著者
Guido Fabiola
出版者
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

数種類のきのこが生産する有機酸を同定したところ、それらは既知の数種類の有機酸を生産し、共通する有機酸も生産することがわかった。それらと同じ有機酸試薬水溶液に予め137Csを吸着させた粘土鉱物を入れたところ、Csはほとんど溶出しなかった。次に土壌からシデロフォアという鉄キレート化物質生産性を持つバクテリアを単離した。その内の細菌一種類及びきのこ菌糸一種類を懸濁した水溶液中に黒雲母の粉末を投入したところ、きのこ菌糸からより多くの鉄とケイ素が黒雲母から溶出した。この結果は、用いたきのこから鉱物溶解力の高い有機物が分泌されている可能性を示唆する。
著者
新倉 謙一
出版者
日本工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

抗原や核酸を輸送するためのワクチン粒子の開発を目指す。ワクチン粒子は生体内で分解することで、輸送した抗原や核酸を細胞内で放出できるようになる。本研究では細胞内で分解しやすいように、低分子を組み合わせることで粒子をつくる手法を開発する。通常低分子は、高分子と比べるとお互いの相互作用が弱いため安定した粒子が作りにくい。しかし多点での結合が可能な低分子を用いることで、それらの課題を解決していく。
著者
多田 一臣
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究「『日本霊異記』の総合的研究において、最大の目標はわが国最古の説話集である『日本霊異記』の総合的注釈書を完成させることであったが、昨年度の段階で、ひとまずその完成を見ることができた。その成果は、筑摩書房から『日本霊異記 上・中・下』(ちくま学芸文庫)として刊行した。本年度は、その継続として、上記注釈書をもとにした事項索引の作成をおこなった。研究補助者の助力を得て、作成本文にもとづくデータ整理を行い、その結果『ちくま学芸文庫版『日本霊異記』語注・補説索引』を完成することができた.この索引は、科学研究費補助金の研究成果報告書として刊行した。同時に、昨年度からの継続として、二度にわたり沖縄諸島の祭祀儀礼の調査を行った とくに死者の霊魂を呼び寄せるシャーマン的巫者の活動に関する資料を収集した その結果、死者の霊魂の問題が、『霊異記』など本土の古代文献に見える信仰と深いつながりをもっていることを、あらためて確認することができた。この問題については、不充分ながら上記注釈書の中でも言及した.しかしながら、依然として残された問題は大きく、とくに鹿児島県奄美諸島のマブリワーシなどの事例について、来年度以降も調査をできるかぎり継続して、理解を深めていきたいと考えている。『霊異記』の本文調査も、昨年同様、いくつかの図書館・文庫等を訪れることで、写本類を披見、本文確定のための有益な情報を得ることができた。所期の目的は、おおむね達成できたと考えている。
著者
萩岡 松韻 久保田 敏子 野川 美穂子 長谷川 慎
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

地歌箏曲の楽曲アーカイブを目的とした研究。稀曲等次代への伝承が危ぶまれている楽曲について、音源の収集、楽曲の伝承者に指導を受けることで、楽曲の音源化・楽譜化を試みた。地歌箏曲では口頭伝承が昭和の初めまで行われていた。現在は作品の多くが楽譜化されているが、楽譜化できない口頭伝承の部分を知る実演家の多くは没し、口頭伝承を受けた実演家の存在は貴重である。本研究はそうした実演家より直接指導を受け、楽曲をアーカイブすることを目的とした。地歌箏曲の喫緊の課題といえる現存する古典曲の調査、楽曲の楽譜化、録音等による伝承者の演奏の保存、稀曲等の公開演奏を行うことで無形文化財ともいうべき楽曲の保護保存を進めた。
著者
山本 憲志 橋本 眞明
出版者
日本赤十字北海道看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

炭酸泉浴(CO2 ≥1000 ppm)は浸漬部皮膚の紅潮、皮膚血流の改善などが観察されている。炭酸泉浴の応答において、交感神経活動の減少が筋疲労回復の促進される可能性がある。我々はレジスタンス運動後の筋硬度や筋肉痛といった疲労回復に人工炭酸泉浴が影響を与えるか否かを検討した。レジスタンス運動後3日目に筋硬度は最大となり、その後漸次低下した。水道水浴における筋肉痛は運動後2日目にピークとなり、その後漸次低下した。炭酸泉浴において筋肉痛は3日目に消失した。人工炭酸泉浴は筋疲労からの急速な回復に貢献できる可能性を秘めていることが示唆された。
著者
後藤 晃 帰山 雅秀 前川 光司
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、北海道の水系に定着したブラウントラウトの生活史と回遊性、また本種の食性と近縁サケ科魚類との種間競争の実態を解明し、本種による在来淡水魚類への影響を評価する目的で、北海道南部の戸切地川、および中央部の支笏湖水系において生態的・集団遺伝学的調査を行い、以下の成果を得た。1.戸切地川において、ブラウントラウトは河口から約7km上流地点に位置する上磯ダム湖で主に生育し、雌では2歳で尾叉長275mm以上に、雄では2歳で172mm以上に達すると性成熟し繁殖に加わることが示された。2.本種の一部の個体は、秋季に尾叉長210-270mmの成長すると、スモルト化し、翌春に川を下って降海型(シートラウト)になること、また降海型は沿岸域で成長・成熟した後、繁殖のために河川に遡上することが確認された。3.本種は尾叉長200-300mmの個体ではトビケラ目幼生、陸生落下動物の他にフクドジョウなどの底生魚類を主に捕食することが示された。4.本種とニジマスが定着している支笏湖水系において、流入河川の美笛川ではブラウントラウトは主に底生型動物、ニジマスは遊泳型動物を摂餌し、2種は餌資源を分割利用していることが示された。一方、支笏湖内では、ブラウントラウトは陸生落下動物が少ない時期に、イトヨ、アメマス、ヒメマスなどの魚類を捕食することが明らかになった。5.餌ニッチの幅では、ブラウントラウトはニジマスより低い傾向を示した。6.ブラウントラウトによる特定魚種への捕食圧が大きくはなかったため、在来魚類の遺伝的集団構造に変化は認められなかった。
著者
山岸 順一 Cooper Erica
出版者
国立情報学研究所
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2021-07-09

我々は伝統話芸である落語の実演データから深層学習モデルを学習、あたかもプロの噺家の様に、噺を読み上げる落語音声合成システムを最先端音声合成技術に基づき構築した。従来の音声対話システムとは目的が全く異なり、聞き手を楽しませるAI噺家の実現を目標としている。本課題では 、長期的音響情報および非言語情報の明示的モデル化により合成音声の表現力を向上させ、 ニューラル言語モデルによる噺の自動生成に取り組む。
著者
清水 節
出版者
金沢工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、日米の史料を用いて「宗教法人法」の起草過程を分析したものである。GHQの民間情報教育局宗教課、文部省宗務課、宗教界指導者の各見解と議論された論点を明らかにした結果、日米の文化的・歴史的背景に起因する法観念の相違や、各々の理想とする宗教法人像の相克が顕在化し、対立と妥協の末に本法が生み出されたことが解った。また、本研究の一環で「国有境内地処分法」の起草過程も明らかにした。
著者
江尻 桂子
出版者
茨城キリスト教大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

幼児・児童における危険認知能力の発達過程について、実験的に検討した。その結果、こうした認識が芽生え始めるのは年長児頃であること、正しい危険認識に基づき、危険回避行動ができるようになるのは小学1年以上であることが示された。また保護者へのアンケート調査から、保護者らは不審者の連れ去りに関して不安を感じてはいるものの、そうした事件に子どもが自ら巻き込まれる可能性は低いと考えていること、また、我が子の危険回避能力について必ずしも正しく認識しているわけではないことが示された。これらの結果をもとに、幼児・児童における発達水準に応じた防犯教育のあり方を提案した。
著者
馬本 勉
出版者
比治山大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本課題研究においては、語の記憶の「連鎖」とハイパーテクストにおける「リンク」の類似性に注目し、コンピュータを用いた英語の語彙学習システムの構築を行った。2年間の研究期間中、学内のWebサーバを用いて各学習者のホームページを作成し、学内外からのアクセスが可能な形で、個人個人の連想ネットワーク(擬似メンタルレキシコン)を公開した。(http://ipr.hijiyama-u.ac.jp/〜umamoto/)特に2年目の本年度は、ホームページ作成ソフトの新規導入により、Webページ作成の負担を軽減できたことが大きい。1年目の文字情報中心・学内サーバ内リンク中心のものから、映像を含むマルチメディア情報・全世界の情報網へのリンクを伴う「擬似メンタルレキシコン」の立体化が進んだように思われる。同時に学習者間のリンクも進み、他者のメンタルレキシコンとの比較も容易になった。ホームページの作成・閲覧過程を通じての「語彙力」の伸びは、多くの学習者が実感するところとなった。特に、日本語による概念の広がりをきっかけとした英語の語彙拡充の一形態が、本研究で言うところの「学習システム」において実現できたように思われる。また、学習者のメンタルレキシコンの観察を通じ、対象とする語と共に学習するのが望ましい(周辺的な)情報のあり方についても検討が進んだ。上位語・下位語・類義語などの関連語や、コロケーションなどの語法的な連想に加え、学習者の個人体験に基づく「リンク」に目を向けることにより、「語と語の連なり」「語義の広がり」「語感の深まり」といった「立体的」な語彙学習のための、語彙選定への提言を行うに至った。
著者
Dani Keshav
出版者
沖縄科学技術大学院大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2022-06-30

Creating new sources of light with non-standard wavelengths can provide powerful tools for science and technology. The XUV region of the electromagnetic spectrum creates new opportunities in photoemission spectroscopy like the powerful technique of Angle Resolved Photoemission Spectroscopy, and industrial fields like semiconductor fabrication. We propose to build a novel table-top source of XUV radiation that will provide significantly higher flux densities, to further push the boundaries of ARPES techniques and to study the newly emerging two-dimensional semiconductor heterostructures.
著者
花栗 哲郎 町田 理
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

本研究では、電子状態解析ツールである走査型トンネル顕微鏡が、単一原子操作にも用いることができる点に着目する。超伝導体やMott絶縁体など電子相関が本質的に重要な系の表面に、単一原子操作によって人工構造を作製し、非自明な「新物質」をボトムアップ的に実現する。規則配列した原子のスピンや電荷と、基板の多体効果が協奏・競合して生み出す電子状態を、走査型トンネル顕微鏡を用いた分光イメージングで解明し、新しい量子現象を探索する。
著者
下澤 雅明
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

本研究課題では、温度感度の優れた超伝導小型温度センサーを走査システムと組み合わせることで、超高感度の走査型熱顕微鏡を開発することである。さらに、開発した測定システムを用いて、キタエフスピン液体や量子スピン液体などのバルク熱測定で見られる実験ごとの矛盾点・不一致点に対して、局所的な視点から考えるきっかけを作る。
著者
藤代 有絵子
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、電子スピンが固体中で作る非共面的な構造(立体角を張る)とその揺らぎを制御し、新たな電気輸送特性の探索を行う。特に、螺旋スピン構造の電流駆動がもたらすインダクタンス効果や、磁性が外部パラメーター(圧力など)の制御によってゼロ温度で消失する量子相転移近傍での輸送特性に着目する。従来の研究で着目されてきた静的な長距離秩序の枠組みを超えて、スピン構造のダイナミクスがもたらす新規現象についての学術的理解を深めることを目指す。
著者
酒井 英明
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

次世代トポロジカル量子計算に必須のマヨラナ準粒子を実現できる系として、超伝導体とトポロジカル絶縁体の人工超格子薄膜が注目されている。これに対し本研究は、鉄系超伝導体を高温超伝導層とトポロジカル絶縁層の自然超格子物質として新規開拓することを目的とする。本系ではマヨラナ粒子の高温化に加え、熱輸送測定による検出が可能になると期待される。そこで、元素置換によるキャリア濃度の精密制御を行い、得られた最適物質においてマヨラナ粒子特有の熱伝導・熱ホール効果を実証する。これにより、多彩なマヨラナ粒子を実現できる物質の設計法を確立することを目指す。
著者
植野 洋志 武市 陽一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1.CAD65遺伝子をパン酵母に組み込み、酵母内可溶化タンパク質としてグルタミン酸デカルボキシラーゼを発現する系を作成した。2.発現効率の向上を目指して、培地中に加える炭素元の検討、誘導をかけるためより効率のよい誘導因子の探索、ベクターの変更、プロモーターの変更、ターミネータの変更、及び宿主の変更を行った。3.発現タンパク質の安定性に関わる因子について見当を行った。熱安定性について調べた結果、発現タンパク質は40℃に置くことで失活するが、基質アナログ、特に拮抗阻害剤、の存在下では顕著な熱安定性を示した。この結果より、基質アナログはGAD65の構造安定化に寄与し、その抗原性を長期にわたり保持できる可能性を示唆することができた。4.GAD活性の測定は従来より放射性同位元素であるC-14でラベルされたグルタミン酸を気質として用い、遊離の二酸化炭素中の放射線量を定量する手法がとられてきた。放射性同位元素の使用は環境問題とも関連して避けたいのでこれに代わる高感度で簡便な二酸化炭素測定装置の開発を行った。その結果、マイクロキャピラリー管と光センサー・カウンターの組み合わせが有効であることが判明し、現在さらなる改良を加えている。5.我々が開発した発現系は外来タンパク質の発現に有効利用できることをヒト由来のヒスチジンデカルボキシラーゼを発現することで示すことができた。これにより、従来困難であった微量タンパク質の大量培養・精製に応用できると考える。
著者
砂川 芽吹
出版者
東北大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-02-01

自閉スペクトラム症(ASD)の女性は,表面的には対人コミュニケーションスキルを獲得し,社会生活において一見問題がないように見えることも少なくない。しかしながら,日々の生活に目を移すと,女性に対する社会的期待や社会的要請について障害特性から困難に直面することが多いと考えられる。よって,本研究ではASDの女性の「社会適応」に着目し,女性として生きる日々の生活に即した困難を明らかにしたうえで,ASDの女性のライフサイクルに沿った具体的な支援のあり方を検討することを目的とする。
著者
長谷川 真理子
出版者
専修大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1991

筆者が1987年から1989年にかけて、英国サセックス州のペットワ-ス公園に生息するダマジカのレック繁殖行動を調査した資料を分析し、レック繁殖における雄どうしの闘争の機能の解明と、レックにおける雄間の繁殖成功度の偏りを表わすシミュレ-ション・モデルの開発に関して研究をおこなった。ダマジカは、レック内において頻繁に雄どうしが闘争を行なうが、その闘争にどのような意味があるのかは不明であった。分析の結果、レック内での闘争のほとんどは勝敗の結着があいまいな、60秒以下の闘いであること、闘争のほとんどは、闘争をしかけた個体もしかけられた個体も、なわばり内から雌のほとんどすべてを失う結果に終わること、闘争に勝つことと繁殖成功度との間には相関がないこと、なわばり内の雌の数が少ない雄が、なわばり内に多くの雌を持つ雄に対して闘いをしかけることが明らかとなった。なわばり内にいる雌の数と各雄の繁殖成功度との関係を分析すると、レック内にいる雌の、各雄のなわばりへの分布の分散が大きいほど(つまり分布に偏りがあるほど)、各雄の繁殖成切度間の分散も大きくなることがわかった。これよりダマジカのレックで行なわている闘争は、配偶の確率の低い雄が、レック内の雌の分布の偏りを平均化し、特定の雄の配偶のチャンスを低める機能を持っていることが推測される。上記のようなレック内の闘争による、雌の移動、雌が他の雌のいるところへ行きたがる傾向などを組み込み、実際のデ-タから得られた値を導入して、レック内の各雄をそれぞれ一つのセルとみなし、セル・オ-トマトンの考えでレック繁殖のモデルを開発した。これについては、いくつかの点について改良をほどこしている段階である。
著者
横手 裕 浦山 きか 内山 直樹 松岡 尚則 VIGOUROUX MATHIAS 鈴木 達彦 入口 敦志 並木 隆雄 長谷部 英一 井ノ口 哲也 森口 眞衣 菊谷 竜太 西村 直子 西田 文信 形井 秀一 大沼 由香 立石 和子 岡田 岳人 本村 昌文
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、東アジアを中心とするアジアの伝統医学において、医療倫理や医師の心得がいかに想定されていたかを、その思想的な背景も含めて明らかにする。すなわち、日本をはじめとするアジア諸国の伝統的医学文献における医療倫理に関する記述、医療倫理の背景となっている思想や文化、現在のアジア諸国の伝統医学教育における倫理教育の実態、これら三点を軸に、全ての構成員によって共同研究を進める。そして最終的には諸国間における異同、相互の影響関係等を検討しつつ、アジア諸国に共通する伝統的な医療倫理について定義づけと明確化を行い、現代の医療に取り入れるべき内容を提案する。