著者
及川 恵 坂本 真士
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.106-119, 2007-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
28
被引用文献数
13 9

本研究では, 認知行動療法の理論に基づき, 抑うつ予防を目的とした心理教育プログラムを考案し, その効果を検討した。プログラムでは, 大学の心理学関連の講義時間を活用し, 計7回の介入授業を実施した。プログラムの効果を検討するため, プログラム実施前後に, 介入群と統制群に対して, 抑うつに関連する思考や情動にうまく対処することができるという確信, すなわち抑うつ対処の自己効力感と複数の適応指標からなる質問紙を実施した。まず, 各授業終了時の感想シートの検討から, 授業内容はよく理解され, 興味関心を持って臨める内容であったと思われる。次に, 抑うつ対処の自己効力感を従属変数とし, 群と時期を独立変数とする二要因分散分析を行った。その結果, 交互作用が有意であり, 介入群は統制群に比べ, プログラム実施後に効力感が増加していることが示された。下位目標ごとの検討においても概ね同様の結果が得られ, 本プログラムの有効性が示唆された。なお, プログラムの間接的な効果を把握するため, 自己効力感と適応指標の変化量の相関を検討した結果, 介入群において自己効力感の増加が現状満足感の増加と関連することが示唆された。
著者
高橋 幸利
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.8, pp.1608-1613, 2007-08-10
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

抗てんかん薬による神経・筋障害は軽度のものを含めるとかなり高頻度に見られ,眠気のように共通したものから,抗てんかん薬ごとに特徴的な副作用まで多岐にわたる.バルプロ酸では,致死性肝毒性(意識障害,てんかん発作増悪)・催奇形性(神経菅閉鎖不全)・高アンモニア血症などが重要である.カルバマゼピンでは,中毒症状(眠気・複視・失調)・てんかん発作増悪(欠神発作・ミオクロニー発作など)が重要である.フェニトインでは,急性PHT中毒(水平性眼振,複視,失調)・進行性ミオクローヌスてんかんの悪化(失調,てんかん発作の悪化,退行)・精神障害(統合失調症様の症状)が重要である.ゾニサマイドでは,認知・精神症状(意欲の低下,幻覚,焦燥,うつ,不安)が重要である.ガバペンチンでは,眠気・部分発作の増悪が重要である.フェノバルビタールでは,行動変化(小児の行為障害,注意欠陥多動障害)・認知障害が重要である.トピラメートでは,精神症状(不安,焦燥,うつ)・認知障害・部分発作の増悪が重要である.<br>
著者
高畠 啓 小曽根 海知 髙橋 花奈 米野 萌恵 国分 貴徳
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.51-56, 2021 (Released:2021-04-09)
参考文献数
16

【目的】Enthesisとは靭帯や腱が骨に付着する部位を指し,Osgood-Schlatter病など同部に生じる傷害“Enthesopathy”は,近年,遠心性収縮が発症に関与している可能性が示唆されている。そこで,本研究では筋収縮形態の違いがマウスのEnthesis構造に及ぼす影響を調査した。【方法】ICR系白色雄性マウス(3週齢)を非運動介入群,平地走行群,下り坂走行群に分類し,2週間の運動介入後,染色像から棘上筋断面積及び棘上筋Enthesisの組織学的分析を行った。【結果】遠心性収縮が惹起される下り坂走行群において筋断面積は有意に拡大し(p<0.05),Enthesisの線維軟骨層に対する非石灰化線維軟骨層の割合は拡大傾向にあった。【結論】Enthesopathy発症には,筋収縮形態の違いによる負荷量の違いが影響し,Enthesis4層構造の変化に関与している可能性を示唆した。
著者
木村 富士男
出版者
社団法人 日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.857-870, 1986
被引用文献数
4

風の弱く良く晴れた夜に関東平野に低気圧性のうずがしばしば現われることはHarada (1981a) により報告されている。静力学平衡を仮定した Boussinesg 方程式から成る局地風モデルにより, このうずを再現し, Haradaにより指摘されている性質とよく一致することを示す。次に地形を単純化し, クレータのあるガウス型の山を仮定した数値実験により, うずの形成メカニズムを調べる。この結果,次のことが明らかとなった。(1)まず日中に山の上に発達する熱的低気圧に正のうず度が蓄積する。この熱的低気圧は後のうずの生成に重要な役割を持っている。(2)夜になると, 山の斜面に下降流が発達する。山の中央部は発散場になり, うず度は低下する。この結果, 山麓でうず度が最大となる。(3)もし, 山麓にクレータなどがあると, さらにうず度の集中がおこり, 1個の独立したうずが形成される。夜に,クレータなど小規模の地形によりうず度の集中がおこるメカニズムは完全には明確にできたとは言えないが,うず度方程式の各項を見積ると, クレータ状地形の周囲から吹き降す山風の収束によるうず度の増強が最も効いている。山麓付近での高うず度帯の力学不安定については, それだけではうず度の集中をおこさせることはできない。最後に, 北海道においてシミュレーションを実施し, 同様なうずが, 北海道周辺の海上に3個できることを示す。そのうちの一つ, 十勝沖にできるうずは, その陸上側の半分がアメダスによる観測データより, しばしば見い出せる。
著者
櫻井 敬晋 笹木 正悟 久保 慶東 福林 徹
出版者
東京有明医療大学
雑誌
東京有明医療大学雑誌 = Journal of Tokyo Ariake University of Medical and Health Sciences (ISSN:21863067)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.7-12, 2011-03-31

要旨 : 前十字靭帯(ACL)再建術後のリハビリテーションには長期間を要することが周知される一方,競技復帰に向けて加速化が図られている.最近では回復度合いや競技レベルなどに応じたリハビリテーションが一般的になってきている.しかしながら,術後に内側広筋を中心とした筋萎縮の発症について多くの報告があり,この防止が ACL 再建術後のリハビリテーションの検討課題のひとつである.筋萎縮の要因として,再建靭帯の生体への適合までの期間は,再断裂リスクなどの観点から,膝関節に対するリハビリテーションに限界があることが挙げられる.そこで今回,低周波電気刺激を用い,ACL 再建術後の筋機能低下に対する新たなリハビリテーションメニューの構築を目的とし,拮抗筋電気刺激による遠心性収縮を伴う運動連鎖筋力増強法を ACL 再建術後のアスレティックリハビリテーションに応用し,その効果を検討した.その結果,通常のアスレティックリハビリテーションに比べ,本法を用いた場合に筋トルク,神経筋協調性,筋体積の回復に効果的な結果が得られた.このことから,本法は ACL再建術後のリハビリテーション法として有効であると示唆された.
著者
吉澤 剛
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.42-57, 2009 (Released:2010-05-14)
参考文献数
131
被引用文献数
7 5

1960年代末に民間の知識層によって日本に概念が輸入されたテクノロジーアセスメント(TA)は, トータルシステムのマネジメントとしての側面を持っており, 民間においては企業の社会的責任などのために導入されたものの問題意識が一企業の範疇を超えるため公的機関で実施されることが期待され, 一方の政府においてはプロジェクト単位での予測・評価活動を合理化・正当化することとなった.本稿ではTAという概念が産業界・科学技術庁・通商産業省・国会議員などのアクターによってそれぞれの文脈で利用され, TAの本質的な機能を発現しない形で変容していった過程を方法論的な変遷と政治的な背景の分析から追っていく.
著者
谷川原 綾子 辻 真太朗 福田 晋久 西本 尚樹 小笠原 克彦
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.203-208, 2016 (Released:2016-03-20)
参考文献数
14
被引用文献数
2

Purpose: The purpose of this study is to investigate the differences in the notation of technical terms and their meanings among three terminologies in Japanese radiology-related societies. Materials and Methods: The three terminologies compared in this study were “radiological technology terminology” and its supplement published by the Japan Society of Radiological Technology, “medical physics terminology” published by the Japan Society of Medical Physics, and “electric radiation terminology” published by the Japan Radiological Society. Terms were entered into spreadsheets and classified into the following three categories: Japanese notation, English notation, and meanings. In the English notation, terms were matched to character strings in the three terminologies and were extracted and compared. The Japanese notations were compared among three terminologies, and the difference between the meanings of the two terminologies radiological technology terminology and electric radiation terminology were compared. Results and Discussion: There were a total of 14,982 terms in the three terminologies. In English character strings, 2,735 terms were matched to more than two terminologies, with 801 of these terms matched to all the three terminologies. Of those terms in English character strings matched to three terminologies, 752 matched to Japanese character strings. Of the terms in English character strings matched to two terminologies, 1,240 matched to Japanese character strings. With regard to the meanings category, eight terms had mismatched meanings between the two terminologies. For these terms, there were common concepts between two different meaning terms, and it was considered that the derived concepts were described based on domain.
著者
土屋 唯之
出版者
The Japanese Association for the Study of Popular Music
雑誌
ポピュラー音楽研究 (ISSN:13439251)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.20-30, 2000

What does 'Yesterday Once More' mean? In the original version by John Bettis, we can see it as 'Yesterday, Once More, ' but now the title 'Yesterday Once More' is known well. Therefore, we show that we can interprete this as an adverbial phrase, a noun phrase (Yesterday as a subject and as an object), and Yesterday as a vocative. As a result, 'Yesterday Once More' may be better than 'Yesterday, Once More' because the former makes us imply various kinds of interpretations.<br>We also show that sha-la-la-la, wo-o-wo-o and shing-a-ling-a-ling are the introduction of some hit songs before the publication of 'Yesterday Once More' (1973).<br>As for "It's yesterday once more" we can find twice, we cannot understand its true meaning until we interprete them as "It's yesterday that I lost my love once more" and "It's the song 'Yesterday Once More.'"
著者
須永 将史
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.57-66, 2021-01-31 (Released:2022-01-31)
参考文献数
10

本稿では家庭医療専門医の診察場面において「ちょっと先生さきに相談あるんだけど」と切り出された相談がどのように扱われるのかを分析する。家庭医の診察場面のなかで、患者は、自身の診察に先立って家族とのトラブルを相談し始めることがある。この相談の切り出し方は診察場面全体のなかでどのような意味を持つのか。そこでなされる「相談」はどのように医師によって聞き取られ、どのように助言を与えていくのか。本論文ではこれを、直接患者の症状とは関わらなくとも医師に相談するのに適した内容を語るため、患者が誤配置であることを際立たせながら切り出すプラクティスとしてとらえる。また、そうすることで、医師がその相談を聞く時間を確保し、診察内での助言に結び付けられるプロセスを記述する。
著者
村上 宣寛
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.70-85, 2003-03-27 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
10 11

本研究の目的は,語彙アプローチによって日本語におけるビッグ・ファイブを導くことである.かつてのSD法におけるEPA構造の普遍性の問題から推測すると,ビッグ・ファイブを得るための心理測定的条件は,1.用語の熟知度や使用頻度が高いこと,2.用語の分散が大きく,評定値が中央付近に位置すること,と推測される.分析1では村上(2002)の基本的な性格表現用語から原則として抹消率13%以下の用語を収集し,同義語と反意語を整理し,554語を調査対象とした.被験者は大学生男性150名,女性220名の計370名であった.分散の高い317語を選択して対角成分にSMCを入れて30因子まで抽出した.スクリー法で因子数を5と定め,オーソマックス回転を施すと,外向性(E),協調性(A),勤勉性(C),情緒安定性(N),知性(O)のビッグ・ファイブが得られた.語彙アプローチ研究によって日本語でもビッグ・ファイブが得られることが証明された.分析2では各因子の因子負荷量の大きな20語を抽出し,100語でビッグ・ファイブ構造を再確認し,各因子ごとに主因子法とオブリミン回転を適用し,側面因子を求めた.結果は,外向性では活動性,閉鎖性,自制,協調性では妬み,怒り,身勝手,勤勉性では親切さ,ねばり強さ,従順さ,情緒安定性では活動力,楽観性,知性では小心さ,愚かさ,意志薄弱の側面因子が得られた.日本語でのビッグ・ファイブは,細部では英語圏の内容と異なっている可能性が示唆された.
著者
小川 潤 大向 一輝
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.SWO-053, pp.06, 2021-03-15 (Released:2021-09-17)

ナレッジグラフの歴史学研究への応用は近年、プロソポグラフィ研究やバイオグラフィ研究を中心に進展している。しかしこれらの研究の多くは、すでに伝統的な手法によって為された二次的な研究成果を対象としたものであり、一次史料の内容そのものを記述するものでは必ずしもない。今後、歴史学研究におけるナレッジグラフ活用をさらに深いレベルで促進するためには、一次史料そのものの知識構造化を進める必要がある。こうした構造化に適用可能なオントロジーとしてはすでにFactoidモデルが提案されているが、このモデルは時間的コンテキストや曖昧性の表現に十分に対応しているとは言えず、曖昧性の大きい史料記述については課題が残る。そこで本研究はFactoidモデルを拡張し、出来事の前後関係に基づいて時間的コンテキストや曖昧性を表現可能なモデルを提案したうえで、曖昧性の大きい古代史史料を事例として実際に提案モデルを適用し、データ構築および検索性の検証を行った。
著者
小松 真也 二宮 伸治
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.393-399, 2015 (Released:2016-01-07)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

体外循環操作訓練の評価は指導者に委ねられているが、多人数を対象とする場合は、訓練者自ら評価を行える環境が望ましい。この環境を構築して総合的な能力の評価を実施するには、シナリオトレーニングを定量的に評価できる手法を確立し、基本操作手技とシナリオトレーニングの定量評価の関係性を明らかにする必要がある。 本研究では養成校における学生91名を対象とし、シナリオトレーニングにチェックシート手法を導入して達成度の定量評価を行う環境を構築した。次に基本操作手技およびシナリオ達成度評価の関係性を検討するため、血圧維持を課題とする基本操作手技評価の後にシナリオトレーニング評価した群と、逆の順序で実施した群に分類し、それぞれの評価を比較した。 その結果、基本操作手技評価を先に実施した群は、シナリオトレーニング時に有意に血圧維持習熟度が上昇したが、シナリオ達成度評価には有意差が認められなかった。このことより体外循環操作の総合的な能力を評価するためには、基本操作手技とシナリオ達成度の定量評価を統合したトレーニング様式を検討する必要が示唆された。
著者
小平 優希 篠田 浩一 岩野 公司
雑誌
第78回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, no.1, pp.533-534, 2016-03-10

我々は,参加者各自が所有する複数のスマートフォンで録音された多人数会話音声に対し,各参加者の発声区間を推定(話者決定)する手法の提案を行っている.従来手法では,端末ごとに事前収録した所有者単独の発声を用いて各参加者の話者モデルを構築し,最尤モデル系列を探索することで話者決定を行っていた.しかし,実際の会話では他者音声の混入が生じるため,十分な話者決定性能が得られない.そこで本研究では,対象音声に「相互スペクトル減算」を適用して他者音声を低減し,話者モデルを再学習して話者決定に用いる手法を提案する.5セッションの雑談音声を用いて発声区間検出性能(F値)を評価したところ,提案手法により約6%の検出率の向上が確認された.
著者
角南 隆史 杠 岳文
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.195-199, 2012-03-15

はじめに 「健康日本21」の中では,多量飲酒者を減らし「節度ある適度な飲酒」を普及させることなどを呼びかけているが,これまでアルコール依存症の患者に対する断酒治療以外に,具体的な対策はほとんど取られてきていない.ちなみに「健康日本21」を含めて,通常わが国における多量飲酒者は,純アルコールで1日60グラム以上(具体的には1日に日本酒約3合,あるいはビール中瓶3本以上)の飲酒者を指す. このため筆者らは,将来アルコールが健康被害を起こす可能性の高い多量飲酒者,あるいは既に健康被害が及んでいる多量飲酒者に対する早期介入のためのプログラムとツールから成るパッケージ「HAPPYプログラム」を作成した.これは,AUDIT(The Alcohol Use Disorders Identification Test)を用いて飲酒問題の重症度を評価し,教育ビデオや補助教材等を用いる早期介入プログラムである.アルコール問題の早期介入に用いられるブリーフ・インターベンションについては,その有効性を示す数多くの報告が海外でなされているが,わが国ではまだ研究が始まったばかりである. 本稿では主に,多量飲酒者への早期介入と,その技法としてのブリーフ・インターベンションについて述べる.
著者
木城 智 植原 健二 皆川 直毅 大沼 弘幸 仁木 久照
出版者
東日本整形災害外科学会
雑誌
東日本整形災害外科学会雑誌 (ISSN:13427784)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.122-126, 2018 (Released:2018-06-29)
参考文献数
10

高齢者女性に急性発症した脛骨内側顆不全骨折4例について,共通する特徴を検討した.すべての症例における共通点は,高齢,女性,急性発症して,持続する強い膝関節痛,鵞足部の圧痛,単純 X線像で明らかな所見がないことであった.これらの項目は脛骨内側顆不全骨折の診断に有用であることが示唆された.高齢者女性に急性発症した膝関節痛では,不全骨折を考慮し,MRIや早期治療介入が必要である.
著者
山崎 貴博 木藤 伸宏 阿南 雅也 新小田 幸一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.951-956, 2010 (Released:2011-01-28)
参考文献数
34
被引用文献数
2

〔目的〕本研究の目的は,変形性膝関節症者の歩き始めにおける外部膝関節内反モーメントの特徴を主成分分析を用いて明らかにすることである。〔対象〕被験者は変形性膝関節症の女性10名19肢と膝関節痛のない中年女性10名10肢であった。〔方法〕課題動作は歩き始めの動作とし,3次元動作解析装置と床反力計を用いて,立脚肢の外部膝関節内反モーメントを算出した。歩き始めの外部膝関節内反モーメントの時系列変化から,主成分分析を用いて抽出された主成分得点に対して群間の比較を行った。〔結果〕主成分数は第3主成分までとなり,各主成分に対する群間の比較では,第1主成分得点のみ膝OA群と対照群の間で有意差が認められた。〔結語〕本研究において,膝OA群は歩き始め開始時より外部膝関節内反モーメントが継続的に大きいことが明らかとなった。したがって,膝OA患者の外部膝関節内反モーメントの大きさに影響を与える要因の一つとして立位時の下肢アライメントの状態を考慮する必要がある。
著者
片山 義雄
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

平成27年度には、マウス造血組織である骨髄、胸腺、脾臓だけでなく造血幹細胞株やT細胞株での匂い感受シグナル特異分子 AC3 と Golf の mRNA 発現を確認できた。これらの一部は蛋白レベルでも確認できた。In vivo の実験として、植物由来匂い物質であるα-ピネンをG-CSFによる造血幹細胞動員に併用したが、動員効率を変化させる効果はみられなかった。平成28年度には、in vitro で血球のみでなく間葉系も含めた各種細胞株における、ある匂い物質による細胞運命制御の検討に集中して研究を進め、この部分に関しては今後特許申請予定となったため公開を差し控える。