著者
中里 直
出版者
板橋区立中台中学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

植物は光合成で光エネルギーを利用して二酸化炭素を吸収し、蒸散で大気中の熱エネルギーを吸収する。この優れた働きに注目し、ポトス(Epipremnum aureum)を用いて閉鎖空間内で植物有無によるバイオエアコン機能を調べた。厚さ25mmの断熱材で覆ったガラス容器(425×272×285mm)を恒温器(600×477×1000mm)に2つ入れ、両方に土壌が入ったプランターを入れ、片方でポトスを栽培した。白色発光ダイオードで12時間(6~18時)照射し、熱電対で10分毎2日間の温度と湿度を計測した。恒温器内温度を10,16,23,30,35℃に保ち、2日間2つの容器の温度差を比べてポトス有無による冷房効果を調べた。23℃の温度差が約1℃で最も大きく安定した結果であり、23℃より高温や低温になるほど冷房効果が低かった。10,35℃は不安定な結果であり、特に高温になるほど冷房効果が低かった。冷房効果における光合成の影響を調べるため、恒温器内温度を23℃に保ち、白色発光ダイオードで12時間(6~18時)照射、24時間照射、照射なしの3つの条件の実験を2日間行い、容器内のポトス有無による二酸化炭素濃度の変化を調べた。3つの条件で違いが現れたが、加えて酸素濃度を測定することでより正確な結果が得られるので今後実施したい。野外における植物のバイオエアコン機能を調べるため、2つの大型プランター(イネ有無)の上部(地上1.3m)温湿度を計測した。7,8,9月の温度の結果を比較すると、8月の昼間にイネの冷房効果が高く、8月の夜間に最も低いことがわかった。今後水温、地温、光強度を同時に測定して詳しく解析したい。これらの研究を応用して、植物のはたらきと環境問題というテーマで、光合成と蒸散と熱エネルギーの関係を理解できる中学校3年理科授業を実践した。また、ポトスの葉の表裏・葉柄・茎の表皮、葉の断面を顕微鏡で観察し、気孔を撮影できたので教材化する試みを推進したい。
著者
伊香賀 俊治 堀 進悟 鈴木 昌
出版者
慶應義塾大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

被験者実験を行い、入浴時の高齢者に対応した体温予測モデルを開発した。そして本モデルが高齢者の入浴時の体温が精度良く再現されていることを検証した。またインターネットアンケート調査と入浴事故に関する症例データを基に、体温と熱中症リスクの関係の定量化を行った。さらに住宅仕様の改善による熱中症リスク低減効果を明確にすることを目的とし、"住宅仕様"、"入浴方法"、"体温上昇"、"熱中症リスク"の各関係を定量的に把握し、高齢者の入浴時の熱中症リスクを評価した。
著者
大鹿 健一 宮地 秀樹 相馬 輝彦 和田 昌昭 遠藤 久顕 河澄 響矢
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

まずKlein群について,Thurstonが1980年代に提示した問題群を中心にして基本的な理論の構成の仕事を行った.その中で,Thurstonの未解決問題のうち2つを完全に解決することができた.そこで得た結果をもとに,Klein群の変形空間の器楽的研究を行った.変形空間の境界の位相構造について新しい知見をえるとともに,指標多様体の中での変形空間の力学系的性質の研究を進め,原始安定性の必要十分条件を得ることに成功した.Klein群の成果をTeichmuller空間の研究に応用し,様々なコンパクト化の共通の地盤としての,簡約化されたコンパクト化の研究を進めた.
著者
児玉 雅治 板野 聡 寺田 紀彦 堀木 貞幸 後藤田 直人
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.31, no.11, pp.2288-2291, 1998-11-01
被引用文献数
5

患者は62歳の男性.60歳のとき両側鼠径部ヘルニアの手術を受けたが, 術後1か月目より右鼠径部から右陰嚢に腫瘤の脱出を認め, 排尿異常も出現した.CTでは右陰嚢内に腫瘤陰影が認められ, 脱出したものは膀胱と腸管が考えられた.術中, 右鼠径部内側に小さなヘルニア嚢を認め, 術前に触れた手挙大の腫瘤はヘルニア内容とは別のものと判断し, 膀胱内留置カテーテルに生食を注入したところ, 腫瘤は膨張したため腫瘤が膀胱であると判断し, 切除することなく還納した.鼠径ヘルニア, もしくは大腿ヘルニアの手術に際して本症の存在を念頭におくことも必要と考えられる.また, 術中にヘルニア嚢以外の腫瘤を認めた場合, 安易に切除せず, 膀胱などの可能性を考慮すべきで, 確認は膀胱内カテーテルへの注入法が容易で有用であると考えられた.
著者
瀋 俊毅
出版者
広島市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、中国におけるエコラベルの影響に関して、一般市民と企業を対象とするアンケート調査を行い、経済的実証分析を行った。まず、一般市民向けのアンケート調査で得られた結果は主に三つある。一つ目は、市民の所得水準・教育水準・年齢・性別などの社会経済的特性が彼らの環境への関心度に重要な役割を果たしていることである。二つ目は、中国のエネルギー効率ラベルが消費者の購買行動に大きく左右することである。三つ目は、消費者の年齢・性別・教育水準・所得水準などの社会経済的特性の相違が彼らの中国環境ラベルへの支払意志額の高低に影響を及ぼすことである。そして、企業向けのアンケート調査で得られた結果により、外国資本の企業、海外市場向けの企業、大規模の企業、市場競争が厳しい企業であるほど、中国環境ラベルまたは国際環境標準規格14001(ISO14001)を認証するインセンティブが高くなることが分かった。
著者
生野 正剛
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

日韓両国の廃棄物政策では、廃棄物発生抑制およびリサイクルの推進による廃棄物減量化、資源節約を目指す方向性、およびその目的達成の手段としての経済的手法の大幅な導入廃棄物管理政策の優先順位で共通している。さらに、拡大生産者責任を、日本では、容器包装・家電リサイクル法等で、韓国では生産者責任再活用制度で導入し、製品の設計・製造段階からの廃棄物発生抑制・減量化・リサイクル推進・省資源を目指している。しかし、韓国と比較して、日本はそれらの政策を推進するための具体的な仕組み.制度において廃棄物発生抑制の仕組みが弱い。すなわち、韓国では、製品となっても、使い捨て用品使用規制および過剰包装規制によって、廃棄物の発生を抑制し、製品購入後にはごみ従量制(有料化)によって廃棄物の減量化を図るという具合に、製品のライフサイクルにおいて廃棄物の発生抑制、減量化に向けた諸制度が有機的に結びつけられている。一方日本では、生産者に対する、設計・製造段階からの廃棄物発生抑制へのインセンティブが弱く、大量リサイクル推進策に終っている。また、各個別リサイクル法を除けば、他の廃棄物発生抑制・減量化・省資源は事業者の自主的取組みとされており、ごみ有料化・レジ袋有料化の実施も地方自治体や事業者の判断に委ねられている。この相違によって、韓国では、一般廃棄物の減量化に一定程度成功しているが、日本ではリサイクルは進んだとしても、排出量は依然として高止まり状態である。したがって、日本においても、使い捨て用品の使用規制、過剰包装規制、容器包装リサイクル法の中での使い捨て容器包装のリデュースとリユースへの転換を図るシステムの導入など、廃棄物の発生抑制のためのより明確な手段を導入する必要がある。
著者
田山 智規 鈴木 啓一 美川 智 粟田 崇 上西 博英 林 武司 前田 高輝 加地 拓己 上本 吉伸 鹿野 裕志 柴田 知也 児嶋 千尋 西田 朗
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.187-194, 2006-12-26 (Released:2007-08-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

抗病性に関与する遺伝子を特定するために,ランドレース種について,免疫形質と慢性疾病病変に関する品種内QTL解析を行った。用いた集団は,慢性疾病病変を選抜形質としたランドレース種系統造成の選抜第2世代までの育成豚と調査豚519頭(基礎世代44頭,第一世代205頭,第二世代310頭)である。7週齢時と体重105kg時で採血し,補体別経路活性,貪食能,顆粒球・リンパ球比,総白血球数,羊赤血球に対する抗体産生能などの免疫形質を測定した(抗体産生能は105kg時のみ)。また,各世代の調査豚267頭についてブタ萎縮性鼻炎(AR)と肺の病変を測定し,スコア化した。常染色体18本に合計107個のDNAマイクロサテライトマーカーを配置し,それらの多型判定は,353頭(基礎世代の雌の一部25頭と第1世代204頭,第2世代調査豚124頭)について行った。解析にはIdentical-by-decent(IBD)行列を利用した分散成分分析法を用いた。まず,IBD行列をLOKIプログラムにて推定した。分散成分分析法はSOLARプログラムを用いて行った。解析の結果,総白血球数と貪食能,そして肺の病変に関する有意なQTLが検出された。
著者
鐘ヶ江 健
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ホウライシダで発見された新規光受容体PHY3は、植物青色光受容体であるフォトトロピンに赤色光受容体フィトクロムの光受容部位が融合した構造をしている。その構造から、PHY3はフォトトロピンと同様の分子機構で、受容した光シグナルをプロセシングしていることが予想された。本研究の結果、PHY3はフォトトロピンの機能に重要なアミノ酸を置換してもその機能に大きな影響を受けなかった事から、PHY3独自の光シグナルプロセシング機構が存在することが明らかになった。
著者
洞口 治夫 松島 茂 福田 淳児 近能 善範 行本 勢基 松本 敦則 天野 倫文
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究プロジェクトは、日本におけるイノベーション促進政策とクラスター形成政策の実態に焦点をあてた。実証研究の結果、知識マネジメントの方法がイノベーションの起点となっていることが明らかになった。また、政策担当者、産学官連携の実務家とのシンポジウムにおける対話を通じて、日本におけるイノベーション促進政策のあり方をまとめた。
著者
酒井 孝司 坂本 雄三 倉渕 隆 岩本 靜男 永田 明寛 加治屋 亮一 遠藤 智行 今野 雅 大嶋 拓也 赤嶺 嘉彦 小野 浩己
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,複雑な事象を総合的に評価する必要がある住宅の温熱環境を対象に,非定常気流・温熱環境解析手法を用いたバーチャルハウスシミュレータの開発を行った。異なる暖房方式を採用した居室の定常・非定常温熱環境の実測を行い,検証用データベースを作成した。実測を対象に各種解析モデルを用いて解析を行い,実測と比較して精度を検討した結果,本研究で開発したシミュレータが住宅の温熱環境評価として実用的な精度を有することを示した。
著者
高木 博志 伊従 勉 岩城 卓二 藤原 学 中嶋 節子 谷川 穣 小林 丈広 黒岩 康博 高久 嶺之介 原田 敬一 丸山 宏 田中 智子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

日本における近代「古都」を、歴史学・建築史・造園史などから学際的に研究した。奈良・京都・首里といった古都と、岡山・名古屋・大阪・仙台・江田島・呉・熊本など旧城下町や軍都とを研究対象とした。研究会の他に、各地でフィールドワークも実施しつつ、「歴史」や「伝統」と政治的社会的現実との、近代におけるズレや関係性を考察した。また学都や軍都などの都市類型も論じた。個別業績以外に、論文集『近代歴史都市論』を発刊予定である。
著者
Kenji Yano Ko Hosokawa Takeshi Masuoka Ken Matsuda Akiyoshi Takada Tetsuya Taguchi Yasuhiro Tamaki Shinzaburo Noguchi
出版者
The Japanese Breast Cancer Society
雑誌
Breast Cancer (ISSN:13406868)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.406-413, 2007 (Released:2007-11-07)
参考文献数
22
被引用文献数
10

Background: Skin-sparing mastectomy (SSM) is a type of breast cancer surgery presupposed as breast reconstruction surgery. Cosmetically, it is an extremely effective breast cancer operation because the greater part of the breast's native skin and infra-mammary fold are conserved. All cases of SSM and immediate breast reconstruction performed by the senior author during the last five years were reviewed.Methods: There are three implant options for breast reconstruction, namely, deep inferior epigastric perforator (DIEP) flap, latissimus dorsi myocutaneous (LDM) flap, and breast implant, and one of these was used for reconstruction after comprehensive evaluation.Results: From 2001 to 2005, immediate reconstructions following SSM were performed on 124 cases (128 breasts) by the same surgeon. Partial necrosis of the breast skin occurred in 4 cases of SSM. The mean follow-up was 33.6 months. During the follow-up, there was local recurrence following surgery in 3 cases. The overall aesthetic results of immediate breast reconstruction after SSM are better than those after non-SSM.Conclusion: SSM preserves the native breast skin and infra-mammary fold, and is an extremely useful breast cancer surgery for breast reconstruction. SSM is an excellent breast cancer surgical technique. We think this procedure should be considered in more facilities conducting breast reconstruction in Japan.
著者
尾崎 一郎 高橋 裕 濱野 亮
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

近時の日本の司法制度改革は、経済のグローバル化に応じた効率的な司法の実現や、法化した社会における人権救済の強化、市民の一層の司法参加といった、機能的要請との関係で説明される側面以外に、自律的・安定的・均衡的に発展してきた「制度」が歴史的展開過程において当該均衡を破綻させて大きく変化する瞬間を迎えることを指して新制度派歴史社会学がいう「断絶均衡」としての側面を有している。また、そうした歴史的コンテクストは「法文化」によって規定されている。
著者
福本 直之 永田 正義 菊池 祐介 花田 和明 宮澤 順一
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

磁化同軸プラズマガンであるコンパクトトロイド(CT)入射装置を用いて, CTプラズマを生成・加速し,ガスを注入したセルに入射する実験を行った.これで,荷電交換反応によりCTプラズマの中性粒子化を促進させ,高速ガスジェットの生成を試みた.その結果,現状では荷電粒子が一部に残るものの, CT速度相当の高速ガスジェット生成に成功した.これにより, CTプラズマと極超音速ガスジェットの選択的入射が可能となった.
著者
斎藤 博幸 田中 将史
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

血中や脳内での細胞外脂質輸送を制御しているアポリポタンパク質の遺伝子変異や多型は、脂質異常症やアミロイドーシスなどの疾患発症を引き起こす。その構造的機序解明を目的として、ヘリックス型アポリポタンパク質であるアポA-I及びアポE変異体の高次構造、安定性、脂質結合性並びにタンパク質凝集性などを調査した結果、変異によるN末ヘリックスバンドル並びにC末ヘリックス構造の破壊が疾患発症の構造的基盤であることが示唆された。
著者
野瀬 昭博
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

イネ紋枯病抵抗性は、解糖系の炭素分配クロスロードと名付けた、解糖系からのスクロース合成・澱粉合成・フェニルプロパノイド代謝への分岐部の炭素分配制御によってもたらされていることが明らかとなり、今後この部分における制御特性についての解明が代謝工学的な紋枯病抵抗性の実現に向けたターゲットであることが示唆された。また、現有するイネ紋枯病抵抗性を交配育種的に活用する2種類のQTLが同定され、抵抗性イネ育種に大きな可能性があることも明らかとなった。さらに、現有する抵抗性系統に多収性をもたらす遺伝子の連鎖が示唆され、紋枯病抵抗性と多収性の両立も可能である。
著者
厨 源平
出版者
独立行政法人国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

IL-17を産生するTh17細胞は新しいヘルパーT細胞サブセットであり、関節リウマチ、多発性硬化症などの自己免疫疾患モデルでは、これまで、その病態の主役はTh1細胞と考えられてきたが、現在、Th17の重要性が報告されている。1型糖尿病においても、病態の中心はTh1細胞であると考えられてきたが、発症前(10週齢)のNODマウスに対し、抗IL-17抗体の投与により糖尿病発症抑制効果が報告され、自己免疫性糖尿病の病態へのTh17/IL-17の関与が示唆されている。そこで我々は、1型糖尿病の病態へのTh17細胞/Th1細胞の関与を検討した。IL-17欠損NODマウス(IL-17-/-NOD)、IL-17/IFNγRダブル欠損NODマウス(IL-17-/-/IFNγR-/-NOD)を作成し、野生型(wt-NOD)との、膵島炎レベル、累積糖尿病発症率を検討した。IL-17-/-NODとwt-NODのCD4+エフェクター細胞のNOD-SCIDマウスへ養子移入実験を行った。50週齢までの累積糖尿病発症率は、IL-17-/-/IFNγR-/-NODで50%であり、IL-17-/-NOD;80%、wt-NODマウス;86%との3群間で有意差を認めた(p<0.05)。若年のIL-17-/-NODマウス由来のエフェクター細胞の養子移入において明らかな発症抑制を認めた。Th17/Th1細胞は協調して糖尿病進展に関与しており、Th17の若年期の重要性が示唆された。