著者
阿武 雄一 瀧川 晴夫 榎本 卓朗
出版者
松江市立病院
雑誌
松江市立病院医学雑誌 (ISSN:13430866)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.67-72, 2012 (Released:2019-07-22)
参考文献数
21

近年、定位的放射線外科療法の登場により、聴神経腫瘍の治療方針が変わってきている。しかし、大型の特に3 cm を越える聴神経腫瘍では、今もって外科的治療を要することが多い。その際に全摘と聴力温存の両立は困難である。聴神経腫瘍では、亜全摘すれば再発は少ないことや、再発に対しては定位的放射線外科療法による治療が可能であることから、全摘にこだわる必要性は低下している。今回、われわれは、聴力を温存するため、意図的に亜全摘にとどめた2 例につき報告し、若干の考察を加える。
著者
田辺 和俊 鈴木 孝弘
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.247-267, 2019

<p> 近年のわが国の重大社会問題の一つである自殺には地域差が存在するため,都道府県別の自殺死亡率に有意な影響を与える要因の解明を目的とする実証研究を試みた.47都道府県の男女別年齢調整自殺死亡率を目的変数,それとの関連が推測される健康,経済,社会,自然分野の指標54種を説明変数としてサポートベクター回帰分析を行い,自殺死亡率に対する決定要因を探索し,その相対的影響度を推定した.その結果,男女別にそれぞれ12種の要因が得られ,男性では精神保健福祉士数,家計収入,患者数などの要因,女性では悩み相談,出生率,残業時間などの要因の影響が大きいことを見出した。また,これまで未検証の精神保健福祉士数や残業時間,精神状態が有意の影響を与えるが,自殺率との関係が深いとされてきた失業率や離婚率は決定要因にはならなかった.さらに,自殺率が最も高い秋田県について決定要因の結果に基づき自殺対策の提言を試みた.</p>
著者
坂本 薫 三浦 加代子 橘 ゆかり 小泉 弥栄 作田 はるみ 岸原 士郎
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.16, pp.56, 2004

【目的】砂糖は、調理上大変身近で重要な役割を果たしている食材である。砂糖には、上白糖、グラニュ糖、白双糖、三温糖、黒砂糖、その他いろいろな種類があるが、砂糖は甘味料として使われるだけでなく、その特性を生かした菓子や料理が数多くある。特に砂糖の加熱特性を利用した調理には、フォンダンや砂糖衣、抜絲、カラメルなど興味深いものが多く、温度によって性状が段階的に変化する。カラメルソースは、砂糖溶液を着色するまで加熱して作るソースで、着色や着香、味つけに用いられ、その煮詰め温度は、一般的に160℃–180℃とされていることが多い。しかし実際には、180℃まででは十分な着色が見られないこともある。今回は、カスタードプディングに適したカラメルソースの調製温度について検討するため、2社のグラニュ糖を用いてカラメルソースを調製した。<br>【方法】試料は、市販の2社のグラニュ糖を用い、28メッシュ以下の粒度のものを実験に供した。温度測定には水銀温度計と熱伝対を用い、標準温度計により温度補正を行った。また、pHおよび吸光度を測定し、有機酸の生成状況や着色状況を観察した。<br>【結果】加熱は、通常の調理操作に近い条件となるように熱源や昇温時間を検討し、実験を行った。その結果、一般的にカラメルの調製温度として示されている温度では十分な着色が認められない製品があることがわかった。また、カラメルソースを調製する過程での差異を明らかにするため、昇温過程の一定温度で加熱を止めてpHおよび色調等を比較したところ、明らかに差異が認められ、純度の非常に高いグラニュ糖であっても、製品により調理の上で大きな差があらわれることが明らかとなった。
著者
林 基弘 堀場 綾子 田村 徳子 川俣 貴一
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.431-440, 2018 (Released:2018-06-25)
参考文献数
36
被引用文献数
1

聴神経腫瘍に対する定位的放射線治療, その中でも歴史的に古くかつ最高精度のガンマナイフによる臨床成績に関して多くの報告がすでになされている. 10年を超える比較的長期のフォローにおいて, 腫瘍成長制御は91~97%, 聴力温存は49~55%, そして顔面神経温存は93~100%と報告され現状でのコンセンサスとほぼなっており, 外科手術のそれと比較しても決して劣らない数字となっている. しかし, 現存線量設定に至ってまだ25年程度の歴史であるため, 40歳代以下の若い患者に対する治療コンセンサスは十分に得られておらず, まだ治療医ごとの個別の裁量に任されているのが現状である. 最近ではMRI画像の革新的進歩と, そのうえでの微小解剖学に根差した治療計画も実践されるようになり, 顔面神経は当然, 蝸牛神経の走行までを考慮して過照射せぬよう意識して照射治療が行えるようになった. このような技術革新を背景に, 現状における聴神経腫瘍に対する治療指針を定位照射治療医の側面から以下のように提案している. 大型腫瘍 (Koos stage 4) においては基本外科的摘出. 一方で, 小中型腫瘍 (Koos stage 1~3) においては, たとえ内耳道内腫瘍であっても経過観察は基本否定的であり, 有効聴力かつ若い患者 (40歳代以下) であれば外科的摘出を, 手術拒否もしくはそれ以上の年代の有効聴力患者 (50歳以上) に対しては定位的放射線治療を勧めるべきである. さらに神経線維腫症2型において, 聴力温存必至であるため定位的放射線治療による早期介入を積極的に行うべきと考えている.
著者
中尾 矩也 戸張 和明 杉野 友啓 伊藤 佳樹 三島 光博 前田 大輔
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.141, no.1, pp.18-27, 2021-01-01 (Released:2021-01-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

This paper presents a control scheme for smooth torque production in permanent-magnet synchronous motor drives. The proposed control scheme consists of two techniques: a feedforward compensation for torque ripple minimization and an online parameter estimation technique for harmonic fluxes. The feedforward compensation is constructed on a position-sensorless vector control system and generates voltage commands to suppress torque ripples. The command calculation process requires the parameters of the harmonic fluxes; therefore, the proposed control scheme includes their estimator and calculates them from detected current information. These techniques are simpler than existing ones and can be implemented on a computational device with a small amount of calculation load. The proposed control scheme is verified by performing simulations and experiments.
著者
矢野 隆 魚里 博 鈴木 博子 嶺井 利沙子 根本 徹 清水 公也
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.95-102, 2002-08-25 (Released:2009-10-29)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

眼軸長測定には散瞳下・無散瞳下(自然瞳孔)のどちらの条件が適しているか。また新しい光学式の眼軸長測定装置ZEISS社製IOLMaster™(以下IOLMaster)を従来の超音波Aモード装置NIDEK社製US-800™(以下Aモード)と比較し、その有用性について検討したので報告する。対象は正常有志10名20眼(年齢22歳~28歳)。散瞳前後の眼軸長及び前房深度をAモードとIOLMasterで測定比較した。眼軸長及び前房深度の各測定において無散瞳下のAモードに対する3群(散瞳下のIOLMaster・無散瞳下のIOLMaster・散瞳下のAモード)の間で有意差を認めた。また前房深度測定においてIOLMasterは散瞳前後でも有意差を認めた。眼軸長及び前房深度の各測定の標準偏差値はIOLMasterは散瞳前後では小さく、無散瞳下のAモードでは一番大きかった。瞳孔径別の眼軸長及び前房深度測定の標準偏差値はIOLMasterでは、ほぼ一定であった。Aモードでは瞳孔径が小さいと標準偏差値は大きく、瞳孔径が大きくなるほど標準偏差値は小さくなった。Aモードでは散瞳下での測定、IOLMasterでは散瞳下・無散瞳下のどちらの条件でも測定に適していると考えられた。新しい光学式の眼軸長測定装置IOLMasterは、臨床においても極めて有用な装置であると考えられる。
著者
河野 道宏
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.142-148, 2019 (Released:2019-11-25)
参考文献数
26

近年,聴神経腫瘍に対して手術・放射線治療・経過観察が適切に行われるようになり,治療成績は以前に比して明らかに向上している.しかし,依然として,突発性難聴等と診断されて発見が遅れるケースが多く,初発症状から腫瘍の発見まで平均2年半以上かかっているのが現状である(筆者データ).これは,聴神経腫瘍の半数以上が突発型の聴覚症状を呈すること(筆者データ)が広く知られていないことと,除外診断であるはずの「突発性難聴」の診断が検査なしに安易につけられていることに起因するものと考えられる.治療の対象となりやすい若年者には,突発型の聴覚症状には内耳道中心のthin sliceのMRIのスクリーニングを行うべきと考えられる.
著者
川岸 卓司 松梨 夏季 水谷 孝一 若槻 尚斗
出版者
農業施設学会
雑誌
農業施設 = Journal of the Society of Agricultural Structures, Japan (ISSN:03888517)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.1-7, 2014-03

養豚農家において,呼吸器感染症の豚を早期に発見し,その拡散を防止することは大変重要である。現在,呼吸器感染症の検査は,各種抗体検査などで陰陽性を判別しているが,所要時間や費用を鑑みると頻繁に検査を行うことは困難である。そこで,本稿では,マイクロフォンアレイを用いて豚の咳・くしゃみ音を自動的に検出し,その発生位置を特定するシステムを提案する。提案手法を評価するため,標準サンプルに同一種の離乳期豚で湿潤状況が陰性な咳・くしゃみ音を使用し,同様の環境である豚舎にて咳・くしゃみ音の検知を行い,その発生位置の特定を行った。その結果,豚のくしゃみ音は30kHz以上の周波数を含み,ハイパスフィルタを用いた手法により,識別率は99.9%,位置測定率は85.7%で特定が可能であった。また,咳音は10-20kHzの周波数を含み,バンドパスフィルタを用いた手法により,識別率は99.6%,位置測定率は75.0%で特定が可能であった。これらの実験により,本手法の有効性が確認された。
著者
吉田 豊
出版者
[栃木県水産試験場]
雑誌
栃木県水産試験場研究報告 (ISSN:13408585)
巻号頁・発行日
no.55, pp.22-23, 2012-03

入漁者へのアンケートにより,平成22年度の那珂川におけるアユの釣りと投網による漁獲状況を調査しました。釣りについては、漁期中の平均釣れ具合は平年並みの10.3尾/人/日でした。一方,釣獲尾数は340万尾,釣獲重量は197.1tで平年より少なくなりましたが,その理由としては釣り入漁者数が33万人と過去2番目に少なかったことが影響したものと考えられました。また,釣獲魚の年間平均体重は平年よりやや大きい60.6gとなりました。投網については,漁期中の平均獲れ具合は2.9kg/人/日,漁獲重量は123.0t,入漁者数は4.3万人でした。
著者
井上 綾瀬
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.1179-1184, 2017

<p>漢訳律文献では,砂糖を表す際に「石蜜」という翻訳がしばしば使われる.しかし,紀元前後のインドには,サトウキビの絞汁を1/4に煮詰めた糖液(phāṇita/phāṇita),含蜜糖(黒糖,guḍa/gauḍa/guḷa),粗糖の結晶が浮いた廃糖蜜(khaṇḍa/khaṇḍa),廃糖蜜(matsyaṇḍikā/*macchaṇḍikā),薄い色の粗糖(śarkarā/sakkharā,さらに薄い色vimala/vimala)などが存在し,「砂糖」は複数存在した.サンスクリット語やパーリ語で残る律文献には,phāṇita,guḍa,śarkarā,vimalaが砂糖として示され,仏教教団にも複数の砂糖が知られていた確認ができる.しかし,教団内では砂糖は全て「薬」として使用された為,厳密な砂糖の種類を言及する必要はそもそもなかった.そのため,漢訳律文献において複数の砂糖をひとつの「石蜜」という単語に訳しても「砂糖=薬」の原則故に問題が無かった.そのため,漢訳律文献中の「石蜜」という訳語が示す砂糖は複数ある.漢訳律文献中の「石蜜」が,どの砂糖にあたるかは文脈や規則の内容から総合的に判断しなければならない.</p>
著者
渡辺 和子
出版者
リトン
雑誌
死生学年報 = Annual of the Institute of Thanatology, Toyo Eiwa University
巻号頁・発行日
vol.9, pp.231-246, 2013-03-31

誤植訂正のためPDF差し替え(2015年4月22日)
著者
鈴木 桂輔 宮本 康弘
出版者
The Society of Life Support Engineering
雑誌
ライフサポート (ISSN:13419455)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.152-158, 2011 (Released:2013-02-14)
参考文献数
12
被引用文献数
1

The effectiveness on the muscle expansion and the mechanism of "slow training" which puts a slow burden on muscles in slow operation were investigated. In this research, the frequency analysis of electromyography and investigation of the density of oxygenated hemoglobin in muscles were conducted to clarify the characteristics of the slow training which are different from the conventional training with high burden on muscles, in terms of the activation level of the fast-twitch fiber in muscles of legs. In these investigations, it was clarified that the cumulative value of electromyography during the training is relatively high, and the effectiveness of muscular expansion by the slow training is remarkable, like the conventional training. In addition to this, it was clarified that the fast twitch fiber was activated during the slow training because the power level of high frequency in the FFT analysis of electromyography is relatively high and the oxygenated hemoglobin is relatively low in muscles.
著者
河田 真清
出版者
札幌学院大学総合研究所 = Research Institute of Sapporo Gakuin University
雑誌
札幌学院大学経営論集 = Sapporo Gakuin University Review of Business Administration (ISSN:18841589)
巻号頁・発行日
no.14, pp.15-26, 2020-10-31

北海道鶴居村は,釧路市に隣接し,国立公園に指定されている釧路湿原を含む人口約2,600人の村である。広大で特異な景観や特別天然記念物のタンチョウという観光資源がありながら,以前は通過型観光地に甘んじており,観光客の滞在時間が短く,宿泊数も伸び悩み,観光による経済効果が薄かった。しかし,民間事業者が,「ここにしかない観光資源」「ここだから体験できる観光資源」を発掘,発見し,それを体験型観光資源として磨きあげ,観光ビジネスに取り組んだ。天然素材を使った料理や自然を味わうアドベンチャー・ツーリズムの観光メニューの構築を進めた。そのことによって,来村客を増やし,観光入込数,宿泊数の増加に結び付けた。現在は,新型コロナウィルス感染症による影響を受けている状況にあるが,テロワールの考え方に類似した地域の本物の資源を活用した観光事業としての回復を期待したい。
著者
大澤 史伸
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.382-391, 2013-03

厚生労働省では,「障害者の雇用の促進等に関する法律」(以下,障害者雇用促進法と記述する。)に基づき,1人以上の身体障害者又は知的障害者を雇用することを義務づけている事業主等から,毎年6月1日現在における身体障害者,知的障害者及び精神障害者の雇用状況について報告を求めている。2012年11月14日現在における同報告では雇用障害者数は,38万2,363人と過去最高を更新した。このことを受けて,小宮山洋子厚生労働大臣は,2012年5月23日,現行の法定雇用率1.8%から2.0%に引き上げる案を労働政策審議会の分科会に諮問した。分科会は同日,妥当と答申し,6月中にも政令改正を閣議決定し,2013年度から新しい雇用率が適用される見通しになった。しかし,民間企業(56人以上規模の企業)をみると,法定雇用率1.8%に対して実雇用率が1.69%であり,法定雇用率未達成企業は,53.2%と依然,民間企業における障害者雇用は進んでいるとはいえない状況である。
著者
篠田 淳司
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.539-549, 2011-06-01
参考文献数
9

2002年の新エネルギー法政令改正に伴い,木質バイオマス発電施設建設への助成策が講じられ,企業や自治体,森林組合などによる施設整備が相次いだ。また,2003年にはRPS法が施行され,木質バイオマス発電施設の建設が加速された。さらに,セルロース系バイオエタノールなどの次世代バイオ燃料開発,バイオマス熱の利用拡大,バイオマス混焼による石炭火力発電などの木質バイオマスエネルギー利用に関する計画が幅広く進められている。不況などの影響で木質チップへの需要が緩和する事態が続いていたが,昨今,バイオマス混焼による石炭火力発電やバイオマス専焼の大型発電所などが計画されるようになり,再び需給がタイト化すると予想されている。森林資源のカスケード利用の観点からは,エネルギー利用は最終的な手段と位置づけられるが,昨今ではESCO,カーボンオフセット,CO<SUB>2</SUB>排出量取引などの新たな付加価値を付加したビジネスモデルも相次ぎ発表され,さらには木質バイオマス発電の固定価格買取制度の導入も見込まれている。こうした情勢変化は,最大の課題となっていた事業採算性にも期待をつなげる雰囲気を創り出しつつある。<BR>木質バイオマス利用による産業化はなかなか容易でないことも確かだが,一方ですぐにでもできることがあることも確かだ。CO<SUB>2</SUB>削減などを目的にいくつかの事業が動き出しているタイミングをとらえ,地域にバイオマス活用の道筋をつけていくことが必要だろう。2020年の木材自給率50%・低炭素社会実現を謳った『森林・林業再生プラン』の有効な促進策としても,強力に推進すべき時を迎えていると言えるだろう。