著者
金井 景子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、朗読を用いて中等教育国語科の授業を活性させるためのプログラムとそれを実践し得る教員を養成するためのプログラムの作成を目的とするものである。開発したプログラムは以下の通りである。(1)中等教育国語科の授業を活性させるためのプログラム(1)近現代の詩歌教育に関するプログラムの開発・実践(2)古典教育に関するプログラムの開発・実践(3)国語科発信の総合学習向けプログラムの開発(2)教員養成のためのプログラム(1)教職関連科目における朗読指導の学習プログラムの開発・実践(2)教職関連科目における「落語」を使用した学習プログラムの開発上記のプログラムはすべて、早稲田大学の教職関連科目「中等教育国語科インターンシップ」および「授業技術演習C」において実施されている。
著者
楠 綾子
出版者
関西学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、日米安保条約を基礎に日米が1950年代を通じてどのように、どのような安全保障関係を形成したのか、とくに在日米軍基地の運用をめぐる合意形成に焦点を当てた研究である。条約締結時に日本が自衛の能力と意思に乏しかったこともあって、日米間の安全保障関係の中心的機能は、共同防衛よりも基地の貸借と運用であった。その性格は1950年代を通じてほとんど変わらず、日米は基地の運用をめぐってさまざまな慣行や制度を作りあげていった。事前協議制度はそのひとつの例である。本研究は、日米両国が米軍基地の運用に日本が協力する仕組みを形成することを通じて、日米が「同盟」関係を形成したことを明らかにしている。
著者
高安 健将
出版者
成蹊大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、英国の議院内閣制が多数代表型構造を維持しつつも、政治不信という時代状況のなかで、レファレンダムの使用、新設の最高裁判所の定着、二院制の再検討という事態から、議会と政府がこれまでの自由な裁量を制約される制度配置が英国で少しずつ検討され、定着していることを明らかにした。
著者
谷川 智康
出版者
兵庫県立有馬高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

研究の目的:多地点で流星電波エコー観測(HRO)を行うことにより、エコー検出の時間差から流星の速度を決定することである。研究の方法:速度決定の最低地点数である6地点のデータを取得すべく3地点で2周波数の観測を行った。(1)観測機器設置揚所:兵庫県立有馬高校(三田市)、兵庫県立西脇工業高校(西脇市)、兵庫県立篠山鳳鳴高校(篠山市)(2)送信局:福井工業高等専門学校(53Mhz)矢口徳之氏長野県豊科町(28Mhz)2007年11月より観測し、しし座流星群、ふたご座流星群、しぶんぎ座流星群の活動時期を中心に観測を行った。研究の成果:・データについては現在解析中であるが流星の速度を決定する品質のデータはまだ検出できていない。・GPS受信機から1ppsの信号をパソコンに取り込むための回路の作成に成功した。・今回、用意した機材を今後も活用し、継続して観測していきたい。なお、この研究は高校生に本格的な科学研究を体験させる教育的な目的も含んでいたため、観測機材の設置校を中心に参加を呼びかけたが、応募者がなく残念であった。今後の観測継続にあたっても高校生に呼びかけ、単なる流星観測でなく教育的意義も持たせていく予定である。研究に関連し、神戸大学が主催した"月面突発発光観測兵庫チーム"に参加し、ふたご座流星群の際には流星体の月面衝突発光観測にも参加した。上記の観測継続にあたっては神戸大学が主催している"月面突発発光観測兵庫チーム"と共同体制をとっていく予定である。月面衝突発光の際に借り受けた高感度CCDカメラを使って、電波観測と同時に映像による流星観測を行い、流星の軌道決定を併せて行うとより精度の高い観測データが得られることを学んだ。今後はこの高感度カメラを併用しながら流星の速度計測に取り組んで行きたい。
著者
市川 定夫
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

環境制御した培養液循環(NSC)栽培装置内でムラサキツユクサBNL4430株(青/ピンクのヘテロ株)の若い花序をもつ根つきshootsを大量に育て、雄蕊毛におけるピンク色体細胞突然変異誘発頻度を指標として、異なる変異原間の相互作用機構の研究を行った。これまでに調査した5種類の単一作用型のアルキル化剤、メチルメタンスルホン酸(MMS)、硫酸ジメチル(DMS)、エチルメタンスルホン酸(EMS)、N-メチル-N-ニトロソウレア(MNU)、N-エチル-N-ニトロソウレア(ENU)のうち、MNUはX線と加算効果しか示さないが、他はすべてX線と明白な相乗効果を示し、X線との相乗効果とその現れ方がこれらアルキル化剤のSwain-Scott基質係数(s)、すなわち、MMS:0.88、DMS:0.86、EMS:0.67、MNU:0.42、ENU:0.26と必ずしも一致していなかった。そこでやはり単一作用型のアルキル化剤である硫酸ジエチル(DES)とX線との相乗効果を調査したところ、明白な相乗効果が見られたものの、その現れ方は、やはりs値とは一致しなかった。また、MMSとEMSの間では明白な相乗効果が見られたのに対して、MNUとEMSは単に加算効果しか示さなかった。一方、これまでに調査した3種類のプロミュータジェン、マレイン酸ヒドラジド(MH)、o-フェニレンジアミン(PDA)、N-ニトロソジメチルアミン(DMN)のいずれもが、X線照射後処理では明白な相乗効果を示したに対して、処理後X線照射では相殺効果を示し、ペルオキシダーゼ活性が、前者では高まるのに対して、後者では抑えられ、この酵素がこれらプロミュータジェンの活性化にかかわっていることが判明していた。ただし、DMN、PDA、MH処理中X線照射は、それぞれ相乗、加算、相殺効果を示していた。今回調査したプロミュータジェンでありかつ二作用型のアルキル化剤である1,2-ジブロモエタン(EDB)処理中のX線照射は明白な相乗効果を示したが、MHとEMSは常に相殺効果を示した。従来の結果と新たに得られた結果から、アルキル化剤、X線、および体内で活性化されて変異原となるプロミュータジェンが、DNA鎖切断、染色体切断など少なくとも部分的に共通の作用機構をもつ場合に相乗効果が現れ、そうでない場合には加算効果のみとなり、プロミュータジェンの活性化が他の変異原で阻害されると相殺効果を示すものと考えられる。
著者
谷口 一雄 三辻 利一 中井 泉 吉村 作治 宇高 忠 中村 浩
出版者
大阪電気通信大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究は文化財資料や考古学資料等を持ち出すことなく"その場分析"を行いつつ、かつ非破壊な分析を要求する資料に対して資料の化学構造、化学種の情報を与え、かつ定量分析を可能とする文化財分析用可搬型X線分析装置を試作し、あわせてこの試作装置による文化財・考古学分野への適用評価を行うことである。このため、文化財・考古学分野でX線を用いた分析手法でどのような情報の抽出が求められているか、いかなる条件の下で測定しなければならないか等を含めて測定要素の検討を研究分担者の専門分野ごとに行い、2001年3月末までに試作装置を完成させた。この間、研究分担者、吉村、三辻、及び中村らはそれぞれ個別に適用評価に係わる予備調査を行った。特に吉村はエジプト古王国・新王国時代の埋蔵副葬品・貴金属類への適用を、中村は日本国内における銅鐸等金属類への適用を、また三辻は古代・中世土器への適用評価に向けての予備実験・調査を行った。平成13年度は岩石分析の問題抽出の為の岩石フィールド分析の実習を兼ねた研究会を実施し、この成果をもとにエジプトでの出土遺物のレリーフとステラのその場分析を実施した。本研究で開発を行った考古学分析用可搬型X線分析装置による考古学分野への適用評価研究として、平成14年度はエジプトでのフィールド測定を行った。ポータブル蛍光X線分析装置1号機の改良を行い、よりその場分析に適した装置を開発した。本装置は、モノクロメータにより単色化したX線と白色X線の二つの励起源が選択でき、また1号機に比べて、分光ヘッド部の大幅な軽量化及び先端形状を細く円錐上に改良することで、湾曲した面など様々な形状を持つ考古資料の分析に対応できる特徴を持っている。本装置とともに、高いS/N比が実現した新開発のポータブル粉末X線回折装置をエジプトのアブ・シール南丘陵遺跡の発掘品収蔵庫に設置し、その場分析を行った。両装置を用いて遺跡から出土した彩色プラスター、彩文土器の顔料等を分析し、エジプシャンブルー、アマルナブルー、赤鉄鉱、軟マンガン鉱などが青、赤及び黒色の顔料として同定できた。
著者
ロバート ジェイコブズ ブロデリック ミック
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

放射線被ばくの健康面への影響に関する知見は多くあるが、本研究は放射線被ばくの社会的・文化的影響について歴史的・比較文化的検証を行った点において、初の研究であると言える。世界各地で放射線に被ばくした人々やその家族、また核実験へ参画した人々などへ数多くの聞き取り調査を実施した。社会的・文化的影響の一端としては、仮設住宅への移住、食生活の変化や制限、宗教や伝統の分裂・崩壊、伝統的知識の途絶などが挙げられる。被ばくの実相は家庭内においても、子や孫の世代へ受け継がれぬまま隠される傾向がみられ、個人、家族、地域社会のあらゆるレベルにおいて社会的・文化的崩壊を招くことが分かった。
著者
百生 敦 矢代 航
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

X線Talbot干渉計を含め、X線透過格子を用いる微分位相計測技術と、フレネルゾーンプレートを用いたX線結像顕微鏡を組み合わせることにより、位相敏感X線顕微鏡の開発し、高分子材料や生体組織などの弱吸収物体の高感度・高分解能観察技術を立ち上げた。さらに、試料を回転させて複数の投影方向で撮影を繰り返し、試料内部構造の三次元屈折率分布画像の再構成(X線位相トモグラフィ)も実現した。
著者
山口 謠司 田中 良明
出版者
大東文化大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

さまざまな携帯端末が、「本」の形を大きく変えようとしている。紙に印刷された「本」は、いずれ失われる時が来るのであろう。第一次世界大戦が始まったちょうど百年前、「本」は、知識や技術を伝えるためにはなくてはならないものであった。そして、その「本」を巡って焚書が行われ、また「本」によって国の運命が左右されるということが起こったのである。第一次世界大戦は、有線、無線による通信網の発達を促し、それまでの時代と一線を画すグローバル化の契機となった。我が国は青島の攻撃を行うことでドイツ総領事に置かれた書籍を鹵獲した。そして、同時にドイツが攻撃したルヴァン大学の図書館の再興のために書籍が寄贈された。
著者
塚本 勝巳 大竹 二雄 金子 豊二 井尻 成保 青山 潤
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-05-11

天然の生理生態情報を基に親魚の催熟・採卵技術と仔魚の飼育法を改善した。卵巣遺伝子の網羅的解析の結果、天然魚ではアンドロゲン受容体タイプA(ara)とアクアポリン-0および-3パラログ遺伝子が大量に発現していることを見出し、良質卵産生のための重要な指標を得た。仔魚の浸透圧調節能と栄養吸収機構の発達を調べたところ、イオン輸送体のNKCC2bとNCCbはふ化後2-3日目に消化管に発現し、水飲みの亢進と同期すること、ペプチド輸送体PEPT1は腸管上皮細胞の頂端部に局在することが分かり、飼育プロトコルが改善された。天然仔魚の体成分アミノ酸窒素同位対比分析から餌はマリンスノーと判明し、新規飼料を開発した。
著者
神波 雅之
出版者
鳥取大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

1.磁気共鳴映像法による脳循環評価健常者における無呼吸時の脳の信号変化をT_2^*強調画像(スピンエコー型エコープラナー法)により測定し、無呼吸時の信号強度上昇を確認した。信号強度上昇はhypercapniaによる脳血流量増加の効果が脳血液量増加、動脈血酸素飽和度低下の効果を上回り、oxygenation上昇がもたらされたためと考えられた。閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者においても無呼吸時の脳の信号上昇を認めた。閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者においては健常者に比して信号強度変化は有意に大きかった。無呼吸発作の頻発する患者では無呼吸と過呼吸の反復によりhypercapniaの効果が増強されているものと考えられた。本研究により無呼吸時の脳の信号変化が臨床用磁気共鳴映像装置により測定可能であることが明らかにされた。本研究の成果は学会において発表ならびに学術雑誌に投稿中である。2.磁気共鳴分光法による脳機能評価脳の器質的異常を有さない閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者の脳プロトンスペクトルを測定し、ポリソムノグラフィーによる重症度(apnea index;AI)別および健常者との比較検討を行なった。中等症以上(AI≧20)の閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者において大脳深部白質のN-acetylaspartate/choline比の有意な低下を認めた。本知見は通常の磁気共鳴映像法等の検査では全く異常を認めない閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者においても脳代謝の変化を生じていることを示すものである。本研究により閉塞型睡眠時無呼吸症候群の中枢神経障害の評価法としての磁気共鳴分光法の可能性が明らかにされた。本研究の成果は学会および学術雑誌に発表した。
著者
赤羽根 有里子
出版者
岡崎女子短期大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、江戸期昔話絵本の書誌、並びに本文・絵柄の特徴を明らかにすることを目的とした。書誌的事項の調査は、各種書籍目録の記載事項の整理を行い、「桃太郎」四十三種・六十一作品、「花咲爺」十六種二十四作品について、原本の閲覧または原本の写真版によって記載事項の確認を行った。調査の結果、目録には赤本『枯木に花さかせ親仁』の版本に京大本とあるものが、複製本であること、黄表紙『古昔花咲勢祖父』の版本所蔵者として記載のあった東博では、そのような書名の作品を所蔵していないこと、また、目録に記載はないが黄表紙『桃太郎一代記』の版本に松浦資料博物館本があることなど、目録記載事項を修正すべき点があった。「花咲爺」の諸本については日本昔話学会で発表し、その内容を論文「江戸期昔話絵本『花咲爺』の諸本」にまとめた。「桃太郎」については作品数が多く、諸本の調査結果については順次明らかにする予定であるが、今年度は合巻『赤本再興桃太郎』の書誌・翻字と解説を発表した(黄表紙『桃太郎一代記』は平成9年6月刊行を予定)。本文・絵柄の検討は、特にまだ研究が進められていない合巻体裁絵本三作品『桃太郎』『桃太郎一代記』『昔噺桃太郎』について行った。その結果、出生の場面の描かれ方については、爺婆が桃を食べて若やぐことは三作品全てに共通するが、初期の赤本に見られた「婆が若やいで男児を出産するのは『昔噺桃太郎』のみで、他二作品は桃の中から生まれていることや、拾った桃の食べ方や保存場所など、作品ごとに相違が見られ、それらが作品の趣向になっていることが判明した。桃太郎像についても赤本では神格化した存在として描かれていたが、合巻では心情や性格を表すような詞書や会話が付加され、各作品ごとに桃太郎の人物造形が具象化されていることが明らかになった。
著者
岡本 哲和 石橋 章市朗
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

2010年参議院選挙および2011年大阪市長選挙におけるインターネット・ユーザーを対象とした調査によって、以下のことが明らかになった。(1)投票先の決定におけるインターネットからの影響の受けやすさに対して、政治知識が及ぼす影響は非線形的であった。すなわち、投票先の決定においてインターネット上の選挙情報から影響を受けにくいのは、政治知識の程度が低い有権者およびそれが高い有権者であった。それに対して、最も影響を受けやすいのは、政治知識の程度が中程度の有権者であった。(2)投票先の決定におけるインターネットからの影響の受けやすさに対しては、年齢の及ぼす効果はきわめて限定的であった。
著者
笹原 亮二
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

九州周辺には各地に島嶼が存在する。それらの島嶼は古来、国内外を巡る航路以上に位置し、また、歴史的に中国・朝鮮半島・沖縄(琉球)といった「異国」と接する境界領域に位置したことから、各島嶼の民俗芸能は国内外から政治的・文化的等、様々なかたちで多大なる影響を蒙ってきた。こうしたことは、これらの島嶼の多種多様な民俗芸能の理解にあたっては、それらを、文化的・歴史的・地域的に形作られてきた多様性に富む存在として、それぞれの島嶼の文脈において精確に見ていくことが必要となることを示している。
著者
平山 文俊 庵原 大輔
出版者
崇城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

シクロデキストリン (CyD) の包接作用を利用して、溶液媒介性結晶多形転移ならびに結晶成長速度の制御を試み、以下の知見を得た。① アセトヘキサミドを 2-ヒドロキシブチル-β-CyD含有水溶液から再結晶すると、新規結晶多形 (Form VI) が得られた。新規多形 Form VIは安定であり、他の結晶多形 (Forms I~V) に比べて高い水溶性を有した。② 2,6-ジメチル-β-あるいは2-ヒドロキシブチル-β-CyD含有水溶液からアスピリンを再結晶すると晶癖は板状から針状結晶に変化した。2-ヒドロキシブチル-β-CyDは多形転移あるいは晶癖制御剤として有用であることが明らかとなった。
著者
中邨 真之
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

葉緑体では同義コドンの使用頻度と翻訳効率が必ずしも一致しない。また、葉緑体rps2 mRNAには翻訳効率の高いコドンが、rps16 mRNAには翻訳効率の低いコドンが多く含まれるように進化してきたと考えられる。このようなコドンの嗜好性がmRNAの翻訳効率にどのような影響を与えるのかについて、葉緑体in vitro翻訳系を用いて解析した。その結果、(1)rps16の5'非翻訳領域はほとんど翻訳活性を持たない、(2)rps16 mRNAのタンパク質コード領域はrps2よりも約3倍速く翻訳される、(3)この翻訳効率はコドン変換によりさらに高まることが明らかになった。
著者
勝俣 隆
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究では、内外の中世小説の伝本を閲覧し、書誌学的調査を行い、資料を多数入手した。また、中世小説の挿絵と本文の関係について考察した。入手した伝本の中で優れたものは、ライデン民族学博物館所蔵『貴船の本地』の翻刻と解題のような形で公にした。説話では、七夕・羽衣等と中世小説の関係を考察した。特に、日本文学で、人間と動物の結婚についての法則を論じたものは意義がある。さらに、黒田日出男氏のコード論を利用して、渋川版における「遠山」のコードを分析した。最後に、まとめとして、中世小説の伝本が、海外に所蔵される経緯について論じた。
著者
山本 いずみ
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、明治期の新文体の創造期における、翻訳文学が文章語に与えた影響について、ミステリー小説という極めて大衆的な分野から見ることにある。そのために、以下のようなことを行った。平成15年度:E.A.Poe原作"The Black Cat"の明治期の翻訳(広い意味での)を集め、原文に沿う形で切り分け、Excelの一覧表とする作業を中心に研究を進めた。用いた資料は、饗庭篁村「西洋怪談黒猫」(明治20年11月『読売新聞』)から平塚らいてう「黒猫」(明治44年12月『青鞜』)までの6作品であった。また、明治期の翻訳という観点からShakespeare原作"Hamulet"の翻訳6本を取り上げて比較検討し、「それぞれのハムレット」(名古屋工業大学紀要第55巻)としてまとめた。平成16年度:榎本破笠「蔦紅葉」(原作は"The Murders in The Rue Morgue"明治25年11〜12月『やまと新聞』)を中心に研究を進め、前年度の"The Black Cat"に関する考察を「独白する者-"I"の変遷-」としてまとめ、名古屋言語研究会で発表した。また、明治期の翻訳語という観点から「情報」という言葉の変遷を論文「情報通」(『人間社会論集IV技術社会のバックグラウンド』vol.4所収)としてまとめた。平成17年度:伝統的な和文脈「私…われ/わが…」および漢文脈「余…われ/わが…」が新しい書き言葉「私…自分/自身…」へと移り変わる様相を「日本の『黒猫』における一人称代名詞の変遷について-Edgar Allan Poe原作"The Black Cat"-」(『児童文学翻訳作品総覧アメリカ・ギリシャ・アラブ編』所収)をまとめる一方で、『現代語で読む「松陰中納言物語」付本文』(和泉書院)を著わし、和文脈の中においてどのように会話文が成立しているかについても検討した。以上より、使用された人称代名詞の変化と文体の密接な関係を利用することで、文体変化の一端を明らかにすることができた。また、研究の過程で、独白文と会話文で用いる人称代名詞が異なることに興味を惹かれた。今後は、この点を掘り下げ、会話文の独立と新しい書き言葉成立の関係を明らかにして行きたいと考えている。
著者
嶋田 義仁 坂田 隆 鷹木 恵子 池谷 和信 今村 薫 大野 旭 ブレンサイン ホルジギン 縄田 浩志 ウスビ サコ 星野 仏方 平田 昌弘 児玉 香菜子 石山 俊 中村 亮 中川原 育子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-05-11

家畜文化を有したアフロ・ユーラシア内陸乾燥地文明が人類文明発展の中心にあった。家畜は蛋白資源生産(肉、乳、毛、皮)に止まらない。化石エネルギー使用以前人類が利用しうる最大の自然パワーであった。移動・運搬手段として長距離交易と都市文明を可能にし、政治軍事手段としては巨大帝国形成を可能にした。これにより、旧大陸内陸部にグローバルな乾燥地文明が形成された。しかしこの文明は内的に多様であり、4類型にわけられ。①ウマ卓越北方冷涼草原、②ラクダ卓越熱帯砂漠、③小型家畜中心山地オアシス、④ウシ中心熱帯サヴァンナ、である。しかし海洋中心の西洋近代文明、化石燃料時代の到来とともに、乾燥地文明は衰退する。
著者
牧野 俊郎
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2007

本研究は,熱工学の立場から人間の生活環境と地球の自然環境のほどよい共生を図ることをめざす萌芽的な研究である.人間の生活環境の改善はわれわれの当然の希望であり,とりわけ日本の蒸し暑い夏を快適に過ごすための努力はあってよい.ところが,その生活環境の快適さを実現するために空気調和機器(エアコン)をもってすれば,その使用電力分が地球大気に熱として放出され,さらにその電力生産にともなう熱が大気に放出されて,地球の温暖化を促進する.すなわち,エアコンに頼って快適さを追求しつづける限り,生活環境と地球環境との共生は難しい.本研究の要点は,(1)壁によるふく射冷却と(2)水蒸気を呼吸する壁である.電力よりは自然の自律制御機能に依存して人間の快適さを追及することである.本研究では,夏に涼しく冬に暖かい生活・暮らしの実現に貢献できる技術の開発のために,ふく射伝熱と水蒸気を呼吸する高熱伝導性の多孔質体に注目する.自律的な生活環境制御機能をもつ生活空間の壁をバイオマスの暖かさをもって実現することをめざす.このような人間生活と自然現象を見つめる熱工学研究の萌芽が育つことの社会的意義は大きいと考える.平成20年度は,まず,室温の表面の全半球放射率測定器の開発を行った.その結果,(壁システムを構成する)第一壁や人体・衣服の全半球放射率を正確かつ簡便に測定できるようになった.次いで,一定の温湿度に調整し準断熱・断物質の環境実験槽の密閉空間にその温湿度の壁システムを設置して,初期の定常状態を実現し,壁システムの水冷銅管に一定の温度の水を流して壁システムを始動し,次の定常状態に至るまでの非定常過程で,環境実験槽内の湿り空気の温度・湿度の変化・第一壁の表面温度・含水量の変化を測定した.その結果,本研究の要点の上記の(1)と(2)が構想どおり実現できることを実験的に示した.