著者
山内 彩加 土屋 一彬 大黒 俊哉
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.338-342, 2016-03-04 (Released:2022-06-08)
参考文献数
9

都市部のムクドリの集団ねぐらは、糞害や騒音などの多様な社会問題を起こしており、これまでの追い払いなどの一時的・局所的な対策ではその解決に到っていない。本研究は、東京都区部のムクドリの集団塒と周辺土地利用の関係を明らかにすることで、長期的・広域的な対策のための生態学的な観点からの基礎的知見を得ることを目的とした。その結果、集団ねぐらは2ha以上の大規模緑地から200m-300m程度の範囲に存在し、実際に就塒前にそうした大規模緑地を利用していることが明らかになった。また、集団ねぐらは、開放的な場所の木立か、駅前など高層建築物に囲まれた場所のいずれかに存在する傾向がみられた。
著者
早川 公康 小林 寛道
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.24, pp.78-95, 2014-01-01 (Released:2014-06-30)
参考文献数
64
被引用文献数
1 1

知的障害児の身体的側面や体力・運動能力に関する調査・研究は部分的,限定的なものも含め,様々な報告が見受けられるが,わが国の文部科学省によって推進されている新体力テストを踏まえた測定および考察については,まだそれほどのデータや研究知見はほとんど見当たらない.今回は文部科学省の新体力テストを主な項目として定め,一般健常児と知的障害児の身体的側面および体力・運動能力を比較し,知的障害児の実態に迫ることで,知的能力への対応だけでなく身体的側面や体力・運動能力の向上に寄与することを目的として本研究を行った.東京大学生涯スポーツ健康科学研究センターにおいて身体的側面および体力・運動能力を評価するために各種測定を行った.被験者は知的障害児24名で,そのうち男子が20名(16.0±5.5歳),女子が4名(13.3±3.4歳)であった.身体的側面については,身長,体重,体脂肪率,筋量等を測定した.体力・運動能力の測定については,主に文部科学省・新体力テスト実施要項等に則り,握力,背筋力,長座体前屈,股関節開脚角度,10m歩行,10m障害物歩行等を実施した.一般健常児等の全国平均値と比較できる項目については,比較の上,検討を行った.男子において身長,体重,体脂肪率,筋肉量いずれも個人差が大きく,特に体脂肪率については10%を下回る人と60%に迫る人との差が顕著であるなど,発育の改善,適正な体組成維持のための各種要因について検討される必要があるものと考えられた.長座体前屈について,健常児の全国平均では年齢とともに向上するのに対して,今回の被験者の場合,向上していく人と低下していく人の両極端なケースがあり,個人差を大きくする生活要因が存在する可能性も推察された.背筋力について,男子においては同年齢(13歳)で85kgの差がある被験者2名が存在したが,その原因については筋量,筋-神経系,認知機能の状態等が関係しているものと考えられる.10m歩行については,歩行それ自体は生活の基本動作でもあるため,著しく能力の低い人にとっては日常生活に支障を感じている機会が多いことが推察される.10m障害物歩行能力については男女ともに全被験者が一般高齢者の全国平均よりも低く,50m走能力についても男女ともに全被験者が健常児の全国平均よりも低いことが示された.背筋力,握力および10m歩行,10m障害物歩行,50m走については,有意差は認められなかったものの男女ともに筋量が多い群のほうが筋力や運動能力が高い傾向がうかがえた.しかし,標準偏差が大きいことや知的障害児の心身の状態が多岐にわたり個人差も大きい実情についても理解する必要がある.
著者
野田 茂 能島 暢呂 細井 由彦 上月 康則
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.556, pp.209-225, 1997-01-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
25
被引用文献数
1

1995年兵庫県南部地震は都市機能を支えるライフラインに多大な被害を与えた. ライフライン被害の相互連鎖は, 既往の震災事例をはるかに超え, 明らかに質の異なるものとなった. 本報告では, 断水が他のライフライン (電気, ガス, 下水道) や医療機関の機能および消火活動や廃棄物焼却施設などに及ぼした影響について述べる. 差し水によるガスの復旧の遅れ, 冷却水や工業用水道の供給停止による発電などへの影響や消火用水の多様な確保策がわかった. さらに, 意外に少なかった通電火災, 復電による通水の状況, 水道の回復が下水道の機能に与えた影響や医療に不可欠な水道の役割などが定量的に明らかになった.
著者
北嶋 諒 森田 剛文 古橋 暁 木内 亮太 武田 真 菊池 寛利 渡邊 文利 杉本 健 坂口 孝宣 竹内 裕也
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.116, no.7, pp.583-591, 2019-07-10 (Released:2019-07-10)
参考文献数
27

症例は60歳女性,貧血精査内視鏡検査でVater乳頭部腫瘍とその肛門側に粘膜下腫瘍を認めた.皮膚筋肉に多発する腫瘤やcafé au lait斑および乳頭部腫瘍生検より,神経線維腫症1型(NF1)に随伴する神経内分泌腫瘍(NET)と診断した.膵頭十二指腸切除術施行時,近位空腸漿膜に突出する結節が散在していた.病理上,乳頭部腫瘍はNET G2,乳頭肛門側腫瘍を含め他の腫瘍はいずれもGISTであった.本症例のような報告はまれである.

1 0 0 0 OA 江戸自慢

出版者
巻号頁・発行日
vol.一、二、三、四,

1 0 0 0 OA 法務年鑑

出版者
法務省
巻号頁・発行日
vol.平成26年, 2015-11
著者
飯沼 一元 石黒 辰雄
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.35, no.10, pp.819-826, 1981-10-20 (Released:2011-03-14)
参考文献数
39

ファクシミリ市場が急速に拡大し, 日常業務の中にファクシミリが深く浸透してくるにつれ, 機能面に対しても従来の白黒2値の他に, 中間調の再現が要求されるようになってきた. 本文では, ファクシミリの技術動向をふまえて, 中間調ファクシミリの原理, 中間調表示方式, 符号化方式壱中心に解説する.
著者
粕谷 英一
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
巻号頁・発行日
pp.61, 2005 (Released:2005-03-17)

交尾の際のメスとオスのさまざまな性質では、ある性質が片方の性にとっては有利だがもう片方の性にとっては不利だということがある。性的対立(sexual conflict)と呼ばれる、このような考え方が、最近、交尾に関する性質の研究を刺激している。これまで、交尾の際に見られる特徴を片方の性(とくにメス)の性質だと見て、その性にとっての利益を考えることが多かった。たとえば、メスが複数のオスと交尾する理由の研究では、メスの利益を中心に据えて、複数回交尾によってメスが受ける利益はどんなものかと考えるのが普通だった。また、メスの交尾相手選好性の研究では、ある性質を持つオスとの交尾率が高いのはそのオスと交尾するのがメスにとって有利であるからだ、と考えるのも普通であった。だが、メスの利益をもたらすことは実証されていないことも多く、メスは1回だけ交尾するのが最適であるのに、オスは数多く交尾するのが有利で、オスの交尾試行に対してメスが拒否できずに複数回交尾となっている可能性がある。実際に、交尾自体がメスにとってはコストをもたらすことがある。よく知られた例では、キイロショウジョウバエでは精液に含まれる物質により交尾するとメスの死亡率が高まる。性的対立のアイデアはすでに交尾をめぐるメスとオスの性質の研究に適用されており、代表的なものとしてRiceらのchase-awayモデルがある。交尾行動の進化に関する研究に性的対立が与える影響を、メスの交尾相手選好性を中心に種分化なども含めて概観し、行動を観察した印象から利害を類推することの危険性や利害の実測の重要性などについて述べる。
著者
Chun-Ka Wong Hayes Kam-Hei Luk Wing-Hon Lai Yee-Man Lau Ricky Ruiqi Zhang Antonio Cheuk-Pui Wong George Chi-Shing Lo Kwok-Hung Chan Ivan Fan-Ngai Hung Hung-Fat Tse Patrick Chiu-Yat Woo Susanna Kar-Pui Lau Chung-Wah Siu
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
vol.84, no.11, pp.2027-2031, 2020-10-23 (Released:2020-10-23)
参考文献数
10
被引用文献数
15 33

Background:SARS-CoV-2 infection is associated with myocardial injury, but there is a paucity of experimental platforms for the condition.Methods and Results:Human-induced pluripotent stem cell-derived cardiomyocytes (hiPSC-CMs) infected by SARS-CoV-2 for 3 days ceased beating and exhibited cytopathogenic changes with reduced viability. Active viral replication was evidenced by an increase in supernatant SARS-CoV-2 and the presence of SARS-CoV-2 nucleocaspid protein within hiPSC-CMs. Expressions of BNP, CXCL1, CXCL2, IL-6, IL-8 and TNF-α were upregulated, while ACE2 was downregulated.Conclusions:Our hiPSC-CM-based in-vitro SARS-CoV-2 myocarditis model recapitulated the cytopathogenic effects and cytokine/chemokine response. It could be exploited as a drug screening platform.
著者
藤村 匠 内田 豪気 春松 敏夫 加藤 源俊 石岡 茂樹 小森 広嗣 下島 直樹 佐藤 裕之 廣部 誠一
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.310-314, 2017-04-20 (Released:2017-04-20)
参考文献数
17

今回,我々は膣欠損を合併した直腸膣前庭瘻に鎖肛根治術と同時に小腸グラフトを用いた膣形成を施行した1 例を経験したので報告する.症例は9 か月の女児.出生時に肛門を認めず,日齢2 に人工肛門造設された後に当院紹介となった.直腸膣前庭瘻に対する術前造影で腟欠損に気づき,腹腔鏡による内性器精査で遠位膣欠損と左右に分かれた子宮,正常の卵巣を認め,染色体核型は46XX で,Mayer-Rokitansky-Küster-Hauser 症候群と診断された.本例は体重増加を待って1 歳11 か月時にanterior sagittal anorectoplasty(ASARP)と同時に小腸グラフトを利用した膣形成が行われた.女児鎖肛・前庭瘻症例は婦人科系臓器の形成異常をしばしば伴う.会陰部所見のみでそれらを把握することは困難で,術前造影時に膣造影で診断し,同時に肛門形成・膣形成を行うことは治療戦略として有用である.
著者
岡村 かおり 梶原 啓資 中尾 真 飯田 則利
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.1278-1283, 2017-12-20 (Released:2017-12-20)
参考文献数
22

症例は胎児期に重複膀胱が疑われ,出生後に鎖肛を伴わない直腸膣前庭瘻の診断で人工肛門を造設した女児.術中に管状型回腸・全結腸重複症が判明し,また重複尿道,重複膣,重複子宮を合併していた.6生月に会陰部横切開で直腸膣瘻閉鎖術および重複直腸側々吻合術を施行したが,直腸膣瘻が再発し,8生月に後方矢状切開で直腸膣瘻再閉鎖術,10生月に重複回腸・上行結腸切除,隔壁部分切離および人工肛門閉鎖術を行った.術後2年の現在,腸管の通過障害はなく経過は良好である.今後,妊娠・出産を含めた長期的フォローアップが重要である.
著者
高橋 良彰 伊崎 智子 飯田 則利
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.75-79, 2017-02-20 (Released:2017-02-20)
参考文献数
13

子宮腟溜血腫はまれな疾患で,外陰および腟の奇形により,第二次性徴発現時期に達してから発症することが多い.当科で子宮腟溜血腫を呈した2 例を経験したので報告する.2 例ともに11歳で間欠的腹痛を主訴に前医を受診し,卵巣囊腫茎捻転が疑われ当院紹介となった.症例1 は卵巣囊腫茎捻転の術前診断で緊急開腹術を施行したところ両側卵巣は正常であったが,子宮および膣内腔が血液で充満しており子宮腟溜血腫と診断した.外陰部診察で腟横中隔と診断し,開窓術を施行した.症例2 は外陰部診察で腟口の閉鎖を認め,術前に腟閉鎖と診断可能であった.術中診断は下部腟欠損症で,腟盲端部を腟入口部まで牽引吻合する単純再建術を施行した.2 例ともに順調に月経がみられている.年長女児でTanner 分類がII~III 度であるにもかかわらず初経発来がなく,間欠的な下腹部痛を訴える症例は子宮腟溜血腫を疑うことが大切である.
出版者
人物往来社
巻号頁・発行日
vol.11, no.10, 1966-10
著者
趙 恵真
出版者
北海道大学文学研究科
雑誌
研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.195-211, 2016-01-15

本稿では,前期現代語における日韓漢語動詞の形態的特徴を明らかにした上で,現代の日韓漢語動詞とはどのような相違点がみられるかについて対照考察を行う。日韓両言語には,漢語の後部にスルとhadaがそれぞれ結合して使われる場合が多く,この場合,「漢語+スル」と「漢語+hada」には比較的整然とした対応関係が見られる。このような「漢語+スル」と「漢語+hada」の形態を本稿では「漢語動詞」と呼び,日韓両言語それぞれをスル形,hada形と称する。しかし,語彙によってはスル形とhada形が対応しない場合がある。例えば,日本語ではスル形でしか現れないものが,韓国語においてはhada形の他に「doeda(なる)」,「sikida(させる)」,「chida(打つ)」,「danghada(負う)」,「gada(行く)」などの動詞が漢語と結合して現れる場合がある。このような事実をふまえつつ,前期現代語における日韓両言語の漢語動詞の形態的特徴について考察を行った結果,現代語とは異なる形態的特徴及び対応関係がみられることが明らかになった。また,対応関係からA,B,C,D,Eの5パターンに分類できた。Aパターンは現代語と前期現代語においてスル形とhada形が対応する場合である。日韓両言語においてもっとも生産的な形態であるといえる。Bパターンは日本語の現代語と前期現代語ではスル形で現れるが,韓国語の現代語ではhada形以外の形態を取る場合である。Bパターンは韓国語の前期現代語においてhada形以外にどのような形態を取るかにより,さらに4つに下位分類できる。Cパターンは前期現代語では日韓両言語とも漢語動詞として現れない場合である。Dパターンは日韓両言語とも前期現代語では漢語動詞で現れたものが,現代語では漢語動詞として現れない場合であり,Eパターンは韓国語の前期現代語でのみ漢語動詞で現れる場合である。