著者
児玉 竜一
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

映画領域の研究者を主とする国際研究集会において、歌舞伎大道具と映画美術の関わりを発表した。また、映画研究の叢書から、歌舞伎を中心とする古典芸能に特化した書籍を刊行するなど、映画研究において歌舞伎を視野におさめることの重要性を訴えるという点で、一定の成果を収めた。蓄積した基礎的なデータは、劇場から映画館への変遷研究や、歌舞伎由来の映画作品研究に関して、こののち論文化に活用してゆく予定である。
著者
大西 弘子
出版者
近畿大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

現代民主主義は、単位とメンバーシップの双方において、民主主義の規範理論にとって想定外の条件のもとで機能している。すなわち、国家・自治体・超国家組織などの単位が相互に入り組んだところで、専門家や利益集団といった有権者以外のメンバーによって諸政策は決定されている。こうした政策決定を議会主権から正統化することは、もはや困難である。それでは、現代民主主義における政策決定の正統性はどこに求められうるのか。本研究は民主主義の規範理論の更新にむけて、論点の整理をおこなっている。
著者
仙北谷 康 樋口 昭則 金山 紀久 耕野 拓一 窪田 さと子
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

家畜飼料に含まれている抗生物質を削減しようとする取り組みは様々な場面でみられるようになってきている。また代替技術もいくつか提案されている。しかし現状としては、抗生物質を投与しないことによって発生する追加的費用を、消費者の負担に求めることは困難であるから、生産の側でこれを内部化しなければならない。抗生物質を含む飼料に頼らない畜産フードシステムの成立は、現状としては生産者側の取り組みによるところが大きい。
著者
松田 素二 鳥越 皓之 和崎 春日 古川 彰 中村 律子 藤倉 達郎 伊地知 紀子 川田 牧人 田原 範子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

現代人類学は、これまでの中立性と客観性を強調する立場から、対象への関与を承認する立場へと移行している。だが異文化のフィールドへの「関与」を正当化する論理は何なのだろうか。本研究は、生活人類学的視点を樹立してこの問いに答えようとする。そのために本研究は、日本・東アジア、東南アジア、南アジア、アフリカの 4 つの地域的クラスターと、自然・環境、社会・関係、文化・創造という三つの系を設定し、それぞれを専門とする研究者を配して「生活世界安定化のための便宜」を最優先とする視点による共同調査を実施した。
著者
高島 響子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

メディカルツーリズムにおいて、患者の「渡航行為」により新たに生じる問題を抽出するために、近年英国で問題となっている英国からスイスへの渡航幇助自殺について、事例研究、文献調査、ならびに英国にて当事者への聞き取りを行った。その結果、英国内では実施することのできない自殺幇助を、実施可能なスイスに渡航して実現する人(患者)が登場したことで、英国内の議論に変化が生じたことがわかった。英国は、積極的安楽死ならびに自殺幇助を法律で禁じており、それらを望む人々による法改正等を求める裁判や運動が、20世紀初頭より繰り返されてきた。行方で、スイスは利他的な理由からなされた自殺幇助は法的に罰せられず、事実上実施可能である。2002年頃より、英国からスイスへと渡航して自殺幇助を受ける人が報告されるようになった。こうした「渡航幇助自殺」の増加に伴い、英国内において1.国内での自殺幇助実施を認める要請、2.渡航幇助自殺を認める要請の2方向で議論が起きた。現在のところ1.の要請は成功に至っておらず、一方2.については、2009年Debbie Purdyの貴族院判決において、渡航幇助自殺を求める原告が初めて勝訴し、渡航幇助自殺が事実上容認されたともとれる状況が生まれたことがわかった。国内では禁止規制により解決できない問題が、合法的に実施可能な他国の存在を利用した渡航医療を包含することで解消されるという構図が生じた。これを「一応の解決」とみなすことも可能だが、国内における実施容認へのさらなる要請、また受入国側の規制変化(渡航医療の受入制限)の可能性が考えられ、すでにそうした動きもみられた。以上のような渡航医療と国内規制および受入国との構図は、国によって法規制が異なる他の医療にも当てはまりうるものであり、日本において問題視される渡航臓審移植や渡航生殖補助医療の今後の議論の在り方に有用な示唆を与えた。
著者
佐々木 浩一 越崎 直人
出版者
北海道大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

液相レーザーアブレーションを固相(ターゲット),液相(アブレーション媒質),気相(キャビテーションバブル),および超臨界相(アブレーションプラズマ)の多相混在プラズマを生成する方法と位置づけ,そこにおいてナノ粒子が生み出される過程に関係する学理を探求した。ターゲットから放出された原子群が液相からキャビテーションバブル内の気相に輸送され,凝集によりナノ粒子化する過程に関して学術的成果が得られた。また,キャビテーションバブルの制御を通じてナノ粒子の構造に影響を与えられることを示した。応用創出面では,ブルッカイト型チタニアの合成およびサブミクロンサイズ球状粒子の合成において成果が得られた。
著者
三上 章 Akira MIKAMI
出版者
東洋英和女学院大学大学院
雑誌
東洋英和大学院紀要 (ISSN:13497715)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-19, 2013-03-15

This article aims to clarify how Platonism functioned in the thinking of John Smith in his theological and philosophical work, A Discourse Concerning the True Way or Method of Attaining to Divine Knowledge. Smith's Platonism consists not so much in a legalistic and petrified ideology as in incessant motion and ascent, driven by the love of wisdom and the ultimate truth. This basic mentality is reflected in Smith's understandings of "innate ideas" as being by nature resident within everyone's soul and making it possible to know God, of "Divinity" or "Theology" as "a Divine life" rather than "a Divine science," of the seat and place where the divine truth lies as having to be sought within man's soul, not outside of man, of the purification of man's soul as a prerequisite for attaining to divine knowledge, of warning against premature judgments in order not to fall into errors of dogmatism and fanaticism, and of the way of virtue as the formation of virtue and goodness within man's soul, a true living sense of them, and the vision of God with the eyes of a purified intellect (nous). Smith elucidates the ascents to divine knowledge in accordance with the explanation of the Stoic Platonist Epictetus. He shows that a man's soul progresses step by step to the upper dimensions ofcontemplating the truth in parallel with the degrees of the purification of the soul. Ascents start from the stage of an obscure opinion (doxa) to the stage of a more distinct opinion, then proceed to the lower level of science (episte-me-), and ultimately attain to divine knowledge. This is the way upward which is to be trodden by "the true and sober Christian who lives in Him who is Life itself, and is enlightened by Him who is the Truth itself, and is made partaker of the DivineUnction, and knoweth all things." This was nothing other than the way that John Smith, Platonist Christian, trod and that took him to the home above.
著者
安田 智
出版者
国立医薬品食品衛生研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

Ras/B-Raf/C-Raf/MEK/ERK経路(ERK経路)は、細胞増殖を含む細胞機能の制御に重要な役割を果たしている。HeLa細胞にsiRNAをトランスフェクトし、ジアシルグリセロールキナーゼη(DGKη)の発現を抑制すると、上皮増殖因子(EGF)刺激によって誘導されるERK経路の活性化の阻害が認められた。またDGKηの発現は触媒活性非依存的にERK経路を活性化したことより、DGKηはアダプタータンパク質として機能していることが考えられた。B-RafとC-Rafのキナーゼ活性を測定したところ、DGKηの発現抑制によりC-Raf活性のみが減少することが明らかになった。さらにDGKηの発現抑制によって、EGF刺激によって誘導されるB-RafとC-Rafのヘテロ二量体形成も顕著に抑制された。またDGKηはB-RafおよびC-Rafと相互作用し、EGF刺激によって誘導されるB-Raf およびC-Raf の細胞膜への移行も制御した。以上の結果は、DGKηはERK経路を制御する新規の因子であることを示唆している。
著者
石原 陽子 三宅 真美 大森 久光 長谷川 豪 中尾 元幸
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

北東アジアからの越境輸送物質の健康影響が問題視されている。本研究では、偏西風によってもたらされる越境輸送物質の発生源および通過地域のモンゴル、中国と久留米のPM2.5の大気及び個人暴露量とその成分及び健康影響について調査研究を行った。その結果、PM2.5の重量と成分には大気と個人暴露で相関性や地域特性を認め、黄砂飛来時には成人慢性呼吸器疾患有症者の呼吸器症状の増悪や精神生理的活動性の低下が見られた。従って、今後の疫学調査では、この点を加味した研究デザインが必要であることが示唆された。
著者
サランゴワ Sarangowa
出版者
千葉大学ユーラシア言語文化論講座
雑誌
千葉大学ユーラシア言語文化論集 (ISSN:21857148)
巻号頁・発行日
no.15, pp.101-119, 2013-12

欧文抄録:p.119Among the public in Horqin area of Inner Mongolia, resuming the ritual of the Budhha of Buddhism, Jiyachi (the god of wealth) and Boomul as well as the livestocks deified from generation to generation, in addition equipped with the Altar, it's being increasing to perform the daily rituals and periodical rituals.The altar of the buu shows more complexity than general people. The altar of the buu will be focused in this paper. The alter, also called "Sarga"or "Tahilgan Sire", is classified into more detail. Fundamentally, there are four kinds of Altar:①the altar of the ritual for guardian spiritof buu is "onggud yin sarga"; ②the altar for ritual of Buddha in Tibet Buddhism is "borhan naesarga"; ③the altar for ritual of spirit of the snake called luus is"luus yin sarga"; and ④the altar forritual of spirit of the fox is "xian nae sarga", or "daofeng nea sarga" in Chinese. For the buus, the altar is also meant for the place for religious faith, the place for connecting with their guardian spirit, and the place for healing as well.
著者
関 泰子
出版者
立命館大学国際関係学会
雑誌
立命館国際研究
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.691-714, 2014-03
著者
石橋 賢 Luz Toni Da Eynard Remy 北 直樹 姜 南 瀬木 宏 寺田 圭介 藤田 恭平 宮田 一乘
出版者
映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.J11-J16, 2012
被引用文献数
1

In our entertainment VR application, the user can move freely through a virtual city by using a web like SpidermanTM. In this application, the user wears a web shooter, which is a device to shoot webs, and takes aim at a target building. Then, when the user swings his/her arm ahead, a web is launched and it sticks to the target building on the screen. After the web sticks to the building, the user's arm is pulled in the direction of the target building by a pulling force feedback system, which gives the feeling of pulling to the user directly and smoothly, as if he/she were attached to an elastic string. Finally, the user moves to the target building. In three exhibitions, we surveyed the effectiveness of the application by questionnaire. We were able to confirm that a lot of users had enjoyed and were satisfied with our VR application.
著者
湯川 秀樹
出版者
大法輪閣
雑誌
大法輪
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.238-242, 2014-06
著者
ティムソン ジョウナス
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.207-212, 2014-06-01

2010年に文部科学省から出された『大学図書館の整備について(審議のまとめ)-変革する大学にあって求められる図書館像-』では,大学の教育機能に対する社会的要請が急速に高まっている中で,図書館員による教育支援がこれまで以上に期待されていること,そして効果的な教育支援を実現するための専門性が図書館員に求められていることが記されている。本稿では,これから大学図書館員として働こうとしている人を対象として,大学図書館の実際の業務の内容と,それらの業務を最大限に展開するための要素を踏まえながら,教育に関わる図書館員として活躍していくために必要な知識や専門性について述べた。
著者
有川 節夫 渡邊 由紀子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.200-206, 2014-06-01

科学技術・学術審議会の学術情報基盤作業部会(2010年)及び学術情報委員会(2013年)による「審議のまとめ」をふまえ,主に大学図書館を対象に,図書館員の変わりゆく役割について考察する。現在の日本における大学や大学図書館が置かれている状況を整理したうえで,今後の図書館に起こり得る変革も視野に入れて,大学図書館員に求められる新たな期待と役割について説明する。また,九州大学が2O11年に開設した「教材開発センター」や大学院「ライブラリーサイエンス専攻」等の活動を紹介しながら,図書館員の人材育成・確保のための仕組みを構築する方法について述べ,最後に,図書館員の未来について展望する。