著者
伊角 彩
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

東京都足立区で2015年度から実施している悉皆調査「子どもの健康・生活実態調査」を用いて 、小学生高学年の子どもの自殺リスク要因を縦断的に検討する。具体的には、小学校4年生時点および6年生時点の希死念慮を主要アウトカム、自己肯定感・幸福度・コーピング・抑うつ傾向を副次アウトカムとして、1)家庭の経済的状況、2)家族構成の変化、3)ネガティブな親子の関わり(虐待傾向を含む)、4)友人と地域とのつながり、5 )いじめられた経験とボジティブな親子の関わりの交互作用との関連を調べる。
著者
高橋 健一郎
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2023-04-01

1900~10年代のロシア文化においては形而上的音楽論が隆盛を極め、亡命文化においても音楽思想は重要であった。本研究はその中でこれまで十分に解明されていないエミリィとニコライ二人のメトネル兄弟の音楽思想を研究対象とし、1900~1910年代、そして亡命後まで跡付け、その内容を他の思想家や文化人の活動や思想との関連で意味づけることを目的とする。それによって、ロシア象徴主義やイヴァン・イリインの思想を始めとする芸術思想の諸問題やロシア文化のナショナル・アイデンティティの問題を再考し、さらにエミリィが深く関わったユング心理学がロシア文化に与えた影響等についても新たな知見がもたらされると期待される。
著者
赤尾 聡史
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

植物工場など土に拠らない集約的農業が広まった場合,農業副産物の処理ニーズが高まると予想される.これらを事業系廃棄物として処理した場合の経営影響を100 m2規模の施設園芸を対象に行い,農業所得に対して10%前後の処分費を必要とすると見積もった.農業副産物を資源として利用するため成分調査を行い,肥料成分としてリンを含むミネラル含率が高いこと,炭素/窒素比が低く生物変換に注意を要すること,ルテインなどカロテノイド類の含率が高いことを示した.
著者
川堀 真人 七戸 秀夫
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

脳出血特に慢性期に関して現在有効な治療法は存在せず、多くの患者が麻痺を抱えて生活している。幹細胞はこの麻痺を改善させうる治療法として期待されているがその機序は不明な点が多い。今回の研究では脳出血慢性期の運動機能障害に対する幹細胞の機能改善に関する作用機序を解明することを目的としている。脳出血慢性期モデル動物の作成、最適な細胞のコンディション、投与された幹細胞の分化・栄養分泌機序、脳内ネットワークの改善効果を調べる。
著者
富田 誠
出版者
東海大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、高度な専門性を持ち、専門領域を超えたコミュニケーションが難しい理系研究者を対象として、領域横断的な研究を進めるための視覚的対話のワークショップのプログラムを開発することを目的とする。このプログラムは、研究者自らが複雑な研究を図解し、図解されたものを用いて対話し、動かし合いを通して、創造的に連携点を見つけ出すことを特徴とする。研究の実施にあたっては、1.視覚的対話の手法の研究者に対する調査、2.WSの実施と分析による創造的連携の理論モデルの構築とツールの開発。3.プログラムの改善とツールと手法の公開 の3つを中心に進める。
著者
森川 友義
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

集団間あるいは国家間における、紛争・テロリズム(特に自爆テロ)といった生命の危険を有する状況で、『マキャベリ的知能』に基づく意思決定がどのように行われるかについて仮説を提供し、データを用いて検証を実施した。
著者
上野 晶子
出版者
北九州市立自然史・歴史博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

Nederlandsch Magazijn(マガゼイン)を研究の中核として、その翻訳書及び古賀謹一郎による読書録を分析した。具体的には、①マガゼインの項目及び掲載ページをデータベース化し、古賀及び蕃書調所旧蔵本にみられる書込みなどを追加した対応表を作成した。②国内に残存する「和蘭宝凾(蘭人日本之記)」を確認し、その原文である「JAPAN」(Nederlandsch Magazijn 1839年)との比較をおこなった。③マガゼインを底本とする史料を分析し、蕃書調所による「官板 玉石志林」の翻訳作業の過程を考察した。④古賀謹一郎による日誌及び蔵書目録を調査した。
著者
中村 禎子 中山 敏幸 奥 恒行 田辺 賢一 下内 章人 金高 有里
出版者
十文字学園女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、妊娠期の母体の栄養環境に依存して胎児期の発生に異常を来すモデルマウスを用いて、妊娠期に難消化性糖質含有飼料を摂取させ、母体の腸内細菌が産生する水素ガスが胎児へ移行することによって、胎児のWntシグナル伝達を調節して正常な発生に誘導し、成長後の疾病の罹患や重症化へ及ぼす影響をモデルマウスを用いて明らかにする。申請する科研費では、まず、【実験Ⅰ】において、妊娠期に葉酸過剰飼料と、これに難消化性糖質を含有する飼料を与えて、胎児の発生期に惹起する異常に対する影響を観察する。【実験Ⅱ】では、実験Ⅰと同じ飼料を妊娠2週間前から与えて実験Ⅰとの同異を検討する。
著者
肥爪 周二
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、平安・鎌倉時代の訓点資料を中心とした、一次資料を利用することにより、日本語の音節構造の歴史を明らかにしようとするものである。研究代表者は、開拗音・合拗音、二重母音・長母音、撥音・促音、清音・濁音のそれぞれについて、従来の学説とはかなり異なる見解を提出してきたが、本研究においては、それらを補強あるいは修正するための具体的なデータを収集した。この成果は『日本語音節構造史の研究』として、2018年度中に刊行予定である。
著者
和田 実 荒川 修 高谷 智裕 柳下 直己 井口 恵一朗 太田 貴大 宇都宮 譲
出版者
長崎大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2020-10-27

メコン川流域における淡水フグの有毒性は広く知られているものの、野生の淡水フグにおける毒性の強弱や組成に関する知見は著しく断片的なままである。メコン側流域各国では、地元自治体が危険性を啓発しているにもかかわらず、流域住民のフグ食は止まらず、中毒による健康被害が社会問題化している。本研究は、フグ食中毒被害が顕著なカンボジアにおいて、被害多発地域に位置する新設大学と連携し、淡水フグの種類と毒性の季節変化、毒化機構、ならびに住民のフグ食に対する潜在的な需要を明らかにし、淡水フグの無毒化養殖を試行する。
著者
久保田 裕道 本林 靖久
出版者
独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

危機的状況にあるブータンの祭礼芸能の変容実態と、その要因となる社会的環境の変化とを民俗学の手法を用いて調査・分析を行い、画像・映像を併用した報告書を作成する。対象は、タシガン県メラ村を中心とし、その他ブータン各地の事例との比較も行う。方法としては、現状を①形態的変容、②意味的変容、③縮小・休止・廃絶等に分類し、その要因を(a)伝承的必然性(b)社会的要因(c)精神的要因(d)活用的要因等に当てはめて分析を行う。その上で分析結果が、祭礼芸能の保護にどのように結びつくのかを併せて考察し、最終的な無形文化遺産保護の提言につなげる。また、現状での新型コロナウイルス感染症による変容実態をも検証する。
著者
小栗栖 等
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

中世の手書き写本は、様々な略号が使用される上、句読点もない。文字自体も現代のものとは異なる。そのため、たとえ活字で中世の言葉を読めたとしても、写本そのものを専門外の人間が読むことは極めて困難である。校訂作業とは、そうした手書き写本を印刷本の体裁に仕立て直す作業である。本研究の目的は、フランス最古の叙事詩、『ロランの歌』の、シャトルー写本、ヴェネツィア写本を校訂し、さらに、そのテキストをコンピュータで容易に扱えるようにするところにある。本研究の主な内容は、校訂作業と、その作業を容易にしたり、校訂テキストを扱うための電子ツールを作成するところに存する。
著者
常石 敬一
出版者
神奈川大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

1988年度はアメリカ国立公文書館およびイギリスのパブリック・レコ-ド・オフィスにおいて収集した資料の分析、および旧日本軍の生物兵器部隊関係者の面接調査を主に行った。アメリカの資料によって、朝鮮戦争開始の数年前から、生物兵器の使用に積極的な集団が存在したことが明らかとなった。彼らはたとえ試験的であっても生物兵器を使用したい、すなわち屋外実験的なことだけでも是非行いたいと考えていたことが後づけられた。旧日本軍の生物兵器部隊関係者の面接調査においては、旧日本軍関係者に対するアメリカ占領軍の調査の状況を聞くことができ、それによってアメリカ側の関心が穀物・植物への生物・化学・毒素兵器の使用にあったことが推測できた。1989年度は、アメリカ国立公文書館において収集した資料の分析および旧日本軍の生物兵器部隊関係者の面接調査を主に行った。1989年夏に入手した資料を通じ、アメリカ軍が1944年から45年にかけて、報復のための化学兵器使用のシナリオを持っていたことが分かった。この時の準備状況を明確に把握することで、アメリカ軍がどんな準備の下で生物化学兵器を使用しようとするかが分かる。現在この時の準備状況と、アメリカ軍が朝鮮戦争時に生物兵器を使用したという非難前後の状況とを比較検討している。1947年のアメリカ軍の文書によれば、金沢で旧日本軍の人体実験標本を多数入手している。この真偽を確認するため、石井部隊から1944年に金沢医大に転任した医学者に関して面接調査を行い、確認した。
著者
日比野 由利
出版者
金沢大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2021-07-09

本研究は、生殖ツーリズムと呼ばれる現象に着目する。本研究は、生殖ビジネスの最前線として、生殖ツーリズムの「利用される側」であるグローバル・サウスにおける現状を正確に記述することによって、この問題を検討するための基礎的な資料を提供する。東南アジア、東ヨーロッパ地域、中南米、ラテンアメリカ地域、アフリカ地域を対象として、包括的に情報収集を行う。文献収集、及び現地のインフォーマントにインタビューを行い情報を得る。本研究を行うことにより 、身体の商品化や子供の人権に直結する喫緊の問題に関して、国際秩序形成に向け議論を深化させることができる。
著者
牧 輝弥 佐野 到 定金 香里 黒崎 泰典 石塚 正秀 大西 一成 能田 淳 松木 篤 市瀬 孝道
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2021-04-05

黄砂や煙霧とともに微生物群(バイオエアロゾル)が,アジア大陸から日本へ越境輸送され,日本での環境・健康影響が懸念される。これまで,東アジア(日中韓蒙)での黄砂を捕集する高高度調査(気球, ヘリコプター)によって,越境輸送される微生物種組成は,日本海と太平洋の沿岸で大別でき,その生体影響も異なる可能性を突き止めた。しかし,従来の観測地点は日本海沿岸に偏り,太平洋沿岸へと沈着する微生物の詳細を講じる観測データは不足している。本申請では,日本本土での観測地を拡充し,「越境微生物の国内での拡散・沈着過程」を理解すると伴に,生理学実験・疫学的調査によって,生態・健康影響を評価する。
著者
常本 照樹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

平成12年度から13年度にかけて、本研究は、わが国固有の事情に適合した先住民族の権利実現の具体的モデルとなる事例を検討することを目指した。具体的には、アメリカ本土48州において確立している先住民法制の適用を受けておらず、合衆国政府から正式に先住民族としての認定を受けていないという点でハワイ先住民とアイヌ民族に近似性があるとの認識に基づき、ハワイ先住民の法的地位およびそれに関する法制度を調査・検討した。とりわけ、OHA(ハワイ先住民局)の理事選挙の選挙権を先住民に限定することを違憲とした合衆国最高裁のRice v.Cayetano判決の意義・射程を検討するとともに、OHAを中心に実施されている先住民を対象にしたプログラムを調査・検討した。また、現在のハワイ先住民に関する法制度が、深く歴史に根ざしたものであるため、ハワイ王国建国前後からの法制史を調査した。この研究の結果、合衆国法によって先住民族との認定を受けなくても、合衆国憲法の平等保護条項に違反することなく先住民としての権利を保障することは必ずしも不可能ではないことを認識するに至った。アメリカにおいては、まさにこの考え方がRice事件において争われたと見ることができるが、ロジックとして成立しうるとすれば、あとは政治的決断の問題である。そうであるならば、その政治的決断を導く要因は何か、が次に探求されるべき課題となろう。ハワイにおいては1974年の州憲法改正においてこの決断が積極になされ、Rice判決以後、この決断が消極になされそうな気配が見える。この両者を比較して考究することで、ハワイと同様に多数者に対する経済的利得という事情の無い日本において、憲法に抵触することなく先住民族の権利を保障する方途が見えてくるはずであるとの着想を得た。今後は、この着想を発展させ、日本に適合的な先住民法制のあり方を具体的に考究していくことにしたい。
著者
堀部 貴紀
出版者
中部大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

耐乾性や高温耐性など多様な環境ストレス耐性と健康機能性を併せ持つ食用サボテンは、 食品としてのみならず、過酷な環境に適応するモデル植物としても大きなポテンシャルを有 している。本研究では、サボテンの環境ストレス耐性をゲノム解読と遺伝子機能解析技術の確立により明らかにする。またメタボローム解析によりサボテンに含まれる特徴的な生体成分の動態を明らかにする。さらに、それらの成果をもとにしてサボテンの機能性や生産性を高める新規栽培方法の検討を行う。
著者
吉野 夏己
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

「嫌がらせ訴訟」とも定義される「スラップ(SLAPP)」対策についは、人格権としての名誉権保護及び裁判を受ける権利と、表現の自由を対立軸として、憲法、刑法、民法、訴訟法など多様な法領域にまたがる法解釈論が求められ、加えて裁判官の訴訟指揮を含む訴訟実務のあり方、さらには、スラップ被害防止法制定などの立法政策について、横断的・多角的視点での検討が求められるところ、わが国においても、「現実の悪意」基準を不法行為法の解釈に取り入れるなど、表現の自由の価値を基底とするスラップ救済法理を探る。
著者
菅原 和孝 松田 素二 水谷 雅彦 木村 大治 舟橋 美保 内堀 基光 青木 恵里子 河合 香吏 大村 敬一 藤田 隆則 定延 利之 高木 光太郎 鈴木 貴之
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

「身体化された心」を軸に、フィールドワークと理論的探究とを統合することによって、社会の構造と実践の様態を解明することを目的とした。フィールドワークでは「心/身体」「文化/自然」といった二元論を克服する記述と分析を徹底し、理論探究では表象主義を乗り超える新しいパラダイムを樹立した。「身体化」に着目することによって、認知と言語活動を新しい視角から照射し、民族誌的な文脈に埋めこまれた行為と実践の様態を明らかにした。
著者
岩田 浩子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究では育児行動に着目し,生活行動としての意義と行動特性を明らかにすることを目的に,(1)「おんぶ」と「抱っこ」の現代における意義,および,(2)その行動様式の特徴と作業負担についての分析を試みた。結果を要約すると以下のとおりである:(1)人間の様々な行動様式の中で,労働と育児を同時に担えるおんぶは「運搬法」として抱っこよりも大きな役割を果たしてきたと考えられる。しかし,最近ではおんぶや抱っこは乳児運搬法としてよりも親と子が密接にふれあう方法としての意義が強まっていると考えられる。(2)野外観察によれば,とくに余暇活動時には父親が運搬具なしで背負ったり,片腕だけで抱く事例が数多く観察された。運搬具なしのおんぶや片腕だけの抱っこは子どもが姿勢保持できることと覚醒時に限られ,それ以外は運搬具を用いるか,抱っこにも両腕を用いる必要がある。(3)両腕を用いる抱っこの場合,親子の向き合い方は対面型が最も多く,側面型も約38%あった。子どもを抱く位置は親の胸の中央が最も多く(44%),次いで右側(35%),左側(21%)の順だった。また,親子の向き合い方と抱く位置とは関係なしとはいえないことが分かった。(4)女子大学生を被験者とし,ダミーを用いた抱っこの実験室的観察において,被験者の抱き方は野外観察の親子に見る乳児の抱き方とほぼ同じだった。抱っこの姿勢は通常の直立姿勢よりも全身はやや後傾し,頭部前屈が強まる傾向にあるが,腰部背屈角度には大きい違いはない。(5)ダミー(66cm,7.5kg)を3分間抱いて立つ課題実験において,ダミーを揺さぶる動作や背中や腰部を軽く叩く動作が観察された。時間経過にともなって,踏みかえ動作が現れる被験者もあった。また,抱き続ける間,比較的動きの少なかった被験者にも前脛骨筋と腓腹筋の筋電区には左右相反的で持続的放電が見られ,下肢部にかなり負担がかかっていることが分かった。