著者
會澤 綾子
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.193-204, 2017-08-25 (Released:2017-08-25)
参考文献数
23

Weick (1987) は、高信頼性組織を支える三つの要因 (1) 必要多様性、(2) 信頼性の特徴、(3) イナクトメントについて論じている。複雑なシステムへの対応には限界があるという前提に立ちながらも、個人や組織によって打ち勝つ可能性や、物語を通じた組織文化の重要性を提言するものである。全体を通じて多様性について繰り返し語っていることにも特徴がある。高信頼性組織の研究では、のちにWeick, Sutcliffe, and Obstfeld (1999) やWeick and Sutcliffe (2001) によってフレームワークが構築され、マインドフルネスという概念が提示されるが、Weick (1987) で提唱される多様性はこのマインドフルネスを読み解くキーワードにもつながると考えられる。
著者
森 滋勝
出版者
一般社団法人 日本鉄鋼協会
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.817-824, 1990-06-01 (Released:2010-05-07)
参考文献数
59

最近の流動層“工学”の進歩を述べなければならないのだが,ここでは,最近の研究と技術開発について現在注目を集めているテーマを例として取り上げ,その成果と課題を紹介する.鞭,森,堀尾による“流動層の反応工学”が刊行されてから既に5年余りが経過した.本書の1・2節で,流動層の歴史を4期に分け,“第3期で流動化現象を覆っていた未知のベールはほぼ取り除かれ,粒子分散系の挙動の総合的解明に大きな一歩を踏み出したのが現在の第4期である.”と述べたが,その後,流動化粒子や操作条件の拡大にともない,新しいベールに包まれたより一般的な粒子分散系の解明に向けてますます盛んに研究が行われている.この間に,特集記事や成書が刊行された.流動層に関する第4~6回の国際会議も開催され,それぞれのプロシーディングが刊行されている.さらに特筆されるのは,新しく循環流動層だけについての国際会議が既に2回開催されたことで,第3回が1990年10月に名古屋で開催されることになっている.新しい研究の展開に大きな影響を与えたのは,この間もやはり流動層技術の新たな展開であった.1980年代に入って1970年代の世界を巻き込んだエネルギー問題も石油価格の低下により一応鎮静化した.しかし,流動層燃焼技術の開発は研究費の削減などの逆風にもかかわらず大きな進展を見た.特に,新しい燃焼技術として登場した循環流動層燃焼装置(CFBC)は,中規模用ボイラーとしてヨーロッパにおいて大成功を納め,その後,米国やアジアにおいても主に産業用ボイラーとして急速に導入されている.このCFBCの成功により,循環流動層(CFB)に関する研究がいっせいに展開され,国際会議が開催されるまでになったのである.一方,エネルギー問題に続いて主に我が国において起こったファインセラミックスをはじめとする新素材ブームは,流動層を使用した化学気相成長法(CVD)等の新しい反応器の開発やサブミクロン等の微細粒子の流動化に関する研究の強い推進力となっている.さらに,石油製品のいっそうの白物化に対応するため,より重質な油分が処理できる流動層接触分解プロセス(FCC)の開発や,高度な環境保全に対応できる下水汚泥の焼却,廃棄物や都市塵芥の燃焼とエネルギー利用プラントの開発等は,流動層に対してより高度で精密な設計と操作を要求し,詳細な基礎研究がますます重要になっている.また,最近では石油化学製品の好調な需要に支えられて各種の新しい触媒反応器の大型化や建設が計画されており,一部では既に稼働しはじめているが,今後の動向は世界的な経済情勢の動向に大きくかかわっている.鉄鋼分野では,既に読者の方々もよく御承知のように,溶融還元プロセスのための流動層を用いた鉄鉱石の予備還元炉の開発が推進されている.ここでは,まず流動化現象に関する最近の研究として,循環流動層と微細粒子の流動化を取り上げその現状と課題を紹介する.次に,最近の流動層技術の展開の例として,FCCプロセス,燃焼プロセス,新素材製造技術を取り上げ,最近の展開を紹介する.
著者
永松 哲郎 児玉 良明 角川 明 高井 通雄 村上 恭二 石川 暁 上入佐 光 荻原 誠功 吉田 有希 鈴木 敏夫 戸田 保幸 加藤 洋治 池本 晶彦 山谷 周二 芋生 秀作 山下 和春
出版者
公益社団法人日本船舶海洋工学会
雑誌
日本造船学会論文集 (ISSN:05148499)
巻号頁・発行日
no.192, pp.15-28, 2002-12
参考文献数
11
被引用文献数
7 12

This paper is the second half of the report on the study on microbubbles carried out by the SR239 project of the Shipbuilding Research Association of Japan, and describes the full-scale experiment using "SEIUN MARU", a 116m-long training ship that belongs to the Institute for Sea Training. Using numerical analysis and the experimental data obtained in the preparatory study described in the first half of the report, the net energy saving of SEIUN MARU by microbubbles at 14kts was estimated to be 2%. In the full-scale experiment, the trajectory of the generated bubbles was observed using underwater TV cameras and was found to shift more upward than predicted. The local skin friction was measured at several locations on the hull surface, and the skin friction increase as well as decrease by the bubbles was measured. The local void ratio was measured at one point on the hull surface, and the bubbles were found to travel slightly away from the hull surface. The change of the ship speed and shaft horsepower by microbubbles was measured, and the decrease or increase of engine power at constant ship speed was analyzed. In the most cases of the experiment the ship speed decreased by the bubble injection, mainly due to the increase of ship resistance and the decrease of propeller efficiency caused by the bubbles going into the working propeller. But, by carefully choosing the bubble injection location and thus avoiding the bubble entrainment into the propeller, the 3% power saving at a constant speed of 14kts was obtained. By taking into account the power needed to inject bubbles against hydrostatic pressure due to water depth at the injection point, this corresponds to the net power saving of 2%. Thus the net power saving by microbubbles was measured on a full-scale ship for the first time in the world.
著者
岡本 成司 山口 洋子 小山 寛喜 中谷 操子 米田 千恵 渡部 終五
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.444-453, 2012 (Released:2012-06-15)
参考文献数
27
被引用文献数
1 5

ヤマトシジミの食味に及ぼす塩分の影響を明らかにするため,涸沼および涸沼川下流域で採取した試料のエキス分および潮汁の食味を比較して,水質環境との関係を調べた。涸沼川下流の塩分は潮汐の影響を強く受けて涸沼に比べて高く,軟体組織中の D-, L-アラニン含量は涸沼川産の方が涸沼産よりも高い値を示した。一方,潮汁の遊離アミノ酸総量は涸沼産の方が涸沼川産に比べて高く,官能検査では涸沼産の方が涸沼川産より先味および後味で強い傾向が認められた。
著者
中右 雅之 橘 強 岡部 寛 光吉 明 柳橋 健
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.657-661, 2016 (Released:2016-09-30)
参考文献数
9

妊娠・出産による腹直筋離開は,欧米ではしばしば治療対象となるが本邦では着目されていない.今回われわれは,腹部膨隆を主訴とする2回の経膣分娩歴のある33歳,および双子を帝王切開で出産した36歳の女性の腹直筋離開に対し腹腔鏡下に修復を行った.両者とも離開部を鏡視下に非吸収糸で縫縮した後composite meshによる補強を行った.腹部CTによる術前・術後6カ月の腹直筋間距離(inter-recti distance:以下IRD)を,臍部頭側3cm・臍部中央・臍部尾側2cmで計測を行い評価した.1例目ではIRDは術前26mm・42mm・20mmから術後は10mm・15mm・10mmと,2例目では術前26mm・32mm・23mmから16mm・9mm・9mmと短縮した.両者とも術後合併症はなく修復に対する満足度は高かった.妊娠出産後の腹直筋離開に対する本邦での腹腔鏡下修復例の報告はなく,文献的考察を加え報告する.
著者
大田 由紀夫
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿大史学 (ISSN:04511913)
巻号頁・発行日
no.62, pp.1-16, 2015
著者
中西 京二
出版者
三重大学学芸学部歴史研究会
雑誌
ふびと
巻号頁・発行日
vol.3, pp.22-26, 1954-07-26
著者
鈴木 公雄
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.225-280, 1992

一 出土貨幣研究の目的 (一) 経済活動復元の資料としての出土貨幣 (二) 出土備蓄銭の考古学的資料整備 (三) 出土備蓄銭の考古学的分析と中世貨幣経済史への接近二 出土備蓄銭の研究史 (一) 出土備蓄銭発見史 (二) 戦前の備蓄銭研究と基本的分析方法の確立 (三) 戦後の備蓄銭研究の進展 (四) 備蓄銭研究と中世経済史 (五) 最近の備蓄銭研究の動向三 出土備蓄銭の集成と概要 (一) 出土備蓄銭の集成 (二) 出土備蓄銭の銭種構成 (三) 最新銭による上限年代の設定 (四) 備蓄銭の出土状況と埋納方法 (五) 備蓄銭出土記録の問題四 出土備蓄銭の時期区分 (一) 備蓄銭埋納風習の成立時期 (二) 出土備蓄銭の時期区分 (三) 時期区分と実年代との相関 (四) 各時期の備蓄銭の分布とその特徴五 出土備蓄銭の銭種組成 (一) 全備蓄銭の銭種組成とその数量比 (二) 上位二〇種銭種組成の分析 (三) 銭種組成の時期別変化 (四) 備蓄銭の分析結果の要約六 出土備蓄銭と中世後期の銭貨流通 (一) 備蓄銭と精銭・悪銭 (二) 永楽通宝の諸問題 (三) 銭貨からみた中世と近世
著者
山梨県立文学館
出版者
山梨県
巻号頁・発行日
no.(98), 2016-03-10
著者
古沢 常雄 池田 賢市 板倉 裕治 岩崎 久美子 岩橋 恵子 上原 秀一 小林 純子 園山 大祐 高津 芳則 高橋 洋行 夏目 達也 藤井 穂高 堀内 達夫 小野田 正利 藤井 佐知子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、学業失敗や無資格離学、失業など我が国と共通の様々な教育問題を抱えるフランスにおいて、社会統合と公教育の再構築に向けたキャリア教育の取り組みがどのように行われているかを、全教育段階を対象に総合的に明らかにした。フランスでは、我が国のキャリア教育(英語のCareerEducation)に相当する概念はほとんど用いられていないが、先進諸国においてキャリア教育が必要とされる社会的背景を共有しており、フランスにおいてキャリア教育と呼びうる様々な教育活動が義務教育、後期中等教育及び社会教育・継続教育の分野でどのように実際に展開されているのかを総合的に明らかにした。