著者
武田 麻由子 相原 敬次
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.107-117, 2007-03-10
被引用文献数
7

丹沢山地の大気中のオゾンがブナ(Fagus crenata)に及ぼす影響を明らかにするため,ブナ林衰退地に近接する西丹沢犬越路隨道脇(標高920m)において,ブナ苗を用いたオープントップチャンバー法による野外実験を2002〜2004年に実施した。活性炭フィルターでオゾンを除去した浄化空気を導入した浄化チャンバー(平均オゾン濃度0.011ppm)及び現地の環境大気を導入した環境大気チャンバー(平均オゾン濃度0.046ppm)に2年生の丹沢産ブナ苗を移植し,3成長期間にわたって育成することにより,葉のクロロフィル含量(SPAD値),光化学系IIの最大光量子収率(Fv/Fm),樹高,根元直径,葉数,冬芽数,乾燥重量に対するオゾンの影響を検討した。オゾンにより,SPAD値は2成長期目の秋以降,3成長期目は全般にわたって有意に低下し, Fv/Fmは3成長期目の秋以降有意に低下した。樹高は3成長期目の秋以降,根元直径は3成長期目の夏以降有意に減少した。全乾燥重量は,3年間の累積的なオゾン曝露(6ヶ月間のAOT40が合計で88.7ppm・h)により浄化チャンバーよりも61.3%低下した。また,オゾンによる早期落葉が観察された。環境大気チャンバー内で育成したブナ苗の冬芽数は3成長期目終了時に有意に減少し,本実験を継続していれば、次年度以降にはさらに生長が抑制される可能性が示された。本実験の結果より,丹沢山地の大気中のオゾンがブナの生長生理に阻害的に働いていることが明らかになった。

1 0 0 0 OA 家庭文化裁縫

著者
渋谷梅子 著
出版者
家庭洋服画報社
巻号頁・発行日
vol.前編 子供服と婦人服, 1925
著者
河原 純子 兵藤 透 太田 昌邦 平良 隆保 日台 英雄 石井 大輔 吉田 一成 馬場 志郎
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.695-698, 2011-08-28

蛍光眼底造影剤は,眼科領域では網脈絡膜疾患の診断,治療効果の判定に不可欠な検査である.今回,糖尿病性腎症にて血液透析中の44歳女性に対し眼底出血の疑いのため蛍光造影剤(フルオレサイト<SUP>®</SUP>静注500mg,以下一般名フルオレセインと記す)を使用した.造影後に透析を行った際,透析液排液ラインに造影剤の蛍光色が視認できたため,独自に作製したカラースケールを用いて廃液ラインの排液色の変化による造影剤除去動態を1週間経過観察した.結果,カラースケール値では,1日目開始時90,1日目終了時50,3日目開始時20,3日目終了時10,5日目開始時0,5日目終了時0であったが,5日目終了時500mL程度排液を集めると,僅かに色を確認することができた.
著者
小須田 和彦
出版者
城西大学
雑誌
城西大学研究年報. 自然科学編 (ISSN:09149775)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.1-11, 2008-03-30

本学学生並びに彼らの両親を対象としたアンケート調査によって得られたデータに基づいて,BMI (Body Mass Index) の親子相関が調べられヘリタビリティーが推定された。父-息子,父-娘, 母-息子, 母-娘に分けて親子相関が求められたが, BMI の親子相関はいずれも中程度で0.21-0.27 の範囲でありその平均は0.238 であった。したがって, ヘリタビリティーは0.47と推定された。BMI のヘリタビリティーの推定値0.47 は性的成熟年令(初潮・精通) における0.92 や身長の0.73 よりも低いものの, 体重の0.39 より高いものとなった。男子学生と彼らの父親のBMI の平均値は21.20 と23.66 で, その差は統計的に0.1%レベルで有意であった。おなじく, 女子学生のBMI は19.98 で彼女らの母親のBMI, 23.15 より有意に高かった。このことは,BMI が加齢により増加する傾向がはっきり示された。統計的に有意ではなかったものの, 娘を持つ父親並びに母親のBMI が息子を持つ両親のそれより低かったことは興味深い。体型に関心が高い娘の言動に影響され父親も母親も共にダイエットに留意したことがその理由であろう。
著者
安 善姫 若山 浩司
出版者
四国大学
雑誌
四国大学経営情報研究所年報 (ISSN:13417436)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.71-76, 2004-12-25

Information Technology became widespread in the mid-1990, and, many local governments initiated e-government relatively quickly. E-government has developed into e-democracy, which has narrowed the distance between residents and government. It is carried out in every country in the world. Korea is not an exception, either. This article concerus the "GangNam cyber residents autonomic system". GangNam-Gu has a model of e-governance that cases an electronic residents meeting system. We suggest the present status of GangNam-Gu is a very good example for Japan.
著者
井ノ上 直己 帆足 啓一郎 橋本 和夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.1158-1166, 2001-06-01
被引用文献数
5

学校などの教育現場へインターネットが普及するにつれ, インターネット上の有害情報へのアクセスが問題となる.この問題に対処するため, 既にいくつかのフィルタリングソフトウェアが開発されているが, これらの多くのソフトはアクセスを制限すべきURLを登録したリストを用い, このリスト中のURLへのアクセスを制限する方式を採用している.しかし, URLは頻繁に変動するため, この方式ではリストの変更が間に合わないという問題がある.そこで, 筆者らは, コンテンツ内に出現する単語の分布を調査し, 自動的に有害か否かを判定してアクセスを制御するソフトウェアを開発した.本論文では, 開発したソフトウェアの概要を示すとともに, 当研究所の位置する上福岡市の小中学校10校に導入して実施したフィールド試験結果について述べる.
著者
岩井 邦久 森永 八江 西嶋 智彦
出版者
青森県立保健大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

フラボノイドは抗酸化活性等の保健効果が期待されているが、吸収性が低い。我々は、ペクチンがフラボノイドの吸収を促進する作用とそれによる生理的影響について検討した。その結果、フラボノイドの水酸基が多いことやカルボニル基の有無等が作用に関与していることを明らかにした。また、ケルセチンの吸収はペクチンの摂取量依存的に増加し、それによって低密度リポタンパク質 (LDL) の酸化抵抗性も強まることも明らかになった。これらの結果は、ペクチンの新しい作用を示す可能性があると共に、フラボノイドの吸収性向上にアプローチするものである。
著者
野中 俊昭 遠藤 靖典 吉川 広
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.431-440, 2004-10-15
参考文献数
17
被引用文献数
5

安全性や騒音防止の観点から,鉄道車両の滑走防止制御に対する研究は非常に重要である.しかし,ブレーキというシステムにおいて,滑走という非常に不確実性の高い現象を防止することは容易ではなく,一般的な制御方法というものは存在しないのが実情である.ところで,ファジィ推論は,不確実性の高い制御対象に対して高い有効性を発揮することが知られており,滑走に対しても,同様の効果が期待できる.そこで,本論文では,ブレーキ距離の短縮を第一目的として,鉄道車両に対するファジィ推論を用いた新たな滑走防止制御手法を提案する.本論文で提案する制御手法は,同時に計算量の低減とチューニングの容易化も図っている.また,数値シミュレーションを通して,提案する制御手法によってブレーキ距離の短縮が実現されていることを示す.
著者
安部 大就 山本 聡 下村 泰彦 増田 昇
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、GIS(地理情報システム)を研究ツールとして、流域管理の視点から都市近郊エリアにおける土地利用の適正化を図るための計画技術の開発を試みた。研究方法としては、関西際空港の建設に伴い都市基盤施設の整備が進む中で土地利用変化や人口動態が著しい大阪府南部地域をスタディエリアとして、1973年と1990年の大阪府作成の土地利用現況図と人口のデータ、国土地理院発行の標高データを用いて解析し、土地利用変化に影響を及ぽす地形条件や交通条件などの要因をまず明らかにした。次いで、本地域の2級河川流域にほぼ対応した市町域を解析単位として、その土地利用形態や人口分布形態などの地域環境データを用いて地域環境容量を試算し、土地利用変化が地域環境容量に与える影響の定量化を試みるとともに地域環境容量の変化を予測し、土地利用の適正化を図るための課題を探究した。土地利用変化に影響を及ぽす要因を採った結果、地形条件では本地域での標高50mは都市的土地利用から農村的土地利用に変化する境界領域であり、標高100mは農村的土地利用から山林的土地利用に転換する境界領域であることや交通条件では鉄道駅の土地利用変化への影響範囲は住居系用途に対しては約800m、商業系では約300m、工業系では約700m、幹線道路の影響範囲は住居系用途に対しては約500m、商業系では約100m、工業系では明確な影響範頗がないことを明らかにした。次いで、地域環境容量としては、CO_2固定容量、水資源容量を取り上げ、既往の研究成果を応用したモデル式により試算した。その結果、各容量の変化は都市的土地利用の拡大に伴う人口の増大と森林資源の減少に大きく依存することを明らかにし、土地利用の適正化を図るための課題を明らかにした。
著者
実積 寿也
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-12, 2014 (Released:2014-07-01)
参考文献数
22

インターネット政策声明を執行可能なルールとすることを目指した連邦通信委員会(FCC)の努力は、Comcast事件とその後の控訴審判決での敗訴の経験を経て、2010年12月にオープンインターネット命令として結実した。ブロードバンド事業者が遵守すべき開示義務、公平義務および接続義務を定める本命令は、ビジネスの自由を求めるプロバイダにとっては行動の自由の制約に他ならない。本命令の有効性に関し、2014年1月14日に巡回控訴裁判所が下した結論は、開示義務以外の有効性を否定しており、一見すると、プロバイダ側の主張が全面的に認められFCCの努力が無に帰したかのように見える判決ではある。しかしながら、詳細に評価してみると、ネットワーク中立性問題に対する規制権限を確立し、しかも命令が本来実現しようとしていたはずの効果にはほとんど影響がないという、FCCにとっては実質的な勝訴に他ならず、むしろプロバイダ側にとっては何の問題解決にもならなかった可能性がある。
著者
亀山 照夫
出版者
明治大学人文科学研究所
雑誌
明治大学人文科学研究所紀要 (ISSN:05433894)
巻号頁・発行日
no.41, pp.281-295, 1997

未曾有の荒廃を生んだ南北戦争は良識ある人々に幻滅と無気力さを残し、Ralph Waldo Emersonは日誌に「戦争は慢性的絶望に対しては、慢性的希望を確認した」と記している。(1865年7月)だが続く1870年代には前代未聞の汚職、賄賂が起こり、政治は腐敗をきわめた。これらの無節操さに業を煮やしたWalt Whitmanは「おそらく、今日のように、ここ合衆国において心がうつろな状態になっていることはかってなかった。純粋な信念というものが、われわれを見捨ててしまったように思える。」(『民主主義の展望』1871)と嘆き、民主主義の危機を警告した。また西部で起こったゴールド・ラッシュは最高潮に達し、一攫千金の夢に人々は乗せられ、亀井俊介氏のことば通り「暮らしは高く思いは低し」の軽重浮薄の世情は止まるところを知らなかった。
著者
小坂田 耕太郎 NELI Mintcheva NELI N.Mintcheva-Peneva
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

前年度までの成果に基づき、かさだかい有機ケイ素配位子であるシルセスキオキサンを配位子とする有機白金およびパラジウム錯体の合成を行った。キレート配位するテトラメチルエチレンジアミンや2,2-ビピリジンを支持配位子とするフェニル(ヨード)およびジヨード錯体をシルセスキオキサン配位子の置換反応で新規錯体に導いた。シルセスキオキサンパラジウム錯体は、これまで合成例がなく、本研究がはじめての報告となる。錯体の構造は単結晶構造解析で明らかにしたが、溶液中の構造をNMRスペクトルで検討すると動的な挙動を示すことがわかった。H,C,FなどのNMRスペクトルを種々の温度で測定し、精密に解析することによって、この錯体はこれまでに申請者がみいだした、O-H-O水素結合のスイッチングに加えて、シルセスキオキサンが回転することによってコンフォメーション異性体の変換がおきていること、シルセスキオキサン配位子がきわめてかさだかいために、そのコンフォメーション異性体が低温では区別して観測されることが明らかになった。類似の錯体を多数合成し、比較することによって、中心金属の電子状態とコンフォメーション変化速度とに相関があることがわかった。このような結果と以前の結果とをあわせて、後期遷移金属のシルセスキオキサン配位錯体の合成法、構造変化について広範な立場からの区分をおこなった。その結果、種々の動的挙動のパラメーターがモデル化合物であるシリルオキソ錯体とは大きく異なることを明らかにすることができた。本研究によってシルセスキオキサン錯体についての重要な知見が得られ、これを米国化学会発行のOrganometallics誌に2報の論文として報告した。
著者
前岡 浩 金井 秀作 坂口 顕 鵜崎 智史 川原 由紀 小野 武也
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.197-200, 2006 (Released:2006-07-26)
参考文献数
14
被引用文献数
9 10 18

本研究の目的はFRT距離に影響を与えていると考えられている項目を抽出し,身長,年齢,左右のCOPの前後長,体幹前傾角度,歩行速度のそれぞれの関係を検証した。重回帰分析によるFRT距離の予測検定では,標準化重回帰係数 βにて身長と体幹前傾角度のみ有意な変数を得られた。また,左右足によるCOP前後長の比較では有意な相関がみられた。よってバランス能力の評価として実施する場合,身長による正規化の必要性を示唆している。加えて前方リーチ動作に伴う運動戦略において股関節の運動である体幹の前傾能力が重要であることも判明した。また,そのCOPの結果から利き足等左右側の影響をうかがうことはできなかった。
著者
大清水 裕
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

今年度は研究計画の最終年度であり、これまでの研究をまとめ、公開することに精力を傾けた。他方、研究計画に沿って小アジアの諸遺跡、特にエフェソスやアフロディシアスの調査も行なっている。まず、学会での口頭発表としては、5月の日本西洋史学会第61回大会で「『マクタールの収穫夫』の世界-3世紀北アフリカの都市参事会の継続と変容-」と題した報告を行なった。「マクタールの収穫夫」とは、チュニジア中部の高原地帯に位置する都市マクタールで発見された3世紀後半の墓碑に登場する人物である。この碑文は、現在、ルーヴル美術館の所蔵となっており、2010年5月に行なった実地調査の成果を交えて報告を行なった。従来、「3世紀の危機」を反映したものと扱われてきた有名な碑文だが、その内容だけでなく、碑文の刻まれた石の形状や遺跡のコンテクストも含めてその位置づけを見直し、「危機」とされる時代の再評価を行なっている。次に、雑誌等に発表したものとしては、「マクシミヌス・トラクス政権の崩壊と北アフリカ」(『史学雑誌』121編2号、2012年2月、1-38頁)がある。この論文では、238年の北アフリカでの反乱で殺害された人物の墓碑の再評価を行なった。従来、その文言から、親元老院的な都市名望家とされてきたこの人物を、その石の形状や発見地などの情報をもとに、帝政期の北アフリカ独自の文化環境に生きた人物として描き出している。また、Les noms des empereurs tetrarchiques marteles: lesinscriptions de l'Afrique romaine,Classica et Christiana,6/2,2011,549-570も公表されている。四帝統治の時代の碑文から皇帝たちの名前が削り取られた理由を検討したもので、従来想定されてきた理由とは別に、碑文の刻まれた石の再利用という目的を重視するよう指摘した。遺跡での現地調査としては、今年度は9月にトルコの諸遺跡を訪れた。その成果は、今後何らかの形で公開していきたいと考えている。
著者
桃井 治郎
出版者
中部大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究では、欧州・地中海パートナーシップを事例に、地域統合組織(EU)と第三国各国(アルジェリアやチュニジア)という非対称なアクター間の地域協力関係について分析した。同事例では、(政治力の大きな)EUによる一方的なEU化が推進されているわけではなく、むしろ同パートナーシップの枠組みのもとで対話が促進されており、非対称地域協力は第三国の側にとっても有意義な国際レジームとなっていると評価することができる。