著者
山口 真一
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.15-27, 2015 (Released:2015-07-30)
参考文献数
35
被引用文献数
1

本研究では、コンテンツ産業におけるインターネット配信について、それらがパッケージ製品販売数に与える影響を、補完効果と代替効果という観点から理論的に整理する。そして、深夜アニメ市場の需要モデルを用いた実証分析によって、定量的な検証を行う。作品をグループ、エピソードを系列とした固定効果法推定の結果、無料配信の補完効果は代替効果より大きく、パッケージ製品販売数に対して有意に正の影響を与えていた。そして、その大きさは、無料配信動画再生回数が1%増えるとパッケージ製品販売数が約0.10%増加するというものであった。また、有料配信は有意な影響を与えていなかった。このことから、少なくとも深夜アニメ市場については、インターネット配信を積極的に行うことが、生産者余剰と社会的厚生の増加に繋がることが確認された。さらに、詳細な分析の結果、男性向作品では無料配信、有料配信共に有意に正の影響を与えていた一方で、女性向では共に有意な影響がなかった。そして、オリジナル作品と人気作以外では無料配信が有意に正の影響を与えていた一方で、オリジナル作品以外と人気作では無料配信も有料配信も有意な影響を与えていなかった。
著者
上田 昌宏 山田 諒 串畑 太郎 永田 実沙 栗尾 和佐子 安原 智久 曽根 知道
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.2020-028, 2020 (Released:2020-10-31)
参考文献数
10

学習方略の適切な設定は,効果的な教育を行う上で必須であるが,方略を比較,検証した研究は少ない.今回,防災に対する意識を涵養するため,シミュレーション(HUG)と講演を組み合わせた学習プログラムをデザインしたが,学習環境の制限により,方略の順序が異なる2クラスでの実施となった.本研究では,順序違いが学習効果に及ぼす影響を検証した.プログラム前後に防災に関するアンケート調査を実施し,Fisherの正確確率検定を行った.その結果,HUG先行群では,災害現場での行動に自信を持ち,上位年次での災害研修への参加意欲につながることが示され,講演先行群では,災害支援への意欲が向上することが示唆された.どちらの方略でも,受講者が災害医療を考えるきっかけとなり,被災地の様子をイメージできることが示された.1回の測定だが,学習効果に違いが出たことから,学習目標に合わせた方略をデザインし,教育を行う必要があることが示唆された.
著者
後藤 貴浩
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.147-157, 2017-05-31 (Released:2017-10-30)
参考文献数
31

学習に障害があり、日常生活での車椅子移乗に困難があった高次脳機能障害例に対して行動療法による介入を行った。症例は30歳代男性、広範な右半球脳梗塞により注意障害や半側空間無視を有していた。1カ月の訓練後、移乗における最大能力と日常能力の解離が生じ、その原因が高次脳機能障害による学習の困難さにあると考えられた。そこで行動療法を用いて移乗準備動作訓練を行うこととした。介入デザインは標的行動を四つに細分化したうえで行動間多層ベースラインデザインとした。また介入期を各標的行動に介入する四つの期間に分け、3種類の手がかり刺激を一定期間後に漸減する手法を用いた。評価は介入者から独立した職員が誤り数を指標として行った。約5週間の後に症例の移乗は自立に達した。行動療法は高次脳機能障害者のリハビリテーションにおいても有用である可能性が示され、かつ幅広く適用できる可能性がある。
著者
上村 直実 八尾 隆史 上山 浩也 藤澤 貴史 矢田 智之
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.1733-1743, 2014 (Released:2014-06-03)
参考文献数
51
被引用文献数
5

種々の感染診断法の偽陰性に伴う「H. pylori陰性胃癌」が少なからず認められるが,H. pylori未感染の胃粘膜に発生する「H. pylori未感染胃癌」の頻度は稀である.「H. pylori未感染胃癌」として代表的なものは,分化型胃癌に関しては八尾らが提唱した胃底腺型胃癌であり,未分化型胃癌に関しては粘膜内の印環細胞癌と考えられる.胃底腺型胃癌は,おもに胃体部に発生する腫瘍で,免疫組織学的には胃型形質を主体とする低異型度の癌であるが,早期に粘膜下層への浸潤がみられるもので,日常の内視鏡診療では萎縮性変化のない胃粘膜の胃体部に存在する小さな粘膜下腫瘍様病変に注意が必要である.一方,未分化型胃癌については,未感染胃粘膜に比較的多くみられる印環細胞癌が代表的なものと思われ,内視鏡的には胃体部の小さな褪色領域に注意すべきであり,今後,症例を集積した臨床的な解析が必要である.H. pylori陰性時代を迎える今後,H. pylori陽性胃癌と未感染胃癌に関する遺伝子レベルでの検討が必要となっている
著者
猪 健志 小田口 浩 若杉 安希乃 及川 哲郎 花輪 壽彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.86-92, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
27
被引用文献数
1 4

耳鳴は現代医学ではしばしば治療に難渋する。漢方薬の有効例の報告がいくつかあり,漢方薬が耳鳴の治療法として期待される。今回我々は,慢性耳鳴患者に対する漢方随証治療の有用性についてカルテを後ろ向きに検討した。対象は331例(男性114例,女性217例)であり,平均年齢は57.8歳であった。耳鳴に対する有効率は38.4%であり,随伴症状(めまい,不眠,頭痛等)に対する効果も含めると有効率は64.6%であった。半夏厚朴湯が最も多く処方されており,耳鳴に対する有効率は32.1%であった。また,釣藤鈎を加味することで有意に有効率が高くなった(p < 0.05, Fisher's exact test)。釣藤鈎は,その効能や現代薬理作用から考えて,耳鳴に有効である可能性がある。対象の84%が当院受診前に治療を受けており,前治療に効果のない難治例が多かったと考えると,漢方治療は相当程度有効である可能性がある。
著者
長谷川 雄基 佐藤 周之 上野 和広 長束 勇
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.II_29-II_34, 2020 (Released:2020-06-25)
参考文献数
7

本研究では,水砂噴流摩耗試験に対するサンドブラスト法の代替性の検討および材料の耐摩耗性の評価試験として実務上多用されるテーバー式摩耗試験とサンドブラスト法の比較検討を目的とし,細骨材粒径を変化させたモルタル供試体を対象とした比較検証実験を行った.結果として,サンドブラスト法では,試験時間の差異により試験後の供試体表面の状態は変化し,試験時間が短いと水砂噴流摩耗試験に近い選択的な摩耗現象を再現し,試験時間が長くなるとテーバー式摩耗試験に近い面的に進む摩耗現象を再現できる可能性が考えられた.加えて,粒径0.6mm以上の割合が大きい細骨材を使用した無機系補修材については,サンドブラスト法の試験時間を10秒とすることで,水砂噴流摩耗試験による現行の無機系補修材の品質評価と同等の評価ができる可能性が示された.
著者
福田 怜生
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.173-184, 2015-03-31 (Released:2020-05-26)
参考文献数
50
被引用文献数
1

移入とは,消費者が広告や小説に没頭した状態を指す。本稿では,まず広告への移入が説得効果に及ぼす影響を検討するため,移入が生じる条件や,移入が影響を及ぼすメカニズムに着目した研究を考察した。その結果,移入が(1)物語形式の広告だけでなく,様々な形式の広告において生じること,(2)広告評価などの態度や,行動意図にポジティブな影響を及ぼし,説得効果を高めること,(3)広告の説得効果にポジティブな影響を及ぼすメカニズムとして,批判的思考の抑制とポジティブ感情の生起があることが示された。次に,移入した消費者の広告処理過程を明らかにするため,移入の構成要素としての注意,想像,共感を個別に検討した研究を考察した。その結果,(1)注意が批判的思考の抑制に関係すること,(2)想像が広告評価及び行動意図に関係すること,(3)共感がポジティブ感情の生起に関係することが示された。これら考察によって,注意,想像,共感に関する知見を,一連の移入研究に結びつけることが可能になると考えられる。

2 0 0 0 OA Riemannの問題

著者
斎藤 利弥
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.145-159, 1961-01-30 (Released:2008-12-25)
参考文献数
29
著者
谷亀 高広 吹春 俊光 鈴木 彰 大和 政秀 岩瀬 剛二
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
巻号頁・発行日
pp.259, 2005 (Released:2005-03-17)

ラン科植物はリゾクトニア属に属する不完全菌類が菌根菌となることが広く知られているが、近年それ以外の担子菌が菌根共生する場合のあることが明らかにされている。〈BR〉 そこで本研究ではラン科植物の菌根共生に関する知見の集積を目的としてサイハイラン属のサイハイランとモイワランについて菌根菌の同定を行った。サイハイランは日本各地の丘陵地帯の湿った林内に自生する緑色葉を持つ地生ランである。一方、同属のモイワランは深山の沢筋に自生する無葉緑ランである。サイハイランは神奈川県藤野町のコナラ林において、モイワランは青森県佐井村のオヒョウ、カツラ林において、それぞれ1個体を採取した。菌根菌分離は、リゾーム内に形成された菌根菌の菌毬を分離培地(Czapec・Dox+酵母エキス寒天培地)上へ取り出し、そこから伸張した菌糸を単離培養するという方法(Warcup&Talbot 1967)を適用した。その結果、サイハイランより5菌株、モイワランより2菌株の菌根菌が分離された。それぞれ1菌株についてオガクズ培地で前培養し、これを赤玉土に埋没させることで子実体形成を誘導し、その形態的特徴から菌根菌の同定を試みた。両種から分離された菌株は、子実体の観察の結果、いずれもヒトヨタケ科ヒトヨタケ属キララタケ節に属することが明らかとなった。また、野外から採取したそれぞれのランのリゾームを子実体形成を誘導した菌の培養菌株と共に赤玉土に植え込み、菌根菌を感染させたところ、それぞれのランでリゾームの成長および塊茎の形成を確認した。〈BR〉ヒトヨタケ科の菌がランの菌根菌として同定された例は無葉緑種のタシロランがあるが(大和2005)、他は報告例がない。本研究によって、新たにサイハイラン属について、緑色葉を持つ種と無葉緑の種がともにヒトヨタケ属の菌を菌根菌とすることが明らかとなった。
著者
隼野 寛史 宮腰 靖之 真野 修一 田村 亮一 工藤 秀明 帰山 雅秀
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.372-382, 2013 (Released:2013-05-31)
参考文献数
38
被引用文献数
1

1936~2007 年の網走湖産シラウオの漁獲量変動を調べた。シラウオは 1930 年代前半から網走湖に生息し,漁獲されるようになった。漁獲量は 1~94 トンの間で変動した。その変動には 1 年間隔の周期性が認められ,生活史に起因すると考えられた。漁期はじめの資源量は CPUE と稚魚密度により,36,763×103~487,590×103 個体と推定された。大規模な増水のあった年には降海が促され,不漁になる一方,翌年の親魚量は多くなった。親魚数と次世代資源の加入量には Ricker 型の再生関係が良く当てはまった。

2 0 0 0 OA 幼児の吃音

著者
原 由紀
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.190-195, 2005-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
14
被引用文献数
5 2

吃音はその多くが幼児期に発症するといわれている.1歳9ヵ月に発吃した症例の経過を通して, 幼児期吃音の治療を検討した.幼児期の吃音治療は, (1) 子供への楽な発話モデルを中心とした流暢な発話体験を増加させる働きかけ, (2) 両親への徹底したコミュニケーション環境調整の指導, (3) 吃音や自己に対し否定的な感情をもたせない対応, が柱となる.言語聴覚士による適切な発話モデルの提示や発話の誘導により子供に流暢な発話体験を増加させることが可能である.こうした働きかけは, 両親に対してもコミュニケーションのモデルとなり, コミュニケーション環境改善に不可欠である.早期からことばの出にくさを訴える症例もあり, 慌てずに耳を傾け, 特別視せずに, 一緒に対応を考えること, 自己肯定体験を数多く行わせ自信をつけさせることが有効であった.
著者
鈴木 綾子 堀越 フサエ 檜作 進
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.169-173, 1971-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
5

ゴリイモが出来る原因の一つとして、デンプンの老化、糊化が関係していると考えられることから、調理に関連して種々の条件下におけるジャガイモ中のデンプンの糊化度の変化を検討した結果、次のようなことが観察された。1) イモの調理の際、加熱温度が60℃以下では、加熱時間を長くしても十分糊化されない。2) 加熱温度のちがいによって、加熱を中断した時の老化の速度がことなり、加熱温度が60℃付近のイモのデンプンの糊化度の減少がもっとも大きく、老化がすすみやすい。十分糊化したイモほど老化がおそい。3) 試料を60℃~70℃に加熱して糊化が不完全な状態で加熱を中断し、40℃以下に冷却すると、更に100℃に再加熱しても完全には糊化され難く、外観上もかたい。加熱を中断して室温で24時間おいたイモは、この間冷蔵庫に保存したものよりも、再加熱によって糊化し難い傾向がある。本報の要旨は昭和44年10月、日本女子大学における日本家政学会総会において発表した。
著者
石野 正彦 長田 洋 工藤 司 五月女 健治 片岡 信弘
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2016年秋季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.273-276, 2016 (Released:2016-11-30)

情報化社会でのIoT(Internet of Things)のイノベーションによって、産業界や消費者向け情報サービス分野において、さまざまなビジネスモデルの構築が可能になってきた。たとえば、物流、セキュリティ、安全性、自動検知、データ収集・分析などが容易となる。また、それらのビッグデータの活用や予測に役立てられる。現在登場しているIoTを活用した応用システムやビジネスモデルを分類し、代表的な事例を研究した。将来に向けてIoTを活用した新しいビジネスモデルによるイノベーションを考察する。
著者
国本 正彦 星野 保 中野 道紀
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.1097-1102, 1989-06-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
24
被引用文献数
2 3

In east Asia, some species of mold have been inoculated on materials in the processes of liquor and seasoning production. The materials molded have been called “Koji” in Japanese.In the present study, in order to decompose the lipid in sardine meal; first, the lipid in “Koji” inoculated with Aspergillus oryzae was determined at various molding stages. The lipid content in the “Koji” decreased from 8.4% at 0h to 2.1% at 60h on dry matter basis. From the results of both thin-layer chromatography and densitometry at different stages, it was roughly estimated that an amount of triglyceride decreased, while free fatty acid increased. This finding showed the possibility that lipase was active in the “Koji”.Second, the lipolytic activity of crude extract from the “Koji” was determined in case of using substrate of olive oil emulsion. A maximum activity was observed after 48h of molding. The activity depended on pH and temperature.
著者
高橋 義宣 増田 康之 杉本 正裕 江成 宏之
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.455-460, 2008-10-15 (Released:2008-11-30)
参考文献数
15
被引用文献数
3 3

りんご搾汁残渣を酵素分解,熱水抽出することでペクチンオリゴ糖を調製して,その整腸作用について検討した.腸内細菌を用いた資化性試験では優先菌であるBacteroides属やBifidobacterium属に資化性が見られ,糞便培養培地中の短鎖脂肪酸,腐敗産物の分析により,酢酸,酪酸,乳酸が高い増加率を示し,腐敗産物の生成は抑制されていた.また,便秘気味の方を対象にAPOを2週間1日1回5g摂取させた場合に,排便回数は3.0回/週から5.0回/週と有意な増加が認められた.これらの結果から,APOの摂取は整腸作用に効果がある事が明らかとなった.