては以下のとおりである。第一に、加藤・柳原(2022)では、地方政府間の競争の結果得られる均衡点が人口の大きな地域から人口の少ない地域へとふるさと納税が行われる点しか存在しないことが示されていたが、本稿ではさらに、ふるさと納税が二地域間で行われない均衡も存在しうることが明らかになる。第二に、どの点が均衡となるかについては、地方自治体が負担するふるさと納税の受入に関する事務処理等のコストにも依存することが示される。
著者
末廣 徹
出版者
生活経済学会
雑誌
生活経済学研究 (ISSN:13417347)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.33-48, 2022 (Released:2023-03-31)
参考文献数
35

本稿では、行動経済学におけるメンタル・アカウンティング(心理会計)のバイアスの一種であるメンタル・バジェッティング(心理的な予算の割り当て傾向)と個人が保有する金融資産残高の関係をインターネットアンケート調査の結果を用いて分析した。メンタル・バジェッティングの傾向がある個人は予算を管理することと同時に金融資産の管理を積極的に行う傾向があることから、金融資産の蓄積にもプラスの効果があると言われている。しかし、管理したからと言ってそれが最適であるとは限らない。予算の割り当てを誤れば、金融資産の蓄積にマイナスの影響を与える可能性もある。伝統的な経済学が想定するように、仮に家計が最適な選択を採ることが可能であるとすれば、予算を割り当てることは望ましいことではない。本稿では、直接的にメンタル・バジェッティングと金融資産残高の関係を分析することにより、メンタル・バジェッティングの傾向がある個人は保有する金融資産残高が少ない傾向がある可能性を示した。つまり、メンタル・バジェッティングの傾向がある個人は予算を管理することによって金融資産の蓄積が阻害されている可能性が高いことが明らかになった。
著者
尾室 拓史
出版者
生活経済学会
雑誌
生活経済学研究 (ISSN:13417347)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.19-32, 2022 (Released:2023-03-31)
参考文献数
23

日本において店頭におけるキャッシュレスの普及が見られつつあるものの、キャッシュレス利用時に使いすぎを懸念する生活者が一定数いることが指摘されている。このため、今後のキャッシュレスのあり方を議論するうえでは、実際にキャッシュレスの利用がどのように使いすぎにつながってしまうのか、ということを把握したうえで、生活者にとって望ましいキャッシュレスとの向き合い方を含めて検討していくことが望ましい。これを踏まえ本稿は、キャッシュレス利用時に、現金利用時と比べて購買が促進される効果(購買促進効果)の現れ方が、利用するキャッシュレスサービスやポイント還元率、個人属性の差異によりどの程度異なるのか、ということについて検討を行ったものである。マクドナルドおよびスターバックスの顧客を対象として検討を行った結果、タッチ式やコード式による購買促進効果の現れ方の差異は確認できなかったが、ポイント還元率が高いほど、また、年齢が高い人ほど購買促進効果が現れやすいこと等が分かった。
著者
宋 苑瑞
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2017年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100169, 2017 (Released:2017-10-26)

近年韓国で最も懸念されている環境問題は大気汚染である.毎年春先に中国大陸からの黄砂の影響で,視界が悪くなることはしばしばあったが,現在は季節に関係なく視界が悪くなる日が増えている.大気汚染により,外出を控え,洗濯物を外で干せなくなるなど,日常の生活が制限されるようになり,PM2.5などの大気汚染物質が注目されるようになった. 韓国では1960年代からの高度成長期を経て工業化が進んできた.一部の製造業の工場は日本と同様に海外へ移転したが,製鉄・精油など大規模の重化学工業は,現在でも国内の主要産業の一つである.大気汚染の主要な発生源は産業施設から排出される汚染物質と車からの排気ガスである.このような状況において,韓国の国立環境科学院は1999年から120余の関連企業から約300項目の資料を収集し,大気汚染物質の排出量を算定している.2011年から新しい項目としてPM2.5の測定を開始した.現在韓国内のPM2.5を含む大気汚染物質の測定所は322箇所あり(首都圏には143箇所),毎時間のデータをオンラインで配信している.韓国の主要大気汚染物質の排出量の推移を図1に示す.汚染物質のうち最も高い割合を占めているのは窒素化合物(NOX)で,近年再び増加傾向にある.その排出源のうちの道路移動汚染源は前年度比約8%増加,非道路移動汚染源(建設装備及び航空運航便数)は前年度比約18%増加した.次に多いのは揮発性有機化合物(VOC)であるが,エネルギー産業での燃焼量が前年度比約10%減少し,生産工程からの排出が約4%増加したことから,全体では前年度比約1%減少した. 韓国における車の登録台数は2017年6月現在約2200万台で,近年も毎年3%前後で増加している(韓国国土交通部,2017).韓国のディーゼル車の割合は全体の42%を超えている.特に,近年は燃費の割安さからディーゼル車が人気を集め,ディーゼル車が急増していて,現在登録されているディーゼル車の54%が自家用車である.ディーゼル車はガソリン車より数倍も多く窒素化合物(NOX)を排出することから,世界的には排気基準を厳しく制限され,出荷台数や占有率も減少傾向にあるが,それとは異なる状況である.2014年に排出されたNOXの排出量113.6万トンのうち,最も高い割合を占める排出源は道路移動汚染源で,36.1万トンが排出された. 韓国の大気汚染物質について排出地域別に見ると,首都圏と発電所,製鐵製鋼,燃焼施設など大型施設が位置する忠清南道,全羅南道,慶尚北道の一部地域で汚染物質の排出量が大きかった. 2014年の韓国のPM2.5の排出量は6.3万トンで,主な排出源は製造業における燃焼と非道路移動汚染源で,年間排出量はそれぞれ3万トンと1.4万トンに至る.韓国のPM2.5の大気環境基準は1日平均で50 μg/m3, 年平均で25 μg/m3で,日本(1日平均35 μg/m3と,年平均15 μg/m3)と中国(1日平均75 μg/m3,年平均35 μg/m3)の中間値を取っている.しかし,この基準値はWHOの指針基準やアメリカあの年平均基準値より2倍以上高い基準値であり,大気汚染を減らすための今後のさらなる努力と改善が必要である.    参考文献 韓国国土交通部(2017),車の登録資料統計. 韓国国立環境科学院(2015),2013年全国の大気汚染物質の排出量,133p.
著者
山形 伸二 菅原 ますみ 酒井 厚 眞榮城 和美 松浦 素子 木島 伸彦 菅原 健介 詫摩 武俊 天羽 幸子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.103-119, 2006 (Released:2006-10-07)
参考文献数
65
被引用文献数
13 6

本研究は,人間行動遺伝学と双生児研究の方法,とりわけ多変量遺伝分析について紹介し,その適用例として4–6歳児の気質と問題行動の関連性を検討した。双生児の母親142名に対し質問紙調査を行い,子どものエフォートフル・コントロール (EC) および外在化問題,内在化問題についての評定を得た。表現型の相関を検討した結果,外在化問題と内在化問題は中程度の正の相関を示し (r=.55),またECは外在化 (r=−.42),内在化 (r=−.18) のいずれの問題行動とも負の相関を示した。多変量遺伝分析の結果,ECを低めるような遺伝的影響は同時に両方の問題行動のリスクを高めるような働きをすることがわかり,ECの低さが両問題行動の共通の遺伝的素因である可能性が示唆された。また,外在化問題と内在化問題の相関関係には遺伝 (22.8%),共有環境 (53.4%),非共有環境 (23.8%) のいずれもが寄与していた。問題行動間の相関関係への遺伝要因の寄与は相対的に小さかったが,これはECに関わる遺伝要因が両問題行動を正に相関させるように働くのに対し,ECとは関連しない遺伝要因が両問題行動を負に相関させるように働くため,互いに相殺しあった結果である可能性が示唆された。
著者
細見 彰洋 三輪 由佳 古川 真 瓦谷 光男
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.159-165, 2012 (Released:2012-04-17)
参考文献数
19
被引用文献数
11 12

日本の主要イチジク品種‘桝井ドーフィン’については,病原菌(Ceratocystis fimbriata)によるイチジク株枯病(以下,株枯病)が深刻である.そこで本病抵抗性が期待される‘Celeste’,‘Boldido Negra’,‘Ischia Black’,‘Negronne’の 4 品種の耐病性を検証し,‘桝井ドーフィン’用の抵抗性台木としての能力を検討した.砂礫 350 mL を培地とする根箱の‘Celeste’苗は,培地への病原菌の接種直後から根の伸長が抑制され,根の呼吸速度は接種 2 ヶ月後には低下し,細根は伸長が停止して病斑を生じた.用土 3.5 L で鉢栽培した 4 品種は,病原菌の土壌かん注 5 ヶ月後の調査で地下部には病斑が確認された.しかし,全個体は生存し,大量の菌を接種しなければ根の呼吸速度は低下せず,‘Celeste’以外では葉重,新梢重および根重の有意な減少はなかった.4 品種を台木とする‘桝井ドーフィン’樹を用土 22 L のコンテナで栽培し,病原菌を接種すると,2 年目には一部の個体が枯死し,全般に接ぎ穂や根の生育が減退する傾向にあったが,‘Negronne’台木には,枯死や有意な生育の低下は認められなかった.4 品種を台木とする‘桝井ドーフィン’樹は株枯病汚染ほ場でも枯死が少なく,定植後 5 年間はその大半が枯死を免れた.この間,穂木‘桝井ドーフィン’の生育に,経年的な明らかな樹勢衰弱はなかった.以上から,4 品種については,株枯病の被害を受けながらも生存を維持する「ほ場抵抗性」が実証され,台木の耐病性は‘Negronne’が最も期待できた.
著者
谷崎 充 松本 啓吾 鳴海 拓志 葛岡 英明 雨宮 智浩
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.208-218, 2021-09-30 (Released:2021-09-30)
参考文献数
38

Previous research has shown that human walking speed is influenced by visual stimuli in the environment. For example, the speed of optical flow in one’s peripheral vision negatively correlates with his/her walking speed. However, the effect of seeing the other walkers in the peripheral on his/her walking speed is unclear. In this study, we investigate how seeing avatars walking alongside a person affects his/her walking speed. In our experiments, participants wore a head-mounted display and saw three types of virtual avatars walking alongside him/her: whole-body silhouettes of walking persons, point-light biological motions, and spatially scrambled point-light motions. Results show that the walking whole-body silhouettes and the point-light biological motion significantly increased the participants’ walking speed, and a significant interaction between their global translational speed and local motion speed was found to change the participants’ walking speed. These results indicate that we can apply a similar technique to control multiple persons’ walking speed in the real environment.
著者
鈴木 哲也
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.664-672, 2004-12-10 (Released:2010-08-10)
参考文献数
52
被引用文献数
8 3

フルバランスドオクルージョンがリンガライズドオクルージョンよりも機能的に優れていることを示すエビデンスとなる文献はみつけることはできなかった.最近では全部床義歯の咬合様式として, リンガライズドオクルージョンにおいてもフルバランスドオクルージョンと同様に, 片側性平衡咬合ではなく, 両側性平衡咬合を与えることが一般的であった.咀嚼時における非咀嚼側の咬合接触は, 咀嚼側より早く, 第二大臼歯第一大臼歯, 小臼歯の順に起こり, 義歯の転覆を防ぐと同時に, 中心咬合位への誘導という重要な役割を担っていた.そのため, 咀嚼時においても両側性平衡咬合は義歯の安定に有効であった.現代の無歯顎者は高齢であり, 顎堤の吸収や粘膜の菲薄化がすすみ, 顎機能に異常が認められる者もいる.下顎位が不安定で, 義歯装着後に変化する場合がしばしばある.そのような症例には, 嵌合関係が厳しく規制されるフルバランスドオクルージョンよりも, 変化に対応しやすく咬合調整の簡便なリンガライズドオクルージョンのほうが適している.ただし, 日本人の食文化を考えると, 咀嚼感覚という点でリンガライズドオクルージョンが適しているかどうかの疑問は残された.咀嚼感覚を評価する手法の確立が望まれる.
著者
橋本 和典
出版者
公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
雑誌
天理医学紀要 (ISSN:13441817)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.118-122, 2021-12-25 (Released:2021-12-24)
参考文献数
14

高齢者における睡眠障害の影響として,心血管系リスクの上昇,高血圧の発症,耐糖能の低下,抑うつ症状の惹起に関連するとの報告があるが,認知機能低下や認知症発症への影響はどうだろうか.Tsapanouらの報告では睡眠不足と認知症発症との関連が示されており,その機序として,睡眠障害により脳脊髄液中のアミロイドβ(Aβ)のクリアランスが低下することによりAβの増加や沈着が生じ,アルツハイマー型認知症のリスクが高まると考えられている. また,ベンゾジアゼピン系薬剤が認知機能に与える影響についての研究も多数報告されている.Billioti de Gageらのベンゾジアゼピン系薬剤の服用と認知症リスクの関連についての10報の研究をレビューした報告では,ベンゾジアゼピン系薬剤の服用により認知症のリスクが1.5–2倍程度高まるという結果であった.しかし,Grayらの報告では,ベンゾジアゼピン系薬剤の使用量が低用量,中等量の時は認知症発現リスクの上昇が見られたが,高用量では上昇しないことが示された.また,Imfeldらの報告では,ベンゾジアゼピン系薬剤が認知症発症の前駆期使用されたとき,そのリスクが上昇する傾向が示され,認知症発症の前駆期に出現する睡眠障害に対して,睡眠薬を使用していることが,認知症発症に睡眠薬が関連しているように捉えられる可能性が考えられた.この様にベンゾジアゼピン系薬剤の使用による認知症リスクの上昇については明確な結論は出ていない. 睡眠障害の治療にはベンゾジアゼピン系,非ベンゾジアゼピン系睡眠薬,メラトニン受容体作動薬,オレキシン受容体拮抗薬などの薬物治療と睡眠習慣の見直しなどの非薬物的なアプローチがある.睡眠障害と認知症の関連を考慮すると、それぞれをバランスよく組み合わせた不眠治療が必要である.
著者
鈴木 啓太
出版者
金沢大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2021-08-30

慢性疼痛の発症とビタミンDの関連については、一貫した結果が得られていないのが現状である。その要因として、ビタミンD受容体遺伝子の一塩基多型によって、生体内におけるビタミンDの作用発現が変化することが考えられる。本研究では、慢性疼痛の発症と生体内のビタミンD濃度の関連を、ビタミンD受容体遺伝子の多型別に検討する。それにより、ビタミンDを用いた慢性疼痛のテーラーメイド型アプローチの発展に寄与する。
著者
康 允碩 松田 宗明 河野 公栄 閔 丙允 脇本 忠明
出版者
Japan Society for Environmental Chemistry
雑誌
環境化学 (ISSN:09172408)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-10, 1999-03-15 (Released:2010-05-31)
参考文献数
38
被引用文献数
1 1

韓国内で入手した, 市販魚試料の分析の結果, 各化合物の濃度レベルはDDTs>PCBs>HCHs>HCB>PCDFs>PCDDsの順であった。そして魚類から検出された各化合物の濃度は魚類の脂肪含有量と有意な相関性を示した。すなわち, 全般に脂肪量が多いサバとタチウオの濃度がイシモチとタラのそれより高い傾向を示した。市販魚類のPCDDs/DFsの各同族体の組成は低塩素のPCDDs/DFsのほうがより多く検出されており, とくに総PCDDs/DFs-TEQ濃度に対する2, 3, 4, 7, 8-PeCDFの寄与率は42%と計算された。このことから韓国人において食品としての魚類は2, 3, 4, 7, 8-PeCDFのような低塩素のPCDDs/DFsの主な供給源の一つであると判断した。韓国人の魚介類の摂取量は欧米諸国とくらべ比較的多いため, 魚類を通じてこれらの有機塩素系化合物が多く摂取されていると予想されたが, 意外に有機塩素系農薬やPCBsの摂取量は他の国と比べ, 類似するレベルであった。しかし, PCDDs/DFsの場合は, 日本を除いた諸外国のレベルと比べ高いことが確認できた。以上のことから韓国人にとって魚類の摂取はPCDDs/DFsの供給源として主要な割合を占めていることが判断された。
著者
須田 孝徳
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.73-80, 2022-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
38

本研究では,過去10年においてマーケティング研究で行われた混雑感知覚(Perceived Crowding)に関する研究をレビューする。混雑感知覚の研究を,混雑感が消費者の認知・感情に及ぼす影響,消費者の功利的・価値表出的行動に及ぼす影響,推論の手がかりとしての混雑感の3つの視点に分けて整理した。レビューの結果として,混雑感知覚の研究は店舗内購買行動研究から消費者の情報処理や意思決定を対象とした研究に,領域が拡張されていることを確認した。また今後の課題として,推論の手がかりとしての混雑のより詳細な議論の必要性,今日的な店舗研究と混雑感知覚を取り上げた研究が少ない,混雑感知覚の研究が購買意思決定の段階に沿って進められて議論がなされていない,の3点を指摘した。本研究の結果は,マーケティングにおける混雑感知覚の概念を説明し,この分野の実証研究を網羅的にレビューすることで,混雑した小売店環境や消費者行動の理解に役立つ知見を整理している。
著者
寺口 敬秀 桜井 慎一 池ヶ谷 典宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.I_207-I_217, 2020 (Released:2020-04-08)
参考文献数
14

本研究は,海を見渡せるという砲台跡の立地特性に着目し,遺産を残しつつ市民へ砲台跡を開放していくための利活用方法を考究するものである.砲台跡を管理する全国27市町村へのアンケート調査では,公開していない砲台跡が約3割あり,公開している砲台跡でも遺跡劣化や草木伐採に関して課題となっていることがわかった.また,既に利活用されている全国45砲台跡を対象に,用途を公園・展望台・キャンプ場・学習施設の4種類に分け,それぞれの立地・環境特性を把握した.さらに,東京湾沿岸の19砲台跡を対象に,立地や環境特性を現地調査にて把握し,全国で活用されている45砲台跡の特性と比較したところ,観音崎第一砲台跡がキャンプ場や学習施設,腰越砲台跡が公園や展望台に適していることがわかった.