著者
五島 正裕 岡田 智明 細見 岳生 森 眞一郎 中島 浩 富田 眞治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告計算機アーキテクチャ(ARC)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.71, pp.121-128, 1993-08-19
被引用文献数
2

我々は,一つのアーキテクチャで共有メモリ型およびメッセージ・パッシング型の両方の通信モデルをサポートすることが重要であると考え,スケーラブルな共有メモリ・マルチプロセッサのコヒーレント・キャッシュ・システムとメッセージ通信機能を統合することを試みている.本システムではI?StructureやFIFOなどの同期構造体を利用して高速な細粒度メッセージ通信を実現する.本稿ではこのキャッシュ・システムのコヒーレンス制御方式とメッセージ通信機構について述べる.Based on an opinion that a single architecture should support communication models of both shared memory type and message passing type, we are trying to integrate message communication mechanism with the coherent cache system on the shared memory multiprocessor. This system realizes fast fine-grain message communication by utilizing the synchronization structure such as I-Structure or FIFO. In this paper, we describe the coherence control method and the message communication mechanism of the system.
著者
阪本 清美 青山 昇一 浅原 重夫 山下 久仁子 岡田 明
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.25-27, 2009-02-12

本研究では家庭内視聴環境における視距離の違いが視覚疲労に及ぼす影響についての評価実験を2種類のコンテンツを使用して42インチで行った(実験1、実験2)。さらに、ディスプレイサイズの影響を探るため65インチの大型ディスプレイを用いて行った(実験3).これらの結果は、視覚疲労の観点から、適正視距離が165cmから220cmの中間距離に存在し、ディスプレイサイズに依存せず絶対視距離に関係する可能性があることを示唆していた.
著者
重松 敬一 日野 圭子
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本年度の計画とそれに対する研究実績は以下の通りである。1.前年度の研究から得られた結果に基づいて,「学習ユニット」の構成と評価の視点を明確にする。=> 学習ユニットの構成では,Plan-Do-SeeのサイクルのPlanの段階において,数学的道具をどう組み込むか,それをどう評価するかを考える。更に,(1)数学的道具の異なる側面(「基礎技能」「表現」「処理」「解釈」「問題解決」「道具づくり」),(2)道具使用の場面(「道具を選んでの計算」「数学的探究や説明の中での道具使用」「日常生活の問題解決における道具使用」「総合的な作業における道具使用」)の2つの軸の中での位置付けを考える。尚,電卓・グラフ電卓の使用を組み込んだ学習ユニットの一部として,「ちらしを使って考えよう」「電卓で遊ぼう」(小学校高学年),「バスケットボールのシュートの正確さを予測しよう」(高校)の授業を考え,実践した。2.視点に基づいて,算数・数学科カリキュラム・指導・評価をつなぐシステムを考案する。=> 学習ユニットの構成と評価の視点を織り込んだ具体事例を幾つか考案するところまでを行った。今後の課題が残された。(1)数学的道具を今回は狭い意味で用いたが,数学的活動との関わりなどから,より広く規定していくことが必要である。(2)数学的道具の取り入れを意識するために,指導案を作る上でのガイドラインを更に検討する必要がある。(3)道具の使用を認めるような評価方法についても,更なる検討が必要である。(4)より広く,「道具を使った数学的探究」という総合的な柱についての検討が必要である。
著者
西尾 敦史
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.10, pp.77-95, 2007-12

社会福祉の援助者はその援助場面で「援助困難」を抱えることが少なくないために、「援助困難」を軽減する方法が必要となる。そこで「援助困難」は、利用者と援助者の「計画された変化の過程」に、また人と環境の相互作用の接点に生じるというソーシャルワーク、とりわけライフモデルのそれが培ってきた認識を基本に、個人の資源と環境の資源を評価する分析枠組みを設定した。この枠組みを使用し、沖縄県における地域福祉権利擁護事業の実態調査(2007)における「援助困難」の要因を分析したところ、問題の要因、問題相互の関連、また制度・政策面での課題を明らかにすることに一定の貢献があった。「援助困難」を客観的に、また全体的に見ることのできるポジションを確保することは、援助実践面においても、政策決定においても有効であり、ライフモデルソーシャルワークによるニーズの分析枠組みの有効性・可能性についてさらに検証していくことが期待される。
著者
岩堀 健治
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究において詳細にナノ粒子形成条件を検討する事により直径 12 nm の馬由来フェリチンタンパク質の内部空洞内(直径 7 nm)に温熱効果を発揮すると考えられる酸化鉄ナノ粒子の作製に成功した。作製した本ナノ粒子集合体はネオジウム磁石への吸着が肉眼で観察されるとともに、XRD や EDX 分析、高分解能電子顕微鏡観察等を行った結果、作製されたナノ粒子はマグネタイト (Fe3O4) であることが確認された。また、酸化鉄ナノ粒子以外にも詳細な検討作製条件検討によりフェリチン空洞内への CuS 及び FeS, タンタル (Ta) のナノ粒子の作製にも成功し、現在ひきつづき元素分析及び磁性観察を行っている。さらに最近、より DDS に適しているヒトの心臓由来のフェリチンタンパク質の作製と内部への酸化鉄ナノ粒子の作製にも成功した。今後はこれらの作製したナノ粒子の発熱実験とフェリチン表面への認識ペプチドの結合を行うことでバイオナノ粒子を作製し、機能評価を行う。
著者
呉羽 正昭
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2007年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.123, 2007 (Released:2007-11-16)

1.はじめに 日本におけるスキーの本格的移入は1911年のことである。当初,スキーは登山の手段やスポーツ競技として捉えられていた。しかしその後,レクリエーションとしてのスキー,いわゆるゲレンデスキーが発達し,1950年頃には本格的なスキー場開発が開始された。この当時は温泉地におけるスキー場開発が主体であったが,その後,農村や非居住空間へとスキー場開発が拡大した。 1980年代初頭から1990年代初頭にかけては,リゾート開発ブームとも連動し,スキー場開発は急激に大規模化した。輸送能力の高い索道が設置され,洋風レストラン・ホテルも整備された。ゲレンデでは,地形改変,人工降雪機や雪上車の導入によって快適な滑走コースがつくられた。また少積雪地域への開発もなされた。多分野からなる大都市からの資本が,こうした大量の開発に対して資本投下を行った。当時のスキー人口の急激な増加も,開発を進行させる基盤となった。 しかし,1993年頃以降,スキー人口は急激な減少を示すようになった。同時に,新規のスキー場開発は著しく減少し,また既存スキー場においても,施設の更新などがほとんど行われなくなった。さらに,スキー場の経営会社の倒産,それに伴う経営変更,スキー場自体の休業や廃業が目立ってきている。本研究では,現在の日本のスキー場に関するこうした諸問題について明らかにするとともに,空間的な側面から考察を加えたい。 分析に用いた資料は,国土交通省(旧運輸省)が監修する『鉄道要覧』(年刊)と,朝日新聞,日本経済新聞などの新聞記事である。さらに,業界誌なども参考にした。 2.スキー場開発の停滞 2003年までに,日本では約680か所のスキー場が開発されてきた。しかし,1994年以降に新規開発されたスキー場数は50以下である。これは,1980年から1993年に,230か所あまりのスキー場が誕生した事実と対照的である。また,既存のスキー場においても,1994年以降,新規にスキーリフトを設置し,拡大がなされた例はほとんどない。このように,近年の日本では,スキー場開発の停滞が顕著にみられるのである。この傾向は,主としてスキー人口の減少に基づいていると考えられる。『レジャー白書』によると,日本のスキー人口は,1993年に約1,800万人とピークを迎えたものの,現在ではその半数程度に減少している。スキーリフトの輸送人員の推移をみても,減少が著しい。その結果,スキー場経営に大きな問題が生じてきた。 3.スキー場経営の主体変更 スキー場経営の主体は索道事業であるが,スキー客数が減少した結果,日本のほとんどのスキー場では経営悪化に陥っている。バブル期の多額投資もこれに大きく影響している。こうした傾向下,1997年頃以降は,第3セクター形態の経営会社から大都市資本が撤退する例が目立っている。さらに,索道事業者の倒産もみられるようになってきた。北海道のトマム,福島県のアルツ磐梯,群馬県の川場などはその典型例である。これらの結果,索道事業者の変更が頻繁になされている。その形態はさまざまであるが,代表的なものとしては,第1に,一部の企業が問題あるスキーリゾートを複数買収し,経営する例が増えている。これには,「東急」グループ,北海道に拠点をおく「加森観光」,軽井沢に拠点のある「星野リゾート」などが該当する。第2に,外資系の投資会社によるスキー場買収が増えつつある。第3に,スキー場の再生を専門に行うコンサルタントが経営に参入するようになった。第4に,スキー場の存続を要望する市町村や住民団体による運営も存在する。こうしたスキー場経営の主体変更は,日本の全スキー場の半数程度でみられる現象である。 4.スキー場の閉鎖 スキー場の経営悪化は,その休業や閉鎖にまで至る場合もあり,2007年では,その数は100か所を超えている。とくに,小規模スキー場の廃業が目立っている。たとえば,北海道では市町村がスキー場開発をする場合が多かったが,現在までに20か所近くが廃業されている。いずれの場合も,スキー場経営による赤字が,緊迫する市町村財政を圧迫した結果である。また,西武鉄道系の開発会社「コクド」は,これまでの経営方針の変更を余儀なくされ,2007/08シーズンには同社のグループが経営する複数のスキー場の廃業がすでに決まっている。 本報告では,現在のスキー場に関するこうした諸問題を整理するとともに,それらの地域的傾向に注目し,さらには今後の展望も含めて紹介する。
著者
木田 章義 ZHONG JinWen
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

西部裕固語(以下彼等の自称「ヨグル語」を使用する)は、トルコ系民族がイスラム化する前に、甘粛省に東遷したので、他のトルコ系民族の受けたイスラム教やアラブ文化の影響がない。そのためもあって、その言語は古代トルコ語の特徴をよく残している。今回の共同研究によって、それが確かめられると同時に、古代日本語の文法現象について、新たな視点が得られた。例えば、ヨグル語では受身形は、時には可能、自発の意味を持つが、それは古代日本語の受身助動詞「る」「らる」と同じである。特に興味深いのは、ヨグル語では受身が可能の意味をもつ過程が跡づけられる点である。日本語の受身形は「自発」を基本として発達したという見解については改めて考える必要がある。ヨグル語の研究は、ほとんど進んでいない。今回、招聘できた鐘進文氏が唯一の研究者と言っても良いが、この共同研究によって鐘氏の文法分析が、中国語や、これまでの漢族の分析の影響を受けて、かなり矛盾のあるものとなっており、丁寧に日本語と対比することによって、分析すべき多くの言語現象があること、文法体系がかなりゆがんで捉えられていることが分かった。日本語と、細部まで比較するためには、あらためてヨグル語の文法書を作成しながら、共同研究を続けなければならない。また、文法書の作成以前に、ヨグル語の単語の正書法を決めなければならない。ヨグル語の表記はローマ字を使うことになるが、その正書法が決まっていないために、同じ単語が全く違った表記になったり、二つの語が融合した形式になっているものも少なくない。資料を残してゆくためにも、正確な文法分析のためにも、正書法を決めることは喫急の作業である。現在、ヨグル語の話手は3千人ほどしか居ず、年々、漢語の影響が強くなり、若者にはヨグル語を解さない者が多くなってきている。放っておけば、この一世代で滅亡してしまうことになるだろう。この共同研究は、ヨグル語が滅亡する寸前に、その言語を記録し、分析する貴重な機会となった。
著者
最上 忠雄 山崎 浩道 松山 成男 石井 慶造
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

加速器と言われる装置で発生される粒子線は、放射線と呼ばれるもので、この放射線を知ることは原子などミクロな世界の現象を知ることであり、しかも社会で非常に役に立っていることはあまり知られていません。ミクロな世界の現象の理解を通した大学院生や大学生による子供たちのための理科教育の中でも放射線を題材とした、寸劇「放射線裁判:怪盗Xの巻」を通じて、皆様が最先端の科学技術に興味をもつきっかけとなってくれることを期待している。対象は、宮城県内の小学生・中学生とし、学校訪問による出張公演を行う。一般に、文科系向きの人も理科系向きの人も共に興味を抱くことができる科学技術は少ない。PIXE(ピクシー)法は、加速器と言われる装置を用いて粒子線を発生させ加速して、それを試料に当て、微量の元素を分析する方法で、考古学試料、食品・飲料水、血液、河川水など何でも高感度で分析できる方法であり、しかも、非破壊なので指輪・ネックレスなど貴重な試料の分析も行えるので、文科系向きの人も理科系向きの人も共に興味を抱くことができる科学技術です。この対象は、オープンキャンパスの期間中、東北大学ダイナミトロン加速器(公開実験)を用いて、高校生・一般とするが特に、「中学生コーナー」を設定した。1.出前授業(演劇)平成16年度 「放射線裁判:怪盗Xの巻」実施校 中学校 4校(10クラス) 実施回数 7回 総参加者数 274名平成17年度 「放射線裁判:怪盗Xの巻」実施校 中学校 2校(4クラス) 実施回数 4回 総参加者数 147名2.オープンキャンパス(公開実験)「中学生コーナー」平成17年 7月28日(木) 志津川町立志津川中学校 3年1名 2年6名男子5名 女子2名 合計7名村田町立村田第二中学校 3年4名 2年2名男子4名 女子2名 合計6名
著者
馬場 純子
出版者
田園調布学園大学
雑誌
人間福祉研究 = The human welfare review (ISSN:13477773)
巻号頁・発行日
no.3, pp.59-78, 2000-12-30

近年,わが国においては「ケア」と「介護」を同義語とすることをはじめ,「ケア」という言葉が氾濫しているといっても過言ではない状況にある。公的介護保険制度の開始,社会福祉基礎構造改革や社会福祉法の制定など,わが国の社会福祉をめぐる状況が大きく変化している現在,本研究はそれを自明のこととするのではなく改めて「ケア」の概念,意味するところを問い直そうと問題提起するものである。その第一歩として,人が「ケア」或いは「ケアする行為」をするのはなぜか,その動機や理由,人を「ケア」「ケアする行為」に導くもの,その基盤について,特にインフォーマル・ケアを中心に主に社会学的側面からの検討を行った。その結果,個人には人との関係を通してのみ満たされることのできるwell-beingに必要なものがあり,異なる関係においては異なる機能がもたらされるということが判明した。そして同じケアでもその担い手との関係によりもたらされるものが異なるという知見は,今後の地域福祉型社会福祉における社会的分業に貴重な示唆を与えるものであるが,人を「ケア」或いは「ケアする行為に」導くものの説明に十分な説得力あるものとはならなかった。今後は併せて哲学的,倫理的な側面からの検討を行う。