著者
笹倉 直樹
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

弦理論における不確定性関係は弦理論の基本的自由度と密接に関わっていると考えられており、その自由度は量子重力のそれとも対応すると思われる。一方、ド・ジッター時空は、観測可能な時空の境界であるところの地平線をもっており、そのため、べーケンシュタインとホーキングの理論によって、なんらかの形で、量子重力の熱力学的な自由度が付随していると考えられている。従って、ド・ジッター時空を弦理論で実現することにより弦理論の基本的自由度に対する知見を深めることができると考えられる。ド・ジッター時空の一つの特徴は、それが超対称性を持たないことである。そのため、超弦理論の非超対称な背景場か、非超対称弦理論の背景場を考える必要がある。従来の弦理論の研究は、超対称性を中心としたものであるため、非超対称な場合への拡張が必要である。今年度の研究では、弦理論の有効作用として、重力とスカラー場が相互作用する系において、ド・ジッター時空がどのように実現されるかの研究を行った。まず、特異点を持たない解の構成に対する議論を行い、具体的な厳密解の構成を行った。この厳密解は、ドメインウォールがド・ジッター時空になっているような解で、ブレインワールドのシナリオのもとで、我々の時空と同一視できるものである。スカラー場のポテンシャルはスカラー場に対して周期的な関数であり、アクシオンのそれとみなす事ができる。このようなポテンシャルは弦理論において、コンパクト化に伴うモジュライスカラー場のインスタント補正として実現できるものである。今後の研究としては、今年度の研究結果を基にして、弦理論への具体的な埋め込みを行い量子重力的自由度についての考察を行うことや、より一般的な非超対称弦理論の背景場の研究などを行いたいと考えている。
著者
鈴木 和雄 青木 雅信 水野 卓爾 石川 晃 影山 慎二 宇佐美 隆利 麦谷 荘一 牛山 知己 藤田 公生
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.87, no.5, pp.809-814, 1996-05-20
参考文献数
22
被引用文献数
8 2

(目的)腹膜外到達法による腹腔鏡下副腎摘除術について手技的問題を中心に検討した。(対象・方法)1994年7月より1995年3月までに副腎腫瘍9例(男4例,女5例,30歳から79歳,平均56歳)に対して本手術を施行した。術前診断は原発性アルドステロン症2例,18-ハイドロキシコルチコステロン産生腫瘍1例,プレクッシング症候群5例,内分泌非活性腫瘍1例であった。手術は全身麻酔下,側臥位にて施行した。皮膚小切開よりバルーンにて後腹膜腔を剥離後炭酸ガス送気を行った。トロカールは計4本留置した。腎上極を露出後,腎周囲脂肪組織を上内側に向かい剥離した。副腎全周を剥離後副腎静脈にクリップをかけ切断した。(結果)9例全例に腫瘍摘出に成功した。平均手術時間,平均出血量はそれぞれ53ml,168分であった。術中合併症は見られなかった。術後後腹膜血腫が1例に見られたが5日間の安静にて軽快した。(結論)腹膜外到達法の有用性は開放性手術において既に確立されている。腹膜外到達法腹腔鏡下副腎摘除術は,術野が狭く,手技がやや難しいといった問題点はあるものの,安全かつ低侵襲であり,褐色細胞腫を除いた片側性の小さな副腎腫瘍に対して有用な手術法と考えられた。
著者
風間 洋一 PINANSKY S. B. PINANSKY Samuel Bernard PINANSKY Samuel Barnard
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

Pinanskyは、2年前にBerensteinと共に提唱した、素粒子の標準模型と非常に良く似た性質を示すMinimal Quiver Standard Modelの性質の研究を継続して行った。具体的には、このモデルのパラメーターに対する従来よりはるかに正確なバウンドの計算、および加速器実験における崩壊確率と計測確率の計算を遂行した。この計算により、近い将来にLHC実験から得られるデータとの比較の準備が整ったと言える。この研究成果は、Physical Review Dに掲載されることが確定している。この種のモデルにおける困難な点は、その背景にある超弦理論との関係が完全には明確になっていないことである。その鍵となるゲージ/弦対応については膨大な「証拠」が得られており、ある種の曲がった時空の境界にクイヴァーゲージ理論が現れることが知られているが、そのメカニズムをより明確にするために、トーリック幾何と呼ばれる代数幾何のクラスに関する研究も継続して行った。一方風間は、前年度に引き続き、ゲージ/弦対応の理解に不可欠であるにも拘わらず発展が遅れているラモン・ラモン場を含む曲がった時空中の超弦理論の研究を行った。この種の問題のプロトタイプである平面波背景場中の超弦理論をグリーン・シュワルツ形式で共形不変性を保ったまま量子化する方法を開発し、量子化されたヴィラソロ代数を構成することに成功した。さらに、系の持つ対称性代数の生成子の量子的な構成、および物理的状態に対応する頂点関数の構成の研究を進めたが、実はこうした研究は、平坦な時空の場合でさえ行われていないことが判明したため、まず平坦な時空の場合の構成を進めることとし、ほぼそれが完成しつつある状況である。
著者
林 政彦 白石 浩一
出版者
福岡大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

対流圏エアロゾルの観測に適した気球搭載型粒子計数装置を開発した。この装置を用いて福岡上空の大気エアロゾルの成層圏までの鉛直分布観測,偏光解消度観測を含む3波長ライダーによる光学特性の観測を実施し,その比較解析を行ってきた.福岡上空の境界層から成層圏までのエアロゾルの粒径分布・濃度その変動についての情報を得ている.これまでのところ,ライダーによって観測される自由対流圏の偏光解消度の高い層が粒径数マイクロメータ程度の巨大粒子をふくむエアロゾル群として存在していること,自由対流圏の非球形粒子を含むエアロゾル層が,相対湿度が70%を超えるような比較的湿った状態になっていることが多いことなどが明らかになった.無人航空機を用いて,中央九州高原部のエアロゾル鉛直分布観測を久住高原で,中国大陸から輸送されてくる混合層および自由対流圏最下層のエアロゾルの粒径分布観測およびサンプル回収を北部九州雷山および唐津湾上空で行った.北部九州で春季に採取したエアロゾル粒子のSEM-EDXの組成分析により個別粒子の存在状態の解析を行った.これらの知見と,衛星からのリモートセンシング情報の解析結果との比較検討を行っている.その結果,これまでに,日本上空に輸送されてくるまでの間に鉱物粒子と海塩成分と内部混合した変質粒子が,雲過程を経ないで形成されるのは,混合層が発達するとともに,混合層温度が海面温度より低い状態にあることが明らかになった.この結果から,海面による加熱と水蒸気,海塩粒子にともなう海上霧の形成が鉱物-海塩混合粒子形成を促進する重要な条件になっていることが示唆された.
著者
竹内 延夫
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

浮遊粒子状物質(SPM)は地球環境の熱収支、大気汚染に影響し、その組成はディーゼルエンジン等の元素状炭素(EC)の寄与の同定などに関連し、重要である。都市大気の例として千葉のエアロゾルを捕集分析し、ECの混入の割合が微小成分(2μm以下)で25%、粗大成分(2μm以上)で9%と、以上に大きいことを確かめた(特に冬季に多い)(Yabuki, et al., CLEO 2003)。ECが多いと吸収の割合が大きくなり,後方散乱対する消散係数(吸収+散乱)の割合S_1(ライダー比)が大きくなる。都市性のエアロゾルモデルを仮定し、2波長での同時観測ライダーデータから、解析により求めた消散係数/後方散乱係数比と消散係数の高度分布プロファイルを実測ライダーデータから,他の補助データ無しで求める手法を開発した。これは理論計算に基づいて求めたパラメータと実測データの隣接する高度間の関係がエアロゾルモデルによる波長間の関係を満たす条件から、各高度でのパラメータが求められる(Yabuki, et al, JJAP,2003)。エアロゾルのモデルを仮定し、消散係数を用いた光学的な濃度分布から重量濃度分布への変換係数が求められると、各高度におけるエアロゾル濃度分布の導出が可能となる。実大気中では湿度によりエアロゾルの状態が変化するので地上で測定した湿度を用いてエアロゾルの膨張・光学的性質の湿度による変化を考慮し、連続観測ライダーの値と地上における観測値の変化の相関関係を取ることによって大気の境界層の中ではエアロゾルの混合が短時間(1時間より遥かに短い時間)でおこり、532nmにおける変換係数が0.08〜0.1(g/m^3)/(m^<-1>)であることが求められた。これにより、湿度が分ると、都市域上空の境界層内のエアロゾル量の空間分布が求められることが可能となった(Nofel, et al, AE, 2004)。
著者
西村 昌也 宇野 隆夫
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

大規模面積をもち,かつ各時代に亘って利用されてきた遺跡を構造的に理解することは,大規模発掘調査を除けば非常に困難である。本研究は,ベトナムにおける城郭遺跡や大型居住遺跡を対象に,小規模な発掘調査と地形の観察や測量調査、さらに地図資料の分析などから,遺跡の構造的理解をめざす研究を行ったものである。これまで構造的理解が未提出であった各遺跡に対して,地図資料分析と微地形観察調査とGPS測量を組み合わせた胡朝城遺跡の構造、試掘調査と微地形観察と測量調査を組み合わせたホアチャウ城の形成過程と時期別の構造、衛星写真と地形踏査によるチャンパの各城郭遺跡の構造などの全く新しい知見を提出し,後続研究が追随できるよう。その方法論を説明しつつ研究成果を出版した。
著者
荒木 宏
出版者
作新学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、1980年代以降の年金と医療の制度改革を事例に、「公―私」の政策変容におけるアカウンタビリティの範囲や有効性について分析を行った。年金制度改革では、年金の私有化政策が行われ、規制改革と税控除政策等により、公的年金を縮小し私的年金を拡充する政策が実施された。一方、医療制度改革では、NHSに市場原理が導入された。GPや規制機関に権限が委譲され、またNHS体制内に曖昧で複雑なネットワークが形成された。これらの事例研究から、アカウンタビリティの特徴や範囲の変化について明らかにした。
出版者
[書写者不明]
巻号頁・発行日
1908
著者
増田 弘毅
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

様々な実データ時系列の背後にある確率過程の構造に関する漸近推測,その中でも特に,確率過程の二次変動の局所的性質を加味した推測方式を研究した.また,漸近推測に際して必要となる,確率過程の漸近挙動も興味の対象である.今年度は特に下記の結果を得た.1. Realized multipower variation(MPV)の長期高頻度観測版を定義し,その漸近挙動を導出した.統計への応用として,確率過程の飛躍部分が適当な条件をみたす下では,飛躍の具体的な構造に関係なく(それを局外母数として)拡散部分およびドリフト部分を同時に漸近正規性をもって推測可能であることが分かった。推定量は計算容易であり,より精度の高い推定量の構成に役立つことが期待される.種のウィーナーポアソン確率積分に関する条件付期待値の公式を導出した.これはウィーナー積分に関する既存の結果を拡張するものであり,飛躍付確率過程モデルへ "small-sigma"理論を適用する際に,その実装における基本的な道具となる.3.合ボアソン型飛躍付拡散過程の$\beta$-ミキシング性を,(ランダムな)初期条件に関係なく成立する条件を導出した.条件は全て当該確率微分方程式の係数およびレヴィ測度で表現されており,検証容易である.4. 期間で高頻度データが得られない場合での日次ボラティリティの推定方法を,ウェイト付実現ボラティリティを介して定式化し,実証分析を行った.このような推定手法は,昼休みと夜間において取引が停止する日本市場などにおいて,特に夜間の収益率変動が累積ボラティリティに及ぼす影響が大きいことが経験的に知られているため,重要である.本結果は,経済で重要なボラティリティ予測を安定して行うための道具となる.
著者
栄 研二 海野 徹也 高原 泰彦 荒井 克俊 中川 平介
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.46-50, 1996-01-15 (Released:2008-02-29)
参考文献数
14
被引用文献数
2

Yearling ayu Plecoglossus altivelis collected in June and July from the Ohta River were biologically and biochemically examined in comparison with annual ayu caught in the same area.All the yearling ayu were female. The yearlng ayu were different in size and skin color from the annual ayu, but not different in anatomical parameters such as hepatosomatic index, intraperitoneal fat body ratio, and gonadosomatic index. The ovaries of annual ayu were immature and included chromatin nucleolus and perinucleolus stage eggs, but those of yearling ayu consisted mostly of abortive eggs and a few chromatin nucleolus and perinucleolus stage eggs.The yearling ayu had less muscle protein but more triglycerides than annual ayu. Fatty acid composition of muscle triglycerides in the yearling ayu was not different from that of the annual ayu. Low protein accumulation caused by depression of protein metabolism would affect the viability of yearling ayu after July.
著者
松本 尚之
出版者
横浜国立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では、民政移管から10年目を迎えたナイジェリアにおいて、諸民族の伝統的権威者(王や首長)が国家行政のなかで持つ役割や影響力について調査研究を行った。特に三大民族の一つであるイボ人を事例とし、小規模地域集団を単位として選ばれる王(エゼ)が、地方集団を越えて行使する影響力を考察した。調査では、州政府や地方政府が、各集団の王制に対して与える影響力を把握するとともに、各政府が組織する伝統的権威者の助言会議の実態について把握することを目指した。それによって、今日のナイジェリアにおいて伝統的権威者が果たす媒介者としての役割を明らかにし、アフリカにおいて王位や首長位が持つ現代的な意味を考察した。
著者
小川 泰信
出版者
国立極地研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究課題の目的は、極域電離圏及び磁気圏で観測される極風(ポーラーウィンド)の生成機構の解明である。極風が生じ始めると考えられる極冠域の上部電離圏(400-1,000km)におけるイオン組成の高度分布と各イオン種の速度分布を、2007年夏期から2008年冬期にかけて実施した欧州非干渉散乱(EISCAT)スヴァールバルレーダー(ESR)観測データを用いて調べた結果、(1)酸素イオンに対する水素イオンの比率は、電離圏モデル(IRI-2001)値に比べて観測値の方が大きいこと(高度400-600kmでは約3倍)、(2)昼側カスプ領域より低緯度側の領域では、主イオンである酸素イオンとマイナーイオンである水素イオンにより、全上昇イオンフラックスの保存が広い高度幅で成り立っていること、等を明らかにした。
著者
松永 知大
出版者
長崎大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

近年、夜11時以降に就寝する学童が、全体の半数以上を占めるようになるなど、子どもの夜更かしと、それにともなう睡眠障害の増加が問題視されている。また、これらの睡眠障害が、学童の注意力・忍耐力の低下を初めとした、学童に多く認められる各種の心理的・行動的問題の要因となっている可能性が指摘されている。しかし、学童の睡眠の実態把握は進んでおらず、客観的根拠に基づいた生活指導を行うのに必要とされるデータが、十分に整備されていないのが現状である。そこで、アクチグラムを用いた体動量計測による学童の睡眠の客観的評価と、行動学的手法による学童の認知情動能力の客観的計測を行なうことで、(1)学童の睡眠の実態把握を推進すると共に、(2)睡眠の質が学童の認知情動能力に与える影響を実証的に検討することを目的とし本研究を実施した。本年度は、小学3・4年生20名、小学5・6年生20名を対象に以下の測定を実施した。測定1:アクチグラフを一週間にわたり装着してもらい、客観的生活リズム測定を行った。測定2:客観的生活リズム測定終了後、標準化された行動課題(フランカー課題)を実施し、注意能力測定を実施した。測定1のデータをもとに、小学生の夜間睡眠を特徴づける睡眠パラメータ(実質睡眠時間・睡眠効率・中途覚醒回数など)を抽出した。これら睡眠パラメータと測定2で計測した注意能力との相関を分析した結果、両群で注意能力の指標となるConflicting Scoreと実質睡眠時間との間に有意な負の相関がみられた。この結果は、実質睡眠時間が短い小学生ほど、日中の注意能力が減退している可能性を示唆している。
著者
小倉 充夫 青木 一能 井上 一明 遠藤 貢 舩田 クラーセンさやか 眞城 百華
出版者
津田塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

大半のアフリカ諸国で、 国民統合は言語やエスニシティの同一性によってもたらされはしなかった。冷戦後の現代においても国民形成はアフリカでは最重要な課題であり続けている。この問題を民主化、移動、都市化と関連させて検討した。都市第一世代であった年長者に比して、現在の都市青年層はより教育を受けているが就業が困難であり、彼らの国民的そしてエスニックなアイデンティティの動向に注目する必要がある。
著者
山中 雅之
出版者
広島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

超新星爆発は一般的に、爆発後数週間の明るい時期が「光球期」と言われ、この時期に観測を行うと膨張大気のより外層について制限を与えることができる。Ia型超新星においては、極大絶対光度と減光速度に強い相関関係が認められ、一様な観測的特徴を示すことで知られている。このような特性を用いて、宇遠方超新星の観測から宇宙膨張は加速しているという重大な研究成果が得られている。しかしながら、爆発メカニズムや爆発する元の天体については決着がついておらず、その正体に制限を与えるような観測的研究が期待される。初年度は、広島大学宇宙科学センター付属東広島天文台にてかなた望遠鏡を用いて超新星の明るい初期に時間的に密な観測を実行した。本年度においては、爆発から200日以降の最大高度より100倍暗いフェーズにおける大口径望遠鏡を用いた観測研究を遂行した。このような爆発からおよそ一年経過した時期においては、超新星の膨張大気は光学的に薄くなり、噴出物質全体を見通した観測が可能となる。すなわち、爆発構造の最内層構造について幾何学的・物理学的に制限を与えることが可能である。私は国立天文台所有8.2m「すばる」望遠鏡での公募観測における観測提案を行い、2010年4月と2011年5月に超新星の非常に暗い状態での観測に成功した。対象となった超新星は、広島大学かなた望遠鏡、県立ぐんま天文台1.5m望遠鏡などを用いて初期に集中的に観測を行った極めて明るいIa型超新星「SN 2009dc」である。SN 2009dcは極大光度がIa型超新星としては異常に明るく、減光速度も遅く、またスペクトルにおいて炭素の吸収線が卓越した特異な超新星であることが明らかになっていた(Yamanaka et al.2009,ApJ,707L,118)。すばる望遠鏡の観測においては、このような描像に加え超新星の内部構造において、予期されぬ減光と本来外側に分布するはずのカルシウムが鉄より内側に分布していることを明らかにした。このような発見は特異なIa型超新星に強い制限を与える観測結果であり、現在論文を準備中である。
著者
Morimoto Hiroko Iwata Kazumi Ogonuki Narumi Inoue Kimiko Ogura Atsuo Kanatsu-Shinohara Mito Morimoto Takeshi Yabe-Nishimura Chihiro Shinohara Takashi
出版者
Elsevier
雑誌
Cell Stem Cell (ISSN:19345909)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.774-786, 2013-06
被引用文献数
182

活性酸素の精子幹細胞に対する増殖促進作用を解明. 京都大学プレスリリース. 2013-06-07.
著者
岩井 大輔 佐藤宏介
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.1294-1306, 2007-03-15
参考文献数
22
被引用文献数
3

机上に積み重ねられた書類探索を支援するため,下層の書類の映像をカメラで取得し,あたかも上層の書類が透けるかのように処理した映像を,投影型複合現実感技術の色補正処理を施しつつ,上層の書類へプロジェクタ投影するシステムLimpid Desk を提案する.ならびに,ユーザの手の書類への接触を,特殊な道具を身につけたり持ったりせずにセンシングする手法を,熱画像を利用することで実現する.この入力インタフェースを利用して,机上の書類に触れることで書類の透過を操作するインタラクションを可能とする.提案システムでは,現実の机上空間で,上に置かれた書類を物理的に移動させることなく,下層書類の情報を視覚的に取得することが可能となる.これによって,探索空間・操作空間・情報提示空間が一致し,ユーザはPC を介さずに積み重ねられた書類に直接アクセスすることができる.我々は,この操作の一貫性に主眼を置き,すべて実世界の机上の同一空間で行うことのできる直観的インタラクションを目指す.We propose Limpid Desk which realizes intuitive document search on a real desktop with virtual transparentizing of the upper layer of a document stack in projection-based mixed reality (MR) environments. In the system, users can visually access a lower layer document without physically removing the upper documents. This is accomplished by projecting a special pattern of light that is calculated to compensate the appearances of the upper layer documents as if they are transparent. We also propose a touch sensing method using a thermal image for the input interface of the system. User touch areas on real documents are detected without any user-worn or hand-held devices in the method. This interface allows users to select the stack they would like to look through by their simple touch gestures. We present three intuitive document search interaction techniques in which the search, operation and display space are completely unified onto a real desktop. We claim that this kind of spatial consistency of the operations is the key for realizing the intuitive interaction.
著者
Matsuda Yoshi-Taka Okanoya Kazuo Myowa-Yamakoshi Masako
出版者
Public Library of Science
雑誌
PLoS ONE (ISSN:19326203)
巻号頁・発行日
vol.8, no.6, 2013-06-05
被引用文献数
17

赤ちゃんの「人見知り」行動 : 単なる怖がりではなく「近づきたいけど怖い」心の葛藤. 京都大学プレスリリース. 2013-06-05.