著者
栗原 昌子
出版者
福岡国際大学・福岡女子短期大学
雑誌
福岡国際大学紀要 (ISSN:13446916)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.85-91, 2001-02-14

本稿は, 筆者が1998年8月から9月にかけて国際交流基金の日本研究客員教授派遣事業により派遣されたメキシコのグアダラハラ自治大学経済学科において「日本経済入門」の一環として行った講義(使用言語スペイン語)「日本の金融」で用いたメモをこのたび書き起こしたものである。第1部は第二次世界大戦直後から90年代までの日本の経済発展過程を4段階に分け, その中で金融機関が果たしてきた役割, また, 日本モデルともいうべき独自の経済発展モデルを紹介したものである。第2部(次号掲載予定)では, 1990年代に戦後初めての長期不況と金融危機を経験したなかで着手された21世紀にむけての金融制度改革ならびに金融業界再編の進展を辿る。
著者
村上 明美
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.17-26, 1998-08-10
参考文献数
8
被引用文献数
1

自然分娩の骨盤出口部における産道の形態変化を, 力学的に分析したところ, 以下の「命題」が導き出された.<BR>1) 娩出力が陰門の中心に垂直方向に働けば, 娩出力は骨盤誘導線と一致し, 産道は力学的に合理的な形態変化となるため, 会陰裂傷は生じにくい. 骨盤出口部における産道の形態変化を継続的に観察することにより, 娩出力の働く部位と方向が予知でき, 意図的に娩出力の方向を調整することが可能となるため, 会陰裂傷の予防を図ることができる.<BR>2) 児頭娩出時にdrive angleを小さくすると, 娩出力の方向は骨盤誘導線に近づくため, 会陰裂傷は生じにくい. 児頭娩出時には, 大腿を屈曲する, あるいは体幹を前傾するなど, 体位を工夫しdriveangleを小さくすると, おのずと娩出力の方向が調整され, 会陰裂傷が予防される.<BR>3) 骨盤底筋群の抵抗が小さいと, 娩出力は前方に向かい, 反対に, 骨盤底筋群の抵抗が大きいと, 娩出力は後方に向かう. 娩出力が後方に向かうと, 会陰裂傷が生じやすい. 軟産道組織の軟化を促すことは, 骨盤底筋群の抵抗を小さくし, 会陰裂傷の予防につながる.<BR>以上の観点から助産実践を分析したところ, 具体的かつ理論的に行為を意味づけることができた.
著者
池田 隆明 小長井 一男 清田 隆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.I_970-I_980, 2017

2016年熊本地震では2日間に震度7の地震が2度発生するという特徴的な地震であった.地震の活動域は熊本県熊本地方から阿蘇地域,そして大分県の大分・別府地域に広範囲に拡大した.震度7の地震のうち最初のM<sub>j</sub>6.5の地震は日奈久断層,二番目のM<sub>j</sub>7.3の地震は布田川断層が起震断層と考えられ,ほぼ従来指摘されていた活断層の周辺で地表変位が確認された.震源近傍では強震動と断層変位に伴う地盤変形に起因すると考えられる構造物の被害が発生した.M<sub>j</sub>7.3の地震を対象に被害地域の強震動を再現するための震源モデルを経験的グリーン関数法を用いたフォワードモデリングにより構築した.
著者
[不二家編]
出版者
ゆまに書房
巻号頁・発行日
2011
著者
Hiroshi OKAJIMA Yuki MINAMI Nobutomo MATSUNAGA
出版者
The Society of Instrument and Control Engineers
雑誌
SICE Journal of Control, Measurement, and System Integration (ISSN:18824889)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.510-516, 2018 (Released:2018-11-22)
参考文献数
18

This study proposes a design method for unilateral control systems with communication rate constraints. In the case where it is necessary to control under a communication rate constraint, the effect of the quantization noise should be minimized using effective signal quantization methods. One of the effective methods for signal quantization is a feedback-type dynamic quantizer. We previously proposed a design method for a dynamic quantizer under communication rate constraints. In this paper, a unilateral control structure is proposed to minimize the effect of the quantization error. The design method for the quantizer is applied to the proposed structure. The effectiveness of the proposed system with the designed quantizer is assessed via numerical examples.
著者
宮木 貞夫
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.37, no.9, pp.507-520, 1964-09-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
3
被引用文献数
6

軍事経済を支柱として発展した日本の資本主義体制では,土地利用の面でも軍事優先の原則は貫ぬかれ,工場用地に適した土地が軍用地として民間から隔離されていた. 第2次大戦が終り,広大な軍事施設が解放され,これらは工場などに利用されつつある.日本では旧軍用地は国有財産として,大戦後の経済発展に寄与するように転換が行なわれた.関東地方における旧軍用地は約1,100口座, 430km2で,現在農地に44%, 公共施設に30%, 米軍に14%, 防衛庁に8%, 工場には4%が利用されている. 首都防衛のため東京を中心に20~60kmの範囲内に軍用飛行場は38個所あり,これに演習場を加え,広範囲にわたり平担な地は大規模な工場の用地として最適で, 1950年以降転用が著しい.農地に転用された旧軍用地も工場化の傾向にあり,現在農地の33%が工場適地に指定されている.
著者
今村 洋一 西村 幸夫
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.42.3, pp.427-432, 2007-10-25 (Released:2017-02-01)
参考文献数
5

本研究では、『国有財産地方審議会の審議経過』を用い、高度経済成長期前半における旧軍用地の転用と都市施設整備との関係を明らかにしている。旧軍用地の大部分は自衛隊用地や農地へと転用されたが、それでも5,081haという大量の旧軍用地が、工場、官公庁施設、公園、学校、公営住宅などに転用されることとなった。旧軍用地の都市的用途への転用には、高度経済成長下の都市化に伴う都市問題への対応という、変わりゆく都市の在り様に柔軟に対応するための予備資源としての役割と、戦後の制度改革や政策の実現に貢献するという、時代あるいは都市を変えてゆく推進装置としての役割の2側面があった。また、転用上の特徴としては、公的利用という基本的方向が見出せる一方で、地域や各施設に固有の条件との関係も見られた。
著者
小原 丈明
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.65-89, 2005-04-28 (Released:2017-04-15)
参考文献数
36
被引用文献数
1

本稿の目的は, 大阪市天王寺区上本町六丁目(上六)地区で行われた再開発の事例から, 都市再開発の社会的意義を考察することにある。上六地区コミュニティは, 太平洋戦争終戦直後に不法占拠という形で形成された闇市に端を発する。上六地区は戦災復興土地区画整理事業の施行区域に指定されたため, 地区住民は行政から立ち退きを迫られていた。そのため, 地区住民は立場の安定の獲得を企図して, 上六地区再開発を実施した。再開発に至る過程, 再開発の実施過程, 再開発実施後に区分し, それぞれの期間における権利関係の動向や地区住民と行政との関係の変化, あるいは地区住民の証言を分析した結果, 以下の都市再開発の社会的意義が明らかとなった。1)地区住民にとっては, 土地の権利を獲得することで立場の安定が得られ, また, 社会や行政に容認される存在となった点に意義があった。2)行政にとっては, 戦災復興区画整理の施行や不法占拠地区の清算という点で, 戦後処理が進展したことに意義があった。3)社会にとっても, 住民主導の再開発のあり方, その成功の要因が示された点に意義があった。以上から, 上六地区再開発は, 上六地区住民が自らの立場を守る目的で, 自らの手で実施した再開発であり, 地区住民のための都市再開発であったと結論づけられる。
著者
大富 潤 朴 鍾洙 清水 誠
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.1529-1538, 1989-09-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
22
被引用文献数
10 9

From May 1985 to February 1987, sampling surveys with small beam trawlers at 20 stations were carried out every season in Tokyo Bay. With these results and logbook data from several fishermen, the distribution of the Japanese mantis shrimp Oratosquilla oratoria and its relationship to fishing grounds were investigated.The distribution of the mantis shrimp covered a wide area of the bay from autumn to winter, but from spring to summer, it was concentrated towards the southern part. From the results of the mark-recapture experiment, this southern concentration is considered to be caused by the movement of the mantis shrimp. The distribution of fishing grounds was concentrated towards the southern part of the bay from summer to autumn and it expands to a wider area from winter to spring.In Tokyo Bay, larval mantis shrimp seem to settle in a wide area throughout the bay. As individuals settled in the northern (inner) area of the bay are not fished to any great extent until the following summer, they are secure to be recruited to the stock unless natural death occurs. 1 year-old and over individuals are the target for small beam trawlers and are caught rather intensively in summer and winter.
著者
有薗 智美
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集. 言語・文化篇 = Journal of Nagoya Gakuin University (ISSN:1344364X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.79-95, 2014

本稿は,意味的に分解不可能な慣用句のうち,身体部位を表す語(身体部位詞)の「手」または「足」を構成要素に持つ表現の比喩的意味の成立について考察する。本稿で対象とするのは,文字通りの意味が手や足に関する行為を表しており,表現全体の比喩的(慣用的)意味としては物事との関与を表す慣用句であり,それらの複数の表現の慣用的意味の成立には特定の認知プロセスが関与しており,体系的に動機づけられていることを示す。
著者
Tsuyoshi MATSUBA Momoko CHIBA Khongsap Akkhavong Aporn Sisuraj Yutaka INABA
出版者
The Japanese Society of Health and Human Ecology
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.255-262, 2005 (Released:2010-06-28)
参考文献数
13
被引用文献数
1

尿路結石症が多発するラオスにおいて,食習慣や生活習慣に関連する因子と疾患発症との関係を明らかにすることを目的に症例対照研究が行われた.尿路結石症例114名および病院ベースでマッチされていない対照97名が調査対象として選ばれた.質問紙を用いて食習慣や生活習慣に関する因子について質問され,各因子についてオッズ比が求められた.また食習慣に関しては,各々の摂取食品項目がどのような因子によって成り立っているのかを明らかにするため因子分析が用いられた.更に共分散構造分析(構造方程式)を用いて食習慣と疾患との間の関係についてモデルを構築しそれぞれの関連を明らかにした.尿路結石は病因の異なる2つのグループ,すなわち上位尿路結石および下位尿路結石に分けられる.下位尿路結石については伝統的な摂取食品項目との間に正の関連を表し,近代的な摂取食品項目との間には負の関連を示した.対照的に上位尿路結石は伝統的な食品項目よりも近代的な食品項目との問により高いパス係数が認められた.ラオスでは今後食生活の近代化によって,下位尿路結石は減少するものの上位尿路結石の罹患は上昇することが考えられる.
著者
登坂 学 トサカ マナブ Manabu TOSAKA
出版者
九州保健福祉大学
雑誌
九州保健福祉大学研究紀要 (ISSN:13455451)
巻号頁・発行日
no.17, pp.49-58, 2016-03

This paper presents an investigation of the true meaning and influence of Japanese popular culture, especially around idols, for Chinese youth. First, I investigate in the second section how Chinese youth and adult society perceive idols. Then, in the third section, I take a look at how the youth actually enjoy observing Japanese idols and attempt to relate to them as well as what sort of interaction and crossfertilization is occurring as a consequence of this: we can see a generational and cultural gap between the values of adult society and those of the youth community. In fact, Chinese youth are a prominent example of the casual transgression of an idealized image stipulated by adult society. What sort of influence does this popular youth culture prevailing in China and its psychological penetration have on society? This is a point that must be considered when adopting "Cool Japan" as a policy and trying to export culture. Simultaneously, this study suggests that the Japanese idol training system holds the potential for pluralistic interaction, growth, and meetings among youth; in other words, it holds a socioeducational significance.