著者
竹井 仁 根岸 徹 中俣 修 林 謙司 柳澤 健 齋藤 宏
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.113-118, 2002
参考文献数
18
被引用文献数
5

股関節の屈曲運動には,骨盤に対する大腿骨の動きと骨盤後方傾斜の両方が含まれる。本研究では,健常成人女性10名(平均年齢は20.3歳)を対象に,測定精度が高くかつ人体に侵襲のないMRI(Magnetic Resonance Imaging : 磁気共鳴画像)を用いて,背臥位・膝関節屈曲位での他動的な一側股関節屈曲運動時の骨盤大腿リズム及び仙腸関節の動きを解析した。右股関節屈曲角度に占める骨盤後方傾斜角度の割合は,屈曲角度が増すに従い,約1/28(0.52°/14.8°),1/20(1.5°/29.9°),1/19(2.4°/45.0°),1/16(3.9°/60.7°),1/11(11.4°/127.6°)と変化した。また,45°までは屈曲側と対側の骨盤も同程度の後方傾斜を生じ,60°で屈曲側の後方傾斜量が増し,最大屈曲角度ではさらにその差が拡大した。右股関節の最大屈曲位では,仙骨が右腸骨に対して相対的に前屈位になることから,仙腸関節の動きも関与することが確認できた。
著者
吉尾 雅春 西村 由香 村上 弦 乗安 整而
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.A0922, 2004

【目的】 MRI等を用いて股関節屈曲角度の計測結果がいくつか報告されているが,いずれも骨盤の固定に問題を残している。そこで新鮮凍結遺体を用いて,骨盤を機械的に固定した状態で股関節の屈曲角度を求め,制限要因などについて検討したので報告する。<BR>【方法】 札幌医科大学および韓国カトリック大学に献体された平均年齢74.1歳(45~89歳)の新鮮凍結遺体男性11体女性5体21股関節を解凍して用いた。変形性股関節症や骨折の既往を視認できたものは対象から外した。遺体から骨盤と大腿を切離し,股関節関節包以外の軟部組織をすべて除去した。上前腸骨棘と恥骨結節とを結ぶ線が固定台と水平になるように台上に骨盤を載せ,クランプを用いて固定した。まず股関節内旋外旋・内転外転中間位(中間位)で検者Aが大腿骨を持って制限があるまで股関節を屈曲させ,検者Bがそのときの最大角度を測定した。さらにそこから股関節を最大外転したとき(外転位)の最大屈曲角度を求めた。屈曲角度は骨盤長軸を基本軸に,大転子と大腿骨外側上顆とを結ぶ線を移動軸にして,Smith & Nephew Rolyan社製ゴニオメーターを用いて1度単位で計測した。最大外転角度は矢状面に対する大腿骨のなす角度とした。角度計測後,股関節関節包を前方から切開して股関節を解放し,屈曲時に何が制限要素になっているか肉眼的に観察した。その後,股関節を離断し,骨盤と大腿骨の形態計測を行い,股関節屈曲角度との関係を調べた。統計学的有意水準は5%とした。<BR>【結果】 股関節中間位における最大屈曲角度は93.0±3.6度であった。外転位の最大屈曲角度は115.4±9.2度で,最大外転角度は23.6±4.7度であった。年齢と中間位での最大屈曲角度との関係はなかった。中間位と外転位での最大屈曲角度は正の相関(r=0.668)を示した。関節包前面を切開して中間位で最大屈曲したとき,大腿骨の転子間線から約1cm骨頭側の頸前面が関節唇に衝突し,それ以上の屈曲はできなかった。前捻角は15.4±5.6度で中間位での最大屈曲角度と正の相関(r=0.521)がみられた。頸体角は124.1±5.0度で,最大屈曲角度との相関はみられなかった。大腿骨頭の直径は476.3±27.7mmで最大屈曲角度との相関はなかった。大腿骨転子間線中央から骨頭先端までの距離は679.2±49.9mmで,最大屈曲角度と負の相関(r=-0.461)がみられた。<BR>【考察】 骨盤を機械的に固定したときの股関節中間位における屈曲角度は平均93度で,外転位では115度であった。その制限因子は骨性のものであり,前捻角と大腿骨転子間線中央から骨頭先端までの長さが影響を与えていた。生体では大殿筋等の拮抗筋や股関節前面の軟部組織が制限要因となり,屈曲角度はさらに小さくなる可能性がある。臨床的に参考値としている120~130度のうち,30~40度は骨盤の傾きによることが明らかとなった。
著者
片岡 霊恵
出版者
日本幼稚園協会
雑誌
幼児の教育
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.36-41, 1972-03-01
著者
小林 理志 関 聡史 坂田 真一 松岡 誠一 藤井 広志
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
Soil science and plant nutrition (ISSN:00380768)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.315-324, 2002-06-01
参考文献数
39
被引用文献数
1

The underground railway project progresses to relocate the operating railway on the surface in Yokohama city of Metropolitan area. Especially in soft ground with shallow cover, tunnel is excavated by shotcreting method, and various auxiliary measures and monitoring control system are employed because of the need to secure operating track during the excavation. In this project, an approximately 2km long section near Yokohama station, is being relocated to underground railway to enable through train service with the new subway line. The construction of underground relocation is being performed by shotcreting method as selected by considering the topography, geology, depth of cover, and adjacent structures in each section. This paper describes construction of the urban tunnel just beneath operating railway.
著者
Kei Gotot Takayuki Kawashima
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.1157-1170, 2005-11-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
52
被引用文献数
6 6

Several kinds of bowl-type molecules were designed for regulation of the reactivities of the functional groups in their cavities, especially for kinetic stabilization of highly reactive species which have been difficult of access by conventional methods. The “peripheral steric protection” by these molecular cavities effectively prevents the bimolecular decomposition of the reactive species such as dimerization or self-condensation, and enabled the isolation of various species including a sulfenic acid, a selenenic acid, an S-nitrosothiol, and a Se-nitrososelenol, which have been known as important but elusive intermediates in biological reactions. Utilization of the molecular bowls as the ligands for transition metal complexes is also described.
著者
望月 朋子 河村 美穂
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2016

<b>研究目的</b><b></b><br><br>DeCeCoによるキーコンピテンシーが世界的な注目を集め、教育現場では関連した科学的リテラシーの育成が急務の課題とされている。PISA調査(2003)では科学的リテラシーを「自然界および人間の活動によってつくり変えていった自然の変化について理解し、意思決定できるために、科学知識を駆使し、問題を見分け証拠に基づく結論を引き出すことのできるような能力」と定義している。家庭科では、教科として成立して以来、生活を科学的に理解し、科学的知識を応用しながら生活を営むことを目指してきたが、PISAが定義したこの科学的リテラシーでは、十分に生活を科学するということを説明できないと考えられる。<br><br>そこで、本研究では家庭科における科学的リテラシーを「自然界および人間の活動によって変化した自然や生活、社会状況について理解し、必要に応じて意思決定するために、文化的、社会的、自然科学的な知識を活用し、自らの生活に即して問題を見分け、証拠に基づき生活がよりよくなるような結論を導く能力」と仮に定義する。本研究は、実際の調理実習の授業において文化的、自然科学的知識を学んだ生徒が、どのようにそれらの知識を捉えているのかということを生徒の授業記録を対象として探究し、明らかにするものである。<br><br><b>研究方法</b><b></b><br><br>対象とした授業は2016年1月~2月に実施した静岡県東部公立中学校2年生2クラス84名(男子44名、女子40人)「ちらしずしを作ろう」である。本研究では、授業前(2016年1月)と授業後(2016年2月)の2回に同一の質問紙調査を実施し分析データとした。調査項目は、以下の通りである。(1)食文化に関する設問(1問):どんなときにちらしずしを食べると「おいしい」と感じるか。それはなぜですか。(2)食品科学に関する設問(2問):①さやいんげんをゆでてからざるにとって水にさらす理由について書いてください。②うす焼き卵をきれいにつくるために大事だと考えること書いてください。いずれも生徒に自由記述させ、それぞれの設問の記述についてカテゴリーを生成、分類して検討を行った。<br><br>&nbsp;<br><br><b>結果と考察</b><br><br>設問(1)の「どんなときにちらしずしを食べるとおいしく感じるか」では、授業前には、行事、ひなまつり、お祝いのときが44人で、授業後には57人であった。その理由として、「ひな祭りのときにだいたい食べるから」、「お祝いするときに食べる料理だから」等行事の時に特別に食べる記述や「親せきなど、みんなが集まったとき」といった大勢で食べる場面を想定した回答が増加していた。<br><br> 設問(2)「さやいんげんをゆでたあとに水にさらす理由」には、授業前の回答は、「色が鮮やかに、濃くなる」4人、「食感がよくなる」14人、「わからない」42人であり、授業後はそれぞれ60人、10人、4人であった。<br><br>設問(3)「うす焼き卵をきれいにつくるために大事だと考えること」についての記述を分析したところ、授業前はとき卵をなるべくうすくひくというような「うすさ」に関することが29、こがさないように気をつける「焼き加減」に関すること21、「火加減」に関することが15であった。授業後は、卵を全部ではなく、何回かにわけてやくというような「うすさ」に関すること43、こげないように注意したという「焼き加減」に関すること24、卵を焼く温度を保つという「火加減」に関すること31、であった。記述総数は調理実習後に増加していた。以上のことから、調理実習を通しても食文化について理解可能であること、調理科学についてはゆでて水にさらすと色が鮮やかになる「さやいんげん」について理解しやすいこと、一方でうすやき卵を作ることに関しては、科学的な理解よりも作る手順をより必要なものとして学ぶことがわかった。
著者
小川 敬也
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

DFT計算に基づいて、常温・常圧においてNH3合成を行う[ArylN3N]Moの3本のAryl部分を電子供与性の固体に結合させて、安定化・反応性向上するか理論的に検証した。Amido部分がプロトン化された状態とのエネルギー差を調べたところ、Aryl部分が短い炭素鎖の場合、安定化することがわかった。カリウムをおいたモデルでは、炭素鎖を伝ってAmidoの窒素原子にも電子供与されてプロトン化されやすくなり、炭素鎖の自由度が十分でない範囲で、不安定化することがわかった。MD計算も行ったところ、PCETを起こすプロトン源・電子源のみが炭素鎖の立体障害をすり抜けて反応しやすいことがわかった。
著者
内藤直子著
出版者
淡交社
巻号頁・発行日
2017
著者
中村 博子 伊勢 雄也 片山 志郎
出版者
日本医科大学医学会
雑誌
日本医科大学医学会雑誌 (ISSN:13498975)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.195-198, 2012 (Released:2012-08-31)
参考文献数
15

Patients with cancer-related anorexia (CRA) have a lack of appetite, early satiety, taste changes, poor performance status, and diminished quality of life. Megestrol acetate is a standard treatment for CRA. Recently, olanzapine has been reported to be effective for treating refractory nausea and vomiting induced by chemotherapy in patients with cancer. A clinical trial has found that the combination of megestrol acetate and olanzapine is effective for patients with CRA. In this article we describe the treatment of CRA using olanzapine.
著者
山里 正演 石田 明夫
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

脳における骨髄由来細胞の分布または機能の異常が高血圧の病態に関与しているという仮説のもとに検討を行った。骨髄由来細胞の脳室内移植は高血圧ラットの血圧や心拍数へ明らかな影響を及ぼさなかった。しかしながら同細胞は内皮細胞に比べACE2やMn-SODを多く発現しており、また、長期にわたり脳内に生着していた。脳内生着局所のレニン-アンジオテンシン系を調節しうる可能性が考えられた。
著者
佐野 淳
出版者
日本スポーツ運動学会
雑誌
スポーツ運動学研究 (ISSN:24345636)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.13-23, 2004-12-03 (Released:2020-05-08)
参考文献数
28

Nach den heutigen Auffassungen der Bewegungslehre des Sports bezieht sich die sportliche Technik mit dem Kunstgriff von der Bewegung. Man kann daraus sagen, daß zuerst bei der Analyse der sportlichen Technik die Genesisanalyse des Kunstgriffs gemacht werden muß. In dieser Analyse wird im allgemeinen die Inhalte des Kunstgriffs aus den sprachlichen Darstellungen der Versuchspersonen entgenommen. Stellen diese Darstellungsinhalte aber eigentlich den Kunstgriff an sich dar? Ein Problembewußtsein der vorliegenden Arbeit besteht in diesem Punkt. Der Zweck der vorliegenden Arbeit besteht daraus darin, daß die Struktur von der sprachlichen Darstellung des Kunstgriffs vom Standpunkt der Bewegungslehre des Sports aus ins klare gebracht werden soll. Nach KANEKOs Auffassungen wird der Kunstgriff der Bewegung als kinästetischer Sinnkern oder als monado-Kunstgriff verstanden, und er kann im wesentlichen durch die Sprachform in Worte nicht fassen. Nach der semantotypologischen Grammatik, wenn man diese Inhalte des Kunstgriffs in Worte fassen will, sollen sie über die Denkweise (den Semantotyp) des Sich-bewegenden gehen. D.h., es liegt zwischen dem Kunstgriff selbst und der sprachlichen Darstellung des Kunstgriffs die Denkweise (den Semantotyp) des Sich-bewegenden. Wir können daher darauf hinweisen, daß der Kunstgriff der Bewegung durch die Denkweise (den Semantotyp) des Sich-bewegenden in Worte gekleidet wird. Bei der Sammelung der Informationen des Kunstgriffs der Bewegung sei diese Sache in Betracht gezogen beiliegen.
著者
佐藤 康行
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
no.51, pp.p121-144, 1987

従来の親分子分関係の研究は、主として山梨県をフィールドにしておこなわれてきたため'その多様性が十分に明らかにされてきたとはいえない。本稿では、新潟県妙高高原町杉野沢地区の親分子分関係を考察した。杉野沢の親分子分関係は、主として農作業の共同集団であるマキの内部で結ばれてきている。マキは、本分家のほかに、婿や養子をやったりもらったりしている本家格の家とその分家を含んでいる。親分子分関係は、マキの内部で、主に本家格の家どうしが互いに親分子分をしあう形態と本家格の家が分家格の家を子分にする形態の二つがある。しかも、それらはいずれも世襲的、主従的ではなく、親和的融和的である。その点で、杉野沢の親分子分関係は、「大垣外型」と「上湯島型」の校合ないし中間と考えられる。槻分子分関係のこのような性質は、家の行邪を司る「亭主役」の性質と同じである。杉野沢においては、かつては「亭主役」は婿や養子をやったりもらったりしてきた家で、なおかつ妻の実家であったり、姉妹が嫁いでいる家どうしの問で相互におこなっていた。また、本家が分家の「亭主役」をおこなっていたばかりでなく、妻の実家や婿にいった家が「亭主役」をおこなっていた。「亭主役」が有するこのような家の関係は、家の系譜関係に基づく権威並びに主従関係を壊す側面をもっている。親分子分関係が必ずしも本分家関係と重複せず、親類関係の問で結ばれていることのなかに、「亭主役」が有する家の性格が窺えるのである。