著者
門脇 徹
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.260-263, 2022-09-30 (Released:2022-09-30)
参考文献数
13

COPD急性増悪によるII型呼吸不全に対する呼吸管理はNPPVが第一選択であり,ゴールドスタンダードである.一方,現時点ではエビデンスは不十分ながらも高流量鼻カニュラ酸素療法(High flow nasal cannula, HFNC)はその特長からCOPD増悪によるII型呼吸不全に対しても有利に働くことが予測され,実際に使用頻度が増加している.実臨床からの経験上は軽症の呼吸性アシドーシスでは非常に有用な呼吸管理法と考えられるが,NPPVとの棲み分けやHFNCを行わない基準等について今後エビデンスを蓄積していく必要がある.

1 0 0 0 OA 皮膚感覚と心

著者
山口 創
出版者
日本香粧品学会
雑誌
日本香粧品学会誌 (ISSN:18802532)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.51-58, 2022-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
33

The skin has been explored in various fields such as physiology, neuroscience, psychology, and philosophy. However, considering its multi-layered functions, it will be ideal to study the skin on multidisciplinary arena. The tactile sensation captured by the skin has unique characteristics compared to other four types of senses among the five senses. Tactile sensation is perceived as reality, reciprocity, sense of unity, and as an interoception. Therefore, if touching is applied to contact with other people, it is possible to quickly build an intimate relationship. Interestingly, self-touch has the effect of directing one’s inner consciousness and has characteristics that are different from what is produced by touching others. The skin has tactile nerves that produce sense of pleasure, which respond only to touches applied at a slow speed of about 3 cm to 10 cm per second. When this nerve ignites, oxytocin is secreted in the brain. Oxytocin has various roles that contribute to physical and mental health, such as relieving stress reactions and promoting fat metabolism. One can even promote oxytocin secretion by oneself. Oxytocin is secreted by physical contact, volunteer activities, and enjoying the five senses and so on. Recently, it has been known that oxytocin affect not only general health but also life expectancy. Due to various difficulties caused by COVID-19, the secretion of oxytocin is suppressed in people in general, and especially women are suffering from its adverse effects.
著者
堀 成夫 福田 宏
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.175-190, 1999-12-31 (Released:2018-01-31)
参考文献数
21

During detailed examination of unidentified specimens of the Pyramidellidae in the Yamaguchi Museum and the Hagi City Museum, nine hitherto undescribed species were recognized, and here described as new : Ondina elachisinoides, Chrysallida stupa, Trabecula truncatelliformis, Egilina kotoeae, Eulimella toshikazui, Turbonilla kuraenohamana, T. gloriamishimana, Pyrgiscus yoshikoae and Yoshishigea choshuana. A new genus, Yoshishigea is also elected.
著者
大崎 果歩
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

本年度は前年度に引き続き、『杜翁手澤聖書』と呼ばれる、トルストイ自身による赤線や青線、取り消し線の書き込みがみられるロシア語福音書に関する分析を行った。1880年代初頭に書かれた『四福音書の統合と翻訳』と、1896年に刷られたロシア語福音書への書き込みの間には十数年の時間のずれがあり、その間にどの程度トルストイの聖書観に変化がみられるかという問題については引き続き調査が必要であるものの、トルストイ自身の書き込みと、『四福音書の統合と翻訳』で示された彼の聖書読解を照らし合わせることによって、彼が行った書き込みの背後にある、かなりの程度統一された基準とその根拠を明らかにすることができた。また本年度は、コロナウイルス感染拡大によりモスクワや東京の研究施設へのアクセスが制限され、資料収集や研究上の交流が困難な状況に陥ったが、それまでに収集した資料をもとに先行研究を読み込み、またトルストイのキリスト教観に対してロシア正教会の高位聖職者が示した反応の整理も行った。加えて、神学博士で、ロシア正教会渉外局長の座についているイラリオン(アルフェエフ)府主教が著した『カテヒジス――正教信仰への案内』という、正教の神学や奉神礼、教会暦、聖人、イコン、教会建築等の基礎がわかりやすく解説されたロシア語書籍の共訳を行った。現在は出版にむけて校正を行っている最中である。研究成果に関しては年度内の公開が間に合わなかったが、新型コロナウイルス感染症の影響による半年の採用延長が認められたため、来年度前期に英語口頭発表と日本語論文発表を予定している。
著者
四釜 洋介 黒澤 実愛 松下 健二
出版者
一般社団法人 日本エンドトキシン・自然免疫研究会
雑誌
エンドトキシン・自然免疫研究 (ISSN:24341177)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.40-42, 2019 (Released:2019-11-06)
参考文献数
9

Interleukin (IL) -29 is a cytokine belonging to the type Ⅲ interferon family, which regulates a similar set of genes as type Ⅰ interferons. Although type Ⅰ interferons act globally, type Ⅲ interferons primarily target epithelial cells and protect them against the frequent viral attacks that are common for barrier tissues. The antiviral effects of IL-29 have been demonstrated at barrier surfaces in the respiratory and gastrointestinal tracts, liver, blood-brain barrier, and skin, but it remains unknown whether IL-29 exhibits these effects in oral epithelial cells. In this study, we found that the functional IL-29 receptor, interferon-lambda receptor 1, is expressed in epithelial cells from both human oral mucosa and gingiva, but not in human gingival fibroblasts. Although IL-29 stimulation did not induce pro-inflammatory cytokine mRNA expression, such as IL-6 and IL-8, it did induce retinoic acid-inducible gene (RIG) -I and interferon gamma-inducible protein 16 (IFI-16) production via a signal transducers and activator of transcription 1 (STAT1) -dependent pathway in gingival epithelial cells. RIG-I and IFI-16 sense viral nucleic acids, and the stimulation of these receptors induces interferon beta production. Moreover, we confirmed that the augmenting effects of IL-29 on 5’triphosphate double-stranded RNA (a synthetic ligand for RIG-I) -induced interferon beta production in gingival epithelial cells. These data suggest the therapeutic potential of IL-29 for preventing viral infections in the oral mucosa.

1 0 0 0 OA 食道の解剖

著者
井上 鐵三
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.464-465, 1987-10-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
2
著者
禹 炫在 青木 秀樹 片岡 英樹 山下 潤一郎 吉武 孝敏 神津 玲
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
pp.21-53, (Released:2023-01-06)

目的:高齢市中肺炎患者における身体活動量と入院関連能力低下(Hospital-acquired disability:HAD)の発生との関係,および身体活動量のカットオフ値を検討することである.方法:市中肺炎の診断にて,入院後48時間以内に呼吸リハビリテーションが開始された高齢患者を対象に,入院後の7日間に身体活動量を計測,1日当たりの身体活動量とHAD発生との関連とカットオフ値を調査した.退院時のBarthel Index合計点数が入院前より5点以上低下した場合をHADと定義した.結果:対象者95例(82 [71 - 91]歳)のうち,33例(35%)にHADが発生した.単変量分析の結果,HAD発生には低活動と連続臥床時間の延長が説明因子であった.受信者操作特性分析の結果,1日当たりのカットオフ値は歩行時間12分,歩数1112歩であった.結論:高齢市中肺炎患者はHAD発生率が高く,その発生に影響する身体活動量のカットオフ値は臨床現場での目標設定の指標となる可能性が示唆された.
著者
鶴屋 和彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.5, pp.926-935, 2017-05-10 (Released:2018-05-10)
参考文献数
32

慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者における認知機能障害は,貧血,酸化ストレス,レニン・アンジオテンシン系に加え,脳血管障害も大きな要因であり,その予防は極めて重要である.脳血管障害には,高血圧,脂質異常症,貧血とその治療に加え,最近,透析例において血清リン濃度の関与も指摘されている.心房細動合併CKD患者に対する抗凝固療法は,保存期CKD患者では有用性が示されているものの,血液透析患者ではいまだに結論が出ていない.
著者
山下 耕二 水上 悦雄
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.39-60, 2007-04-10 (Released:2011-03-01)
参考文献数
34
被引用文献数
1

本研究の目的は, これまで言語学的には感動詞, 言語心理学的には発話の非流暢性として扱われてきた, フィラーを中心に, 情動的感動詞, 言い差し (途切れ) といった話し言葉特有の発話要素を, 人の内的処理プロセスが音声として外化した「心的マーカ」の一部であると捉え, それらが状況によってどのような影響を受けるかを分析し, 対応する内的処理プロセスについて検討することであった.実験的統制のもと, 異なる条件 (役割や親近性, 対面性, 課題難易度) が設定され, 成人男女56名 (18-36歳) に対して, ペアでの協調問題解決である図形説明課題を実施し, 対話データが収集された.その結果, 1) それぞれの出現率は状況差の影響を受けたこと, 2) 出現するフィラーの種類別出現率に差があることが示された.これらの結果が先行研究との対比, 内的処理プロセスと心的マーカの対応, そして結果の応用可能性という観点から考察される.
著者
久保 智英
出版者
独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.45-53, 2017-02-28 (Released:2017-03-03)
参考文献数
34
被引用文献数
2 2

本稿では,近未来の働き方とそれによる労働者の疲労問題,そしてその対策について,先行研究を踏まえながら,著者の私見を述べた.その論点は,1)情報通信技術の発達による飛躍的な労働生産性の向上は,これまで労働者の生活時間のゆとりではなく,逆に新たなる作業時間に結びつく可能性があること,2)その影響により,労働者の働き方は,いつでもどこでも仕事につながることができ,ますます,オンとオフの境界線が曖昧になるかもしれないこと,3)その疲労対策としては,オフには物理的に仕事から離れるだけではなく,心理的にも仕事の拘束から離れられるような組織的な配慮と個人的な対処が重要であること,4)最近,注目されている勤務間インターバル制度と,勤務時間外での仕事のメールなどの規制としての「つながらない権利」を疲労対策として紹介したこと,に要約できる.いずれにしても,公と私の境界線がもともと曖昧なわが国の労働者にとっては,オフを確保することが近未来に生じうる労働者の疲労問題に対しての有効な手立てとなるだろう.
著者
日佐 和夫 間処 博子 本間 茂
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.550-556, 1998-09-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
10
被引用文献数
3 3

By a method measuring the total ATP (Adenosine Tri-phosphate) cleanness of products through the procession of meat processing instruments was evaluated. This method was much more sensitive in detecting contamination sources (food residual dregs and microorganisms) than the conventional method, providing a useful contamination index. Because of rapidity and simplicity, the method is suitable for monitoring HACCP (Hazard Analysis Critical Control Point) system and for applying to job sites due to the easier maintenance of PP (Prerequisite Programs). Furthermore, it is effective in drawing up SSOP (Sanitation Standard Operating Procedures).
著者
稲数 幸祐 小布施 大志 岡田 桂祐 石川 綾乃 許 倩南 染谷 竜太
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会誌 (ISSN:13405551)
巻号頁・発行日
vol.136, no.7, pp.438-441, 2016-07-01 (Released:2016-07-01)
参考文献数
2

1.はじめに アミューズメントマシン(Amusement Machine:AMM)は,利用者が機械を利用し,機械から反応を得て楽しむための機械である。 AMMは「人の手によらず動くもの」を面白い,珍しい,不思議と思い,受け入れることから生まれたと考えら
著者
米本 倉基 Kuramoto Yonemoto
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.109-125, 2012-03-15

本研究の目的は、医療分野において注目されている女性医師の増加に関して、その現状を国内外の統計データ、および先行論文をレビューすることで明らかにし、女性医師の就業支援が、今後のわが国の医療政策の重要な視点の一つとなることを論じることである。レビューの統計データは、主に厚生労働省、およびOECDヘルスデータを、論文は国内をCiNiiに、海外はPub Med Centralを中心として収集した。その結果、わが国において、女性医師の占める割合は、諸外国に比べていまだ低いことが確認されたが、その割合は近年急激に増加しており、その対応策の遅れが、わが国の医療現場の疲弊にいっそう拍車をかけることになる懸念が示された。現状における政策の問題点をあげれば、女性医師は、眼科や皮膚科などの特定の専門診療科へ集中する傾向や、結婚や出産後における離職と復職へのハードル、特にパート勤務や診療所開業医への転出する割合は男性医師よりも高く、病院経営に大きく影響している。にもかかわらず、その対策としての女性医師のキャリア支援や柔軟な勤務スタイルの整備など、勤務医のワーク・ライフ・バランス支援策が遅れ、これによって、わが国全体の勤務医不足に影響を与えている現状が明らかとなった。一方、すでに女性医師の割合が、わが国よりはるかに高く、その対策も進んでいる諸外国においても、前述した女性医師の特徴的な傾向を認めることができるが、その政策には見習うべき点が多く、今後の「研究上の視点」とした。
著者
加藤 晃太郎
出版者
物性若手夏の学校準備局
雑誌
物性若手夏の学校テキスト 第67回物性若手夏の学校 (ISSN:27582159)
巻号頁・発行日
pp.228-241, 2023 (Released:2023-02-07)

量子情報分野の発展に伴い、近年では情報エントロピーやエンタングルメント、量子誤り訂正符号といった情報理論由来の概念や手法が、基礎物理学的な観点からも注目されるようになってきた。中でもトポロジカル相に代表される非臨界系 (ギャップド系) の量子相の物理は、そうした情報理論的な解析手法が早期から取り入れられてきた研究領域である。本集中ゼミでは、量子情報理論の基礎的な概念の解説から始め、局所ハミルトニアン系の基底状態に対する応用を紹介することで、量子多体系に対する量子情報的なアプローチの一端に触れてもらうことを目標とする。応用例としては、トポロジカル量子コンピュータとの繋がりもある、スピン系のトポロジカル秩序相を中心的に取り上げる。