- 著者
-
西岡 孝
- 出版者
- 高知大学
- 雑誌
- 新学術領域研究(研究領域提案型)
- 巻号頁・発行日
- 2011-04-01
本年度は,CeRu2Al10の相転移の異常性を明らかにするため,正常な反強磁性転移を引き起こすRFe2Al10(R=Ce以外の希土類元素)の磁性を調べて比較した。それを実行するために,7T横磁場無冷媒マグネットを用いた全自動角度回転磁化・ホール効果システムの開発を行い,RFe2Al10の単結晶を9種類フラックス法で作成し,それらの電気抵抗,磁化の測定を行った。RFe2Al10はCeRu2Al10と同じYbFe2Al10型結晶構造を持っている。CeRu2Al10の相転移の主要な特徴を列挙すると次のようになる。(1) 高い相転移温度 (2) 半導体的挙動 (3) 巨大な結晶場分裂 (4) 転移温度以下でギャップの解放 (5) 転移温度以下で電気抵抗のとび (6) 磁性は2次元的 (7) 磁気秩序の伝搬ベクトルはb軸 (8) 磁性は一軸異方性を示すがa,c両軸でメタ磁性。RFe2Al10の電気抵抗はすべて転移温度以下でとびを示した。また,それらの磁化測定はすべてac面内の2次元性を示した。特に,DyFe2Al10のac面内の磁化の角度依存性は,らせん磁性を反映して,結晶構造の4回対称性とは異なる2回対称性が現れていることが明らかになった。これらの測定結果はCeRu2Al10の上で述べた(4)~(8)の特徴はCe以外の希土類にも現れていることがわかった。一方でCeRu2Al10および関連物質のCeOs2Al10のNQR測定により(1)~(3) の特徴は大きな伝導電子とf電子の交換相互作用Jcfに起因するものであることがわかった。したがって,CeRu2Al10の相転移は全く新しいものではなくて,結晶構造に密接に関係した相転移が大きな伝導電子とf電子の交換相互作用Jcfによってエンハンスされたものと理解することができることが明らかになった。