著者
山田 忠史 中村 昂雅 横山 大河 谷口 栄一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.272-284, 2012 (Released:2012-10-19)
参考文献数
45

本研究は,均衡制約付き数理計画問題の枠組みで,サプライチェーンネットワーク(SCN)と交通ネットワーク(TN)を統合したスーパーネットワークを対象に,TN上の離散設計変数の値を最適化するモデルを提案する.このモデルの上位レベルは,TN上のリンクの組み合わせ最適化問題に相当する.一方,下位レベルには,サプライチェーンとマルチモーダル交通のスーパーネットワーク均衡モデルを採用し,スーパーネットワーク上の各主体,すなわち,製造業者,卸売業者,小売業者,消費市場,物流業者,旅客の行動が記述される.このモデルを用いて,TN上のリンクの新設・改良によるSCNの効率性向上(TNの最適設計),および,リンクの途絶によるSCNの余剰低下(TNの脆弱性評価)について,基礎的検討を行う.
著者
加納 和雄
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.913-907, 2020-03-20 (Released:2020-09-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

Hardly any Sanskrit manuscripts of Buddhist scriptures remain in India proper today, even though such manuscripts have been discovered in surrounding regions. Tibet in particular is one of the richest treasuries of precious Sanskrit manuscripts from as early as the 8th century. While these materials are currently studied mostly in order to clarify Indian Buddhism, their historical aspects (e.g. their origins in India, their transmission to Tibet, their preservation in Tibetan monasteries) are yet to be clarified. Currently, almost all of them are preserved in Lhasa, but they were once preserved in various monasteries outside Lhasa, though we do not know the relevant details. The present paper investigates two examples that show their preservation at monasteries in the medieval period, focusing on the Sanskrit manuscripts once preserved at gCung Ri bo che and at sPos khang tshogs pa. Those preserved at gCung Ri bo che are mentioned by Tāranātha in his autobiography. He mentions a Sanskrit manuscript of the Suhṛllekha from this place, which might be identified with that currently preserved at ’Bras spungs monastery. In sPos khang there were once three bundles of Sanskrit manuscripts, as mentioned by Rāhula Sāṅkṛtyāyana and dGe ’dun chos ’phel, of which one bundle (a paper manuscript of verses of the Madhyāntavibhāga, Dharmadharmatā[pra]vibhāga, and Abhisamayālaṃkāra) was produced in Ya tse and presented to Tibet in the 14th century.
著者
早川 史子 前田 昭子 南 幸 川井 考子 藤沢 祥子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.259-267, 2000-12-31 (Released:2011-01-31)
参考文献数
24

There are the reports the custom of eating rice gruel made with tea mainly on Western Japan. But its details are not clarified. In order to clarify the eaten reason and origin of it, the range of its custom and distribution in Kyoto, Osaka, Mie, Nara, and Wakayama prefecture in 1999 is investigated by Questionnaire. The Questionnaire was distributed to dietitians (age20-70) living in each area.1) The custom of eating rice gruel made with tea is distributed especially on the border of the prefectures, and also in the seaside districts of Wakayama and Osaka prefectures.2) Next to Wakayama prefecture, Nara prefecture has the most rice gruel made with tea, however this custom in all of them is on the decrease.3) Rice gruel made with tea is called Tyagayu rather than Okaisan by Osaka and Mie prefectures, but called Okaisan by Wakayama prefecture.4) The common materials added to rice gruel made with tea in the five areas are sweet potato, rice cake, and adzuki beans.5) The reason that the custom of eating rice gruel made with tea remains today is that it tastes good.
著者
佐藤 豪 武田 憲昭
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、振動覚を用いた感覚代行技術により、視覚依存性と体性感覚依存性の重み付けを変化させることにより、安定した姿勢制御を獲得できる新しい前庭リハビリテーションを開発することである。本研究により、頭部の傾斜情報を下顎の振動覚としてフィードバックできるウェアラブルデバイスを開発し、失われた前庭情報を振動覚として感覚代行することが可能となった。健常人に対しては、装用により視覚依存性と体性感覚依存性の低下し、一側前庭障害患者に対しては、視覚依存性と体性感覚依存性が変化することで歩行機能が改善し、めまいのQOLも改善した。両側前庭障害患者に対しては、歩行に対する装用効果を認めた。
著者
後藤 寛
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2019年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.155, 2019 (Released:2019-09-24)

Ⅰ 目的地域市場の特性を店舗の立地分布を通して読み解く試みの一環としてほとんどがナショナルブランドであるファッションブランドショップの立地と集積に注目する。現在のファッション市場では年齢層を基本としつつライフステージを組み合わせた顧客セグメントを想定し、それぞれにターゲットを絞ったブランド展開がされている。それを踏まえてショップ群の立地と対象とされる顧客層の居住地分布を比較することにより最終的には同じ趣味関心をもつ群の実態を捉えようとするものである。Ⅱ 対象とデータ大規模小売店舗の各企業系列は都市システムに対して各々不完全なカバーしかしないが、業態をひとつのシステムと解釈することで各ナショナルブランドの動向、立地選択の全体像の理解が可能となる。平成30年5月~7月にかけて主要アパレルメーカーのサイトの店舗リストをもとに作成した婦人ファッションショップ370ブランド14859店(ラグジュアリーブランド数53,1628店,百貨店系アパレル99,4637店,SC系228,8594店)を用いる。ここでは規模・品揃えの差は捨象してショップの有無で論じる。Ⅲ 分析販路として百貨店向けとSC/モール向け、顧客セグメントとしてヤング向け,キャリア、ファミリー,ミセスと大別されるサブマーケットごとのショップは大規模小売店舗の立地に制約されて出店するが、その立地状況の分析から、たとえばすそ野の狭いヤング向けショップは上位都市都心部への極端な集中を示して購買のための広域移動の存在を伺わせ、逆に百貨店を販路とするミセス向けはマクロには全国に均等に立地しミクロには百貨店の立地に依って各都市都心にみられるなどの特徴が指摘できる。だが百貨店の撤退後そのまま空白地帯になる例などをみても消費者分布すべてを均等にカバーするものではない。このような特性も踏まえた店舗の成立条件、それらの集積する消費の場面にみられる都市の体系を明らかにすることを目指している。
著者
YUKO NAKANISHI SHINOBU SAKURAI YUJIRO KAWATA YOSHIO SUZUKI MAYUMI TAKAYA SHIMPEI FUJITA KEISHOKU SAKURABA MASATAKA HIROSAWA TAKAO OKADA
出版者
The Juntendo Medical Society
雑誌
順天堂醫事雑誌 (ISSN:21879737)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.337-345, 2020 (Released:2020-08-31)
参考文献数
25
被引用文献数
6 5

Objective: This study examined the prevalence of and factors affecting normal weight obesity (NWO) among women aged under 40 years old. NWO was having a normal BMI but a high body-fat percentage (BFP).Materials and Methods: We recruited 399 participants aged 18-39 during a health checkup and surveyed them about lifestyle patterns, height, weight, body composition, and girth and visceral fat area. Participants were divided into three. Those with a BMI of <25 and a BFP of <30 were classified as non-obese, a BMI of <25 and a BFP of ≥30 as NWO, a BMI of ≥25 and a BFP of ≥30 as obese. The analysis was conducted on NWO (97) and non-obese (262) groups.Results: NWO prevalence ranged from 20% to 30% across the three age groups. NWO participants had lower values for segmental lean body mass, particularly in lower limb, and higher values for abdominal girth and visceral fat area. Among participants aged 30-39, those with NWO had higher values for triglycerides and LDL cholesterol and lower values for HDL cholesterol. Regarding lifestyle factors, among those aged 30-39, NWO was associated with past weight fluctuation, respectively. In the latter age group, a gain of more than 10 kg since the age of 20 was associated with a 13-fold increase in the odds for NWO.Conclusions: Results suggest that for women under 40 years, detecting NWO early and guidance on effective lifestyle and exercise are necessary.
著者
濱岡 佑帆
出版者
日本実験言語学会
雑誌
実験音声学・言語学研究 (ISSN:18836763)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.56-67, 2020-03-24 (Released:2023-06-15)
参考文献数
12

本調査は群馬県方言「まーず」について音響音声学的な分析から音調の変化を記述することを目的とした。先行研究では、「まーず」タイプのフィラーの特徴として、「①ピッチは高平のもの、中高のもの、頭高のものがある、②持続時間長は500ms 前後がほとんどである。」というような点をあげている。本調査ではこれをもとに群馬県方言の副詞としての「まーず」の音調を検証する。群馬県伊勢崎市出身の被験者4名に調査を行った結果、「まーず」の音調は主に平調で、その他に低平調と高平調、そして句頭上昇が確認できた。そして宮川 (2007: 26)のデータを再分析したところ、中高型と頭高型は確認できなかった。
著者
赤池 英夫 赤澤 紀子 角田 博保 中山 泰一
巻号頁・発行日
vol.2023, pp.14-21, 2023-08-11

教科書の発行に関する臨時措置法に基づき,各都道府県教育委員会は文部科学省に教科書需要数について報告する義務がある.そこで,文部科学省およびいくつかの都道府県への公文書公開手続きにより,2022 年度および2023 年度の教科書需要数のデータを入手した.これらのデータにおける情報科および関連する教科の教科書需要数から,「情報Ⅰ」および「情報Ⅱ」の実施状況や情報科と他教科との関連などを,都道府県との関わりのもとに検討し考察する.
著者
増本 幸二 新開 統子 上杉 達
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.1195-1201, 2012 (Released:2012-10-31)
参考文献数
20
被引用文献数
2

新生児は、各種栄養素の代謝や消化管における消化・吸収において、成人や小児とは大きく異なっている。さらに児の出生体重や在胎週数によっても、各種栄養素の代謝や消化管における消化・吸収は異なっている。そのため、新生児の栄養管理を行う上では、児の出生体重や在胎週数を考慮した、生理的な特殊性を理解する必要がある。新生児の栄養管理でも、まず成人や小児と同様に栄養アセスメントと栄養管理計画書作成を行う。病的な新生児では特に栄養障害を有することが多く、栄養アセスメントと栄養管理計画書に基づき、可能な限り早期に栄養療法を開始する。栄養療法は消化管が使用可能であれば経腸栄養を用いるのが原則であるが、投与量が不十分あるいは、病態的に必要であれば、静脈栄養を躊躇せず行う。なお、静脈栄養、経腸栄養ともに、新生児の代謝や消化吸収の特殊性を考慮し、成長発達を考えた慎重な管理を行う必要がある。
著者
品川 弘子 赤羽 ひろ 中浜 信子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.32, no.8, pp.594-600, 1981-09-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
16

マヨネーズの材料配合比による流動特性を検討するため, Scheffeの3成分系の単純格子計画法2) に従い, E型粘度計を用いて実験を行った.試料マヨネーズとしては, 油68~86%, 酢5.5~23.5%, 卵黄8.5~26.5%の配合比をもつ10個を調製した.各試料の流動特性値およびpHより次の結果を得た.1) マヨネーズの流動方程式の定数およびみかけの粘性率が得られ, 各材料配合比に対するこれらの流動特性値とのあいだにそれぞれ2次の推定式および推定曲線が示された.2) 分散媒の流動方程式の定数およびみかけの粘性率が得られた.3) マヨネーズの降伏応力やみかけの粘性率の推定曲線を用いることにより適当な降伏応力やみかけの粘性率をもつマヨネーズの材料配合比を選ぶことが容易となると考える.4) マヨネーズのSibreeの係数hは, 油濃度に依存し, 最密充填状態ではほぼ1.30, 高油濃度では1.20, 低油濃度では1.49であることが認められた.5) 分散媒のpHは3.4~4.6で, マヨネーズのpHよりもわずかに低いことが認められた.
著者
森 健治 森 達夫 郷司 彩 伊藤 弘道 東田 好広 藤井 笑子 宮崎 雅仁 原田 雅史 香美 祥二
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.281-286, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1

【目的】近赤外線スペクトロスコピー (NIRS) を用い, 顔表情の模倣課題を施行中の前頭葉活動について, 自閉症と定型発達の小児例で比較検討する. 【方法】対象は定型発達の男児10例, 知的障害を有さない自閉性障害の男児10例. NIRS測定のため左右前頭部にそれぞれ17チャンネルのプローブを装着した. 【結果】自閉症群において初回検査時, 両側下前頭回弁蓋部 (Broca野) での酸素化ヘモグロビン (oxy-Hb) 濃度の上昇は, 定型発達児に比べ有意に低かったが, 同じ課題を複数回練習してから, 再度, NIRSを施行したところ, 同部でoxy-Hb濃度の有意な上昇が認められた. 自閉症群におけるoxy-Hb濃度の変化量と感情ラベリング成績の間には正の相関関係が認められた. 【結論】自閉症においても模倣運動を繰り返すことによりミラーニューロンを賦活できる可能性が示唆された.
著者
古谷 ミチヨ
出版者
ヒューマンケア研究学会
雑誌
ヒューマンケア研究会学会誌 = Japanese Society of Human Caring Research (ISSN:21872813)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.47-54, 2014-09-30

本研究の目的は、我が国における「性同一性障害当事者の性同一性」の概念分析を行って当事者への包括的支援の重要性に言及し、実践と研究における本概念の活用性を検討することである。便宜的に抽出された看護学、医学、心理学、社会学領域の文献・資料25 件を対象に、Walker & Avant の分析手法を用いて質的に分析した。その結果、本概念の定義は見当たらず、本分析によって二つの属性、三つの先行要件、三つの帰結が導き出された。分析結果から本概念を、「性別違和感が緩和された肯定的・客観的な自己意識と、自認する性で紡ぐ他者との相互関係において経験される性の共有感とが統合された感覚」と定義した。本研究によって性同一性障害当事者への包括的支援の重要性が示され、本概念は当事者の性同一性形成に向けた実践と研究への活用が可能であると考えられた。今後は当事者アイデンティティにまつわる研究を進行させ、本概念の充実と洗練を図る必要がある。
著者
久野 譜也
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.Supplement, pp.1-7, 2003-08-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
10
被引用文献数
4 1

In order to establish a health promotion program for Taiyo Village in Ibaragi Prefecture, we initiated a research project at University of Tsukuba in 1996. The purpose of this research project are as follows : 1) Examine health promotion in the independent elderly, who make up the majority of the elderly population ; 2) Develop measures to prevent strokes, falls and fractures, which account for about half of the cases in which the elderly become bedridden ; 3) Establish a safe and effective exercise program according to scientifically proven health guidelines ; 4) Assess the efficacy of strength training, which has not been incorporated into most elderly exercise programs, in preventing the elderly from becoming bedridden due to falls and fractures ; 5) Develop a program that can be easily adapted by different municipalities ; and 6) Accumulate success stories at Taiyo Village and disseminate them throughout Japan. The results of this 7-year Taiyo Village project have yielded several important points: 1) Establishment of guidelines to improve life functions; 2) Development of an exercise program to improve and maintain functional ability for life ; and 3) Reduction in medical costs. The results of the present study suggest that when promoting the health of the elderly, it is important to not only study the efficacy of an exercise program, but to also establish a regional program that effectively utilizes research findings.
著者
内田 諭
出版者
システム農学会
雑誌
システム農学 (ISSN:09137548)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.123-135, 2012-10-10 (Released:2015-06-04)
参考文献数
14

水稲の作付時期が多様な熱帯アジア地域の代表例として、インドネシア・ジャワ島を対象に、MODISデータによる水稲作付の時間的・空間的分布状況を把握する手法を開発し、作付時期の経年変動特性の解析を行った。MODISの16日間合成データセット(MOD13Q1)から求められる植生および地表湛水状態を表す指標値の時間変化から、16日間隔で水稲作付域を抽出し、2000年4月から2011年12月までの水稲作付分布データを作成した。月別の水稲作付面積を表す統計データと時間変動特性を比較したところ、両者は良い相関を示した。一方で、画素内での他の土地利用との混在、あるいは、異なる作付時期の混在等が影響し、イネの作付地であっても作付時期が判別されない場合があり、作付面積を精度良く算定することはできなかった。本手法を、水田が広く存在するジャワ島に適用した結果、雨期の端緒となる9月以降の第1作および第2作の作付時期の全島的分布を示すことができ、各々12月から1月と3月から4月頃にピークとなるが、作付時期が相対的に早くなる地域と遅くなる地域の分布が明らかとなった。さらに、同一地点であっても作付時期は経年的に変動し、第1作が第2作に比べて大きい変動幅を持つことが示された。第1作の作付時期の変動に関し、雨期前半の降水量との関係を調べたところ、少雨年に作付時期が遅れる傾向が明瞭となる地域、また、逆の傾向を示す地域の存在が明らかとなり、前者は、天水に依存する地域および灌漑網の末端部に現れる傾向があることが判明した。
著者
森山 徹 Toru Moriyama
出版者
基督教研究会
雑誌
基督教研究 = Kirisutokyo Kenkyu (Studies in Christianity) (ISSN:03873080)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.75-94, 2009-12-03

「アウシュヴィッツ以後」、ユダヤ教とキリスト教の関係を考えた神学者や研究者たちは、キリスト論とキリスト教的反ユダヤ主義の共犯関係を批判してきた。しかし、これらの批判は、キリスト教的反ユダヤ主義の根源的な克服を要求するあまり、しばしばキリスト論までも毀損してきた。本稿の目的は、モルトマンのキリスト論とキリスト教的反ユダヤ主義の関係を明らかにすることにある。モルトマンは、イスラエルの歴史に基づくメシア理解と、十字架につけられたイエスの理解から、「途上のキリスト論」を主張する。このキリスト論によって、彼は、キリスト教的反ユダヤ主義を相対化するだけでなく、キリスト論をも保持することを可能にした。アウシュヴィッツとキリスト教の関係を問題にしている神学者ロイ・エッカートは、モルトマンのキリスト論を「先延ばしされた勝利主義」として批判した。しかし、モルトマンは、途上のキリスト論が、キリスト教的反ユダヤ主義と勝利主義を克服し、キリスト論を保持するのだと主張した。
著者
丹羽 孝仁 西本 太 高橋 眞一 横山 智
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.279-290, 2023 (Released:2023-08-18)
参考文献数
27
被引用文献数
1

本研究は,ルアンパバーン県HB村の事例分析によって,ラオスの農村地域における人口動態の特徴を農村間人口移動の側面から明らかにした.その結果,農村における人口の変化には,次の3点の農村間人口移動が影響を及ぼしていることが分かった.①移住促進政策や結婚移動などの農村間移動を背景とする社会増減と移動後の自然増減の双方が大きく影響している.②農村間移動において移住先での生計の可能性を最大化できるように,新たな農地の獲得可能性や,従前の居住地にある農地へのアクセシビリティ,血縁・地縁のネットワークの有無が検討されている.③農村間移動が活発な背景には,移動前後で農業を主体とする生業に大きな変化がなく,生計を維持できる可能性が高いことがあげられる.ただし,利用可能な低地水田は限られており,米を十分に獲得することが難しい場合には,出稼ぎによる現金獲得が目指されている.