著者
吉田 雅子
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
no.1, pp.13-14, 2009-03-07

早稲田大学日本語センターで行われた(2007年度秋学期)漢字クラスの7B・7Fクラスの読みテストの結果と誤答の傾向を紹介する。課題作文を紹介し、彼らの文章力を読みのテスト結果と比較する。漢字圏の学習者は必ずしも高得点を取らない。漢字テストの結果と文章力は比例しない。授業の成功は、学習者の意欲による。などの結論をみた。
著者
折原 有美 石井 正子 Yumi Orihara Masako Ishii
出版者
昭和女子大学近代文化研究所
雑誌
学苑 (ISSN:13480103)
巻号頁・発行日
no.956, pp.32-47, 2020-06

In instructing children with selective mutism in the field of education, it is necessary to conduct a multi-faceted assessment of each child to enhance their power of expression in a way that suits them in terms of their ability, interest, concern, willingness and motivation.In this study, the goal is to assess the effectiveness of instruction by reporting the progress of a case where three teachers, including one of the authors of this paper, were involved in the instruction in a resource room of a child "G", aged 6, who has selective mutism.G has a level of intellectual development appropriate for her age, but was highly anxious and could not speak in a group. In the resource room, small-group "communication" and "physical exercise" programs were combined with individualized instruction, and were conducted once or twice a week. The instruction entailed physical exercises and painting, which G is good at. Teachers conducted communication skill training by acting in short skits. As a result of yearlong comprehensive instruction, the symptoms of selective mutism declined; G could express her thoughts more actively than before. The instruction seemed to have had some effect. However, at the beginning of the second part of the year, G could no longer attend regular class. Thus those assisting in her recovery have more work to do.
著者
中枝 武弘
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.1749-1754, 2006-11-01 (Released:2008-11-01)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

近年の広色域ディスプレイの開発を踏まえ, 現在のディジタルビデオ信号規格であるITU-R BT.709/601規格の上位互換で, より広色域な色空間の規格であるxvYCC規格 (IEC61966-2-4) が2006年1月に制定された. 本稿では, まず映像信号のさまざまな広色域化の方法を述べ, さらに, xvYCC規格の内容や広色域化の効果, ディスプレイの色域との関連について解説する.
著者
木村 堅一 深田 博己
出版者
対人コミュニケーション研究会
雑誌
対人コミュニケーション研究 = The Japanese journal of interpersonal communication (ISSN:21874433)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-16, 2013-03

本研究の目的は、エイズキャンペーンへの参加が、参加者のエイズに関する意識改善にどのような効果を生じさせたかを検討することであった。大学生92名をエイズキャンペーン参加群65名と不参加群27名に配置し、キャンペーンの前後でエイズに関する意識を同じ質問紙によって測定した。その結果、36変数中5変数で変化が認められた。キャンペーン参加群は不参加群よりも、コンドーム使用の規範認知が増加し、HIV感染者・エイズ患者(PWH/A)との共生行動のコスト認知が減少した。また、PWH/Aとの共生行動の報酬認知が増加し、PWH/Aとの共生行動意思が強まった。本研究で取り上げたエイズキャンペーンは、HIV感染予防に対しては目立った効果を生じさせないが、PWH/Aとの共生に対しては特定の効果を持つことが証明された。
著者
久貝 忠男 知花 幹雄
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.260-263, 1999-07-15 (Released:2009-04-28)
参考文献数
16
被引用文献数
2 4

症例は52歳, 男性である. 左内胸動脈瘤を合併した狭心症に対し, 動脈瘤の切除と内胸動脈再建, 前下行枝に右内胸動脈にて一枝バイパスを行った. 瘤は動脈硬化性であった. 内胸動脈瘤の発生はまれで, これまでの7例の文献報告によると von Recklinghausen 病や川崎病などが病因となり, 若年女性に多く発生している. また, 破裂が2例ある. 手術は瘤切除が主体で, 血行再建の報告はない. 本症例は非常に興味あるもので, 症例を呈示するとともに文献を集計して考察する.
著者
西村 みずき 川瀬 正昭 江藤 隆史
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.1651-1655, 2016-10-01

症例1(56歳女性)。2年前より左中指遠位指節間関節(DIP)に10mm大の単発性角化性結節が出現した。症例2(39歳女性)。3年前より左示指に4mm大の単発性角化性結節が出現した。症例3(51歳男性)。2年前より左足底に15mm大の類円形角化性局面が出現した。いずれの症例も他院にて尋常性疣贅と診断され、液体窒素療法などの治療を受けるも無効で、著者らの皮膚科へ紹介となった。治療として削り処置、液体窒素療法のルーチン処置に加え、ビタミンD3軟膏-50%サリチル酸ワセリン絆創膏連結療法が行われたが効果は乏しく、モノクロロ酢酸塗布療法に変更した結果、治療開始3~6ヵ月で病変の消失がみられた。
著者
高木 章好 梶田 哲 豊田 典明 山本 明美
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.148-151, 2000-04-15

ウイルス性疣贅の一型である尋常性疣贅の中には液体窒素による凍結法などに反応せず,治療に苦慮する症例がある.今回我々はモノクロロ酢酸による腐食療法を行い,本法が安価で簡単,安全かつきわめて有効な治療と思われ報告する.方法は,少量のモノクロロ酢酸飽和水溶液を楊枝の先で直接疣贅に塗布し(疣贅上に付着した液を数回軽く突くようにして疣贅内に浸透させるが,周囲に流れないように気をつける),乾燥を確認し帰宅させ,処置した日は入浴をさける.原則とし1週間に1度の間隔で施行した.結果は,1998年1月から6月まで総数377例,男171例,女206例に施行し,最年少は2歳男児,最高齢は83歳女性であった.ほとんどの症例で著効または治癒し,不変,悪化は足底で1.8%,手背は0.6%であった.
著者
鈴木 勉 尾崎 雅彦 鈴木 雅美 矢島 義識 成田 年
出版者
一般社団法人 日本炎症・再生医学会
雑誌
Inflammation and Regeneration (ISSN:18809693)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.96-100, 2006 (Released:2006-08-18)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

According to the World Health Organization(WHO) guidelines for patients with moderate or severe pain, morphine has been used as a “gold standard” treatment for cancer pain. However, the use of morphine for the treatment of pain was sometimes accompanied with side effects such as emesis, constipation and drowsiness.We showed that morphine at the dose of which had no antinociceptive effect produced emetic response and gastrointestinal transit inhibition. It should be mentioned that morphine with lower doses produces severe side effects without antinociception/analgesia.Recent clinical studies have demonstrated that when morphine is used to control pain, psychological dependence is not a major concern. We confirmed that animals with chronic pain failed to exhibit the morphine-induced rewarding effect. It should be pointed out that the endogenous κ-opioidergic system in the nucleus accumbens may be directly involved in the suppression of the morphine-induced rewarding effect under an inflammatory pain-like state. In contrast, the reduction of μ-opioid receptor function in the ventral tegmental area may contribute to the suppression of the rewarding effect induced by morphine under an neuropathic pain-like state. These findings strongly suggest that treatment of morphine with the adequate dose could be highly recommended for the relief of severe chronic pain.
著者
枡田 隆利 矢野 正剛 重盛 大輔 外間 志典 長岡 正子 大垣 昌之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0599, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】O'Brienらは65歳以上の高齢者において転倒経験者と非経験者ではFunctional Reach Test(以下,FRT)のリーチ距離(以下,FR値)に有意差があり,大腿骨近位部骨折の既往がある高齢者は再骨折のリスク群にあると報告している。しかし相反する報告もあり,JonssonらはFR値とCenter of Pressure(以下COP)の変位相関は低いとしており,FR値だけで立位の安定性限界を述べるには弱く運動戦略やCOPとの関係を明らかにする必要があると示唆している。本研究では,立位姿勢における動的バランス能力と運動戦略をより詳細に把握することが重要であると考え,二次元動作解析装置と重心動揺計を用いて左右FRT施行時の運動戦略と動的バランスの関係性を分析したのでここに報告する。【方法】対象は当院回復期病棟入院中の歩行が自立している大腿骨近位部骨折患者10名(男性0名,女性10名)。平均年齢79.5±8.2歳,平均身長1.49±0.05m,平均体重49.8±9.7kg。測定方法は,Duncanらの方法に準じFRTを左右施行しFR値,COP前後移動距離,運動戦略について記録した。COP前後移動距離は,多目的重心動揺計測システム(Zebris社製WinPDMS)を使用し,FRT測定開始時からFR値最大到達点時において測定した。運動戦略はFRT測定時において矢状面より肩峰,大転子,腓骨頭,外果,第5中足骨頭をランドマークとしてビデオカメラで定点撮影し,二次元動作解析装置(DARTFISH Pro5.5)を使用して股関節と足関節角度を解析した。統計処理はWilcoxonの符号付順位和検定を用いFR値,股関節角度,足関節角度,COP前後移動距離の骨折側と非骨折側を比較した。有意水準は1%未満とした。【結果】FR値は骨折側20.4±8.6cm,非骨折側22.5±7.7cmで有意差を認めなかった。股関節角度は骨折側が屈曲20.3±16.7°,非骨折側が屈曲31.5±16.6°で非骨折側股関節角度が有意に大きかった(p<0.01)。足関節角度は骨折側が底屈3.0±2.4°,非骨折側が底屈3.1±2.6°で有意差を認めなかった。COP前後移動距離は骨折側60.8±18.1cm,非骨折側78.8±27.2cmで非骨折側が有意に大きかった(p<0.01)。【結論】本研究の結果より,骨折側リーチ時のCOP前後移動距離が有意に短いことは骨折側転倒リスクに繋がるのではないかと考えた。また,高齢者におけるFRT施行時の運動戦略は股関節戦略有意であり,足関節戦略に依存しにくい傾向にあると示唆された。足関節戦略が見られない要因として,藤澤らが多くの高齢者の特徴として足関節機能は加齢に伴い優位に低下する傾向にあると報告しており,今回の結果もそれに起因しているのではないかと考えた。このことから大腿骨近位部骨折患者は骨折側立位時に股関節屈曲角度が低下していることで,COP前後移動距離が短縮し動的バランス能力が低下する傾向にあると考えられた。本研究は症例数が少ないため今後も継続して調査を行い,より信頼性高い結果を示していきたいと考える。
著者
長部 弘幹 大槻 暁 花房 京佑
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1349, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】立位でのリーチ動作は日常生活の場面で頻繁に行われる動作であり,上肢の機能的活動の指標とされる。また,バランスの指標であるFunctional Reach Testで用いられる動作であり,姿勢制御の要素が強く関連している。リーチ動作における上肢や手の運動戦略に関する研究は数多くあるが,リーチ動作における姿勢戦略について明らかにした研究は少ない。立位姿勢における姿勢戦略は股関節戦略,足関節戦略,ステップ戦略に大別され,各運動戦略を組み合わせて姿勢を調整している。立位でのリーチ動作においても同様な姿勢調節が行われていると考えられる。そこで今回は,立位姿勢でのリーチ動作における姿勢戦略の経時的変化を明らかにすることを目的とし,最大リーチ動作時の股関節と足関節による姿勢戦略を検討した。【方法】対象は健常成人19人(平均年齢24.6±2.2歳)とした。実験は,立位姿勢における対象物に対するリーチ,把持の動作をビデオカメラにて撮影し,その間の下肢の姿勢戦略を分析した。被験者の右腋窩直下,大転子,外側膝関節裂隙,外果,第5中足骨遠位端にマーカーを貼付した。矢状面の運動分析のため,ビデオカメラ(SONY;HDR-CX430V)のレンズと大転子の高さと同じにし,真横に4m離れた位置に設置した。実験開始肢位は,安静立位で右上肢を肘関節伸展位のまま肩関節屈曲90°肢位,左上下肢は任意の肢位とした。目標物は,1辺が3cmの立方体を右上腕骨頭の前方延長線上に置いた。検者は目標物を矢状面上でリーチ可能な距離まで移動させ,被験者に前方の目標物を母子と示指で把持すように指示した。その際,体幹回旋による代償動作や足底が床から完全に離れることがないように注意し,母指と示指で目標物を把持するようにした。目標物を徐々に離していき,被験者がつま先を動かさずに目標物を把持することができる最大の距離までリーチ動作を繰り返して行った。記録した映像から最大リーチ動作試行時を解析に使用した。映像分析には,動画解析ソフトダートフィッシュver.5.5(ダートフィッシュ・ジャパン)を用いて,マーカーを目印に股関節と足関節の関節角度を30fpsで測定した。データ解析では,リーチ時間の個別差を補正するため,運動の開始から把持した瞬間までの時間を100%とし,開始から20%毎の区間における各関節の運動範囲を算出した。各関節の運動範囲は,個別差を補正するため,開始時から終了時までの運動角度に対する各区間における運動角度の比率を算出し,その平均値を分析に使用した。各関節での値を一元配置分散分析により比較し,有意差を認めた場合に各区間における運動角度の比率をturkyの多重比較を用いて比較した。統計解析にはSPSS(ver.21)を使用し,有意水準は5%未満とした。【結果】股関節の平均値と標準偏差は0-20%,20-40%,40-60%,60-80%,80-100%の区間(以下それぞれを区間1,区間2,区間3,区間4,区間5とする)でそれぞれ,0.24±0.16,0.37±0.13,0.22±0.10,0.10±0.10,0.07±0.06であった。隣接する区間の比較では,区間1と区間2,区間2と区間3,区間3と区間4は有意差を認めた。区間4と区間5では有意差は認めなかった。一方,足関節の平均値はそれぞれ,0.15±0.20,0.28±0.28,0.24±0.15,0.21±0.26,0.12±0.14であり,一元配置分散分析にて各区間に有意差は認められなかった。【考察】目標物へのリーチ動作において股関節は20-40%区間で最も速く大きく変化し,その後徐々に速度と変化率が低下し,60%を過ぎるとわずかな変化で経過するということが明らかとなった。立位でのリーチ動作における股関節戦略は一定のパターンで,重心の前方移動のために使われるということが推測される。一方で足関節戦略は,どのタイミングで多く使われるかは明らかにならなかった。足関節運動は,各被験者によってピークに差異があり,重心の移動や距離の調整などに使用されていると考えられる。足関節戦略は状況によって変化する多様性のある戦略と推察される。足関節戦略の分析と股関節戦略との関連性については,今後より詳細な検討が必要である。【理学療法学研究としての意義】目標物へのリーチ動作における姿勢戦略を明らかにすることは,臨床での理学療法を行っていくうえで非常に重要なことである。課題に伴う姿勢戦略を適切なタイミングで使用しているかを分析し治療することは機能的な活動を獲得するために重要であり,今回の結果は,クリニカルリーズニングの一助となるもの考える。
著者
石塚 達也 西田 直弥 仲保 徹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H4P3248, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】 呼吸筋は呼吸機能を維持するだけではなく、姿勢制御に作用するとされている。臨床では姿勢制御機構が破綻している呼吸器疾患患者が多く観察される。姿勢制御と呼吸機能との関係を裏付ける明確な研究は少なく、筋機能からの推察が主となっている。その中で内山らは、足圧中心点(COP)の動揺と呼吸との関係を検討し、両者には相関があるとしている。このことからCOPを制御することにより良好な呼吸運動が可能になると考えた。人の姿勢制御戦略の中で、静止立位時に一般的に使われているのは足関節戦略である。足関節戦略は、主として足関節を中心とした身体運動を介して身体重心を安定した位置に維持する戦略である。このことに着目し、呼吸運動と足関節底背屈運動を主としたバランス訓練を併用し、胸郭運動に与える影響を検討した。【方法】 対象は,健常成人男性14名(平均年齢22.9±3.0歳、平均身長170.7±6.5cm、平均体重62.5±7.2kg)とした。呼吸運動は3次元動作解析装置Vicon MX(Vicon Motion Systems社)を用い、体表に貼付した赤外線反射マーカーから胸郭運動を計測した。赤外線反射マーカーを剣状突起高周径上に6箇所貼付し、前後径および周径を算出したのち安静呼気-最大吸気の胸郭拡張量を計測パラメータとした。呼吸相を把握するために、呼気ガス分析器AS-300S(ミナト医科学社)を用い呼吸量変化の計測を行った。COPは床反力計(AMTI社)を用い、対象者の踵を基準とした安静呼気時の前後方向位置を算出した。得られた値は、対象者の足長で正規化し、足長に対する割合で3群(前方群、中間群、後方群)に分類を行った。前方群はCOPの位置が足長の50%より前方にある群、中間群は足長の40%から50%に位置する群、後方群は40%未満に位置する群とした。各対象者に対して、安静時のCOP位置および胸郭拡張量を計測したのち、DYJOC BOARDを用いたバランス訓練を行った。バランス訓練は、足関節底背屈運動と呼吸運動を同期して行い、足関節底屈-吸気/足関節背屈-呼気の組み合わせとした。バランス訓練後のCOP位置および胸郭拡張量を計測し、訓練前後の比較を行った。【説明と同意】 計測を行うにあたり、各対象者に対して本研究内容の趣旨を十分に説明し、本人の承諾を得た後、同意書に署名した上で計測を実施した。【結果】 COPの位置変化をみると、前方群は訓練前平均55.1±2.8%、訓練後55.1±2.9%となった。中間群では、訓練前43.7±2.6%、訓練後47.2±4.3%となった。後方群では、訓練前38.8±1.1%、訓練後45.4±3.0%となった。 また胸郭拡張量は、前方群では前後径が19.7±4.4mm、周径が54.8±12.6mmであり、訓練後前後径が17.9±3.1mm、周径が50.9±14.2 mmと減少した。中間群では前後径が16.6±4.1mm、周径が50.9±9.8mmであり、訓練後前後径が16.3±5.4mm、周径が51.8±9.7 mmとほとんど変化しなかった。後方群では前後径が18.3±5.1mm、周径が45.0±5.2mmであり、訓練後前後径が21.3±5.2mm、周径が48.6±2.1 mmと増加した。【考察】 今回の研究で、足長に対する踵からのCOPの位置は中間群と後方群で訓練施行後にCOPの前方化を図ることができた。特に後方群ではそれに伴い胸郭拡張量も増加しており、足関節戦略を学習したことにより安静立位がより安定し呼吸筋による姿勢筋活動から解放されたことが考えられる。そのことにより呼吸筋が呼吸のための筋として活動する機能が高まったことが考えられる。臨床において、自然立位で後方重心となっている例は胸椎の後弯が増強していることが多く、胸郭は呼気位にあることが多い。胸郭拡張量の増加については、COPの前方化と吸気を同期して行うことで、胸郭が呼気位から吸気位へ移行したとも考えられる。胸郭の吸気位への移行は胸椎伸展方向への動きも伴い、後方重心の解消、COPの前方化に繋がったものと考える。すなわち、COPの位置と胸郭拡張差は相互的に作用している可能性が考えられた。 また、前方群は骨盤前方化により姿勢を保持している印象が強く、訓練時に股関節戦略により対応していたことが考えられた。訓練時に股関節、腰椎での代償が大きく胸郭の拡張を得ることができなかったものと推測される。【理学療法学研究としての意義】 本研究より特に後方重心の症例に対して足関節戦略を用いたCOP制御が呼吸筋の姿勢筋活動の解放を促し、胸郭拡張量を増加させる可能性があることが考えられた。今後は安静時姿勢のアライメントなども考慮し、どのような姿勢制御で訓練を行うかということも加味しながら追跡調査をしていきたい。
著者
Shuntaro Inoue Kenichi Itoh Masanori Ishigaki Takahide Sugiyama
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
IEEJ Journal of Industry Applications (ISSN:21871094)
巻号頁・発行日
vol.9, no.6, pp.713-722, 2020-11-01 (Released:2020-11-01)
参考文献数
40
被引用文献数
4

This paper discusses a design method for a proposed integrated magnetic component for an isolated bidirectional three-port DC-DC converter (TPC). TPC comprises a dual active bridge converter (DAB) and a non-isolated bidirectional DC-DC converter (NBC); each converter is independently controlled with a transformer and a magnetically coupled inductor. To reduce the size of the magnetic components, an integrated magnetic component that can integrate a magnetically coupled inductor and a transformer is implemented. A 750-W magnetically integrated TPC prototype was constructed and tested to validate the operation. The experimental results show that the efficiency of the integrated TPC is above 90% for the entire output power range, which is nearly equal to that of the conventional magnetic component. As a result, the proposed component was 10% smaller than the conventional magnetic components, and the overall size of the integrated TPC was 33% smaller than that of the conventional one.
著者
番場 祐基 茂呂 寛 永野 啓 袴田 真理子 島津 翔 尾方 英至 小泉 健 張 仁美 青木 信将 林 正周 佐藤 瑞穂 坂上 亜希子 小屋 俊之 菊地 利明
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.93, no.4, pp.500-506, 2019-07-20 (Released:2020-02-02)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

[目的]国内3種の(1→3)―β―D―グルカン(以下β―D―グルカン)測定試薬における測定結果と患者の臨床背景を比較し,深在性真菌症の診断における有用性および試薬間での測定結果の乖離,偽陽性の要因について評価する.[方法]新潟大学医歯学総合病院において2017年8月から2017年11月にかけてβ―D―グルカン検査が提出された患者を対象とし,測定残余血漿を用いて以下の3試薬について測定した.(1)ファンギテックGテストMKII「ニッスイ」(以下MKII法),(2)ファンギテックGテストES「ニッスイ」(以下ES法),(3) β―グルカンテストワコー(以下ワコー法).[成績]171患者,245検体が対象となった.深在性真菌症患者は疑診を含め7例であった.β―D―グルカン測定値は,同一検体間の比較でMKII法が最も高く,次いでES法,ワコー法の順であったが,互いに有意に相関していた.感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率などの診断特性は各試薬によって異なっていた.MKII法で偽陽性を比較的多く認めたものの,深在性真菌症(疑診含む)診断におけるROC曲線下面積には有意差はなかった.いずれかの試薬による偽陽性を呈した14例について,階層型クラスター分析を用いて分類したところ,偽陽性のパターンに一定の傾向が認められた.[結論]各測定試薬によるβ―D―グルカン測定の結果は概ね相関しているが,測定値は大きく異なっており,異なる試薬同士の比較は困難である.深在性真菌症診断における差は小さいが,それぞれの試薬の診断特性を理解し使用するべきである.また試薬によって偽陽性の原因が異なる可能性が示唆された.
著者
山本 美紀
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.283-294, 2005-03

ジョージ・オルチン(George Allchin 1852-1935)による幻燈伝道は、彼の日本での宣教師としての仕事において、賛美歌の仕事と並ぶ大きな活動である。彼の伝道旅行は地方にも及び、多くの人々にとって福音のみならず賛美歌や聖歌といった西洋文化に初めて生でふれる機会となっていた。本論文は、時に一〇〇〇人以上という動員数を誇った彼の「幻燈伝道集会 Lantern Lecture」に焦点を当て、特に彼のオリジナル作品「ほととぎす」「世は情け」を中心にとりあげる。この二つの作品は聖書のたとえ話「放蕩息子」「善きサマリア人」の翻案である。本論では、オルチンの幻燈伝道を追うことにより、彼独自の宣教観や興行的センスと同時に、一般社会のレヴェルにおける実質的な文化反応の諸相を明らかにする。
著者
勝山 恒男 安家 武 野村 祐士 若本 雅晶 野島 聡 木下 和彦 村上 孝三
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.1810-1822, 2009-08-15

IPスイッチの処理能力向上にともない,レイヤ2ネットワーク規模が拡大し,経済的に大規模なレイヤ2ネットワークの構築が可能となってきている.これにともない,障害の波及範囲も広域化し,障害復旧に時間を要し,可用性を低下させる要因となっている.レイヤ2ネットワークの典型的な大規模障害であるループ障害では,ループパケットは,消滅することなくネットワーク内を転送し続ける現象が起き,システム全体の稼働停止に至ることがよく知られている.この現象は,本来バス構造であったLANセグメントをスタートポロジにしたが,ブロードキャスト型のプロトコルを変えていないために起きる本質的問題である.これを回避する従来技術としてSTP(Spanning Tree Protocol)が適用されているが,十分な効果が得られない場合も多い.そこで,本論文では,ループ障害を対象に,従来の障害事前防止型のアプローチではなく,その原因箇所をリモートホストから迅速に探索発見する診断型のアプローチを提案する.本方式は,第1ステップとして,診断探索を行う端末から送信するロングパケットによってノード負荷の低減を行い,また,架空MACアドレスからのブロードキャストARP要求の送信によってMACアドレス誤学習を訂正し,本来の通信機能の回復を行う.次いで,第2ステップとして,誤学習の成否と大量パケット受信ポートの分析によってループ箇所の特定を行う2ステッププロセスからなるリモート診断を特徴としている.
著者
松嶋 藻乃
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.67-76, 2017-06-05 (Released:2017-07-28)
参考文献数
12

この講義録は,ASCONE2010において順天堂大学の宇賀貴紀先生の講演の内容について,2010年当時に筆者が考えたことをまとめたものです.単一ニューロン記録を日々行っている筆者にとって,宇賀先生の講演は,単一ニューロン記録という研究手法の意義・正当性・限界を,根本から考え直す機会を与えてくださりました.以下の内容は,宇賀先生の講演を忠実に再現するものではありませんが,基本的ながらも大変重要なことを示してくださったことに感銘を受け,触発されて,筆者自身が考察したものです.