著者
クチンスキー トーマス 大谷 禎之介
出版者
経済理論学会
雑誌
季刊経済理論 (ISSN:18825184)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.18-30, 2014-07-20 (Released:2017-04-25)

The author shows why the historical-critical editions of Capital Volume I in the MEGA2 make it necessary to revisit former German text editions of this fundamental work. He makes clear that the complete set of these editions is the indispensable starting point for a new(German)text edition. The following topics are treated in the paper: 1. Engels'inevitable misinterpretation of the entries Marx made in his personal copies of Capital Vol. I; opposite evaluations of the French edition by Marx and Engels; Marx's changing ideas about future translations as a combination of two editions, i. e., the second German one and the French one. 2. Previous discussions about Engels' fourth German edition; plans for its revision, esp. by Valerie(Wally) Kropp and Kurt Nixdorf, and their stoppage. 3. Advantages and disadvantages of the French edition compared with the second German edition. 4. Some consequences of the fact that Marx quoted rather often from memory; how Engels treated the problem differently in his English translation and his fourth German edition. 5. The different features of the planned text edition in comparison with the historical-critical editions in MEGA^2. The exposition includes many quotations and some illustrative examples.
著者
西連寺 永康
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.275-288, 1960-12-01 (Released:2010-07-21)
参考文献数
36
被引用文献数
2 1 1

1) 106Ru+106Rhの0.48μcをマウス腹腔内に注射し経日的に体内の放射能分布および排泄をしらべた。投与したトレーサー溶液中にはルテニウムのラジオコロイドの生成は認められず, またロ紙電気泳動によって〔RuCl5 (H2O) 〕-2, 〔RuCl4 (H2O) 2〕-1および〔RuCl3 (H2O3) 〕0などのイオン種の存在が推定された。2) 投与後1日目の血液中における106Ruはその約93%が血漿中にあり, ロ紙電気泳動によって蛋白の分画をおこなうと, アルブミン, β-グロブリンおよびγ-グロブリン相当部分にそれぞれ52%, 34%および14%程度の放射能が認められる。3) 噛投与されたルテニウムは臓器全量については実験開始後10日目頃までは血液, 骨, 筋肉, 皮膚など全身における存在量の大きいものおよび肝臓, 腎臓などに多く, 投与量の10数パーセントないしは数パーセント程度である。中期においてもやはり筋肉, 皮膚, 肝臓, 腎臓, 骨などに多くみられ, この傾向は本実験の終了に至るまで同様であった。4) 臓器内への濃縮度は一般に腹部臓器に高い値を示すものが多く, 副腎, 腎臓, 膵臓, 月刊蔵ならびに脾臓などに濃縮が著しい。ことに腎臓は実験: の全期間を通じて高い値を示した。睾丸, 卵巣などの生殖腺も比較的大きい値をとっている。筋肉, 皮膚, 骨などはそれほど高い値を示してはいない。5) ルテニウムの尿および糞中への排泄は, 最初の2週間以内が急激で投与量の約65% (尿; 約50%, 糞; 約15%)が出される。本実験の終了までの総排泄量は投与量の約80% (尿; 約60%, 糞; 約20%) であ窮つねに尿中への排泄が糞中へのものよりも相当大きい割合で約3~4倍程度であった。これは体内からのルテニウム排泄の主要系路が, 腎臓をとおって尿中へ出されるものであることを示す。6) 体内のルテニウムの残存量を算出して, それによりルテニウムの生物学的半減期と106Ruの有効半減期を求め, それぞれ1, 8, 100日および1, 7.6, 78.5日をえた。またそれらの半減期の部分が占める割合はおのおの30%, 45%および251%程度である。そのほかの臓器についても同様の解析をして生物学的半減期と有効半減期を求めてある。このうち腎臓では24日および22.5日, 骨では2日, 150日および2.0日, 106日 (骨中における総量の約28%に当る部分) であった。これらの値はいずれもICRP勧告のものに比べてかなり長い部分を含んでいる。終りに本研究の実施にあたり終始ご指導とこ激励をたまわった日本大学歯学部長鈴木勝教授: に深く感謝申し上げます。また実験に関して種々有益なご助言をいただいた東京大学理学部斉藤信房教授ならびに東京教育大学理学部池田長生助教授, 本稿のこ校閲をたまわった日本大学医学部森信胤教授に厚くお礼申し上げます。本実験にたいしては本研究室の鈴木智哲氏, 大附敏海氏その他の方々のご助力を得た。また要した費用の一部は文部省科学研究費より支出した。記して感謝の意を表する。
著者
鈴木 千尋 佐々木 基樹
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.15-27, 2023 (Released:2023-02-09)
参考文献数
77

ニホンオオカミ(Canis lupus hodophilax)は多くの謎を残して絶滅した.これまで,謎に包まれたニホンオオカミの生物学的特徴の解明のため,形態学的な調査や議論が数多く行われてきた.テミンク(Temminck)が1839年にニホンオオカミの命名を行って以来,約180年の間,ニホンオオカミの分類学的位置に決着がつかずにいた.2009年以降になると,ニホンオオカミの遺伝学的手法を用いた解析が着実に進み,ニホンオオカミはオオカミ(C. lupus)の亜種とすることがほぼ確定された.形態学的な研究は,ニホンオオカミの系統進化学的位置を明らかにすることはできなかったが,それらはニホンオオカミの多くの形態の特徴を明らかにしてきた.特に頭蓋の形態において,二分する前翼孔や口蓋骨水平板後縁の湾入など他のオオカミ亜種やイヌ(イヌもオオカミの亜種であるが本総説では別途分けて記載する)とは異なる部位が複数あること,さらに,ストップ(額段)が発達しないといったオオカミの特徴と,小さく扁平な鼓室胞を有するといったイヌの特徴の両方を持つことが明らかにされている.これらニホンオオカミの形態学的特徴は,これまでにニホンオオカミの同定に対して重要な役割を担ってきた.また近年,CTスキャナーや3Dスキャナーによって得られたデジタルデータを用いた三次元画像解析が,ニホンオオカミを含むオオカミやイヌの頭蓋を対象に行われている.CT画像解析によって,頭蓋内部を非破壊的に検索することができるようになり,これまで困難であった頭蓋内部構造の詳細な把握,そしてそれらの定量解析が可能となった.また,CT解析では,頭蓋形態から推定される脳の外部形態を出力することが可能であり,今後ニホンオオカミにおいて脳機能の理解にそれを役立てることができるかもしれない.さらに,これら三次元デジタルデータからは実物形態を反映した模型の作製が可能であり,これらの研究分野での利用はニホンオオカミの様々な機能を解明する機会を我々に与えてくれるであろう.今後,さらなるニホンオオカミの生物学的特徴の把握のためにも,継続的な形態学的研究が必要である.
著者
荻島 大貴 濱村 憲佑
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.663-669, 2019 (Released:2020-08-31)
参考文献数
12

目的:腹腔鏡下子宮全摘術(Total Laparoscopic Hysterectomy:TLH)は,エネルギーデバイスの発達とともに普及してきた一方で,合併症も多く報告されている.当院でも本合併症が発生したため,原因分析と安全対策を行い,その有用性を検討した.方法:複数科での合同チームを作り,合併症の分析を行い,それをもとに手術手技の改訂を入れたTLHの定型化マニュアルと,手術開始前と終了時の安全確認のチェックリストを作成し,改訂前後での手術時間,出血量,合併症の有無について検討した.結果:改訂前のTLH件数は48件で手術時間の平均は133.1分,出血量は91.7ml,合併症は6例に対し,改訂後(39例)は手術時間162.0分,出血量53.6ml,合併症0例であり,手術時間の有意な延長をみるものの,出血量,合併症は有意に低下した.TLH+PL(Pelvic lymphadenectomy)でも,手術時間は延長(改訂前196.4分,改訂後271.2分)したが,出血量(改訂前222.9ml,改訂後53.1ml)および,合併症(改訂前1例,改訂後0例)には有意差はみられなかった.結語:複数科による安全対策マニュアルを作成し,運用することによって周術期合併症を減らすことができた.
著者
古賀 政利 井上 学 園田 和隆 田中 寛大 塩澤 真之 岡田 敬史 池之内 初 福田 哲也 佐藤 徹 猪原 匡史 板橋 亮 工藤 與亮 山上 宏 豊田 一則
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10776, (Released:2020-03-30)
参考文献数
46
被引用文献数
3 1

要旨:脳梗塞の診断にはCT もしくはMRI による画像評価が必須である.再開通療法の可能性があれば速やかに最低限必要な画像評価で再灌流療法の適応を決定することが重要である.2018 年に改訂された米国のガイドラインでは,来院から20 分以内に画像診断を行うことが推奨されたが,わが国のガイドラインには画像診断までの時間の推奨はない.わが国では普及率が高いMRI で急性期脳梗塞を評価している施設が多い.機械的血栓回収療法の適応判定には脳実質の評価に引き続き速やかな頭頸部血管評価が必要である.米国では発症6 時間超の脳梗塞に対してCT もしくはMRI を使用した脳虚血コア体積や灌流異常の評価による機械的血栓回収療法の適応を推奨しているが,わが国では灌流画像評価や迅速解析に対応した自動画像解析ソフトウェアが普及していない.急性期脳梗塞に対する適切な再灌流療法を行うための,わが国の医療環境にあわせた画像診断指針が必要であろう.
著者
足立 祐子 鄭 賢熙
出版者
新潟大学
雑誌
国際センター紀要 (ISSN:13461583)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.27-42, 2006-03

We have examined whether ideas containing gender bias occur in Japanese and Korean language textbooks used throughout Japan. Our analysis show the presence of stereotypes linked to gender differences within these textbooks, mainly occurring in cut-in illustrations and text in the format of conversation dialogues. Among these, ideas which show a pre-established assumption of the gender of a person solely on the basis of the exercising occupation or performing role within a family home were especially common. Language school teachers should be aware of those biased ideas not only related to gender bias, but also associated with cultural differences as well. Moreover, we believe there is a further need for more appropriate teacher's training programs in order to encourage gender bias free thinking and avoid culturally induced misconceptions.
著者
商業興信所 編
出版者
商業興信所
巻号頁・発行日
vol.第40回(昭和7年), 1932
著者
八尾 隆史 津山 翔 赤澤 陽一 上山 浩也
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1088-1094, 2019-07-25

要旨●十二指腸粘膜は正常では小腸型粘膜であるが,異所性胃粘膜や胃上皮化生をしばしば伴い,十二指腸で発生する腫瘍は腸型および胃型形質ともに存在することから,胃と同様の病理診断基準を用いることが可能と考えられる.早期病変の観察に基づく経験から導かれた病理診断基準に,胃上皮性腫瘍の形質発現や細胞増殖動態,遺伝子異常などのエビデンスを加え,構造異型の乏しい高分化上皮性腫瘍の病理組織学的診断基準(腺腫と癌の鑑別診断基準)をここで提唱する.
著者
吉田 和彦
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.164, pp.67-91, 2023 (Released:2023-08-19)
参考文献数
44

古代アナトリアにおいて楔形文字粘土板に記録されたヒッタイト語の音韻特徴として,子音の長さの対立は閉鎖音,摩擦音,共鳴音,喉音においてみられるが,破擦音については対立がないと従来考えられてきた。しかしながら,文献学の立場から古期,中期,後期ヒッタイト語という厳密な時代区分を行ったうえで分析すると,古期ヒッタイト語において母音間のシングルの-z-がアナトリア祖語の*dに遡る例があることが分かった。他方,シングルの-z-が*tを反映している例はない。この知見は,アナトリア祖語の*tiは*tsiになる一方,*diは*dziになるという音変化を示している。そして無声の破擦音はダブルの-zz-で書かれ,有声の破擦音は-z-で書かれる。子音の有声無声という特徴が閉鎖時間の長さと相関することはよく知られている。したがって,古期ヒッタイト語では破擦音にみられる子音の長さの対立がなお存続していたことが分かる。
著者
石井 大輔
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.85-90, 2007 (Released:2007-06-27)
参考文献数
8

音楽著作物は歴史の中で次第に社会性を帯び大量消費されていくことにより,著作権制度自体に大きな影響を及ぼし,著作権を集中管理するためのシステムがつくられていく.本稿はフランスにおける,アンシャン・レジームから革命期を経て19 世紀にSACEM の設立に至る法制度的,社会的側面から音楽著作物の流通・利用と音楽著作権の生成,発展の過程を追う.そこでは楽譜出版の歴史,フランス著作権制度,音楽著作権の管理団体の勃興が取り扱われる.

8 0 0 0 OA 株式年鑑

著者
野村商店調査部 編
出版者
野村商店調査部
巻号頁・発行日
vol.大正10年度, 1926
著者
肥爪 周二
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.164, pp.1-16, 2023 (Released:2023-08-19)
参考文献数
31

平安時代,平仮名・片仮名による日本語表記が定着した後,そのシステムでは表現できない要素(撥音・促音のような新音韻や,外来語音)を,どのように組み込もうとしたか,特に「書き分けない」という選択をした事例に着目して考察した。 清濁を書き分けないことについては,「にごり」が持っているプロソディ的な性質と結びつける解釈が行われてきた。本稿では,促音・量的撥音便の撥音が零表記であったのも,音長というプロソディの範疇の性質を持つためと考え,さらに,守護国界主陀羅尼経長保頃点の,開拗音・合拗音全般を直音表記する方式も,「拗」の要素をプロソディ的に把握したものであった可能性を指摘した。つまり「書き分けない」要素は,いずれもプロソディに類する性質を帯びたものであって,たとえ外来音・新音韻など,既存の仮名の外側にある要素であっても,プロソディ的な把握に馴染まないものは,表記を工夫して書き分けることを志向すると推定した。
著者
陸軍省 編
出版者
陸軍省
巻号頁・発行日
vol.昭和12年(第49回), 1939
著者
阿部 顕三 安達 貴教 花薗 誠 大湾 秀雄
出版者
中央大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

本研究では、日本酒の経済分析(サケノミクス)に関する萌芽的研究を行った。調査研究では、聞き取り調査によって、日本酒の生産者の効率化や輸出と差別化の関連に関する示唆を得た。実証研究では、小売データを用いて、季節的な消費行動の変化や他のアルコール飲料との代替性などについて示唆を得た。また、理論分析おいては、大企業と小企業が共存する経済モデルを応用し、日本酒に対する需要変化の影響を明らかにした。