著者
納富 信留
出版者
有斐閣
雑誌
哲学雑誌 (ISSN:03873366)
巻号頁・発行日
vol.118, no.790, pp.1-23, 2003
著者
前田 泰
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究から得た結論の概要を示せば、以下の通りである。父母の有する親権は、子の福祉に適した範囲内でしか行使できない。子の利益に適しない代理権の行使は無権代理であり、無効である。そして、子の利益に適した代理権の範囲は、客観的に決定される。子の財産を純粋に減少させる贈与行為は、代理権の範囲外の行為であり、無効である。同様に、親権者の行うべき身上監護も子の利益に適した内容でなければならない。法定代理権の範囲が、子の状況に応じて客観的に決定されるのと同様に、身上監護の内容も客観的に決定される。未成年者に必要な医療を受けさせないことは、身上監護義務の違反である。未成年者に必要な医療行為を拒否する権利は、親権者にはない。未成年者の医療における親権者の同意の意義も、同じ観点から理解しなければならない。意思無能力である未成年者に対する医療行為は、医療機関と親権者との不真正第三者のためにする契約と構成されるが、この契約の締結は、親権者の法定代理権の行使により行われる。契約締結が子の利益に適するかどうかは客観的に決定され、子に必要な医療契約を締結しない権利は、親権者には存しない。医的侵襲を伴う医療行為に対しては親権者の同意が必要であるが、この同意は、親権者の身上監護義務の履行として行われる。身上監護義務の内容は客観的に決定されるから、未成年者に必要な医療行為には親権者は同意する義務がある。これを拒否する権利は親権者にはない。問題は、子の利益の内容であるが、親権者の意図とは関係なく、子の状況に応じて社会通念により客観的に決定するしかない。以上のように、まず、医療行為の可否は、客観的な未成年者の必要性により決定され、これを法律行為(契約)として構成する必要性がある限りにおいて、法定代理が登場する。法律行為以外については、身上監護義務の履行の問題である。
著者
佐々木 史郎 小谷 凱宣 荻原 眞子 佐々木 利和 財部 香枝 谷本 晃久 加藤 克 立澤 史郎 佐々木 史郎 出利葉 浩司 池田 透 沖野 慎二
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、北海道内の博物館に収蔵きれている、アイヌ民族資料の所在を確認し、その記録を取るとともに、その資料が収蔵された歴史的な背景を解明することを目的としていた。本研究で調査対象としたのは、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター植物園(北大植物園)、函館市北方民族資料館、松前城資料館である。この3つの博物館が調査の対象とされたのは、資料の収集経緯に関する記録が比較的よく残されていたからである。3年にわたる調査の結果、北大植物園が所蔵する2600点に及ぶアイヌ文化関連の標本資料全点と松前城資料館が所蔵する320点余りの資料の全点について調書が作成され、写真が撮影された。また、函館市北方民族資料館では約700点(総数約2500点の内)の資料について、調書作成、写真撮影を行った。その結果、総計約3500点を超えるアイヌ文化の標本資料の詳しい調書と写真が作成された。本科研での調査研究活動では、標本資料の熟覧、調書作成、写真撮影にとどまらず、当該資料が各博物館に所蔵された経緯や背景も調べられた。植物園の資料の収集には、明治に北海道開拓指導のためにやってきた御雇外国人が関わっていたことから、彼らに関する史料をアメリカの図書館に求めた。調査の過程で、これらの博物館、資料館の資料が、明治から大正にかけての時代に収集されていたことが判明した。それは時代背景が明らかな欧米の博物館に所蔵されているアイヌ資料の収集時期と一致する。本科研の調査により、以上の3つの博物館のアイヌ資料は、すでに数度にわたる科研で調査された欧米の博物館の資料に匹敵するほどの記録と情報を備えることになった。それは、記録がない他の国内の博物館のアイヌ資料の同定、年代決定の参照に使えるとともに、アイヌ文化の振興と研究の将来の発展に大きく寄与することになるだろう。
著者
李 海峰 米谷 雅之 藤田 健
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、中国における市場経済発展の過程において社会経済がどのように変動しているか、大衆消費社会がどのように形成されているか等について、経済水準の異なる都市で消費者の生活や意識行動の調査を行い、中国における大衆消費社会の形成過程を解明するための調査研究である。本研究は計画とおりに大都市の北京市、上海市、広州市、重慶市において、各300世帯、地方都市の瀋陽市、石家荘市、武漢市において各200世帯、計1800世帯を無作為で抽出し、アンケート調査を実施した。この定量的調査研究を行うと同時に、定性的調査研究も行っている。北京市、上海市、広州市、重慶市、瀋陽市の5都市で計120世帯に対し、聞き取り調査を実施した。二通りの各調査は回収率が99%で、広範囲にわたって質の高い調査結果が得られた。回収したデータを日本に持ち帰り、分析を進めてきた。1990年代との時系列の比較、都市間比較、国際比較の観点から、解明している。従来,アメリカや日本における大衆消費市場の形成過程では,所得階層間の格差が次第に縮小し,上流階層だけではなく,多くの家庭が消費の自由選択力を持ち,消費財を絶えず買い換えたり,購買量を増やしたりする。しかし,中国は欧米や日本と異なり,都市間、所得階層間の格差が1990年代より拡大している一方、「中流階層意識」が急速に増加し、消費者はより高次の欲求の充足を求めているのは特徴である。都市における消費者ニーズは、必需品への支出から贅沢品への支出へ、モノへの支出からサービスへの支出に重点を移している。総体として「量」的欲求から「質」的欲求へと向上している。「消費生活水準の上昇」「所得増加への欲求」「今後の消費支出傾向」「消費者行動の特性」からみて,今後,中国の経済成長率は「政府」「企業」だけではなく,「消費者(家計)の力」から大きな影響を受けることになる。
著者
池田 長守 宇渡 清六 最相 市蔵 南方 定夫
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
no.16, 1960-09

ハッカ種子の発芽力保存のために,炭酸ガス濃度の高い空気中で種子を貯蔵することは,有効とは認めがたく,長期貯蔵では,かえつて有害と認められた.低温貯蔵は,採種後1年間は,発芽力保存に有効であつたが,その後,急激に,効力を失つた.乾燥剤と共に貯蔵することは,もつとも有効であつた.さらに,乾燥剤と共に,ハッカ種子を低温貯蔵すると,両処理の単独効果の和より,いつそう大きい発芽力保存効果を示した.筆者等はこの方法で,採種後2カ年半,3年目の春まで,完全に,ハッカ種子の発芽力を保存した.もつとも,ハッカ種子は,室内常温貯蔵では,採種の翌年の秋には,発芽歩合が低下して,実用価値を失うが,その頃までの発芽力保存には,風乾種子を密封貯蔵するだけで,可なり効果があつた.また,採種後最初の播種期である,翌春までのハッカ種子の貯蔵においても,低温湿潤積層して,後熟を促進し,休眠期間の短縮をはかるのでなければ,むしろ,風乾種子を乾燥剤と共に密封して,低温貯蔵することが好ましい。
著者
川井 浩史
出版者
研成社
雑誌
プランタ (ISSN:09152059)
巻号頁・発行日
no.82, pp.55-62, 2002-07
著者
青井 哲人 角南 聡一郎
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、台湾漢人家屋の寝室に広く観察される〈総舗〉等と呼ばれる揚床状の設備について、(A)分布・類型、(B)起源と形成過程、(C)定着と変容の過程について、植民地期における在来住居・住様式の「日本化」という観点から、主として臨地調査(実測・インタビュー)を通して解明した。日本の植民地支配は、衛生・経済政策による家族人員増加、日本家屋およびその室内意匠の文化的規範としての機能、材料流通の再編と技術移植などの回路を通して、台湾漢人の寝室・就寝様式に深く及ぶものであったことが明らかになった。
著者
皆川 鉄雄 安岡 利津子
出版者
愛媛大学理学部紀要委員会
雑誌
愛媛大学理学部紀要 (ISSN:09195203)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.11-17, 2008

Calcian strontianite was newly found from Torinosu limestone distributed in the Nagano, Tokaji, Furuhata, and Nishiyama areas other than the Shimomitogi (MINAKAWA, 1955). It occurs as authigenic mineral in cavities in limestone and calcite veins, associated with calcite, dolomite, fluorite ,celestine, barite, quartz and oil. It is radial aggregates of acicular and short prismatic crystals up to 1cm length, colorless with vitreous luster. Chemical compositions of strontianite estimated by X-ray powder data of d(132)Å and EDS qualitative analysis varies from SrCO_3 75mol%, CaCO_3 25mol% to SrCO_3 85mol%, CaCO_3 15mol%. It is estimated that Sr derived from coral, calcareous algae and foraminifera which formed the coral reef.
著者
菅原 俊治 横尾 真 松原 繁夫 岩崎 敦
出版者
日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では,ネットワーク上の各リソースを市場原理に基づいて公平かつ効率的に割り当てるプロトコルを,その実装に向けて評価することを目的とする.P2Pや分散センサネットワークなどのアドホックなネットワークにおけるデータ転送では,個々のノードの所有者や規格が異なる.この場合,各ノードにデータを適切に転送するための誘因(報酬)を考慮しなければならない.この報酬の決定にはしばしばオークションプロトコルが用いられる.しかし従来のプロトコルでは,あるノードが架空のノードを用いるか他ノードと共謀することで,不正に報酬を獲得できることを示した.この場合、理論的にもっとも優れているVickrey-Clarke-Grovesプロトコル(VCG)でも、不正行為は防げない。本研究では、さらに、選択されうる経路を所有しているエージェントの数に応じたペナルティをVCGに適用し、Reserve-Costプロトコル(RC)を提案し、このプロトコルが架空名義を用いた操作の影響を受けないことを理論的に明らかにした。計算機上に再現した小世界ネットワークに対して、提案プロトコルを評価し、VCGに対して約60〜80%の効率性を達成することも示した。また実際のネットワークでは,各ノードでオークションなど取得可能な情報に基づいてどこからデータを受ける(送る)べきかを決定する必要がある.これは,入札可能な対象(サーバなど)が複数あるときに,適切な入札箇所をある程度推定することに相当する.しかし、ネットワークの資源割当てのように非常にたくさんの要求が同時に起こり、かつ多くの地点から独立に処理をする必要がある.このような状況で資源割り当てプロトコルで見られる現象の解析も行った。それぞれが合理的に判断をすると全体の効率が落ちる現象があり、このために揺らぎや学習を導入することが一定の効果を上げることを示した。

1 0 0 0 OA 体質研究試論

著者
頼藤 和寛
出版者
神戸女学院大学
雑誌
論集 (ISSN:03891658)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.111-128, 2000-07
著者
手代木 陽
出版者
神戸市立工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ドイツ啓蒙主義哲学において蓋然性は事象の「可能性の度合い」を意味し、それは事象の完全性に応じて規定されるが、この完全性が「無矛盾性」に基づく「両立可能性」に応じて規定される限り、決定論の疑惑が払拭できないという困難が見出される。カントは論理学が判断や推理の一般的な規準を意味する「カノン」であるとする見地から、「蓋然性の論理学」を特殊な対象の認識方法である「オルガノン」であると見なして否定したが、その一方で数学的な蓋然性(確率)を認め、これを独自の哲学的原則によって基礎づけた。その判断の必然性は絶対的ではなく、部分的に経験に基づく「仮定的必然性」であり、この点においてドイツ啓蒙主義哲学に見いだされる決定論的な困難を回避したと言える。
著者
橋本 恭伸 東間 紘
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.571-572, 1994-07-25

東京女子医科大学学会第299回例会 平成6年6月9日 中央校舎1階会議室
著者
大城 望史 八幡 浩 春田 直樹 丹治 英裕 篠崎 勝則 内田 一徳 杉野 圭三 丸林 誠二 浅原 利正 土肥 雪彦
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.32, no.10, pp.2350-2354, 1999-10-01
参考文献数
16
被引用文献数
7

症例は56歳の男性, 嚥下困難を主訴に前医を受診し, 食道癌と診断され当科に入院した. 入院時白血球数は19,400/mm^3と高値であったが, ほかに炎症所見は認めなかった. 1998年6月9日に食道亜全摘術を施行, 病理組織学的診断はいわゆる癌肉腫であり, mp, n(-), Pl_0, M_0, stage Iであった. 術後白血球数はすみやかに低下し, 血中G-CSF値は術前109pg/mlと高値であったが, 術後は21pg/ml, 11pg/mlと低下し, 抗G-CSF抗体を用いた免疫染色でも陽性であり, G-CSF産生腫瘍と診断した. G-CSF産生食道癌肉腫は本邦2例目と極めてまれである. G-CSF産生腫瘍は予後不良であるが, 自験例は8か月経過した現在も再発の兆候を認めていない.
著者
永田 瞬
出版者
高崎経済大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、ジーンズ産業における若年層のキャリア形成と地域間ネットワークの課題を明らかにする。具体的には、①三備地区(岡山県、広島県)におけるメーカー側の製造・販売ネットワークと人材育成の分析、②若年層の就業意識と学校側カリキュラムである。三備地区の繊維産業集積における自社ブランドメーカーは、縫製加工業者や洗い加工業者と密接な取引関係を結び、産地外の織布メーカーとも取引を活発化させている。学生服メーカーは、短期需要に即応するため、国内立地を選択している。以上の事情は、他地域の産地型産業集積にとっても示唆に富む。
著者
立川 裕二
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

本年度も、昨年に引き続き超対称ゲージ理論の研究を超弦理論の観点を援用しつつ行った。特に、その中でも、超対称性に加えてスケール変換のもとでの不変性をもつ、超共形ゲージ理論について研究を行った。これらは、強結合であるため安直な摂動的な解析が適用できないが、ここに超弦理論の効能があらわれる。すなわち、超弦理論によれば、通常の4次元の超共形場理論は、1次元高い5次元の超重力理論をアンチドジッター空間上で考えたものと等価であることがわかる。この際、片側が強結合であればもう片側が弱結合になるため、解析が可能になるのである。具体的には、10次元のIIB型超弦理論を、5次元のアンチドジッター空間と5次元の佐々木アインシュタイン空間の積の上で考えたものを解析すれば良い。さて、そのような立場からの研究として、最大の超対称性をもつ理論に関してはこの10年に非常に沢山の研究があるが、最小の超対称性をもつものに関してはここ数年研究が深化した興味深い分野であり、今年度の私の力点はそこにあった。最小の超対称性をもつ超共形場理論の解析のために基本的なデータは、その理論の大域対称性三つの間の三角量子異常である。以上の議論から、その三角量子異常は、重力理論側のデータであらわせるはずである。超共形場理論の種別に対応するのは5次元の佐々木アインシュタイン空間の種別であるから、それら空間の幾何学であらわせるはずである。以上のような考察のもとから、S. BenvenutiとL. A. Pando Zayasの協力のもと、佐々木アインシュタイン空間の幾何学と超共形場理論の三角量子異常の関連について精密に明らかにしたものが今年度の発表論文である。これは超共形場理論の解析において今後基本的な方法となると思われる。
著者
森下 伸也
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
no.1, pp.24-32, 2002-05-25

社会が猛烈な速度で変化している。その結果、人間の生理的限界を超えるところまで生活が慌ただしくなり、生活世界が破壊されるにいたっている。このアリス的速度の元凶はグローバル化である。市場原理主義にもとづくアメリカ一極集中型のグローバル化は、南北問題や環境問題もさらに深刻化させるであろう。また、個人はグローバル市場経済の猛威に直接対峙させられることになる。この危機に対する反応として、世界各地に新しいタイプのナショナリズムや反グローバル化運動が出現している。この危機的状況を突破するには、国家が中間集団、セーフティネット、生活者の相互扶助機構として再構築されることが最も重要である。ところが日本にあっては、政治家も国民もこのことを理解していないため、市場原理主義に翻弄されるままで、失業率や自殺率の急速な上昇を招いている。同時に日本では、高度消費社会がもたらす決楽主義や金銭崇拝のために、過労死、社会的ひきこもり、少子化、学級崩壊、公共道徳・職業道徳の著しい低下といった現象に象徴される人的資源の喪失と劣化が急速に進んでおり、将来の日本社会の展望を非常に暗いものにしている。このような時代状況はしかし、まさしく社会そのものを原理的に問う社会学者の出番であろう。いまこそ日本の社会学者は、その存在理由をかけて、全体社会への構想力をとりもどし、雄弁に語ることにチャレンジしなければならない。
出版者
筑波大学
雑誌
つくばね : 筑波大学図書館報 (ISSN:02850117)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.2-4, 2000-06

筑波大学芸術学系と附属図書館の共催による「日本美術の名品」と題する展示会が5月22日から6月9日まで開催され,学内はもとより近県や遠くは北海道,鹿児島県など全国各地から約4,300人もの来場者がありました。 この展示会は,狩野探幽・尚信,田村直翁の筆になる屏風の発見という劇的な出来事により,当初の企画から開催規模も内容も大きく様変わり ...
著者
石山 智敏 稲沢 慶太郎
出版者
特定非営利活動法人日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.371-373, 2002-09-15
参考文献数
17

症例は54歳の男性.1999年6月9日,ライトバンを運転中にガードレールに衝突し,ハンドルなどによる腹部打撲および胸椎圧迫骨折などの診断で当院整形外科に入院した.受傷後12日目の腹部CT検査で腹部大動脈狭窄と左総腸骨動脈閉塞を認めたため,外科紹介となった.7月12日に大動脈-両側総腸骨動脈バイパス術を施行した.左総腸骨動脈は血栓閉塞をきたしていた.比較的希な症例ではあるが,腹部鈍的外傷患者診察のさいには注意が必要と思われる.