出版者
国立国会図書館
巻号頁・発行日
no.(259), 2014-03
著者
渡部 直樹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.143-170, 2000-04

ゲーム理論は,行為者にとっての状況を理念的に再構成することで,行為者の選択を説明するものである。近年の進化論的ゲーム理論の誕生以来,協調的な制度や規則の説明がより容易になってきた。協調的な関係を分析する場合,以前より注目されていた問題は,囚人のジレンマ・ゲーム状況で,外的な拘束力なしで協調関係が出現し,維持できるかということであった。多くの研究者がこの問題に取り組んだが,その中で最も高い評価を受けたのが,アクセルロッドの研究であった。彼はESSに近似した集団安定性という観点から,常にフリー・ライディングが存在する問題状況でも,「シッペ返し」という協調的な規則が自生的に集団安定(ESS)になると主張した。しかし当稿では「シッペ返し」も少数では,「全面裏切」が支配する集団には侵入が困難であると明確にされた。一方,タカ-ハト・ゲーム(チキン・ゲーム)は,フリーライディングのインセンティブの下でも協調関係が可能な問題状況である。この状況下で協調的な慣習・規則が,自生的に出現できることを示したのが,サグデンの「自生的秩序」の議論である。この議論はナッシュ解が協調的な規則によって実現可能になるというもので,わが国企業をめぐる協調的関係,つまりカシカリ関係や系列生産を説明する上でも有効なものである。
著者
鈴木 邦夫
出版者
埼玉大学総合研究機構
雑誌
総合研究機構研究プロジェクト研究成果報告書
巻号頁・発行日
vol.平成23年度, 2012

一般研究 : 基礎研究
著者
椛 勇三郎 西田 和子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.98-106, 2007

<b>目的</b>&emsp;近年,眼精疲労を引き起こすと考えられる生活習慣の激変が子どもたちの視力低下を引き起こしているのではないかと懸念されている。本研究では,女子中学生の視力低下に関連する要因を検討するために,生活習慣や生活環境に着目し視力低下との関連性を評価することを目的とした。<br/><b>方法</b>&emsp;女子中学生を対象に生活習慣に関する横断的調査を実施し,視力低下要因に関する統計的分析を行った。屈折力の測定を行わない学校健診では,精度が高い測定を期待することは難しい。また,変数によっては非対称で右に裾を引く分布およびはずれ値が存在する。これらの影響を受けにくくするために,本論文では対象とする変数をすべてカテゴリー化してロジスティックモデルによって解析した。ロジスティックモデルの構築には,グラフィカルモデリングによって要因間の相互関連性を調べたうえで,AIC(赤池情報量基準)によるモデル選択技法を適用した。<br/><b>結果</b>&emsp;ロジスティックモデルより得られた主要な結果として,自宅や学習塾での勉強時間,読書時間,親や兄弟のメガネやコンタクトレンズの使用状況,睡眠時間で調整した TV からの視聴距離が「2 m 未満」の「2 m 以上」に対する調整オッズ比は2.08で有意であった(95%CI: 1.23-3.50)。しかし,TV の視聴時間が「2 時間以上」の「2 時間未満」に対する調整オッズ比は,1 に近くモデルに選択されなかった。自宅や学習塾での勉強時間が「2 時間以上」の「2 時間未満」に対する調整オッズ比,読書時間が「2 時間以上」の「2 時間未満」に対する調整オッズ比,親や兄弟がメガネやコンタクトレンズの「使用あり」の「使用なし」に対する調整オッズ比は,いずれも有意であった。<br/><b>結論</b>&emsp;以上より,女子中学生の視力低下に関連する要因として「TV からの視聴距離」のほうが「TV の視聴時間」よりも強い関連性を持つ要因であることが示唆された。さらに,視力低下要因の多変量的評価をオッズ比で与えた結果は,教育現場における生活習慣,生活環境の改善を推進する上で有意義なものと考える。
著者
宍戸 常寿 工藤 郁子 クロサカ タツヤ 庄司 昌彦 山本 龍彦
出版者
総務省情報通信政策研究所
雑誌
情報通信政策研究 (ISSN:24336254)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.201-224, 2020-12-01 (Released:2021-01-07)

日本が目指すべき未来社会の形としてSociety5.0が提唱されてから数年が経ち、デジタル経済社会においてはサイバー空間とフィジカル空間の融合は深化している。そこでは、Society5.0の名の下にイメージされていた創造性の発揮や利便性の向上が見られる一方で、従来の個人情報保護政策や競争政策の枠では捉えきれないデジタル経済社会における「新たな課題」も出現してきている。このような「新たな課題」を適切に捉えるためには、現在起きている地殻変動を、単にサイバー空間の領域が拡張し、フィジカル空間を侵食しているものとイメージするのではなく、むしろ、サイバー空間における活動とフィジカル空間における活動が、データの流通を介して相互に深く影響を与え合うという関係性・循環性を適切に認識することが重要である。そのようなサイバー空間とフィジカル空間の活動がデータの流通を介して相互に深く影響を与え合う相互の関係性・循環性を含む総体としての「ネットワーク空間」における状況と課題について、大きく4つの議題(「ネットワーク空間の環境変化とその背景」、「環境変化に伴う社会経済的な課題」、「課題解決に向けて採るべき政策、目指すべき姿」、「新型コロナウイルス感染症拡大に係る問題意識」)に分け、それぞれについて話題を提起しつつ、有識者による議論を行った。
著者
小阪 玄次郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.59-69, 2018-12-20 (Released:2019-02-12)
参考文献数
41

本稿の目的は,破壊的イノベーションによる転換期に,転換への適応が困難な既存企業とアライアンスを結んで新規技術を提供する,という新興企業の事業機会について検討することである.市場調査業界における技術転換を事例として分析した結果,業界の既存企業,新規技術を用いる先発の新規参入企業,および後発の新規参入企業の者の間での競争関係が,新旧3企業間でのアライアンスの先行要因として示唆された.
著者
近藤 智靖 高橋 健夫 岡出 美則
出版者
Japanese Society of Sport Education
雑誌
スポーツ教育学研究 (ISSN:09118845)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.11-26, 2005-07-01 (Released:2010-08-10)
参考文献数
25

身体経験論は、ドイツのスポーツ教授学分野の中の一つの考え方である。この考え方は、現在のノルトライン・ヴェストファーレン州学習指導要領に一定の影響を与えている。本論ではその論に着目し、その概念や実践及びそれを巡る論議についてFunkeとGrupeとの関わりを中心に考察を進めていく。この検討を通じて身体を教科の中で位置づける際に、何が論点になるのかを明らかにする。結果、次の点が明らかになった。1. Funkeが身体概念を検討する際に、常にGrupeの存在を意識していた。Grupeの理論にFunkeは一方で共鳴をしつつ、他方でその在り方に疑問を呈していた。2. 1983年のADL大会でFunkeの考え方はGrupeによって批判された。Grupeは身体経験概念の不明確さと経験の選択基準の曖昧さを批判した。しかし、この批判を契機としてFunkeは理論や実践を再考しはじめた。こうしたドイツの身体経験論の論議と変容過程を踏まえて、我が国の体育科教育学分野で身体の問題が議論されるべき際に論点となることは次の三つである。1. 体育科教育学において身体概念をどのように捉え、どのような論議をしていくのか。2. 学習内容を設定する際に、どのような経験を保証し、その選択基準をどうするのか。3. 学習内容に適した素材をどうするのか。
著者
佐藤 洋美 上野 光一
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第45回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S20-2, 2018 (Released:2018-08-10)

薬物治療において薬効や副作用に男女差が現れる場合がある。実際には薬力学的および薬物動態学的な発現機構が組み合わさって臨床的性差として現われる。 薬物の体内動態の観点では、薬物の血中濃度は主に分布容積とクリアランスにより決定されるので、分布容積に差を与える要因、すなわち脂肪含量・循環血液量・筋肉量・肺胞面積等の違いや、腎クリアランスが女性で小さいことなどから、一般に女性で血中薬物濃度が高くなりがちである。 薬物代謝の観点では、ヒトの多くの薬物代謝反応に関与するCYP3A4の性差については女性で活性が高いとする報告が比較的多いが、肝臓と小腸で状況は異なる。一方、近年のヒトCYP3A4導入マウスを用いた検討で、雌性マウスにおいて肝臓CYP3A4発現および活性が雄性ラットよりも高いことが示されている。他のCYP分子種の性差も報告されているが、見解が一致するものは少ない。また、薬物の吸収や排泄に影響を与えるトランスポーターの性差もクリアランスに影響を与える要因であるが、薬物排出トランスポーターであるP-gpの性差も示唆されている。 薬理作用の観点では、片方の性で強めに薬効が発現する例として、塩酸ピオグリタゾン、トリアゾラム、SSRIなどは男性に比べて女性で強く現れる。さらに、薬剤性肝障害やアレルギー性皮膚炎も女性に多い。これらの要因には、性ホルモンや免疫機能あるいはセロトニンなどの受容体の性差が関与することが明らかにされつつある。 性差は加齢によって変動する場合もある。加齢による性ホルモン分泌量や生理機能変化の影響は考慮が必要である。動物種間で性差の出方も異なる。どのような人(動物)を対象に、いつ何で観察された事象であるのかも含めて、情報を整理する必要がある。本発表では、薬物動態や代謝に性差の見られる医薬品について、最近の知見も含めて紹介する。
著者
渡辺 敦子 鷲谷 いづみ
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.65-76, 2004
参考文献数
63
被引用文献数
1

生物多様性の保全という社会的要請に応えることを目的とする保全生態学が集積する知見は,一定の整理を経た後に実社会を動かす政策に反映されることが必須である.ここでは,数年前から生物多様性保全に関わる政策にめざましい進展が認められる日本と,以前から環境保全に関わる先進的な政策を実践しながらも生物多様性条約を批准していない米国について,生物多様性保全上重要な課題のうち,「絶滅危惧種の保全」,「外来種対策」,「遺伝子組み換え生物のバイオセーフティ」にかかわる政策を社会的環境とその歴史的背景および,法的な整備と運用の現状の面から比較・考察した.米国において比較的早くから自然保護・生物多様性保全に資する政策が発展した要因としては,一つにはヨーロッパからの植民と建国以来の激しい自然資源の収奪や大規模な農地開発による生態系の不健全化に直面して醸成された自然保護思想や市民運動の隆盛があった.それと併せ,バイオテクノロジーの発展との関連で生物多様性の経済的価値を強く意識した産業界の思惑および生物学者の政策意思決定への積極的な関与などがあったといえる.それに対して,日本における保全政策は1993年の生物多様性条約への加盟をきっかけとし,過去10年間に関連法整備が進められ,それら法制度整備の有効性に関する評価・改善は今後の課題である.しかし,国内の生物多様性の衰退が急速に進んでいる現状を鑑みると,保全生態学には自然科学としての科学的な厳格さに加え,政策意思決定へのより効果的な寄与が求められるといえよう
著者
青木 純一 堀内 正志 Junichi Aoki Masashi Horiuchi
出版者
日本女子体育大学
雑誌
日本女子体育大学紀要 (ISSN:02850095)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.17-26, 2014-03

This paper mainly discusses three aspects of the transition of teachers' workload and the surveys of their working conditions. The first part deals with the transition and features of teachers' workload in the postwar period. Particularly intriguing is the fact that the 1990s saw the quality shift of their work from overwork conditions to feelings of stresses and strains. The second part discusses the newly conspicuous features in the 1990s from three points of view with reference to the previous studies; marketing of education, an increasing emphasis on students' individuality and diversity, and disclosure of information and accountability in education. The last part makes clear the features and issues of the surveys of teachers' working conditions conducted by boards of education, claiming that higher quality field surveys be needed.
著者
前原 光雄
出版者
慶應義塾大学法学研究会
雑誌
法學研究 : 法律・政治・社会 (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.88-90, 1977-06

小池隆一先生追悼記事
出版者
日経BP社
雑誌
日経ものづくり (ISSN:13492772)
巻号頁・発行日
no.777, pp.38-43, 2019-06

スペースXは早い段階から、ロケット本体の回収・再利用という構想を抱いていた。2002年の創業当時、スペースXが掲げていた目標は「小型の衛星を打ち上げるための、小型で低価格の簡素な設計のロケットを開発し、商業打ち上げを行う」だった。そのために開発したロケットが「ファルコン1」だ。
著者
堀井 新
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.300-304, 2016 (Released:2017-03-23)
参考文献数
17

症例の少ない小児のめまい診療ではその原因疾患を年齢別,頻度別に理解することが重要である。小児で最多のめまい疾患は良性発作性めまい(BPV)および前庭片頭痛(VM)で,この2疾患で全体の約40%を占める。ともに発作性めまいを繰り返し,BPVは5歳以下の低年齢で見られ,その後片頭痛を発症するとVMと診断される。VMでは変動する蝸牛症状がみられる場合もあり,他の内耳疾患との鑑別が治療上の問題点となる。めまいの予防には片頭痛の予防薬である塩酸ロメリジンを,頭痛に対しては片頭痛治療薬を用いる。乳児期には難聴や運動発達遅滞から内耳奇形や小脳奇形が発見されることがある。幼児期は急性小脳炎やムンプス,ハント症候群などウイルス感染症および小脳腫瘍の好発年齢であり注意する。児童期には成人と同様BPPVやメニエール病も見られ始め,起立性調節障害が増加する。この疾患は治療上,社会心理要因の合併に注意が必要である。