著者
大栗 隆行 文 昇大 矢原 勝哉 欅田 尚樹 法村 俊之 興梠 征典
出版者
産業医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

温熱療法と高気圧酸素治療は、それぞれ抗癌剤の治療効果を増感することが確認されているが、両者を抗癌剤に併用した場合に治療効果の増感が得られるかの検討はなされていない。抗癌剤(カルボプラチン)に温熱療法および高気圧酸素療法の両者を併用した際の効果をマウスに移植した腫瘍を用いて検討した。結果としてカルボプラチン・温熱・高気圧の3者を併用した場合、最も腫瘍成長の遅延が生じる点が確認され、有効な治療法となる可能性が示された。
著者
今枝 一男 大沢 敬子 内山 一美
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.346-350, 1985-06-05
被引用文献数
1 3

薄層クロマトグラフプレート上に展開された試料を,かき取りや切り取りなどの操作を行うことなく定量する光掃引型光音響分析装置の改良を行った.光源の断続周波数は80 Hzとし,又簡単に自製できるロックインアンプを作製した.更に薄層プレート上に展開された物質の詳細な定量条件を検討した.スダンレッド7Bは50〜400 ngの範囲で光音響信号と直線関係となった.400 ng以上では信号の飽和傾向がみられた.スクアレンを展開後,硫酸:メタノール(1:3)を噴霧し加熱発色させたとき,光音響信号の平方根と試料量の対数との間に直線関係があった.正常なヒト前腕部から抽出した皮表脂質中のスクアレンの定量を行い良好な結果を得た.
著者
田中 靖彦
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.491-492, 2004-09-20 (Released:2011-10-07)

感覚とは, 外来刺激をそれぞれに対応する受容器によって受けた時, 通常経験する心的現象を言う. その種類としてはいろいろあるが, 視覚, 聴覚, 触覚, 嗅覚, 味覚を五感という. その他に, 平衡覚, 痛覚, 圧覚, 温覚などである. 医学的にいうと, 視覚, 聴覚, 嗅覚, 味覚, 前庭感覚(平衡覚)を特殊感覚という. さらに, 体性感覚としての皮膚感覚, 深部感覚, また, 内臓感覚として, 臓器感覚, 内臓痛覚も含まれる. このように感覚器(受容器)は体中いたるところに分布している.人間の日常生活に, ことにコミュニケーションにはこれら五感が密接に関わっていることから, いろいろな「諺」としても汎用されてきている. 日く「生き馬の目を抜く」「馬の耳に念仏」「隔靴掻痒」「壁に耳あり, 天井に目あり」「二階から目薬」「寝耳に水」「見ざる, 聞かざる, 言わざる」「百聞は一見にしかず」「目と鼻の先」「目は口ほどにものを言い」「目から鱗」「目鼻をつける」「痒いところに手が届く」「痛し痒し」そして少々凝ったものとして「葵に懲りて膳を吹く」など, ちょっと考えただけでもこれぐらいの「諺」, 「言い習わし」をあげることが出来る. 西洋諺にも同じようなものがあることはご承知のとおりであるが, いかに生活に不可欠な機能かを物語っている.これら視覚, 聴覚に代表される感覚機能は, 今日でも日進月歩の発展を続けるIT化(情報化)社会においてひと時も欠くことのできない機能であり, 一層その重要性が増してきている(反面その障害も増加してきているが). また、わが国は世界一の少子長寿社会でもあり, その生活の質(QOL)に大きく貢献するのが「感覚器」であることは, 論を待たない. さらに, この感覚器障害は, 全身疾患の併発症としてしばしば見られることはよく知られているところであるが, 加齢変化として, あるいは生活習慣病, 感染症, 先天異常や難病などに頻繁に見られるものである. これまでは生命保持に医療の主力が注がれてきており, この生活の「質」を確保するための感覚器についての取り組みは取り残されてきた感がある. 早急に国の医療政策の1つとして, 予防から治療, さらにリハビリテーションにわたり, 総括的な対策が講じられなければならない問題である.「感覚器疾患」というくくりで, 国立病院療養所による政策医療ネットワークを形成している. 果たしてこれら全身におよぶ感覚器をどのようにまとめてゆくのがいいのか. 眼科, 耳鼻咽喉科はまず考えられるにしても, 皮膚科, 神経内科, 整形外科, 麻酔科, 脳神経外科, 口腔外科, はてまた精神科, などなど, 見えない, 聞こえない, 喋れない, ばかりでなく, 痛みや痒み, 香り, 臭いのない, 味がしない状況で果たして豊かな天寿をまっとうした, と言えるだろうか, これだけ人間の尊厳が問われる時代に, これら外界との接触の閉ざされた状態は, なんとしてでも開放しなければならない. 医学界のみならず, 最新のテクノロジーを駆使して速急に取り組まなければならない問題である. これはナショナルセンターにしなければとても扱えない範囲におよぶことになる. 近い将来, ナショナルセンターとして発展することを願っている.
著者
土屋 正臣
出版者
城西大学現代政策学部
雑誌
城西現代政策研究 (ISSN:18819001)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.21-38, 2020-12

本稿は趣味縁の議論を踏まえて、文化活動を通じた社会参加が当時の政治や経済とどのように結びつき、その後いかに変化したのか、という点について明らかにすることを目的とする。分析の主な対象は、養蚕や生糸生産が盛んであり、かつ秩父困民党事件に見られるような政治活動も旺盛であった近代の秩父地方を中心とする地域である。この地域の寺社に奉納された句額(句会後に複数のメンバーによって奉納された額)を現地調査により確認した。分析の結果、経済活動に基づく俳句の創作活動でつながった人々のネットワークは、政治活動のように非常に高い公共性を帯びる可能性があることが明らかとなった。This paper examines how in pre-modern times in Japan, social participation through cultural activities was linked to politics and the economy, following a concept of hobbies connecting people and communities (shumi-en).As a result of the analysis of Haiku poetry writings at a shrine at Chichibu, it was clarified that economic activity according to networks of people connected by their creative activities of poetry were respected as a type of political process in the public arena.論文
著者
坂本 優紀 渡辺 隼矢 山下 亜紀郎
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.43-57, 2020

本稿では,長野県上伊那地域でみられる筒系噴出煙火の三国を地域文化として捉え,三国の伝播と利用形態の変容を明らかにした。伊那谷における三国は江戸時代に三河地方から伝わったとされ,各地域の神社の祭りで奉納されるようになった。現代でも駒ヶ根市以南では,主に神社の秋祭りで奉納され神事としての役割を担っている。第二次世界大戦後になると三国の利用地域が拡大し,それまで三国の北限であった駒ヶ根市より北にある宮田村と箕輪町で三国が放揚され始めた。宮田村では1962年に在来の祭礼に組み込まれる形で三国が奉納されるようになった。当初は祭礼を盛り上げることが目的であったものの,現在では神事としての意義づけがされている。一方,箕輪町では2000年代に地域イベントで放揚され始め,現在も神事としての役割はない。このように三国の拡大過程においてその意義づけは対象地域ごとに異なり,各地域それぞれの選択と解釈がなされていることが明らかとなった。
著者
上田 真聖 北村 尊義 泉 朋子 仲谷 善雄
雑誌
第78回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, no.1, pp.157-158, 2016-03-10

交通渋滞の発生時には、自動車の運転手がストレスを感じ、そのストレスが他車への配慮を欠く運転を誘発してしまうことが懸念される。本研究では、同じ渋滞に遭遇している車両の運転手同士が匿名で気軽に会話できるシステムを提案する。本システムにより、会話好きな運転手同士が楽しく会話できれば、渋滞によるストレスが軽減し、他車に配慮する運転が促進されると考えられる。本研究では、携帯型脳活動計測装置を用いた実験を実施し、渋滞に遭遇した際に本システムが運転手のストレス軽減に効果的であるのかを検討した。また、アンケートとインタビュー結果から、他車に配慮する運転が促進されたのかを評価した。
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.349, pp.71-73, 2004-04-09

建設現場に従事する作業員が直接,生コンに水を加える事例よりも,現場の職員などに依頼されて生コン工場や生コン車の運転手が加水するケースの方が多いという。ほぼすべての生コン工場が「加水の要求があった」と答えた調査結果もある。連載の第三回目は,こうした要求を受けても「断りきれない」とする生コン工場などの立場から加水を招く背景について考えてみよう。
著者
川﨑 和治 かわさき かずはる Kawasaki Kazuharu 沖縄大学地域研究所所員
出版者
沖縄大学地域研究所
雑誌
地域研究 = Regional study (ISSN:18812082)
巻号頁・発行日
no.15, pp.99-110, 2015-03

沖縄本島において生じた自動二輪車と原動機付き自転車の衝突事故により、重傷を負った原動機付き自転車の運転手が、加害者に請求した損害賠償訴訟に関する判例研究である。那覇地裁が認定した事実を福岡高裁那覇支部は、より詳細に検討し、合理的な推認方法により加害者の100%過失を認め、被害者に過失相殺を課すことを否定した。後遺障害逸失利益の計算において、医学部2年生にもかかわらず、医師の平均賃金を基礎収入として計算、また、自賠責保険金が支払われるまでの期間に対する遅延損害金を認めている。本稿が「交通事故 うまんちゅで築く 美ら島2014」を年間ソローガンとして掲げる沖縄県の交通事故減少に参考になればと願っている。
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.443, pp.12-13, 2008-03-14

「小学校の給食の材料が、2日分しか確保できていない」、「し尿のくみ取りやごみの回収車が来ない」、「会社や病院に通えない」──。約1350人が住む宮城県大崎市の鬼首地区は2007年2月17日、陸の孤島と化した。 同地区とふもとの鳴子地区を結ぶ国道108号で異状を最初に見つけたのは、通りがかった車の運転手だった。国道の山側の斜面が幅3.5m、高さ1mにわたって崩れていた。
著者
渋江 唯司 大政 光史
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学生物理工学部紀要 = Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.77-84, 2004-09-30

むち打ち症は交通事故によって引き起こされる最も一般的な障害である。最近、アクティブ・ヘッドレスト・システムのようないくつかのアイディアが、むち打ち症の発生を減少させるために自動車に導入されてきた。むち打ち症の発生メカニズムを知ることは非常に重要である。首に生じる力は、むち打ち症の発生と深く関係のあるように見える。ここでは、非線形のFEM手法に基づいた、自動車の運転手の首に発生する力の大きさを定性的に推定するための、単純なFEMモデルを示す。このモデルは人体、座席および3点式シート・ベルトを表わし、それらの問の相互作用を垂直な2次元断面内で考慮している。発生する力に及ぼす座席の剛性や座席と車体の間の結合剛性の影響を、提案したモデルで推定する。
著者
Niu Kiyoshi
出版者
日本学士院
雑誌
Proceedings of the Japan Academy. Ser. B: Physical and Biological Sciences (ISSN:03862208)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.1-16, 2008
被引用文献数
7

This is a historical review of the discovery of naked charm particles and lifetime differences among charm species. These discoveries in the field of cosmic-ray physics were made by the innovation of nuclear emulsion techniques in Japan. A pair of naked charm particles was discovered in 1971 in a cosmic-ray interaction, three years prior to the discovery of the hidden charm particle, J/&Psi;, in western countries. Lifetime differences between charged and neutral charm particles were pointed out in 1975, which were later re-confirmed by the collaborative Experiment E531 at Fermilab. Japanese physicists led by K.Niu made essential contributions to it with improved emulsion techniques, complemented by electronic detectors. This review also discusses the discovery of artificially produced naked charm particles by us in an accelerator experiment at Fermilab in 1975 and of multiple-pair productions of charm particles in a single interaction in 1987 by the collaborative Experiment WA75 at CERN.<BR><BR>(Communicated by Toshimitsu YAMAZAKI, M.J.A.)
著者
平山 恵津子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.124, no.7, pp.437-442, 2004-07-01 (Released:2004-07-01)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

The influenza virus copies its genomic RNA in the nuclei of host cells, but the viral particles are formed at the plasma membrane. Thus the export of a new genome from the nucleus into the cytoplasm is essential for viral production. Several viral proteins, such as nucleoprotein (NP), RNA polymerases, and matrix protein 1 (M1), synthesized in the cytoplasm are imported into the nucleus and form a viral ribonucleoprotein complex (vRNP) with new genomic RNA. vRNP is then exported into the cytoplasm from the nucleus. It was found unexpectedly that the production of influenza virus was suppressed in Madin-Darby canine kidney cells at 41°C, although viral proteins were synthesized, because nuclear export of vRNP is blocked by the dissociation of M1 from vRNP. It was also suggested that a certain protein(s) synthesized only at 41°C inhibited the association of M1 with vRNP. The potential of heat-shock protein 70 (HSP70) as a candidate obstructive protein was investigated. Induction of HSP70 by prostaglandin A1 (PGA1) at 37°C caused the suppression of virus production. The nuclear export of viral proteins was inhibited by PGA1, and M1 was not associated with vRNP, indicating that HSP70 prevents M1 from binding to vRNP. An immunoprecipitation assay showed that HSP70 was bound to vRNP, suggesting that the interaction of HSP70 with vRNP is the reason for the dissociation of M1.