著者
岩岡 中正
出版者
熊本大学
雑誌
熊本法学 (ISSN:04528204)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.41-66, 1984-12-30

小論は、サウジー政治思想研究のための予備的考察として、以下の三点についてサウジーの考えを簡単にスケッチするものである。「サウジーの歴史観」「サウジーと産業革命」「サウジーの国家像」という三つの点である。
著者
園井 千音 園井 英秀
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

イギリス文学においては、歴史的に思想、宗教、政治等の社会的変革をその近代化の過程において経験し、いくたびかの国家的危機及び精神的危機にこの間直面する。イギリス文学はこの状況において、時代の文学的記述として、文学本来の芸術的機能を果たすのみならず重要な社会的批評を行い、イギリス文学自体の維持はもとより、国民精神を支えまた国家意識の構築に重要な役割を果たしてきた。本研究はこのような公共的性質が特に17世紀以降のイギリス文学固有の道徳的社会的特質であること、特にその構築的性質の重要性を証明することを主たる目的とした。17世紀においてイギリス文学は、イギリス国民精神の道徳的混迷に対する危機意識を文学的メッセージとして表明した。18世紀におけるロマン派文学においては、フランス革命後の国内外の思想的変化の影響を受け、例えば、ロマンティックヒューマニズムあるいは人間の平等についての社会的認識の高まりはロマン派詩人の意識を先鋭化する。同時に、この傾向はイギリス文学の公共的性質を受け継ぐものであり、その重要な社会的機能を維持する動きであると理解することができる。19世紀後半から20世紀初頭においてイギリスは近代化に伴う国内外の政治的、宗教的、思想的変革を経験する中で、その文学的思潮は、世紀末の終末的思想やデカダンス芸術への逃避、それ以降のモダニズム出現とその思想的揺れなどを経験する。20世紀後半においては例えばフィリップ・ラーキンの主題に見られるように、イギリス文学の伝統的価値である道徳的性質がイギリス国民意識の形成と深い関連を維持することを証明した。これらの分析を通しイギリス文学における道徳的性質が国民及び国家意識の形成においてすぐれて構築的役割を果たすこと、またイギリス文学の公共的性質はその道徳的主題により特徴づけられることを明らかにした。本研はイギリス文学の社会的性質を明らかにしようとする今後の研究の一部として位置づけるものである。
著者
荒川 浩久 黒羽 加寿美 山崎 朝子 川村 和章 小宮山 まりこ 飯塚 喜一
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.175-183, 1995-04-30
被引用文献数
15

わが国におけるフッ化物配合歯磨剤の普及を図るべく,7つの年齢グループにおけるブラッシング習慣とフッ化物配合歯磨剤の使用状況および使用者の意識に関する質問紙調査を実施した。1歳6か月児〜小学生までの4つの子供のグループにおいては,ブラッシング時に常時歯磨剤を使用している者が1.7〜49.2%であり,歯磨剤使用者の中でのフッ化物配合歯磨剤の使用割合は50〜90%であった。成人の3つのグループのそれは34〜47%と低かった。また,歯磨剤使用者が歯磨剤の選択理由として"フッ素入り"を挙げた者は8〜43%と少なく,その傾向は子供より成人のグループにおいてより明瞭であった。フッ化物配合歯磨剤使用者の中で"フッ素入り"を理由に挙げた者も13〜45%と少なかった。フッ化物の配合されていない歯磨剤使用者の中で"フッ素入り"を理由に挙げている者もわずかに存在するという奇妙な現象も見られた。以上の結果より,フッ化物配合歯磨剤の普及を図るには,以下の対策が必要であると結論できる。1.成人を含めたすべての人に対してフッ化物配合歯磨剤の有用性を啓発する。2.歯磨剤会社は,フッ化物配合歯磨剤であることをわかりやすく表示するとともに,成人用の歯磨剤にもフッ化物を配合する。3.日本の歯科保健機関は,フッ化物配合歯磨剤に対して推奨する旨の表示をする。
著者
塩崎 麻里子
出版者
近畿大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

終末期の治療選択に際するがん患者と家族に対する心理的支援プログラムを開発するにあたっての基礎的な知見を得ることを目的に,一般成人を対象とした意向調査とがん患者の家族を対象にしたインタビュー調査を実施した.結果から,従来までの意思決定モデルを終末期の治療選択に応用する上で,以下の3点を考慮する必要があることが示唆された.第一に,患者と家族の未来展望が判断の枠組みに影響すること,第二に,延命治療に対する信念は直感的な意思決定を促すこと,第三に納得できる意思決定の判断基準は患者と家族で異なることである.今後,終末期の意思決定に関するモデルを実証的に検討し,より実態に沿うよう改良していく必要がある.
著者
酒井 一博
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

Anosov-Bowen以来,擬軌道尾行性(shadowing property)の概念は力学系理論の研究において様々な場面で現れ,力学系の研究において常に重要な役割を担ってきた。近年,SP理論の発展には特に目覚しいものがあり,力学系の数値計算的研究の基盤を固めるだけでなく,多くの興味深い定性論的研究結果も生み出されている。本研究の目的は,SPをもつ力学系あるいは部分力学系を微分幾何学的力学系理論の立場から特徴付けることである。
著者
黒川 由美 青木 洋子 薗田 雅子 永野 君子 志垣 瞳
出版者
帝塚山大学
雑誌
帝塚山大学現代生活学部紀要 (ISSN:13497073)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.23-31, 2005-02-01

1) 今回のトレーニングで見積もり誤差率の改善がみられた食品は, 対象となる食品すべてのトレーニングを実施したトレーニング有グループでうずら卵 (p<0.05), 草加煎餅 (p<0.01), ピンキー (p<0.01) の3食品, 一部食品のみトレーニングを行った一部トレーニング有グループではピーマン (p<0.01), 草加煎餅 (p<0.01) の2食品であった。2) 正解域群の解答割合がトレーニング後に増加する傾向を示したものは, 菓子類, さんま, ちくわ, うずら卵, ピーマンなど一定の形状を示す食品に多くみられたが, 形状・大きさが定型化していない食品については把握しにくい傾向がみられ, 今後の検討課題と考えられた。3) CV値50以上を示すばらつきの多い食品数はトレーニングにより減少する傾向にあり, その効果がみられた。4) 鶏卵Mの重量を50gと解答した割合はトレーニング無グループ74.2%, 一部有グループ72%で, 目安重量として学習した値を用いる傾向がみられた。5) 塩分・糖度の見積もりでは今回の情報提供による改善はみられず, 今後, 栄養成分表示などを活用した教育の必要性が示唆された。
著者
住吉 和子
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.食事摂取量を把握するための質問項目と、認識を把握するための質問項目の抽出医学中央雑誌、Medlineを用いて「食事調査」「認識」について検索を行い、食事摂取量を簡単に把握するための質問紙の検討を行った。使い捨てカメラを用いて1週間分の食事をすべて撮影してもらい、終了時に作成した質問用紙に答えてもらい、質問紙の精度を確認した。認識については、文献の自尊感情など既存の尺度と昨年のインタビューの結果から検討し、糖尿病性腎症に特有な項目を加えて質問項目を抽出した。2.糖尿病外来における糖尿病性腎症患者の事例検討O大学附属病院の糖尿病外来に通院している糖尿病性腎症と診断された3名について、昨年のインタビューから得られた結果をもとに、介入を行った。認識について共通していたのは、この先どうなるのかという将来への不安、「不確かさ」であり、このことについては、医療者にも家族にも相談できないで一人で抱えていた。この不確かさが、内服を中止したり、食事を今までどおりの内容で摂取したりという行動に繋がっていることが明らかになった。3名のうち1名は、「不安はあるけどできるだけ生活を楽しみたい」と前向きに考えているため、病院で指導されたとおりでなく、まず食べたいものを少しは食べて、平均的に塩分の摂取量や蛋白質の摂取量を調節するなど工夫をしており、結果として病状は安定していた。糖尿病教室など患者間の交流が自己管理行動を継続するための大きな要素となるが、糖尿病性腎症を合併した人には患者がお互いに交流する機会がないことも自己管理行動の継続を困難にしている要因であると考えられる。また食事療法については、既存の報告と同様に、患者自身が受け入れて生活に取り入れるまで約3年の月日が必要であることが確認できた。3.今後の課題今後の課題として、保存期にある腎不全患者が、健康を維持するために医療者や患者間で気軽に悩みを話すことができる場が必要である。蛋白制限に変更になった患者に医療者の関わり方についても検討する必要が示唆された。
著者
蔀 花雄 尾形 ひろ美
出版者
聖徳大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02892677)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.265-280, 1983-12-10
著者
野瀬 宰 三木 和典 木村 三郎 小川 實
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

昭和55年濾紙血によるクレチン症のマススクリーニングが全国的に行なわれるようになって多数の新生児クレチン症が発見されている一方今までわからなかった新生児一過性甲状腺機能低下症や、乳児一過性高TST血症、先天性高TSH血症、などの周辺疾患も多数発見されるようになった。しかしこれらの疾患の原因や病態は、一部をのぞいて、現在の所まったくわかっていない。そこで我々は、まず一過性乳児高TSHB症患者16例についての長期臨床予後を追跡すると共に、その下垂体ー甲状腺軸のネガティブフィードバック機構について調べた。その結果この病態は、この機構の、下垂体、又は甲状腺における感受性の未熟性がその本態をなしているのではないかと考え新生児期、乳児期、学童期にわたって、TRH負荷テストを行い、TSHの反応性を調べた。その結果、幼若な時期ほどTSHは過剰遅延反応を示し加齢と共に正常化していく事がわかった。一方日本人はヨード摂取が多いと云われており、これが新生児一過性甲状腺機能低下症や、乳児一過性高TSH血症の病態発生に関係があると思われ新生児の、尿中ヨード排泄を調べた。その結果人工栄養児では平均8.6μmol/lのヨード排泄がみられたが、母乳栄養児では平均16.4±11.5μmol/lと、人工栄養児より高い値をました。次いでマススクリーニングで発見された新生児クレチン症の尿中ヨード排泄は正常児と差がなかった。今後一過性高TSH血症児の尿中ヨード排泄を測定してその発症との関連を調べていく予定である。
著者
境 正 山口 徹 河原 聡
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.453-455, 2009-05-15

水産練り製品製造中の脂質酸化の変動を明らかにするため,ちくわ及びかまぼこ中の 4-ヒドロキシヘキセナール(HHE)とマロンアルデヒド(MA)含量を測定した。スケソウダラより作成した冷凍すり身から,ちくわは焼きにより,かまぼこは蒸しにより作成した後,0℃ にて 2 日間貯蔵した。加工前後及び貯蔵期間中,ちくわ及びかまぼこの HHE 含量は有意ではないが増加した。加工後ちくわの MA 含量は有意に増加し,かまぼこの MA 含量は有意に減少した。貯蔵 2 日目にちくわの MA 含量は有意に減少し,かまぼこのそれは有意に増加した。<br>
著者
猪上 淳 A. CURRY
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2006

急速に変化する北極圏を機動的かつ安価に観測するためのシステムとして自律型無人小型飛行機(UAV)を導入した。観測・データ解析の結果、(1)衛星観測による夏季海氷密接度は海氷の表面融解の影響を受けて7%過小評価していること、(2)陸面の植生分布等の差異によって表面温度の変動が3度〜7度も幅がありその影響が大気境界層内にも及ぶこと、(3)海面水温の空間分布の変化に伴い大気境界層が変質することなど、大気・海氷・海洋・陸域の各分野においてUAVが有効な観測システムであることが示された。
著者
相浦 英春
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.73-79, 2005-02-01
被引用文献数
2

斜面積雪の安定に必要な林分の条件を, 斜面雪圧によって立木に根返りが発生しないとともに, 林内の積雪が安定していることとし, 各種の森林における積雪の移動量や, 立木に加わる斜面雪圧などの測定を行い, そのような条件を満たす立木密度についてスギとブナを対象に検討した。その結果, 斜面雪圧によって立木の根返りが起こらない限界の立木密度は, 最大積雪深と立木の根元直径によって樹種ごとに決定された。また, 林内の積雪を安定させるためには, 立木がほぼ均等に分布していることを前提として, 立木密度400本/ha以上が必要であった。したがって, 斜面積雪の安定に必要な立木密度は, これらの条件をともに満たす値として求めることができた。
著者
川島 隆太
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

疲労やストレスによるパフォーマンスの低下が、脳のどの領域の働きの変化と関連するのかを、非侵襲的脳機能イメージング手法を用いた基礎研究によって明らかにし、さらに、認知心理学的研究を追加することによって、健常成人の疲労やストレスによる認知機能の変化を定量的に評価可能なシステムを開発することが本研究の目指す最終的な目的である。平成20年度は、機能的NIRsを用いて、健康な右利き大学生6名を対象として、連続単純計算による精神疲労負荷時の前頭前野活動を計測したが、疲労に伴う変化を計測できなかった。このため、精神疲労モデルを再構築することが必要であると判断し、心理学研究を展開した。健康な右利き大学生30名を対象として、内田クレペリンテスト(連続単純計算)による精神疲労の状態を、認知心理学的手法によって経時的に観察した。その際に、バランス栄養流動食を摂った場合と、水のみ摂取した場合の2条件を設定した。水のみ摂取した場合には、VAS法による精神疲労の内観が時間と共に増加し、単純計算の作業量も減少する傾向にあったが、流動食を摂った場合には、開始後1時間半までは、精神疲労の内観も単純計算の作業量も減少しないこと、1時間半以降は、水のみ摂取群と同様に精神疲労度の内観も、作業量も低下することがわかった。先行研究では、ブドウ糖のみ摂取した場合には、水のみ摂取と同じ疲労傾向を示すこともわかっており、朝食の摂取パターンによって、精神疲労とそれに伴うパフォーマンスの低下の程度に差が出ることがわかった。
著者
藤澤 由和 斉藤 和巳 大久保 誠也 小籔 明生 武藤 伸明 石田 祐
出版者
静岡県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究においては、ソーシャル・キャピタルの構造的側面を把握する新たな手法を検討すると同時に、その手法により構築されたデータの解析を実施し、さらにその結果を踏まえ、当該研究課題の今後の展開に関する検討を行った。具体的にはRespondent-Driven Samplingと呼ばれる手法を、当該集団におけるネットワーク把握に応用し、ソーシャル・キャピタルの構造的側面の把握を試みた。またデータ構築に際しては、いわゆるディバイスを用いてより効率的かつ効果的な対象把握とデータ構築に関する検討を試みた。
著者
西岡 五夫 松尾 律子 大倉 洋甫 百瀬 勉
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
薬学雑誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.88, no.10, pp.1281-1285, 1968-10

A new colorimetric method for microdetermination of isothiocyanates was established, using 3,6-dinitrophthalic acid as a color developing agent in a potassium carbonatesodium thiosulfate solution. The reaction conditions were examined with allyl isothiocyanate as a model compound. The outline of the procedure is as follows : To 2.0 ml of allyl isothiocyanate solution (10-150 μg/ml), (dissolved in 50% ethylene glycol solution, 1.0 ml of 3,6-dinitrophthalic acid monopyridinium salt solution (0.1%), and 1.0 ml of alkaline solution (40% potassium carbonate and 30% sodium thiosulfate) are added and mixed well. The mixture is heated in a boiling water bath for exactly 10 minutes, cooled in running water, and diluted to 20.0 ml with water. The absorbance of the developed color is read at 400 mμ against the reagent blank. In this color reaction, 3,6-dinitrophthalic acid was assumed to be reduced to 3-amino-6-nitrophthalic acid by S^<2->, which was liberated from allyl isothiocyanate in the alkaline medium.
著者
小杉 健二
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
防災科学技術研究所年報 (ISSN:09186441)
巻号頁・発行日
vol.12, 2001-10-30

雪氷防災実験棟内に駅ホームの屋根模型を設置し、降雪装置を用いて雪庇の発生条件及び成長の形態について調べた。雪庇の形成は、雪質に依存することがわかった。すなわち、樹枝状雪を用いた実験では雪庇が形成されたが、球状の雪では雪庇はほとんど形成されなかった。
著者
中村 徹 郷 孝子 鳥 云娜 林 一六
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.342-350, 2000-01-31
被引用文献数
16

内蒙古バイインシル草原において24の立地で枠法による群落調査を行い,103種の植物を記録した。そのうち30種は50%以上の調査地点に出現した。それらの種類は,放牧の強さによって群落内での重要度を変化させた。この30種と文献による14種を加え43種を用いて,放牧圧に対する各種の反応を検討した。弱い放牧圧の立地で高い重要度を示す種はAneurolepidium chinense, Stipagrandis, Achnathelum sibiricumであった。これらの種類をタイプIとした。逆に,放牧圧の強い立地で高い重要度を占める種類はCarex Korshinskyi, Cleistogenes squarrosa, Artemisia frigidaなどであった。これらの種類をタイプIIとした。Kochia prostrateやPotentilla bifurcaなど,放牧圧の強さにかかわりなくある程度の量を維持していた種類をタイプIIIとした。それらの群落構成種をもって立地の状態を判定する指数を工夫した。そのために,これらタイプI,II,IIIにそれぞれ4,0.25,1という評点を与え,この評点と各群落構成種の重要度指数の積の合計をもって立地の状態指数(Stand Quality Index:SQI)とした。すなわちSOI=Σ(rl・s)rl:それぞれの種の相対重要度,s:50%以上の出現頻度を持つ種を含む44種のそれぞれの種の評点。この立地状態指数は,1979年から16年間放牧を中止した草原では975,現在放牧を続けている草原で300前後となった。へクタールあたり8頭を越える放牧を行うと,この指数は100以下となった。草原の構成種の生育型組成は,放牧圧が強くなると匍匐型(p型)が増し,放牧圧の弱い立地では分枝型(b型)が増えた。群落の種多様性は,放牧圧が弱い立地では高くなる傾向を示したが,立地の状態指数とは直接関係がみられなかった。
著者
須田 力 河口 明人 森田 勲
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

豪雪地住民は、冬季に雪道歩行や除雪のようなきつい作業があるにもかかわらず冬季間不活動になり勝ちとなる。本研究は、(1)身体活動の運動強度の測定、(2)中・高年の人たちの生活機能を高める在宅トレーニングの介入研究、(3)筋力トレーニングと有酸素運動のための簡易で安価な在宅トレーニング用具の開発、を行った。主な知見は以下の通りである。1.雪上路面の歩行や除雪のような冬季の身体活動の酸素需要量は、無雪期よりも多くなる。2.運動介入は、栗沢町、三笠市、士別市の中・高年者110名に対して、積雪期入りの第一回の測定時における運動ガイダンス、参加者へのダイレクト・メールによる運動の奨励、カレンダーによる運動と健康づくりの情報提供によるものであった。冬季明けの第2回目の測定に参加した男性25名において、握力、上体起こし、開眼片足立ち、10m障害物歩行、6分間歩行およびADL得点に、女性20名において6分間歩行に有意な向上を示した。しかしながら、安静時血圧は収縮期、拡張期とも冬季間で上昇する傾向が見られた。3.ステップエクササイズ用にステップ数がカウントされる装置を、スイッチング・センサーと安価な電卓を利用して試作した。ゴムチューブ、座椅子、ディジタル体重計を使用して簡易な脚筋力用具を試作した。これらの用具は、運動実施者が歩行距離、ステップ昇降高さ、発揮した筋力をモニターできるため、冬季の在宅トレーニングに有用と考える。