著者
寺島 孝明 大賀 涼 加藤 憲史郎 田久保 宣晃
出版者
一般社団法人 日本交通科学学会
雑誌
日本交通科学学会誌 (ISSN:21883874)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.8-17, 2018 (Released:2019-03-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1

警察庁発表の交通事故統計によれば、国内の2012年の交通事故発生件数約67万件のうち被追突車両が停止中の追突事故は約21万件であり、その内の13%が多重追突事故に至っている。本研究では、被追突車両が前方へと押し出されて、さらに前方に停止している車両等に衝突して二次被害を発生させる形態の多重追突事故を研究対象とした。追突事故の実態を把握するため、東京農工大学のヒヤリハットデータベースから追突事故時のドライブレコーダの記録を解析した結果、停止中または減速中に追突された車両の運転者の64%が、衝突の衝撃によりブレーキ操作を維持できずに中断していた。このブレーキ操作の中断中に、被追突車両は前方へと押し出され、一部の事故では多重追突事故に至っていた。そこで、本研究では追突事故における被追突車両にポストクラッシュブレーキシステムが搭載されており、追突直後に自動ブレーキ(ポストクラッシュブレーキ)が作動したと仮定して、被追突車両が押し出される距離を推定し、多重追突事故の削減の可能性を検討した。実車による追突事故の再現実験から車両追突時の反発係数を求め、得られた反発係数をドライブレコーダに記録された事故に適応することで、被追突車両が押し出される速度ならびに距離を推定した。ここで停止中の車列の最後尾とその前車との車間距離を2.5mと仮定した場合、最後尾の被追突車両が2.5m以上押し出された場合に多重追突事故に至ることになる。ドライブレコーダに記録された24件の追突事故のうち6件の事故で2.5m以上前方へと押し出されたと推定された。これらの事故に対して事故直後にポストクラッシュブレーキが作動したと仮定した場合、5件の事故で押し出し距離が2.5m以下に抑制できたと予想された。以上のことから、ブレーキ操作中に追突された際にポストクラッシュブレーキにより、被追突車両が前方の車両と衝突する二次被害を削減できる可能性が示唆された。
著者
櫻井 湧哉 内海 方嗣 近藤 碧 柚木 宏介 德永 尚之 表 梨華 稲垣 優
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.83, no.8, pp.1527-1532, 2022 (Released:2023-02-28)
参考文献数
28

膵intraductal oncocytic papillary neoplasm(IOPN)は膵癌取扱い規約(第7版)でIPMNなどと同列にあたる膵癌前病変の一つとして分類された.今回われわれはIOPNの1切除例を経験したので,疾患分類の変遷など文献的考察を加えながら報告する.症例は47歳の女性で,主訴は特になかった.1年前に検診の腹部超音波検査で膵頭部に膵嚢胞性病変を指摘され,近医で分枝膵管型IPMNと診断された.翌年に壁在結節の増大を認め,high risk stigmataに該当し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織所見では,膵頭部で嚢胞状に拡張した分岐膵管や類円形の核を有する腫瘍細胞の乳頭状増殖を認めた.免疫組織化学的染色を併施し,IOPNと最終診断した.経過は良好で術後14日目に退院した.
著者
木村 義之
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.34-41, 2018-01-01 (Released:2018-07-01)
参考文献数
9
著者
安原 彰子 竹原 卓真
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.9-15, 2022-07-31 (Released:2022-07-31)
参考文献数
21

The social support hypothesis posits that emotional crying has a social function in eliciting support from others and is said to occur regardless of gender, culture, location, or emotional valence. However, if the crying behavior is perceived as having the intent to manipulate others, support is predicted to be inhibited; nevertheless, this has not been verified in practice. Therefore, in this study, we used a scenario to manipulate the presence or absence of crying behavior and the intentionality of crying behavior to test this prediction (n=44). The results demonstrated that when crying behavior was perceived as intentional, anger emotion was significantly higher, and support intention was significantly lower compared to not-crying and not-intentional crying, supporting the prediction. The results of this study indicate that not all types of crying elicit support, suggesting that there are exceptions to the social support hypothesis.
著者
Rie Hayashi Hiroyasu Iso Kazumasa Yamagishi Hiroshi Yatsuya Isao Saito Yoshihiro Kokubo Ehab S. Eshak Norie Sawada Shoichiro Tsugane for the Japan Public Health Center-Based (JPHC) Prospective Study Group
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.1072-1079, 2019-04-25 (Released:2019-04-25)
参考文献数
43
被引用文献数
24 27

Background: Evidence from prospective cohort studies regarding the relationship between working hours and risk of cardiovascular disease is limited Methods and Results: The Japan Public Health Center-Based Prospective Study Cohort II involved 15,277 men aged 40–59 years at the baseline survey in 1993. Respondents were followed up until 2012. During the median 20 years of follow up (257,229 person-years), we observed 212 cases of acute myocardial infarction and 745 stroke events. Cox proportional hazards models adjusted for sociodemographic factors, cardiovascular risk factors, and occupation showed that multivariable-adjusted hazard ratios (HRs) associated with overtime work of ≥11h/day were: 1.63 (95% confidence interval [CI] 1.01–2.63) for acute myocardial infarction and 0.83 (95% CI 0.60–1.13) for total stroke, as compared with the reference group (working 7 to <9 h/day). In the multivariable model, increased risk of acute myocardial infarction associated with overtime work of ≥11 h/day was more evident among salaried employees (HR 2.11, 95% CI 1.03–4.35) and men aged 50–59 years (HR 2.60, 95% CI 1.42–4.77). Conclusions: Among middle-aged Japanese men, working overtime is associated with a higher risk of acute myocardial infarction.
著者
岩澤 誠一郎 内山 朋規
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.75-80, 2011 (Released:2012-03-29)
参考文献数
12

日本の株式市場において「ボラティリティ・アノマリー」─事前に観察されたボラティリティが小さい銘柄ほど,事後のリターンが高い―が見られることは広く知られている.我々はこの現象に,海外投資家及び信用取引を行う個人投資家が関与していることを実証する.第一に,「ボラティリティ・アノマリー」は海外投資家及び信用取引を行う個人投資家から日本株への資金流入が大きい局面では消滅/減衰し,資金流出が大きい局面で強まる傾向がある.第二に,海外投資家が日本株市場に資金を投下する際には,ボラティリティのより大きい株により多くの資金を投じる傾向がある一方,資金を引き揚げる際には,ボラティリティの大きい株からより多くの資金を引き揚げる傾向が見られる.また信用取引を行う個人投資家が資金を引き揚げる際にも,ボラティリティの大きい株からより多くの資金を引き揚げる傾向が見られる.
著者
高橋 信二
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.53-58, 2018 (Released:2019-02-01)
参考文献数
7

体育・スポーツ科学では,トップアスリートなどの特徴的な個人を対象とする研究報告も少なくなく,単一の個人を複数回測定したデータを分析することも多い.同一個人から複数回測定したデータから,個人特性(個人差)を考慮しつつ,一般的な傾向を見いだすための統計解析法として「対応のあるt 検定」や「反復測定の分散分析」がある.しかし,これらの統計解析は厳密には個人差を十分に反映したモデルとは言い難い.本稿では,反復測定の分散分析を例に,どのように個人差が処理されているのかを解説し,個人差を反映した統計モデルとその結果の有用な活用方法を紹介する.
著者
甲斐 健太郎 池田 俊也 武藤 正樹
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.75-86, 2013-02-20 (Released:2013-04-10)
参考文献数
70
被引用文献数
3 4

海外において,アセトアミノフェンは鎮痛剤の標準薬として広く活用されている.例えば,WHO はアセトアミノフェンをエッセンシャルドラッグとし,各国の様々なガイドラインも鎮痛の薬物療法の第一選択薬としている.この理由の一つとして,アセトアミノフェンの有効性と安全性が挙げられる.特に安全性について,アセトアミノフェンは同じ非オピオイド性鎮痛剤である非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に対し,消化器系障害,腎障害,出血傾向,心血管障害等の副作用リスクが低いとされている.一方,本邦においては,現在 NSAIDs の使用が一般的であり,アセトアミノフェンの鎮痛目的利用は少ない状況にある.これは,これまでアセトアミノフェンの承認用量が諸外国に比し少なく,鎮痛効果を得づらかったことが主要な原因の一つと考えられる.しかしながら,2011 年 1 月にアセトアミノフェンの承認用量が海外同様の水準に拡大され,アセトアミノフェンによる鎮痛効果を得ることが以前より容易になった.今後は日本でもアセトアミノフェンの鎮痛目的利用が増える可能性がある.わが国で汎用されている NSAIDs においては,特に消化器系障害に対し,その予防のため,防御因子増強剤,H2ブロッカー,プロトンポンプインヒビター(PPI)等の消化性潰瘍用剤が併用されることも多い.一方,アセトアミノフェンはそのような副作用リスクが低いため,消化性潰瘍用剤も必要ない.アセトアミノフェンの鎮痛目的利用が拡大すれば,鎮痛における薬剤費の低減効果も期待できる. (薬剤疫学 2012; 17(2): 75-86)
著者
中島 武史
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.109-124, 2021-09-30 (Released:2021-11-16)
参考文献数
50

少数派のみに注目し多数派と切り離された研究は,人々の分断を生み出す危険性がある.このような認識のもと,本論文では分断や二極化を回避する共生のあり方を模索する.最初に,言語面でのサポートとして存在感を増している〈やさしい日本語〉と言語権を批判的に検討し,共生を実現するために不足している論点をまとめる.次に,言語権のもつ二種類の権利保障について確認したうえで,言語権と〈やさしい日本語〉の関係についても検討する.後半部では,言語権を情報保障やコミュニケーションへの権利を含むより普遍的な枠組みに拡張し,障害学的言語権として組み直す.そして,人の多様性にも対応可能な障害学的言語権をもとに,多数派を共生にまきこむことを試みる.最後に,これからの社会言語学は具体的な「場」で起こる相互行為の過程を分析することで,上から与えられた共生ではなく,草の根の小さな共生に目を向ける必要があると主張する.
著者
上野 善道
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.117, pp.129-152, 2000-03-25 (Released:2007-10-23)
参考文献数
5
著者
東京帝国大学 著
出版者
東京帝国大学
巻号頁・発行日
vol.昭和14年度, 1939
著者
浅野 良雄
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.175-178, 2010 (Released:2012-03-27)
参考文献数
10

1) 共感は心理的現象であり,外から観察できない.また,日本語の共感は,英語のempathy とsympathy両方の意味で使われている.このため,指導や評価に難しさや混乱がある.2) 本論文で提唱する「対話法」では,医療者の応答を「確認型応答」と「反応型応答」の2つに分ける.この方法に基づいた指導は,医療コミュニケーションスキルの向上に寄与している.3) 「確認型応答」は,empathyの働きと似ている.このような言語的コミュニケーションに注目することで,共感を観察可能な技能として評価できる.
著者
松木 征史 山本 克治
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.919-922, 1993-09-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
13

宇宙には,目に見えている物質の10倍から100倍もの,目に見えない物質が存在していることがわかっている,この,いわゆる暗黒物質(ダークマター)の正体は現在全く不明であり,素粒子・宇宙物理学に関連する大問題である.暗黒物質は,通常の物質との相互作用がきわめて弱く,その検出は著しく困難である.暗黒物質の有力な候補である宇宙由来素粒子アクシオンの探索もきわめて困難な課題であるが,量子工レクトロニクスの手法を用いて探索する方法が最近見いだされて,その検出実験が進められている.