著者
山内 龍男 宇佐美 直治
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.1546-1558, 2005 (Released:2006-08-25)
参考文献数
18
被引用文献数
3 3

木材パルプを原料とする一般洋紙と比較して, 楮を主原料とする市販の和紙には以下のような特徴が見られた。坪量が小さく, 厚さは比較的薄い。シート密度および弾性率は小さく, 繊維間結合もあまり発達していない。しかしながら紙面方向の各種強度は大きく, とくに引裂強度や耐折強度は極めて大きい。一方厚さ方向の強度である紙層剥離強度はかなり小さい。
著者
三枝 克磨
出版者
一般社団法人 日本看護管理学会
雑誌
日本看護管理学会誌 (ISSN:13470140)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.150-159, 2019 (Released:2019-12-19)
参考文献数
21

【目的】看護師が認識する時間外労働とその要因を記述し,これらの関連を探索すること.【方法】比例割当の層化無作為抽出により抽出した全国の病院774施設のうち,研究協力が得られた164施設に勤務する,一般看護師2408名を対象に無記名自記式質問紙調査を行った.「時間外労働に対する看護師の認識」,「時間外労働の要因に対する看護師の認識」に関する項目について因子分析を行い,因子間の因果関係を共分散構造分析により同定した.【結果】有効回答の得られた1497名(有効回答率62.2%)を分析対象とした.因子分析の結果,「時間外労働に対する看護師の認識」は4因子,「時間外労働の要因に対する看護師の認識」は7因子で構成されていた.共分散構造分析の結果,「患者ケア以外の仕事の多さ」は時間外労働に対する認識の4因子をより強く認識させる影響が最も大きかった(β=0.430~0.761, p<0.05).これに対して,「時間外労働に対する積極的な組織的対応」は「現在の時間外労働のままでは,仕事を辞めたい」との認識を妨げる影響が大きく(β=-0.518, p<0.05),その影響度は「患者ケア以外の仕事の多さ」を上回っていた(β=0.457, p<0.05).【結論】直接的な患者ケア以外の仕事の整理,時間外労働に対する積極的な組織的対応を実感できる看護管理者の関わり方と組織のあり方が,時間外労働による負担感を軽減する可能性が示唆された.
著者
Angel Torralba-Morón Maria Urbanowicz Carolina Ibarrola-De Andres Guadalupe Lopez-Alonso Francisco Colina-Ruizdelgado Juan-Manuel Guerra-Vales
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
vol.55, no.18, pp.2595-2599, 2016-09-15 (Released:2016-09-15)
参考文献数
18
被引用文献数
4 9

Endometriosis is a quite common pathology, however, intestinal endometriosis is a rare condition, which typically occurs with chronic symptoms. Its acute presentation is very infrequent. We herein report four cases of intestinal endometriosis, in which the clinical debut occurred acutely: two as an acute small bowel obstruction and two as a small bowel perforation. None of the cases had a preoperative diagnosis of endometriosis. The interest of these cases lies in this exceptional form of presentation, such as a surgical acute abdomen. Therefore, intestinal endometriosis should be taken into account in the differential diagnosis of an acute obstructive or perforative process of the small or large bowel.
著者
陳 嵩
出版者
一般財団法人 アジア政経学会
雑誌
アジア研究 (ISSN:00449237)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.40-54, 2015-06-30 (Released:2015-07-07)
参考文献数
15

Conventional arguments regarding the attitude of the Chinese populace toward the 2012 anti-Japanese demonstrations in China speculate on the characteristics and motivations of participants in anti-Japanese protests by observing their participation. By conducting surveys with average citizens at their residences immediately prior to anti-Japanese demonstrations rather than observing actual participants demonstrating on the street, this study sheds light on what regions and what types of people have the strongest inclination to demonstrate.First, it became clear that, prior to the occurrence of anti-Japanese demonstrations in 2012, different regions and income brackets differed in their inclination to demonstrate. On the whole, a trend of strong inclination to demonstrate was observed in the eastern region, where economic development is relatively advanced. Additionally, a strong inclination to demonstrate was observed among low-income individuals overall. A variety of factors increases a person’s inclination to demonstrate. A negative attitude toward Japan and a high level of patriotism are the factors that most increase inclination to demonstrate. Further, dissatisfaction with societal inequality and the belief that China protects freedom of speech are also factors that add to the inclination to demonstrate.
著者
Shiori Sugimoto
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
SOLA (ISSN:13496476)
巻号頁・発行日
pp.2020-004, (Released:2020-01-03)
被引用文献数
12

Heavy precipitation frequently occurs over Kyushu, southwestern Japan, during the Baiu season, and abundant moisture transport is a key driving factor. To statistically understand the intensification of moisture transport to Kyushu during the Baiu season, synoptic-scale atmospheric conditions are examined using a composite analysis of reanalysis data. A heavy precipitation day is defined as a day with area-averaged daily precipitation over Kyushu that is larger than 1.0 mm and ranked in top 10% during May 31 to July 19 from 1981 to 2015. During such heavy precipitation days, the precipitation observed over Kyushu exceeds 100 mm day−1. For several days before the occurrence of heavy precipitation over Kyushu, a plateau-scale disturbance develops over the Tibetan Plateau associated with daytime surface heating, and is characterized by cloud convection formation and eastward extension. During the eastward extension, latent heating from the cloud and upper-level high potential vorticity maintains the disturbance. The disturbance reaches northwest Kyushu on the heavy precipitation day, and a pair of positive and negative anomalies of relative vorticity over northwestern and southeastern Kyushu intensify the anomalous moisture transport.
著者
Masahrio Shiozaki Takeshi Enomoto
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
SOLA (ISSN:13496476)
巻号頁・発行日
pp.2020-003, (Released:2019-12-30)
被引用文献数
1

The 2015/16 El Niño is compared with the two previous strongest events, the 1982/83 and 1997/98 El Niño. The 2015/16 winter features a basin warming in the Indian Ocean, a negative sea surface temperature (SST) anomaly shifted to the north in the western Pacific Ocean in addition to a positive SST anomaly shifted to the west in the eastern Pacific Ocean. These SST distributions lead to suppressed convection in the Maritime Continent, and to a weakened Hadley circulation in the western Pacific Ocean. The eastern Asian monsoon in the 2015/16 winter was also weakened due to the dominance of the western Pacific (WP) pattern. On the other hand, the third and fourth centers of action of Pacific/North American (PNA) pattern in the 2015/16 case are obscure. This may be due to weak divergence in the eastern Pacific Ocean.
著者
山本 俊之 上垣 幸司 岩清水 隆 武田 浩
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.36-41, 2007-11-01 (Released:2013-04-26)
参考文献数
3

佐川美術館樂吉左衛門館は, 展示室・茶室の内外壁面に杉木目を有するブラックコンクリート化粧打放し仕上げを採用している。この高意匠ニーズの実現と美術館に求められる機能を満足するために, 最適なブラックコンクリート調合の選定, アンモニアガス発生量の抑制方法, 最適な杉木目転写仕上げ技術と施工方法等, 数多くの技術的課題について検討し, 種々の実験を経て, 実施工に臨み, 良好なコンクリートの黒味と杉木目の転写を得ることができた。
著者
河村 和徳
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.78-88,182, 2001-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
20

1999年に実施された愛媛県松山市長選挙は,相乗り候補に対して政党の支援を受けない候補者が当選したという点で注目に値する選挙であった。この松山市長選挙を分析した結果,相乗りに批判的な態度をとる有権者が必ずしも新人候補者を支援していたわけではなく,また政治不信も有権者が新人を志向することとは直接的な関連性はなかったことが,明らかとなった。一方,県議選挙直後における現職知事の新人支持発言とそれに伴う自民党愛媛県連の推薦見送りは,現職志向の有権者の態度変容を促す結果となっていた。その傾向は,政治的関心が高く地方の政治に不満を有していた有権者に顕著にみられた。本稿の分析結果は,相乗り候補者に対して草の根候補者が対抗するためには不信と投票方向を結びつける媒介変数が必要なことを示唆している。
著者
好田 裕史 淡路 友香子 内田 雅昭 永井 成美
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.243-250, 2018 (Released:2018-10-19)
参考文献数
21
被引用文献数
2

ウイスキーの香り刺激後の眠気感覚を体温や自律神経活動と共に評価することを目的とした。若年女性12名に, 異なる2日間の午前9時に, ウイスキー (8倍希釈) もしくはブランク (水) 10 mLを染み込ませた角綿をマスクに挟んで65分間連続で香りを負荷し, 主観的眠気・覚醒感覚, および深部 (鼓膜温) ・末梢 (足先) 体温, 自律神経活動 (心拍変動) を経時測定した。その結果, 1) 主観的な眠気スコア (絶対値) には両試行間で有意な差はみられなかった, 2) 深部体温は, ブランクでは負荷後65分まで緩やかに上昇を続けた (約0.05℃上昇) が, ウイスキー試行では負荷後30分まで上昇 (約0.15℃) した後低下する変化を示した。3) ウイスキー試行では, 負荷後の深部体温 (最大値からの低下量) と眠気スコア増加に有意な相関が認められた。本研究で用いたウイスキーの香りには, 深部体温を変化させる作用を有することが示唆された。主観的眠気に関しては, 評価方法を改善した検討が必要である。
著者
八島 章博 鈴木 丈一郎 田村 紗恵子 松島 友二 五味 一博 新井 髙
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.159-167, 2015-12-28 (Released:2015-12-29)
参考文献数
34

近年,音波歯ブラシが一般に普及している。音波歯ブラシの利点は高振動数によりプラーク除去効率に優れ,歯周ポケット内細菌に影響を与えていると考えられる。しかし,音波歯ブラシの歯周ポケット内細菌への影響を評価した研究は少ない。本研究では,音波歯ブラシのプラーク除去効果と臨床パラメータの変化,歯周ポケット内細菌への影響について評価した。振動数の異なる音波歯ブラシ3種と手用ブラシを無作為に40名の被験者に割り振り,使用前,2, 4週後に臨床パラメータ(Probing Pocket Depth, Gingival Bleeding Index, Gingival Index)とPlaque Control Recordを評価した。歯周ポケット内細菌はPCR-Invader法により総菌数と歯周病原細菌数を評価した。全歯ブラシで,ベースライン時に比べ,4週後のPlaque Control Recordと臨床パラメータで改善傾向を認めた。歯周ポケット内細菌は,いずれの歯ブラシでも総菌数の顕著な変化はみられなかったが,歯周病原細菌の中には音波歯ブラシの使用によって減少傾向を示す細菌種も存在した。以上より,どの歯ブラシを用いても縁上プラークの減少と臨床パラメータの改善が認められ,一定の効果を有することが示された。また,音波歯ブラシは,歯周ポケット内細菌叢に影響を与える可能性のあることが示唆された。
著者
中村 俊一郎
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.367-375, 1972 (Released:2007-07-05)
参考文献数
20
被引用文献数
5 6

1970, 71年の2年にわたり, イチゴの10余品種を採種してその発芽性を調査した.1. どの品種も強い光感性を示し, 暗黒下の発芽は不良であつた. 発芽温度については変温が著しく促進効果を示した. 恒温では25°C付近が適温であつたが, 20°Cから30°Cにわたつて比較的幅広い適温帯があつた.2. 採種後約1年間では休眠性の変化はみられず, 各品種とも強い休眠性を維持した.3. 薬品処理では硝酸カリが最も効果を示し, エスレルおよびジベレリンも相当程度有効であつたが, チオ尿素はわずかな効果しか示さなかつた.4. 低温処理は短期間では効果がなく, 1か月以上の処理が有効で, 3か月間処理すると大きな発芽促進効果を示した.5. 濃硫酸処理を行なつて種皮を腐蝕すると発芽が相当に促進され, イチゴ種子の休眠には種皮が大きな役割をもつていると考えられる.6. 近赤外光は強い発芽抑制作用を示し, 変温を行なつても発芽率は0%であつた. ただし低温処理は近赤外光の抑制作用に相当程度うちかつことができた.7. 種子は乾燥または低温下で良好に貯蔵された.
著者
長岡 正範
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.133-146, 2004-06-30 (Released:2014-11-12)
参考文献数
3

救急病院に入院した脳卒中患者を例に, リハビリテーションの進め方を説明した. リハビリテーションは, 個人に, 彼らの機能障害 (生理学的あるいは解剖学的な欠損や障害) および環境面の制約に対応して, 身体・精神・社会・職業・趣味・教育の諸側面の潜在能力 (可能性) を十分に発展させることと定義されている. 現在は, 工学や種々の新技術により失われたものを再獲得することも可能性として議論されるようになっている. しかし, 目の前の困難や不安をどのように解決するかという問題は, 今, 直ちに解決されなければならない事柄である. リハビリテーションでは, 種々の職種が広くかかわって, 困難を少しでも軽減するような集団的なアプローチが採られている. 医師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・臨床心理士・医療ソーシャルワーカーなどは主に, 医療を中心に関与する. 一方, 病院から出た後の社会における専門家も多い. 特に, 高齢化社会に対応して, 医療と福祉の連携を図るべく創設された介護保険によってさらに多くの職種が関与するようになっている. このような現状の中で, 直接患者に接する医師に求められる知識は, 専門家としての医学的知識のほかに, 疾病や傷害が直接もたらす機能的障害, 一人の個人としての能力の障害, 社会の一員として役割を演ずる上での障害など, 社会における人間として患者にかかわる諸問題に眼を向ける必要がある. このようなリハビリテーション医学の知識は, 従来の肢体不自由だけでなく, 感覚器障害 (眼・耳など) ・精神障害, その他の内部障害など医学の広い分野で必要なものである. 特定機能病院の限られた条件の中では, 急性期 (順天堂医院) から慢性期 (社会) への〈連続した医療ネットワーク〉を構築することがリハビリテーションの観点から重要である.
著者
髙橋 稔
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.106-113, 2018-10-31 (Released:2020-01-05)
参考文献数
21

臨床心理学の分野では,心理学的技法の効果を検証するために,しばしば一般にみられる虫や動物などの恐怖経験を対象としてアナログ研究を重ねてきた。本研究は,虫に対する自己評価式の恐怖経験評価尺度(以下,虫恐怖尺度)を作成し,信頼性と妥当性を確認することを目的とした。新たに作成した33項目からなる虫恐怖尺度を配布し,336名を分析対象とした。探索的因子分析および確認的因子分析の結果,虫恐怖尺度は11項目,1因子構造となった。虫恐怖尺度は内的整合性が高く,再検査信頼性も高かった(r=.88)。虫恐怖尺度とFQ-虫との相関はr=.67 であり,虫恐怖尺度とFQ-16(広場恐怖,血液・外傷恐怖,社会恐怖)との間ではr=.24~.34であった。また虫恐怖尺度とPRS-虫との間には有意な正の相関が確認された(r=.66~.72)が,PRS-小動物との間では有意な相関は確認されなかった(r=.19~.26)。本研究結果から,虫恐怖尺度は信頼性と妥当性を備えた尺度であることが示された。しかし,臨床群への応用については課題が残された。
著者
Shohei Yoshida Hayato Tada Tetsuo Nishikawa Tamami Nakagawa-Kamiya Takuya Nakahashi Kenji Sakai Kenji Sakata Masa-aki Kawashiri Masahito Yamada Masayuki Takamura
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
pp.3870-19, (Released:2019-12-26)
参考文献数
11

Transcatheter aortic valve implantation (TAVI) is widely accepted as the treatment for patient with severe aortic stenosis (AS) whose prognosis may be over one year; however, there is no consensus concerning extremely high-risk patients whose prognosis may not exceed one year. We herein report a highly frail patient with severe AS complicated with transthyretin-type cardiac amyloidosis who had a very poor prognosis. Given his condition, we treated him by percutaneous antegrade balloon aortic valvuloplasty (A-BAV) instead of TAVI. A-BAV may be a beneficial option for treating extremely high-risk severe AS patients, including those with cardiac amyloidosis.
著者
中島 啓
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.337-359, 2000-10-30 (Released:2008-12-25)
参考文献数
51
被引用文献数
1
著者
日野 克博
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第69回(2018) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.53_1, 2018 (Released:2019-01-18)

学習指導要領改訂を契機として、教職課程の質保証や教員の資質能力の向上を意図した教職課程の見直しが図られている。教員養成系大学では、教職課程コアカリキュラムに基づく再課程認定の手続きが進められており、学習指導要領の理解や具体的な授業場面を想定した授業設計等の知識や技能を身に付けるなど、「教科の指導法」科目の充実が期待されている。そこでは、「学習指導要領」「教材研究」「指導案作成」「模擬授業」等の内容をバランスよく指導することが求められており、その指導にあたっては、学問領域として「体育科教育学」が基盤になっていること、「体育科教育学」の種々の研究成果が指導内容に反映されていることが重要になってくる。しかし、「体育科教育学」の知見や成果をどのように反映させればいいか、各授業科目での達成基準との整合性、授業時間数等の条件、具体的な授業展開の方法など実践上の課題も少なくない。そこで、本シンポジウムでは、教職課程の見直しについて概説し、愛媛大学での「保健体育科教育法」の実践事例を紹介しながら、教員養成における「体育科教育学」の役割や指導のあり方について提案する。
著者
大谷 信介
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.471-484, 2003-03-31 (Released:2009-10-19)

社会調査は, 社会学者がおこなう学術調査以外にも実社会で多様にかつ多量に実施されている.市町村や中央省庁で実施される意識調査やマスコミが実施している世論調査等はその代表的なものである.しかしこれまでの社会学研究ではそれらにほとんど関心が示されてこなかったのが実情である.実社会で「社会調査がどのように実施され」それらが調査方法論の観点から「どのように評価できるのか」といった実態を正確に把握する作業は, 社会調査教育を提供している社会学にとって, 必要かつ重要な仕事といえるだろう.このような視点から, われわれは大阪府44市町村が総合計画策定のために実施した市民意識調査に関する聞き取り調査, およびそれらの調査票の質的評価に関する内容分析を実施した.そこで明らかになったのは, 社会調査論の観点からはとても看過できない問題を抱えた市民意識調査の深刻な実態であった.それらの詳細な実態については, すでに大谷信介編著『これでいいのか市民意識調査』 (ミネルヴァ書房2002年) としてまとめている.そこで本稿では, この調査で明らかとなった実態の中で, 特に社会学会として注目しなければならないであろう課題という視点から問題点を整理していきたい.
著者
中島 正夫
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.515-525, 2011 (Released:2014-06-06)
参考文献数
20
被引用文献数
2

目的 既存の資料に記載されている乳幼児体力手帳制度,妊産婦手帳制度,母子手帳制度,母子健康手帳制度の政策意図などを整理し,各手帳制度の公衆衛生行政上の意義について考察することである。方法 厚生省関係通知,関連書籍,および妊産婦手帳制度等の企画立案に従事された瀬木三雄氏の著作物等により,各手帳制度の政策意図などを整理,検討する。結果 (1)乳幼児体力手帳制度:根拠は国民体力法(1942年改正)。1945年度まで実施。乳幼児体力検査受診者に手帳を交付。保健医療従事者が記載した記録を当事者が携帯,その後の保健指導等に役立てた。(2)妊産婦手帳制度:根拠は妊産婦手帳規程(1942年)。妊娠した者が医師または助産婦の証明書を付して地方長官に届出(義務)をすることにより手帳を交付。保健医療従事者が記載した健診等の記録を当事者が携帯,その後の保健指導等に役立てた。一定の妊産保健情報を提供。妊産育児に必要な物資の配給手帳としても利用。(3)母子手帳制度:根拠は児童福祉法(1948年)。(2)を拡充し乳幼児まで対象。手帳交付手続き等は基本的に(2)と同様。乳幼児を対象とした一定の保健情報も追加。配給手帳としての運用は1953年 3 月まで。(4)母子健康手帳制度:根拠は母子保健法(1966年)。妊娠の届出は勧奨(医師等の証明書は不要)とされた。当事者による記録の記載が明確化,また様々な母子保健情報が追加された。結論 各手帳制度の公衆衛生行政上の意義について次のとおり考える。(1)母子保健対象者の把握:乳幼児体力手帳制度以外すべて,(2)妊産婦を早期に義務として医療に結びつけること:妊産婦手帳制度,母子手帳制度,(3)保健医療従事者および当事者が記載した各種記録を当事者が携帯し,その後の的確な支援等に結びつけること:基本的にすべての手帳制度(当事者による記録の記載は母子健康手帳制度で明確化),(4)当事者•家族による妊産婦•乳幼児の健康管理を促すこと:①保健医療従事者が記載した各種記録を当事者が保持;すべての手帳制度,②母子保健情報の提供;乳幼児体力手帳制度以外すべて,③当事者による記録の記載;母子健康手帳制度で明確化,(5)配給手帳として母子栄養を維持すること:妊産婦手帳制度,母子手帳制度。  以上のことから,わが国の手帳制度は,戦時下において主に父権的制度として制定され,その後の社会情勢の変化や保健医療体制の整備などに伴い,当事者の自発的な健康管理を期待する制度へと成熟していったと考えられる。