著者
Ohkuma Moriya Noda Satoko Hongoh Yuichi KUDO Toshiaki
出版者
社団法人日本農芸化学会
雑誌
Bioscience, biotechnology, and biochemistry (ISSN:09168451)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.78-84, 2002-01-23
被引用文献数
13 59 66

Phylogenetically diverse clones of the partial 16S rDNA (ca. 850 bp) of bacteria belonging to the bacteroides subgroup of the cytophaga-flavobacter-bacteroides phylum were collected from the symbiotic microbial communities in the guts of six termite species without cultivation. Combined with the sequences reported previously, a total of thirty phylotypes of the subgroup were identified and classified into five phylogenetic clusters. One that was comprised of the phylotypes from a single termite species was related to the genus Rikenella. Two were clustered each with some cultured strains, genera of which have not been clearly defined yet. The remaining two clusters had no culturable representatives, suggesting the presence of yetuncultivated genera within the termite guts. From these sequence data, we designed a specific primer for the bacteroides subgroup, which was successful in the terminalrestriction fragment length polymorphism analysis to detect the phylotypes of the subgroup in the termite gut.

1 0 0 0 OA 英仏単語図解

著者
近山安則 (章一) 訳
出版者
長岡屋新助
巻号頁・発行日
1872
著者
高梨 克也 坊農 真弓 原田 なをみ 高梨 克也 堀内 靖雄 片桐 恭弘 神田 和幸 細馬 宏通 原田 なをみ 堀内 靖雄 神田 和幸 細馬 宏通 坊農 真弓 城 綾実
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

対面コミュニケーションの基本的単位である「発話」の構造について, 実際に収録されたデータを用いて分析した. 「発話」は言語だけでなく, ジェスチャーや視線などの非言語表現も含んだマルチモーダルな複合体である. そのため, 本研究では, 聴覚モダリティを用いる音声言語と視覚モダリティによる手話を比較し, 各モダリティの特徴を解明した. また, 言語の文法構造がコミュニケーションのやり取りを形成する際にどのように利用されるかを解明した.
著者
玉蟲 敏子 五十嵐 公一 野口 剛 三戸 信惠 渡辺 雅子
出版者
武蔵野美術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の成果として特筆されるのは、17世紀の宮廷で制作された和歌を伴う画帖・屏風絵が、絵画ばかりでなく書の料紙の装飾や縁裂の装飾なども重視して制作されていた事実を明らかにしたことである。伊達家伝来の狩野探幽・安信等合筆「百人一首画帖」には明清風の木版摺料紙や伝統的な金銀箔散し・墨流の技法が複合的に用いられ、その表現は仁清の色絵陶器にも共通している。山本素軒筆「明正院七十賀月次図屏風」の表装は七十賀の記録と一致しており、当時のまま伝承されていることが判明した。ともに17世紀後半の京都の装飾感覚を示し、その成立事情から宮廷文化に対する武家方の憧憬や、緊張した当時の朝廷と幕府の関係などがうかがえる。
著者
中村武 編輯
出版者
技工研究会
巻号頁・発行日
vol.後編, 1911
著者
中島 功 猪口 貞樹 木ノ上 高章 片山 正昭 尾崎 清明
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

位置情報と個体識別ができるS帯2.4-500kbps伝送速度の鳥装着用パケット送受信機の開発し、総務省の型式認定を申請した。山階鳥類研究所で渡り鳥に装着し、その鳥がわが国に帰還すれば、データが採取でき危機管理に役立てる。H5N1の感染地域、ロシア、モンゴルでの鳥インフルエンザ関連の生態環境、電波伝搬環境を分析し、将来の危機管理としての鳥インフルエンザ予防に役立てる統合研究をおこなった。
著者
ゴールドスミス D.
出版者
日経サイエンス
雑誌
日経サイエンス (ISSN:0917009X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.34-42, 2012-06

「ミルコメダ」という名前の銀河を知っている人はほとんどいないだろう。私たちの天の川銀河と,現在は250万光年離れている"お隣の銀河",アンドロメダが数十億年後に衝突して生み出される超巨大銀河のことだ。
著者
渡辺 佑基
出版者
国立極地研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

北極海の生態系の頂点に立つニシオンデンザメとホッキョクグマという二種の捕食動物から詳細な行動データを得ることができた。ニシオンデンザメは遊泳速度や尾びれの動きがとても遅く、体の大きさの違いを考慮して比較すると、今まで調べられた魚類の中で最低レベルであることがわかった。北極海の冷たい水温により、本種の遊泳能力は大きく制限されていることが示唆された。ホッキョクグマは少なくとも4月の問は明確な日周性をもたず、一日の約半分の時間を活動的に動き回って過ごし、残りの半分の時間を休んで過ごすことがわかった。
著者
宮崎 良文 池井 晴美 宋 チョロン
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.122-135, 2014 (Released:2014-05-24)
参考文献数
46
被引用文献数
4 23

There has been growing attention on the effects of forest on physiological relaxation and immune recovery, particularly in forest medicine research, from a perspective of preventive medicine. Japan is a world leader in the accumulation of scientific data on forest medicine research. In this review, we summarize the research that has been conducted in this area since 1992. We conducted field experiment, involving 420 subjects at 35 different forests throughout Japan. After sitting in natural surroundings, these subjects showed decrease in the following physiological parameters compared with those in an urban control group: 12.4% decrease in the cortisol level, 7.0% decrease in sympathetic nervous activity, 1.4% decrease in systolic blood pressure, and 5.8% decrease in heart rate. This demonstrates that stressful states can be relieved by forest therapy. In addition, it should be noted that parasympathetic nervous activity was enhanced by 55.0%, indicating a relaxed state. The results of walking experiments provided similar results. Li et al. demonstrated that immune function was enhanced by forest therapy in middle-aged employees who volunteered to participate in these experiments. Natural killer cell activity, an indicator of immune function, was enhanced by 56% on the second day and returned to normal levels. A significant increase of 23% was maintained for 1 month even after returning to urban life, clearly illustrating the preventive benefits of forest therapy. In an indoor room experiment, we conducted tests with the following: 1) olfactory stimulation using wood smell, 2) tactile stimulation using wood, and 3) auditory stimulation using forest sounds. These indoor stimulations also decreased the blood pressure and pulse rate, and induced a physiological relaxation effect. We anticipate that forest medicine will play an increasingly important role in preventive medicine in the future.
著者
田口 博子
出版者
東京大学文学部宗教学研究室
雑誌
東京大学宗教学年報 (ISSN:2896400)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.79-99, 1992-03-30 (Released:2011-10-12)

本論では『ある幻想の未来』と『文化への不満』に見受けられるフロイトの宗教批判の特徴を抽出することを主題としたい。これらの宗教批判論では宗教に対して「イリュージョン」という言葉が遣われている。フロイトの他の著作の中で「イリュージョン」は殆ど使用されていないが、芸術や夢や神経症の症候には「ファンタジー」という言葉が多用されている。今まで余り顧みられなかったこの言葉の遣い分けに注目して、宗教批判論では「イリュージョン」と「ファンタジー」の区分が宗教と他の現象、特に-隣接現象、時には同類と見做される-芸術・夢・神経症との相違を解明する鍵ではないかと考え、両者を比較することで宗教批判の特徴が掴めるのではないかと想定した。更に、「イリュージョン」が批判されるべき存在である理由は、集団との関連が問題視されているのではないかという推測のもとに、集団心理を分析した『集団心理と自我の分析』を考察する。その分析を下敷きにして、同一化・惚れ込み・自我理想などの概念が示唆する、集団と宗教と他の文化現象との関連を明確にすることを試みた。尚、表記について予め付言しておきたい。"Illusion"は通常「幻想」と邦訳され、"Phantasie"は「空想」と翻訳される。ところが精神分析用語を翻訳する際に使用したラプランシュ,ポンタリスの「精神分析用語辞典」では"Phantasie"は幻想と訳されている。また、精神分析の領域でも「ファンタジー」は広く幻想とされている。そこで本稿は"Illusion"をそのまま「イリュージョン」、"Phantasie"を「ファンタジー」として、"Phantasieren"だけは適切な語が見当たらなかったので従来通り「空想する」と表記することにする。 In "Die Zukunft einer Illusion" und "Das Unbehagen in der Kultur", wo Freuds kritische Stellung zur Religion ihren Ausdruck findet, wird das Wort "Illusion" in bezug auf die Religion verwendet, das Wort "Phantasie" dagegen in bezug auf die Kunst, den Traum und die Symptome des Neurotikers. In diesem Aufsatz habe ich die Absicht, die Beschaffenheit der Religionskritik von Freud zu erklaren, indem ich den Unterschied zwischen den beiden Wortern herausarbeitet. Die Phantasie ist im Traum ein Bestandteil des Traums, der sich auf den Ausgangspunkt und das Endziel des Traums bezieht. Bei den neurotischen Symptomen verbindet sie den Neurotiker mit der AuBenwelt. In den Abhandlungen liber die Kunst wird die Phantasie als das Produkt der "KompromiBbildung", die das Lustprinzip mit dem Realitatsprinzip versohnen laBt, angesehen. Die Phantasie hat namlich eine innere Relation zur Wunscherfullung. Die Kultur schrankt ihre Mitglieder in der Wunscherflillung ein, um sich selbst zu erhalten. Statt der Erfullung ihrer Wunsche bietet sie ihnen, vor allem in der Kunst, eine Ersatzbefriedigung. Die Kunst, so wie Freud sie sich vorstellt, ist in die etablierte Ordnung eingefugt, sie wird ihr namlich nicht gefahrlich. Die Illusion muB nicht notwendig unrealisierbar sein, aber sie kann ohne Rlicksicht auf das Verhaltnis zur Realitat existieren. Sie ubernimmt fur die Menschen die Rolle einer Schutzfunktion. Wahrend die Religion den Glaubigen Trost gibt, fiihrt sie in starkem MaBe zur "Verdrangung" : Gott ist ftir die Glaubigen sowohl das Ichideal als auch das Liebesobjekt. In diesem Zustand funktioniert das Ich der Glaubigen nicht, deswegen sinkt die Kraft der Kritik im Ich. AuBerdem fordert die Religion von ihnen, sie fur die Wahrheit anzusehen. Die Religion besteht in der falschen Forderung auf Wahrheit und in der Verdrangung des Ich und in dieser Hinsicht kritisiert Freud die Religion.
著者
加藤 孝久
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

フラーレン系ナノ構造体であるC_<60>やカーボンオニオンは優れた機械的・電気的特性を有することが期待されるものの、そのサイズ制御が困難であるため現状その応用がほとんど進んでいない.本研究では貴金属へのカーボンイオン注入法を用い、カーボンオニオンの粒子径の制御とその増大を試み、スパッタAg貴金属薄膜内へのCH_4プラズマイオン注入により、Ag結晶粒界におけるカーボンオニオンの形成が確認され、イオン注入後の真空アニール処理によって、その粒径は17. 4±1. 7nmに増大することが確認された.本研究により明らかとなったカーボンオニオンの粒子成長プロセスを応用することで、今後のマイクロメートルスケール巨大フラーレン粒子の合成が大いに期待される.
著者
前田 寿美子
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

肺癌組織におけるCD44 standard form (CD44std)、CD44 variant 6 (CD44v6)、およびgalectin-9の発現と、組織型、分化度、病期、予後について検討を行った。組織型別には扁平上皮癌でCD44std、CD44v6の陽性率が高く、腺癌でgalectin-9の陽性率が高かった。分化度別には、腺癌において低分化になるほどCD44v6の陽性率が低下する傾向があり、扁平上皮癌において低分化になるほどgalectin-9の陽性率が低下する傾向が認められた。以上の結果は腺癌と扁平上皮癌でヒアルロン酸を中心とする細胞外マトリックスに対する生物学的態度が異なっている可能性とともに、肺癌組織においてgalectin-9の発現によりCD44の機能に何らかの調節がなされている可能性が示唆された。
著者
松浦 克美
出版者
日本微生物生態学会 / 日本土壌微生物学会 / Taiwan Society of Microbial Ecology / 植物微生物研究会
雑誌
Microbes and Environments (ISSN:13426311)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.269-275, 1998-12-31 (Released:2009-10-05)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

Green filamentous bacteria (Chloroflexus) and cyanobacteria are commonly observed in bacterial mats of hot springs with the temperature range betwen 45 and 70°C and pH range between 6.5 and 9.0. Sulfide concentration is another factor which largely affects the distribution of thermophilic photosynthetic bacteria. Chloroflexus spp. are thought to maintain many characteristics of the oldest photosynthetic bacteria. Photosynthetic bacterial mats in hot springs are important for the studies on early stages of the evolution of photosynthesis.
著者
八木田 浩史
出版者
日本工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

可処分時間を考慮した産業の生産性および環境効率の改善を評価した。各種製造業の生産性を整理し、一人当たりの生産性が高い技術集約型の産業と、一人当たりの生産性は必ずしも高くないが産業規模が拡大している労働集約型の産業に分けられることを確認した。タブレットPCの導入による産業の効率改善に着目して、メール処理および出張報告書の作成などをシナリオ分析し、ICTが可処分時間の拡大に寄与することを確認した。現代の時間の価値を論ずる際には、単に時間の量に基づく議論だけではなく、人的側面では可処分時間の内容、産業側面では製品の開発・普及速度などの質的な側面も考慮した検討が必要であることを確認した。
著者
野沢 庸則 R.E.BLANKENS ブランケンシップ D. Oesterhel OESTERHELT D. BLANKENSHIP R.E.
出版者
東北大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1988

本共同研究の目的は光合成細菌の耐熱化の機構の解明とこの知見を利用した新しい耐熱化光合成細菌の作製であった。本共同研究の前半の目的である光合成細菌の耐熱化の機構の解明においては今回は特に光合成の初期過程の耐熱化の機構の解明に焦点を絞った。本研究の後半の目的は解明された耐熱化の機構にもとずいて遺伝子工学的に新しい耐熱性光合成細菌を作製することにあった。このために反応中心のタンパク質及び色素構造を明らかにするとともにその遺伝子の構造を明らかにし、点変異を行なうべき場所および種類を明らかにすることを目的にした。光合成細菌の耐熱化の機構の解明において特に光合成の初期過程に焦点を絞った。その耐熱化の要因の解明には一昨昨年と一昨年に亘るアリゾナ州立大学のBlankenship教授と続けている耐熱性光合成細菌Chloroflexus aurantiacus,Chromatium tepidumの反応中心タンパク質の単離(研究発表論文参照)とその耐熱性の検討からほぼその主原因の特定ができた。すなわち、現在知られている菌体で最高の耐熱温度を示すChloroflexus aurantiacus,Chromatium tepidumの反応中心タンパク質の単離とその耐熱性の検討から反応中心の耐熱化機構の主原因が膜内ヘリックスを結び付けているタンパク質部分にあることが特定ができた。このため遺伝子操作による耐熱能の向上をはかるためにChromatium tepidumの反応中心の遺伝子のつり上げとその塩基配列の決定のための実験に着手した。全染色体遺伝子の単離と精製には昨年度前半のミュンヘンのOesterhelt教授のところでの実験により成功した。昨年度後半のミュンヘンのOesterhelt教授のところでの実験ではこれを制限酵素で切断し、この中から常温光合成細菌であるRhodobacter sphaeroidesの反応中心からのランダムブライミング法により合成したプロ-ブとの混成からChromatium tepidumの反応中心の遺伝子が含まれていると思われる約6Kベ-スの断片についてブラスミドに挿入してクロ-ニングしたが、期待されたクロ-ンの予備的な塩基配列の検討から反応中心のものとは考えられなかった。そこで今年度は全染色体遺伝子を制限酵素により部分分解し、これをin vitroパッケ-ジ反応を利用してコスミドにクロ-ニングし、このラムダハァ-ジを、大腸菌にトランスフェクションして、これからやく800個の遺伝子断片をもつコロニ-(いわゆるジ-ンバンク)を得た。このコロニ-の中から常温光合成細菌であるRhodobacter sphaeroidesの反応中心からのランダムブライミング法により合成したプロ-ブとの混成実験からChromatium tepidumの反応中心の遺伝子が含まれていると思われるコロニ-を10個ほど選びだし、このDNAを精製しSouthern BlotからChromatium tepidumの反応中心の遺伝子を含むと思われるコロニ-の特定をおこなった。これと並行してChrotatium tepidum反応中心の精製と結晶化を行なった。これはそのX線構造解析による3次元立体構造と、遺伝子からの全アミノ酸配列の知見を元に耐熱化能の向上のために遺伝子に修飾を与える場所を決定する際大変参考になると予想されるからである。現在までに高度に精製した反応中心からタンパク質的にそのアミノ酸末端の配列の決定に成功しこれをもとにした反応中心選別のためのプロ-ブの作製ができた。タンパク質の結晶化については現在かなり条件の絞り込みができたところである。現在、反応中心遺伝子の塩基配列の決定のための実験とともに結晶化の実験を継続中である。最終目的である光合成細菌の耐熱化を行なうためには遺伝子の修飾とこれを組み込んだ常温光合成細菌の耐熱化を検討する必要が有る。上述のように遺伝子は単離され、まもなく塩基配列が決定されるので、修飾すべき場所を構造化学的知見(結晶化と、そのX線構造解析による3次元立体構造)から求め、これをもとに遺伝子の修飾、発現、培養を行なうことが残された課題である。これらの課題に対して現在Oesterhelt教授のグル-プと共同研究を続行している。
著者
山本 真鳥 棚橋 訓 豊田 由貴夫 船曳 健夫 安井 眞奈美 橋本 裕之
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

・研究実施計画は、平成11年度については、若干の変更の後に、ほぼ予定通りに遂行された。平成12年度は、日程調整を行い、調査の足りない部分を補いながら全体の計画が遂行された。・芸術祭の事前に各国を訪れることによって、準備状況を観察し、また異なるジャンルの芸術の全体的な存在様式を観察することができた。・ポリネシアでは、「伝統」芸術の様態が観光と深く関わる部分がある一方、人々にとってそれらはアイデンティティに関わるものとして、社会生活のなかでも大きな意味をもつ。しかし、それぞれの社会で細部の事情は異なる。・パプアニューギニアでは、もともときわめて多様なエスニック文化が存在するなかで、それら伝統文化を織り交ぜながら、新しいアイデンティティのよりどころとなる「伝統の創造」が生じている。ダンスのみならず、多様な芸術の分野でも、ニューギニアらしさを出しながら、しかも特定の部族に直結しない芸術の創造が好まれる。・ミクロネシアは、芸術祭では後発のパフォーマーであり、ダンスの演技が観光と必ずしも結びついていない。その意味で、伝統的なダンスとは何か、伝統的な芸術とは何か、それらを芸術祭でいかに見せるかを、現在追究している段階である。・各国の芸術祭のリプリゼンテーション、つまり送り込む代表団をどのように選定するか、それら代表団がいかなる演技を見せるか、ということは、それぞれの国の国内事情や文化状況、国家としての様態などとさまざまな絡まり方をしていることが解釈できる。それらを明らかにするのは、個別社会の事情に通じた研究である。既に明らかになったことは、研究成果報告書のなかで論じている。・さらに芸術祭を主催すること自体が、それぞれの国の国内事情や文化状況と深く関わっている。それらが、個々の芸術祭のあり方を規定する大きな要因である。ニューカレドニアの第8回芸術祭に関していえば、フランスからの独立の可能性の生じてきている今、カナク文化をニューカレドニアのアイデンティティの正面に据えることは、先住民であるカナクにとって大きな意味を持っていた。