著者
柚木 朋也
出版者
岸和田市立旭小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

研究目的:本研究では、創造性に関わる研究の一つとして、創造性育成と大きくかかわる推論であるパースのアブダクションを明確にしようと試みた。そして、アブダクションに関わる理科教材の開発と指導についての分析を行うことで、論理的な思考の育成方法の開発を試みた。研究方法:創造性の育成については様々な見解があり、多くのアプローチがなされている。本研究では、創造性は推論あるいは論理的思考と強く結び付いていることを踏まえ、論理的思考の育成、特にアブダクションの解明とその活用に重点を置いた。具体的には、アブダクションの概念を明確にした上で、創造性を育成するための理科教材の開発について検討した。また、様々な授業、研修、地域における科学教室において使用した「振り子時計」、「映像を利用した天体」、「メッキの実験」などについて分析し、検討した。成果:アブダクションの基礎は、演繹にあり、探究の過程の中で他の推論とかかわり合いながら深められることが明確になった。そのため、論理的思考を高めるためには、それぞれの場面でどのような推論がなされるかを分析することが重要であると考えられる。実際に、「水撃ポンプ」や「フロッピーディスクケースを利用した燃料電池」などに関して分析を試みた結果、アブダクションの関与が明確になった。さらに、教材を使用した種々の実践を検討し、どのような思考の流れがなされるかの分析を行った結果、思考の流れを制御することで探究の過程をより効果的に行わせることが明らかになり、論理的思考や創造性を育成する視点を明確にすることができた。
著者
長峯 純一 湯之上 英雄
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

1999年の合併特例法改正でスタートした平成の市町村合併を検証したところ,ほとんどの合併は財政支援を受けられる期限直前の駆け込みであった。それも合併への誘因を与えたのは,三位一体改革による交付税ショックであった。合併した自治体は行革に邁進しつつも,まちづくりをどう進めていくか,とりわけ旧役場や住民サービスをどうするか,職員の意欲をいかに高めていくかという課題に直面していることが明らかとなった。
著者
平野 宏文 岸田 昭世 有田 和徳 湯之上 俊二 岸田 想子 神野 真幸
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

グリオーマ由来細胞におけるWntとFzの発現を調べ,Wnt-5a,-7,Fz-2,-6,-7の過剰発現を確認した.ヒト腫瘍組織でWnt-5a は, 79%に強発現しており,腫瘍の悪性度と相関していた.また,Wnt-5aの抑制は細胞の移動,浸潤能力の低下と共に,matrix metalloproteinase-2(MMP-2)の発現を低下させた.逆にWnt-5aは,細胞の移動,浸潤能力を刺激した.以上より,Wnt-5aは予後因子であるだけでなく,腫瘍浸潤に関与していることより,これを抑制することで抗腫瘍作用を期待しうる分子標的になる可能性があると考えられた.
著者
柚木 彰 海野 泰裕
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

前立腺がん治療に用いられるヨウ素125密封小線源について、その治療効果において重要なパラメータとなる線源の線量方向分布の測定を行った。大容量自由空気電離箱の製作を行い、測定結果を得た。補正係数及び測定不確かさの評価を行い、正確な測定データが得られることを示した。
著者
上島 享 阿部 泰郎 伊藤 聡 石塚 晴通 大槻 信 武内 孝善 阿部 泰郎 伊藤 聡 石塚 晴通 大槻 信 末柄 豊 武内 孝善 近本 謙介 苫米地 誠一 藤原 重雄
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、諸分野の研究者が共同で勧修寺に現存する聖教・文書の調査を進めるとともに、勧修寺を中心に諸寺院間交流という共通テーマを掲げて、研究を行うことが目的である。勧修寺現蔵の聖教と中世文書の目録を完成させ、諸寺院間交流をめぐる諸論考をまとめることができ、本研究の目的は十分に達成されたと考える。
著者
湯之上 英雄
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本年度に行った研究として,まず公共選択学会第10回全国大会の報告論文である"Aging Population and Regional Economic Growth with Political Business Cycle"があげられる.ここでは,growth regressionのフレームワークを用いて,人口高齢化が地域の経済成長に与える影響を考察した.『県民経済計算年報』の長期データを用いて,都道府県別の経済成長率についてパネル分析を行ったところ,人口高齢化率が高い地域において,経済成長率が低くなっていることが示された.また固定効果を比較したところ,東京都をはじめとする大都市部や地方部においてもIT産業の集積が進んでいる地域において高い経済成長率が観察された.さらに,国政選挙や都道府県知事選挙の時期に配慮して分析を行ったところ,国政選挙や地方選挙の時期に地域の経済成長率が高くなっていることも確認された.次に,"Cost Frontier Analysis for Elderly Welfare Expenses"では,人口高齢化が進むわが国において,財政再建をどのように達成していうかという関心のもとに,全国都市データを用いて,老人福祉費に関する費用フロンティア関数を推定した.推定の結果,より手厚い高齢者福祉サービスを行っている都市において,より多くの老人福祉費が支出されていることを確認した.さらに,依存財源である地方交付税額が増加すれば非効率性が増すのに対し,自主財源である地方税収の比率が高まれば効率性が高まっていることを示し,国から地方への税源移譲は,費用効率性の側面から見て,望ましいことを明らかにした.
著者
大槻 信
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

「文献資料年代推定のためのガイドライ.ン」のプロトタイプを作成し、その試用と改訂を行った。原本の実地調査を重ね、ガイドラインへのフィードバックを繰り返した。昨年度までの研究を受け、「文献資料年代推定のためのガイドライン」のプロトタイプを作成した。これは文献資料年代推定のための指標(メルクマール)となる事象を整理し、その年代別の推移を記述したものである。その上で、貴重古典籍を多く蔵する京都大学附属図書館(貴重書庫を含む)、京都大学文学部図書館(貴重書庫を含む)、高山寺、勧修寺などを中心に原本の実地調査を行った。加えて、国立国会図書館、東京大学、東洋文庫、金沢文庫などを訪れ、資料の収集を行うと同時に、「文献資料年代推定のためのガイドライン」へのフィードバックを繰り返した。つまり、ガイドラインを実際の調査で実用し、その有効性を測定しながら、改善を加える作業を数度にわたり繰り返した。その過程で、大型液晶ディスプレイを導入し、作業の効率化を図った。今年度の研究で、ひとまずプロトタイプの完成を見たが、複数の研究者にガイドラインを試用してもらうこと、ならびに、ガイドラインの公表までには至らなかった。
著者
寺田 光徳
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

平成19年度はアルコール中毒についてゴンクール兄弟の『ジェルミニー・ラセルトゥー』(1865)およびゾラの『居酒屋』(1877)を研究し、後者を論じた論文を執筆した。平成20年度の研究主題に取り上げた結核については、19世紀後半の1882年にコッホによる結核菌の発見という病理学上の重大な転機があったので、結核病因論の確立の前後を比較することは研究上不可欠なことであった。そこで19世紀前半のバルザックやデュマ・フィスなどの小説からはじめて、結核菌発見の前後の時期を覆うゾラの「ルーゴン=マッカール叢書」を詳しく検討した。そして19世紀前半の文学作品中の結核に関する研究論文を執筆・公表した。最終年度の平成21年度は19世紀後半の文学作品に関する結核について研究論文を執筆するとともに、「ルーゴン=マッカール叢書」の梅毒についても研究をした。また21年度末には3年間の研究成果を報告論文の形でまとめて発表した
著者
淺野 貴之
出版者
埼玉県深谷市立深谷小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

本研究では,指導要領で取り上げられていない発展的な内容を理科授業に取り入れていくことにより,児童の科学的な思考力の育成にどのような効果を及ぼすのかについて,小学校第6学年「電流の働き」及び「水溶液の性質」,小学校第5学年「物の溶け方」の3つの単元において調査し,その結果の分析を行った。まず「電流の働き」においては,従来小学校段階では取り上げてこなかった1本の導線に流した電流が生み出す力について,児童に演繹的に学習させる群を実験群とし,学習指導要領通りの学習をさせる群を統制群として,その効果を比較した。その結果,実験群の児童は,電磁石を強くする方法を考える局面において,根拠を基に予想を立てたり,結果を考察したりすることができるようになることが明らかとなった。次に「水溶液の性質」においては,教師が与えた6つの液体の正体を確かめるための方法を考えるという発展課題に取り組ませた。そして授業中の会話プロトコルのデータとプリントなどの記述データを詳細に分析した。その結果,発展課題に取り組む中で,児童が実験方法の特徴を考えて,どの実験を行うかを決定するようになることが明らかとなった。最後に「物の溶け方」においては,児童にいろいろな物を与え,水に溶ける物と溶けない物とを分けていくという発展課題に取り組ませた。その結果,本発展課題に取り組んだ実験群の児童は,教科書に記載された発展的な学習に取り組んだ統制群の児童と比較して,水溶液かどうかを判断する際に,水溶液の定義を基に思考することができるようになることが明らかとなった。以上より,発展課題に取り組ませることにより,実験方法を決定する局面及び実験結果について予想・考察する局面における児童の科学的な思考力の育成に効果があることがわかった。
著者
市田 敏啓
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は多国籍企業がホスト国の消費者市場に参入を考える場合にいかなる参入形態選択すべきかを理論的に分析することを主眼としている。その際に主に2つの観点からの分析を行った。一つ目はブランドの差別化の度合いに応じて参入形態が変わるという考え方である。また、二つ目は流通チャネルコントロールの問題にマルチタスクのプリンシパル・エージェントモデルなどを応用することでメーカーと小売りの指向の違いが参入形態を変えるという考え方である。
著者
船木 實 東野 伸一郎 坂中 伸也 岩田 尚能 中村 教博
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

小型無人飛行機により、南極・ブランスフィールド海盆にある Deception 島で空中磁気観測等を行い、同島の北半分と周辺海域の磁気異常を明らかにした。 本研究により、南極でも無人飛行機による科学観測が可能で、安全で大きな費用対効果を持つ ことが示された。King George 島では岩石磁気、年代、それに磁気異常の研究が行われ、ブラ ンスフィールド海盆が典型的な背弧海盆の特徴を持つことを明らかにされた。
著者
深谷 優子
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,日本の文化・社会に特有の省略や直接表現を避けた言語表現の代表として俳句を取りあげ,俳句理解に関連する個人特性測定のための尺度として,読書経験・読書態度尺度を開発した。また,ピアレビュー(共同推敲)の教授技法を用いたところ,主に俳句理解の質的側面が支援可能であること,またその前提として,自分で予想したり考えたりするなどの思索専念傾向の態度を保障するような環境づくりが重要であることが明らかとなり,俳句理解の支援のための実践的な方策の示唆を得た。
著者
高橋 篤史
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

ミラー対称性と呼ばれる代数学と幾何学の役割を入れ替える対称性のアイデアにより,特異点に対して代数学・表現論・幾何学に付随した3種類の三角圏が定義される.これらの三角圏の性質に着目することにより,「アーノルドの奇妙な双対性」と呼ばれる特異点の双対性が,尖点付きリーマン面と群作用付きカスプ特異点の間に存在するミラー対称性として自然に説明され,無限個の特異点に一般化されることを示した.
著者
成瀬 九美
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

同じリズムで動くとき、我々は共通の感情を表出し、他者との一体感を味わうことがある。リズム同調性のある活動は社会的統合の現われでありソーシャル・スキルの一つである。本研究では2者のコミュニケーション場面を取り上げ、前腕回転課題、タッピング課題、手合わせ課題を用いた実験や、幼稚園児の積み木遊びの観察事例において,動作速度の変化を分析した。同調過程では他者身体に対する自己身体の調整が行われ、この相補的な関わりの中で二者のリズムが形成された。
著者
清水 宏祐 堀 直 小松 久男 林 佳世子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

過去の海外調査で収録した100本以上のビデオ映像をデジタル化し、HDDに収納して、プログラム名を付け、見たい箇所をすぐに検索して提示できるシステムを構築した。プログラムは200以上に及び、バザールでの商取引の比較映像(新彊、トルコ、エジプト)では、手を握って交渉し、合意に達すると離すという、イスラーム世界特有のバイアという手続きを即座に、、見比べることができるようになった。また、バザールの商店構成が年とともに変化する情況を比較したり、市壁が新たに改修される様子を、新旧の比較対象が行えるようにプログラムした。12月9日の九州史学会は、各研究者から趣旨説明、個別報告が行われた。各種の映像資料の提示は、大きな反響を呼び、「今日、ここから新しい映像歴史学が誕生した」との印象を与えるものであった。この成果を生かし、さらに映像の集積と分析を行い、映像資料を歴史史料として定着させる努力を続ける所存である。成果の全容は、報告書『現地調査で収録したビデオ映像のデジタル化と情報共有ネットワークの構築』として刊行した。
著者
東郷 賢 加藤 篤史 蟻川 靖浩 和田 義郎 加藤 篤史 蟻川 靖浩
出版者
武蔵大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

アフリカ(ケニア、ボツワナ、ガーナ、アフリカ開発銀行)を訪問し、それぞれの国の経済成長における援助の果たした役割についてヒアリングを行った。また、援助供与国の中で最も優れていると言われるデンマークの援助庁も訪問し援助方針についてヒアリングを行った。OECD も訪問し、援助データの詳細について議論をおこなった。これらの内容を踏まえて分析を行っている。その結果、経済成長に関し援助の果たす役割は決定的ではないものの、効果的に利用することは可能であることが判明した。
著者
松田 ひとみ 増田 元香
出版者
筑波大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

北海道と関東地方地域在住の活動的な高齢者240人を対象として、会話の時間、相手、家族関係、生活習慣、リズム、うつ状態の評価と睡眠状態について、聞き取り調査とライフコーダ、アクティウォッチおよびアクティブトレーサーを用いて計測した。また、アクティウォッチから得られる睡眠効率を80%を指標に高群と低群に分け、両群の差を検討した。低群に対して、ライフヒストリーの聴取(30分間)を導入し、生活リズムと睡眠との関係について同様の機器で測定した。データはSPSS(Ver16.0J)統計パッケージを用いて解析を行った。睡眠に影響を与える心疾患、精神疾患、睡眠障害、睡眠随伴症状を有する者、睡眠薬を服用しているものは分析から除外した。解析の結果、男性が親しく会話をする相手として選択したのは、配偶者であったが、女性は姉妹や友人という回答であり性差がみられた。また、睡眠効率低群は、会話時間が短く、家族内での会話交流が乏しい傾向が見出された。さらに、低群において、うつ傾向との相関がみられた。特に男性で睡眠効率が低く会話時間が短いものを対象として介入を行った結果、初回の会話では睡眠への影響が見出されなかった。しかし、会話を約束して行った2回目以降の介入において、睡眠効率の改善が見出されるケースがあった。これらの介入については、インタビュアーとの人間関係や相性などのデリケートな側面もあり、必ずしもナラティブの効果とまでは結論付けることはできなかった。今後は、話し相手ボランティアの積極的な導入にも影響を与えるアプローチであることも踏まえ、更にナラティブ・ケアの具体的なプ白グラムと評価方法を検討することが課題となった。
著者
海老澤 丕道 林 正彦
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

今年度は、前年に引き続き超伝導や電荷密度波における準粒子の新奇なダイナミクスと粒子-ホール対称性の破れについて、ミクロなレベルからのの研究を行った。(1)電荷密度波の時間に依存するギンツブルグ・ランダウ方程式(TDGL)に関する研究前年の成果を受けて以下の研究を進めた。・CDWのTDGLに関するミクロなレベルからの導出に関する研究非平衡状態を解析可能なKeldyshグリーン関数の方法を用いて、導出したTDGLの理論的正当性に関して検討した。(広島大・高根美武氏との共同研究)・CDWのダイナミクスのシミュレーション手法の開発前年に引き続きTDGLを用いたCDWダイナミクスのシミュレーション手法を開発した。特に、従来から用いられてきたTDGLと我々が新規に導出したものとの違いについて、数値的な観点から明らかにする方法を検討した。(2)グラフェンにおける粒子-ホール対称性と超伝導電流に関する研究前年度の研究で1層および2層のグラフェンにおける超伝導近接効果(超伝導-グラフェン-超伝導接合)の振る舞いについて解析し、2層系では接合を流れる臨界電流に、特異な温度および電極間距離に関する振動が現れることを示した。本年度は、特にグラフェンにAB副格子(sublattice)が存在する効果を定量的に明らかにすることを目指して研究を進めた。具体的には前年度議論したトンネル・ハミルトニアンの方法を、副格子を区別して定式化し、計算を行った。その結果、2層グラフェンの振動現象は、AB副格子で交互に起きており、それらを平均すると1層系と同様に振動のない単調な振る舞いを示すことが分かった。現在さらに、振動現象を物理的に観測する為の手段についても検討しており、一定の成果を得ている。
著者
藤 秀人 樋口 駿
出版者
長崎大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

当研究グループでは、抗癌剤アドリアマイシン(ADR)の副作用である心機能障害を抗癌剤ドセタキセル(DOX)の投薬タイミングを考慮することで顕著に軽減できることをこれまでに明らかにした。本年度は、この機序解明を行った。まず、プロテオーム解析にて、DOCを先行投薬することで、心組織中のglyceraldehydes-3-phosphate dehydrogenase(GAPKH)が、過剰発現することが明らかとなった。GAPDHは、フリーラジカルスキャベンジ作用を有する生体成分として知られている。ADRによる心機能障害として、ADRによるフリーラジカル産生が重要であることが知られていることから、DOCの先行投与によって過剰発現したGAPDHがフリーラジカルを抑制し、心磯能障害を軽減している可能性が考えられる。また、フリーラジカルの生成を抑制するセルロプラスミン(CP)も、DOCの先行投薬によって心組織中で増加することをこれまでの研究にて明らかにしている。しかし、これまで明らかにしてきた因子は、いずれも心臓組織から取り出された因子であり、臨床にてモニタリングすることは不可能であった。そこで、本年度は、CPの血液中測定方法を開発し、血液中濃度をモニタリングすることで、抗酸化活性が高まっている時期の推計が可能かどうか評価した。その結果、ADR投薬によって血液中CP濃度はcontrol群と比較して顕著に軽減することが明うかとなった。これは、ADRによるフリーラジカル産生をCPが抑制することによって減少したものであると考えられる。一方、DOCを先行投薬したところ、血中CP濃度はcontrolレベルで維持されることが明らかとなり、CP活性の増加がフリーラジカル軽減に寄与している可能性が考えられる。近年、CPの血液中濃度が臨床検査にて測定できるようになった。したがって、今後詳細な検討が必要であるが、ADRとDOC併用において両薬剤間の投薬時期を決定するための投薬マーカーとしてCPが活用できるのではないかと期待している。