著者
遠藤 央 Hisashi ENDO 京都文教大学総合社会学部 KYOTO BUNKYO UNIVERSITY Department of Social Relations
出版者
京都文教大学
雑誌
総合社会学部研究報告 = Reports from the Faculty of Social Relations (ISSN:21888981)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-9, 2012

1990年に現在のパラオ共和国を訪れたとき、そこはまだ独立以前の国際連合の「戦略的」信託統治領であり、独立への道を模索している最中であった。さまざまな話を聞いたなかで印象的であったのは、敗戦後の引き揚げのなかで残されてしまった、両親がともに日本人であったこどもの話であり、日本統治がどのような影響を与えたのかを知ろうとする現地の人々の主張であった。それらは、いわゆる「外地」の比較を帝国研究のなかでどのように位置づけることができるのかを研究するきっかけとなるものであった。敗戦後すぐにいわゆる帝国臣民は「日本人」と「非日本人」と分類され、「日本人」は外地から内地へ引き揚げ、「非日本人」は内地から外地へ、外地から外地へ、あるいはまれな事例であるが、外地から内地へと移動することになる。「日本人」は「連合国国民」、「中立」、「敵国民」、「戦争の結果扱いが変更された国民」、「朝鮮人及び台湾人」に分類された。それらの人々がどのように移動し、また移動できず(せず)、そのことがどのように戦後秩序に影響したかを考察することが必要である。なぜなら、帝国研究において、まがりなりにもイギリスやフランスは、植民地の人々が旧宗主国に移動し、政治的な影響力を行使できるようになることで、「宗主国の脱植民地化」がおこなわれたのに対して、日本と米国はそうしたプロセスを経ていない点に特徴があると指摘されているからである。
著者
飯田 明由 岩崎 正志 水野 明哲 Iida Akiyoshi Iwasaki Masashi Mizuno Akisato
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構特別資料: 境界層遷移の解明と制御研究会講演論文集 第37回・第38回 = JAXA Special Publication: Proceedings of the 37th and 38th JAXA Workshops on Investigation and Control of Boundary-Layer Transition (ISSN:1349113X)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-SP-06-013, pp.43-46, 2007-02-23

Nowadays, the flight distance of champion team of the birdman rally contest was over 400 m. In order to break the record, we have to consider the weather conditions, flight conditions and design optimization of the glider. For this purpose, we developed the three-dimensional flight simulator and the optimization program based on genetic algorithm. The simulation result of the three-dimensional flight simulator was reasonably agreement with the real flight. GA (Genetic Algorithm) optimization was carried out with two hundreds samples and fifty generations. The dominant genes of airplane for the contest were obtained with GA. The performance map showed the optimal airplanes such as the champion team were sensitive and not easy-handle. The simulator was suggested another optimized model with flexible wing that was not sensitive to flight conditions. The proposed model got the fourth prize and the referee's award of the birdman rally contest 2005.
著者
有馬 和代 島村 珠枝 伊藤 美樹子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.608-617, 2021-09-15 (Released:2021-09-07)
参考文献数
35

目的 本研究は,地域DOTS実践に積極的関与が期待される行政保健師を対象とし,地域DOTS実践の質の現状を『服薬支援』,服薬支援を除く『個別的患者中心支援』,『関係機関連携』の側面から評価し,これらの実践の質に影響を与える要因を個人要因と組織要因から明らかにして,行政保健師の力量形成上の課題を明確化する。方法 2015年の結核罹患率15以上の自治体で結核患者支援に携わる行政保健師958人を対象に,自記式質問紙調査を行い410人の有効回答を得た(有効回答率42.8%)。地域DOTS実践の質は,結核患者支援のエキスパート保健師との文献検討により『服薬支援』,『個別的患者中心支援』,『関係機関連携』の側面を,各々10点満点で評価した。これらと結核対策の実施体制(組織要因)および保健師の結核患者支援経験・意欲や学習状況(個人要因)との関係を,重回帰分析にて検討した。結果 地域DOTS実践の質の得点は,『服薬支援』(7.54±1.69),『個別的患者中心支援』(6.68±1.53),『関係機関連携』(6.91±1.63)であり,『服薬支援』が有意に高かった。『個別的患者中心支援』は4人に1人が10点中5点以下と,自身の活動を低く評価していた。『服薬支援』,『個別的患者中心支援』,『関係機関連携』の間には強い関連があり,特に『個別的患者中心支援』と『関係機関連携』間はr=0.787と関連が強かった。地域DOTS実践の各重回帰モデルに共通して有意な項目は,組織要因では,“個別支援計画を作成”(β=0.112~0.270),“検討会に受持ち患者の個別支援計画を提示”(β=0.113~0.173),“コホート検討会への参加”(β=0.129~0.167)であり,個人要因では,保健師経験年数(β=0.210~0.316)で,いずれも正の関連を示した。また『関係機関連携』のモデルでは,“専門書や雑誌を読む”(β=0.108)が正の関連を示した。結論 行政保健師の自己評価による地域DOTS実践の質の充実には,得点が低く,他の側面との関連が強い『個別的患者中心支援』が優先課題であると言える。また,DOTS実践の質を高めるには,DOTS評価に保健師が参画し,個別患者支援計画の立案や支援計画を提示するとともに成績評価に関わることが有用であることが示唆された。
著者
小池 リリ子 瀬田 史彦 小泉 秀樹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.1161-1168, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
10

シェアビレッジプロジェクトは個人では維持が困難になった地域で思い入れがある古民家を、会員制民宿ネットワークとして活用し、多くの人々によって維持していこうという取組で現在秋田県五城目町と香川県三豊市仁尾町に開設されている。本プロジェクトによって古民家が開かれた地域や首都圏に在住する会員の関わり方にどのような変化があったのかを知るため、各地域で合計66名に対しインタビュー調査を行い、その回答からコミュニティの構成員を属性別に分け、グループ対グループのグラフ解析を行った結果、プロジェクト開始前後の人々の関わり方について、地域と首都圏の会員の繋がり以外にも、コミュニティの各グループが関わる新たな結びつきが見られた。このプロジェクトの展開により、首都圏コミュニティが地域コミュニティと繋がりやすくなっただけでなく、地域コミュニティ間でも繋がりの変化を生んだ。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1123, pp.81-88, 2002-01-07

231位次期社長選びは混乱の末に決着も「3の倍数経営」はあまりに日本的。いくら日本が「瑞穂の国」でも、こんなところまでこだわらなくても302位アイワイバンク銀行のATMでポーズを取る安斎隆・同社社長。でも、金融との相乗効果よりも本業の立て直しが先決かも(写真:時事通信)446位米投資会社リップルウッドとの間で、シーガイアの運営契約を結んだ。
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュータ = Nikkei computer (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.964, pp.28-31, 2018-05-10

特に防衛省は、総務省発表の92.7%に対し除外文書も含めた電子化率は6.5%にまで低下する。利用環境が整っている部署が内部部局と陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊の幕僚管理部など、東京・市ヶ谷の本省ビル内にある部局に限られているためだ。陸海空の3自…

1 0 0 0 OA 堺市史

著者
堺市 編
出版者
堺市
巻号頁・発行日
vol.第6巻 資料編第3, 1931
著者
長尾 侑架 大園 享司 広瀬 大
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.85, 2011

葉や茎を変形させてアリ類を営巣させ、それらのアリ類と密接な相利共生関係を結ぶ植物をアリ植物という。アリと菌類の共生関係として、ハキリアリ類との栽培共生がよく知られている。近年では、アリ植物やその共生アリとのあいだにユニークな関係を持つ菌類が相次いで発見されており、植物―アリ―菌類の三者間相互作用系に注目が集まっている。演者らは、アジア熱帯に分布するアリ植物のオオバギ―シリアゲアリ共生系を材料として、この相互作用系を明らかにする目的で研究を進めている。本発表では、<I>Macaranga bancana</I> 茎内のアリの巣から出現する菌類の多様性と機能についての予備調査の結果を報告する。2009年6月にマレーシアのランビルヒル国立公園において、内側がアリ室として利用され黒色化した茎(直径1cm、長さ2cm、軸方向に半分割)20片を採取した。これら試料片を20℃の湿室内で2週間培養し、出現した菌類の形態観察とDNA塩基配列(ITS領域、28S)により分類群を検討した。その結果、9分類群の菌類が得られた。<I>Nectria haematococca</I> と<I>Lasiodiplodia theobromae</I> の2種はいずれも20試料片中13片(出現頻度65%)ともっとも高頻度で出現した。<I>L.theobromae</I> はマンゴーやカカオの病原菌として知られるが、本種の黒色菌糸はアリ室内部の黒色化に関与している可能性がある。<I>Isaria takamizusanensis</I> はアリ室に共生するカイガラムシの関連菌と推察される。このほか昆虫関連菌と考えられる分類群や、リター菌・土壌菌である<I>Aspergillus niger</I> などが分離された。加えて、アリ植物の葉に見られるfood bodyおよびアリからも菌が分離されており、その結果も合わせて報告する。今後はこれらの菌類種のアリ室における生態的な役割を調べるとともに、オオバギ属の他の植物種を対象とした菌類多様性の比較調査を行う予定である。
著者
久保田 正伸
出版者
日経BP社
雑誌
日経パソコン (ISSN:02879506)
巻号頁・発行日
no.426, pp.142-147, 2003-02-03

都市銀行や地方銀行のほとんどがインターネットを使ったバンキングサービス(以下ネットバンキング)を提供している。実際の店舗が一切存在しない「ジャパンネット銀行」などのネット専業銀行も登場しているし、「アイワイバンク銀行」などの新興勢力もネットバンキングを特徴にする。常時接続ならネットバンキングを活用しない手はない。
著者
関根 康正
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.504-505, 2009-12-31
著者
布川 清彦 井野 秀一 関 喜一 酒向 慎司
出版者
東京国際大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

本研究の目的は,視覚障害者の環境認知における白杖を用いて能動的に作られた音の効果を実験的に検証することである.目的を達成するために次の4つの研究を計画した.研究1:白杖によって作られる音情報(反響音の物理的効果)の分析,研究2:白杖 によって作られる音情報における人の効果検証,研究3:白杖によって作られた音情報の効果検証,研究4:総合考察.本年度は,研究1と2を実施した.研究1と2の両方で,推定する対象を硬さにした.硬さを推定する対象としては,一辺の長さが300mmの正方形で,その厚さが12mmであるゴム板を用いた.また,使用する白杖には,視覚障害者に広く用いられているアルミニウムの主体とペンシルチップ(石突き)を用いた.研究1では,人を介在させずに機械的に一定の高さから白杖の先端を自動的に落とす装置を作成した.この装置を用いて,機械的に対象を打った時の音を録音した.ゴムの硬さは,20度から10度刻みで90度までの8種類を用意した.そして,周波数分析を行うプロトコルを作成して,周波数分析を行い,硬さに対する基本的な白杖の打撃音の特性を検証した.研究2では,白杖ユーザが利用する代表的な3種類の握り方を条件として,視覚障害白杖ユーザと晴眼大学生を実験参加者として,白杖で対象となるゴム板を叩き,触覚情報と音情報の両方を利用して主観的な「硬さ感覚」と「空間の広さ感覚」をマグニチュード推定法を用いて硬さを推定する実験を行った.研究1の一部について,国内学会で発表し,そのプロシーディングを出版した.
著者
安斎 隆 原田 亮介
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1232, pp.112-115, 2004-03-08

問 2001年5月の開業から約3年経った2004年3月期決算で、初の最終黒字に転じる見込みになりました。 答 黒字と赤字は全く違いますね。会社にとって資本がいかに大切かがよく分かりますよ。 社長を引き受けた時に、これほどうまくいくという展望はありませんでした。
著者
宮城谷 昌光
出版者
中央公論新社
雑誌
中央公論 (ISSN:05296838)
巻号頁・発行日
vol.135, no.5, pp.198-207, 2021-05
著者
岡村 由美子
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床. 補冊 = Practica otologica. Suppl. (ISSN:09121870)
巻号頁・発行日
vol.98, pp.49-51, 1998-05-25
参考文献数
3
被引用文献数
1

Sai-rei-to is believed to have steroid-like properties, and is often used to reduce the amount of steroids prescribed to patients. In facial nerve paralysis, steroids are often used to reduce the amount of edema in the area of the damaged nerve. We have noted Sai-rei-to's steroid-like properties, and thus investigated whether recovery from facial nerve paralysis can be expedited when this drug is used in combination with steroid during periods when the dosage of the steroid is being reduced. Moreover, we administered Sai-rei-to to those patients unable to receive steroids due to complications in order to assess whether it can produce effects similar to steroids.<BR>In patients with facial nerve paralysis, we provided a regular intravenous drip and administered the steroids orally, and then used Tsumura Sai-rei-to in combination during those periods of steroid reduction. This regimen increased the rate of improvement from the paralysis. We also gave Saireito to patients suffering from steroid-related complications during the course of their treatment, and observed remarkable improvements thereafter.
著者
本間 光雄 大場 覚 奥原 博久 大道 重道 河合 寿一
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.294-303, 1978

1972年8月~1977年2月間に当院において後腹膜領域での緊急症例にAngiographyを応用した症例の実態を報告すると共に, その中で, 比較的Major injuryの腎損傷例の4例について, 腎動脈造影所見を中心に報告した. すなわち<br>1) Emergency angiographyの実施例は総数23例で, うち診断確定例は17例(73.9%)であつた. 内訳は腎損傷5例, 腎梗塞6例, 腎実質内出血4例, 腎静脈塞栓及び早期の腎癌各1例であつた.<br>2)腎損傷の4例はすべて腹部単純及びD. I. P. 像共に異常所見がみられたが, その進展及び程度を知る上では腎血管像が大切であつた.<br>3)腎外性血腫を伴つた2症例では, 動脈造影の早期静脈相で, 既に腎過誤腫の所見として記載されている, いわゆるWhorled "Onionpeel" appearanceとしての濃染像がみられた.<br>この所見はAngio嫁においてPerirenal hematomaの有力な診断所見と考え強調した.
著者
田邉 和孝 杉本 真一 久保田 豊成 久保田 恵子 影山 詔一 高村 通生 小川 晃平 武田 啓志 橋本 幸直 徳家 敦夫
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.92-99, 2014-02-01 (Released:2014-02-11)
参考文献数
49

症例は47歳の男性で,前日からの腹痛の増悪,嘔吐の出現,意識レベル低下にて救急搬送となった.来院時,意識レベルIII-200(JCS),血圧測定不能,血液ガス検査で代謝性アシドーシス認め,ショック状態であった.腹部造影CTにて腹腔内に多量の遊離ガスと腹水を認め,肝臓と腎臓実質の造影効果は不良であった.消化管穿孔に起因するショック状態と診断し,緊急開腹手術を施行した.多量の汚染腹水,遊離ガス,食物残渣を認め,肝臓は虚血性変化を呈していた.胃底部から体部前壁に壊死を伴う破裂部を認めたため,胃全摘術を施行した.成人の特発性胃破裂はまれであり,過食などによる胃拡張状態に,嘔吐などに伴う胃内圧の急激な上昇や,あるいは胃壁の血流障害に伴う壊死が原因とされている.破裂孔が大きいため,胃内容物の腹腔内流出量が多く,腹部コンパートメント症候群を呈し重症化することがあり,一般的に予後不良とされている.
著者
植田 吉宣 進藤 廣成 安達 登 山根 貴夫 齋藤 元伸 亀岡 信悟
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.11, pp.2724-2728, 2015 (Released:2016-05-31)
参考文献数
23

症例は13歳,女児.急性の心窩部痛・吐血から意識障害をきたし,ショックの状態で当院へ救急搬送された.腹部CTでは大量の腹水およびfree airを認め,消化管穿孔による汎発性腹膜炎と診断し救命処置を行ったが救命できなかった.剖検したところ,胃底部前壁に約1.5×1.3cmおよび1.3×1.0cmと2箇所の破裂部位を認めた.破裂原因は不明であり,特発性胃破裂による汎発性腹膜炎およびショックによる死亡と診断した.本症例は胃底部の特発性胃破裂と考えられる病態による急激な転帰で死亡に至った例であり,非常に稀な症例と思われるため若干の文献的考察を踏まえ報告する.