著者
高橋 隆雄
出版者
熊本大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1996

平成8年度・9年度でのアンケート調査をさらに完全にするために、10年度は、熊本市とその近郊の中学校7校(1.547名)を対象にアンケート調査を実施した。また、高校生自身が持つ自己理解の虚偽性を裏づけるために別の調査も実施した。これらによって今までの解析結果がかなりの程度確証された。アンケート調査としては、さらに生命倫理に的をしぼった内容でも行なってみた。ここでも興味深い解析結果が得られた。平成10年度のアンケート調査実施対象は、2660名。3年間の研究期間では統計6.844名となり、膨大なデータと解析結果を得ることができた。これらのアンケートの特徴は、設問数が33〜41問とないこと、内容が意議の広い領域に亘ること、数量化しやすい方式も採用していること等であり、相関係数がとりやすく解析が容易なように工夫しておいた。このため種々の統計処理が可能となり、多くの成果を上げることができた。それらの成果の一部は大学の紀要に論文として掲載したり、学会において研究発表という形で公表したが、成果が相当の量にのぼるため、約100頁(A4版)の報告書を準備中であり、3月中旬に印刷される予定である。ともかく、この3年間の研究によって、倫理学の新しい方法としてアンケート調査をとらえる試みの第一段階は十分成功したと言える。
著者
田口 宏昭 寺岡 伸悟
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

相互に関連する以下の三つの研究成果が得られた。(1)日本の近世において、畿内に広く分布していた両墓制についての先行研究及び実地踏査から、埋墓と詣墓という二種類の墓を持つこの制度が、遺骨と霊魂が日本の伝統のなかで必ずしも一体の「存在」として扱われてこなかった事実に注目し、現代の自然葬に顕著な遺骨崇拝に対する否定的態度という要素がこの伝統のなかに含まれていたことを明らかにした。(2)そして他方、同様に近世において、火葬、焼骨の投棄(散骨)、無墓地、無墓参供養の4特性を有する無墓制と呼ばれる葬送形式があったことに注目し、現代の自然葬がこの墓制と形式的な類似性を持ち、無墓制が現代の自然葬の原型であることを明らかにした。(3)散骨の実施現場での参与観察を通して、散骨が無宗教の「宗教的」儀礼として行われていること、すなわち、散骨を支持する人びとが特定の宗教を信じる場合も信じない場合でも、一時的に散骨の場として特定された空間並びに時間が聖化され、散骨の儀礼そのものが自ずと「聖なるもの」として現象してくることを見出した。このような散骨儀礼は、死者の人格自体の聖化を意味するものであり、「墓は心のなかに」という散骨推進団体が掲げるスローガンと響きあうものである。(4)本研究は当初、散骨の行為について「自然葬をすすめる会」の会員たちが語る際に「自然に帰る」という言説を多用しながら他界表象を描いているという事実に基づき、自然葬が自然界の諸物に宿る精霊への信仰として理解されるアニミズムへ回帰する現象である、という仮説を立てて出発した。この仮説を確かめるために「自然葬をすすめる会」の会員315名を対象にして実施したアンケート調査の結果から明らかとなったのは、散骨という行為を通して、死者の霊魂がそれら諸物に入りこみ精霊として存在し続けるという観念は限定的で、むしろ人びとは死後の霊魂を信じないか、あるいは霊魂の存続に対して確信を持たない傾向を示すことが明らかとなり、仮説は否定された。
著者
梅津 顕一郎
出版者
呉大学社会情報学部
雑誌
社会情報学研究 (ISSN:13418459)
巻号頁・発行日
no.2, pp.165-175, 1996-11

This paper is a study on the sports culture within the field of youth culture. The aim of the paper is to form a paradigm of sports culture studies as a critical theory of consumption culture,through summing up the so-called "J League Boom" and showing a hypothesis on its future. Past studies on sports culture from the "communication theory" viewpoint,have covered the process of generation,exchange and reproduction of the meaning through the interaction between players and audience. But in this paper,the paradigm of discussion is further expanded to include social communication,and consumption culture with paticular emphasis on the phenomenon of fashlion. The discussion proceeds as follows : (1) This paper sums up the "J League Boom" and shows its features as consumption culture and youth culture. (2) It explains a hypothesis that the recent cooling down of the "J League Boom" means a detachment phenomenon of the masses frorn a closed soccer maniacs' world. (3) It shows that "otaku-ka"-the sophisticated transformation from fanatics' communication style,has been advanced in the consumption culture of the1980's. (4) It studies cultural and social functions of watching sports (games).
著者
中嶋 俊 吉川 茂
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告 音楽情報科学(MUS) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.4, pp.1-6, 2011-02-04

擦弦振動は定常状態において弦上を 1 つの角が回転するという特徴を持つ弦振動 (ヘルムホルツ運動) である.このことはヘルムホルツによって明らかにされた.本研究では擦弦振動の立ち上がりの部分,すなわち過渡状態からの数値シミュレーションを行い,擦弦点だけではなく弦全体の振動の様子についても解析を行った.その結果,ヘルムホルツ運動が形成されるためには弓の加速度が必要であり,擦弦振動が安定した振動となるためにはナットでの減衰が重要であることが分かった.また,定常状態の振動の様子はヘルムホルツが提唱したような単純な三角形ではなく擦弦点にも弦の曲がり角が存在するのではないかということが予想される結果が得られた.A sharp corner travels back and forth on the bowed string in the steady state. This motion (called the Helmholtz motion) was first discovered by Helmholtz. We were carried out numerical simulations of the bowed string vibration in the starting transients. The wave motion was analyzed not only at the bowing position but over the whole string. As the result, it suggested that (1) the acceleration of the bowing is needed to create the Helmholtz motion and (2) loss at the nut is important to stabilize the bowed string motion. Also, the bowed string motion is such a simple triangle as Helmholtz suggested, and a small corner is likely to be formed at the bowing position.
著者
浜野 保樹 原 恵一 山口 康男
出版者
ニュ-メディア
雑誌
New media
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.66-69, 2004-04
著者
林 一彦 渡邉 佳恵 大村 雅 木場 秀夫
出版者
日本身体障害者補助犬学会
雑誌
日本補助犬科学研究 (ISSN:18818978)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.40-43, 2010 (Released:2011-03-01)
参考文献数
4

一般に、歯が折れたり欠けたりすることは破折と呼ばれている。犬においては、歯の破折は比較的しばしば認められる歯牙の実質欠損である。今回、著者らは2例の介助犬の歯の破折を治療する機会を得たので、その病態と治療方法について供覧する。また、その発生機序についても若干の考察を加えた。症例は2例とも上顎第4前臼歯が斜めに破折(斜折)しており、歯髄は露出していた。治療としては生活歯髄切断術と歯髄覆罩を行なったのちに光重合型コンポジットレジンで充填した。上顎第4前臼歯の斜折は硬いものをかんだ時に生ずる典型的な破折であるため、ストレス解消のために与えた硬いチュウトイが原因と推察された。したがって、今後は硬いチュウトイの代替となるストレス解消法を模索する必要があるのではないかと思われた。

1 0 0 0 OA 怪人奇談

著者
押川春浪 訳述
出版者
大学館
巻号頁・発行日
1902
著者
郡司 明彦 田村 幸彦 平尾 功治 町田 光 秋田 季子 小林 奈緒美 藤井 彰
出版者
日本歯科薬物療法学会
雑誌
歯科薬物療法 (ISSN:02881012)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1-8, 2010-04-01 (Released:2010-08-20)
参考文献数
39

Many epidemiological studies have shown that the prevention of dental caries by fluoride is a basic and indispensable method to maintain and improve dental health. However, the countermeasures for maintenance of dental health and implementation of preventive programs for caries are still not satisfactory in Japan. In developed countries, it is thought that the prevalence of water fluoridation and use of fluoride-containing dentifrices are the primary factors responsible for the remarkable decrease in the prevalence of dental caries in children. Topical application of fluorides, especially fluoride mouth rinsing, has an extremely important role in Japan as compared with various other countries, because systemic application of fluorides, such as water fluoridation and use of fluoride tablets are not yet available in Japan. However, fluoride mouth rinsing has not become prevalent on a nationwide scale. Therefore, it is hoped that fluoride mouth rinsing will be enforced in more kindergartens, elementary schools, and junior high schools to contribute to the improvement of dental health in the future.
著者
鈴木 哲夫
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.47, pp.59-66, 1991-10-25

管路を流れる流体の形状損失ヘッドを生じさせる原因が,流体あるいは管壁への流れの衝突に基づくものとして,乱流の流れにおける合流管の損失係数を示す理論的表示式,および文献にある研究者の実験結果に基づいて理論的な表示式の実験係数を定めた.それらにより,任意の合流角度と任意の面積比の場合について非対称Y形の合流する流れの損失係数を計算することができる.また,計算値は実用上十分な精度で良く一致している.
著者
森沢 正昭 大竹 英樹 稲葉 一男 雨宮 昭南
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1991

◇精子運動能獲得機構に関しては、HCO_3^-,cAMP,pHは鞭毛運動装置に作用することが明らかにされた。また、太平洋を回遊中にシロサケの回遊過程における精子の成熟度、運動能獲得度の変化についての研究調査が行われた。◇精子運動開始についてはサケ科魚類精子運動開始タンパク質(MIPP)を見い出し、その抗血清およびモノクロナール抗体を作成し抗体が鞭毛運動装置の運動を阻害し、また、蛍光抗体法を用いてMIPPが鞭毛基部で存在することを明らにした。即ち、精子鞭毛運動調節部位が鞭毛全体でなく特定の部位にあることを初めて明らかにした。◇海産魚および淡水魚では、外部浸透圧増減の繰り返しが精子鞭毛運動の開始・停止の繰り返しを引き起こすという貴重な発見がなされた。また、浸透圧の増減は精子内のK^+濃度及びpHの増減を引き起こし、この細胞内変化が鞭毛運動装置に直接作用し精子運動を調節していることが示唆された。更に、多機能型プロテアーゼ(プロテアソーム)が精子運動性を調節していることを初めて示すことが出来、その作用機序および鞭毛における分布について蛍光抗体法,生理生化学的手法を用いて明らかにした。◇精子活性化機構については、ニシン卵由来のニシン精子活性化物質(HSAPs)の完全精製に成功し、cDNAクローニングをほぼ完了した。現在HSAPsの受容体および細胞情報伝達機構についての解明を始めている。◇精子走化性に関しては、ユウレイボヤで卵より精子活性化及び誘引能を持つ精子活性化走化性物質(SAAP)を見い出し、その精製をほぼ完了した。精製物質は常に精子活性化能と走化性能を持つことが、また、精子活性化にはCa^<2+>とcAMPが、精子走化性にはCa^<2+>のみが必要であることが明らかとなった。即ち、1つの分子が両方の作用を兼ね備えているが、2つの機能は全く異なった機構のもとに制御されているという初めての証拠が得られたことになる。
著者
山本 福壽 崎尾 均 長澤 良太
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ハリケーンの高潮により、湿地林では在来樹種のヌマスギやヌマミズキ林が被害を受け、外来のナンキンハゼとセンダンが繁茂していた。時空間的解析、現地調査、および生理的実験からナンキンハゼの耐水性、耐塩性は在来樹種に拮抗することを確認した。この結果ミシシッピ氾濫原では、大規模攪乱によりナンキンハゼは急速に分布域を拡大する可能性が示唆された。センダンは耐水・耐塩性は小さいが、局所的に純林を形成していた。