著者
木村 武司 錦織 宏
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.163-169, 2022-04-25 (Released:2022-09-07)
参考文献数
10

医学教育においてプロフェッショナリズム教育は重要なテーマの一つだが, その教育や評価は困難である. そのため, プロフェッショナリズム教育における特に評価の観点から, 観察可能な「行動behavior」に焦点をあて, アンプロフェッショナルな行動として捉え直す議論が2000年頃から北米を中心に活発化している. 本稿では, 国内の動向も交えつつ, アンプロフェッショナルな行動についての分類, 評価, 対応に関する概念を整理し, 関連した概念について啓蒙するとともに, 本邦の文脈に即した研究の促進を目指す. また, その適切な対応を通して, より社会の要請に耐える医学生・医師の育成に繋がることを期待したい.
著者
大島 登志彦
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究論文集 (ISSN:13495712)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.63-73, 2006-06-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
21

The writer researched omnibus-routes in this area, and studied following items with documents of application, timetable or map, statistics of transport, and so on about the omnibus.(1) Here was made a study about the sightseeing-development of Mt.Akagi(2) Many omnibus-routes were extended till the latter part of 1960's from the beginning of 1950's, because of road-improvement and wish of bus-operation by habitants.(3) Many of them were cut down with closing since the last part of 1960's, because some omnibus-routes were extended excessively and other ones were competed with plural bus company.(4) Communication between two cities (Maebashi and Kiryu) was turned to the railway (Ryomoline JNR) from the bus (Maebashi-Kiryu), because using the railway was made more convenience than using the bus through 1960's.
著者
二村 文人
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.21-28, 2011-09-10 (Released:2017-05-19)

旧派の連句が、実際には蕉風をどのように継承しているかということを作品に即して検討する。そのために、蕉風伊勢派の俳諧を現代に伝え、付けと転じが連句の特質であると説いた根津芦丈を中心に、親交のあった三人が巻いた歌仙「小鳥来る」の巻を取り上げる。各務支考が体系化した「七名八体説」の八体論がどのように意識されているのかを明らかにしながら、現代連句の課題にも言及する。
著者
池田 浩之 森下 祐子 茂木 省太 中井 嘉子 井澤 信三
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.47-56, 2012-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

精神障害者への就労支援は近年注目されつつあるが、その就職状況の実態は依然厳しく、支援プログラムや支援システムも確立されていない現状にある。特に、実践は進みつつあるものの、就労支援プログラムの効果については検証されていないといった課題がある。本研究は、就労移行支援施設に通う精神障害および発達障害者6名を対象に、SSTと心理教育を中心とする認知行動療法に基づいたプログラムを実施し、プログラムの効果を測定することを目的に行った。結果、精神的健康度に改善がみられたほか、自己効力感においても得点の上昇がみられたことからプログラムの有効性が示唆された。一方、障害種別によって効果の現れ方に違いがみられ、障害に対応したプログラムの作成の必要性が示唆された。また、本プログラムはパッケージ化されたものであるため影響要因の特定は定かではないことから、今後プログラム内容の精選や順序効果の確認などが課題として残された
著者
二宮 大記
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.114, no.10, pp.625-639, 2019 (Released:2023-12-10)
参考文献数
15

トルコは,ヨーロッパとアジアの境目にあり,オスマン朝では,バルカン半島,北アフリカ,アラビア半島に進出したため多様な文化の影響を受けている。トルコ料理は世界三大料理に数えられるが,米と小麦を両方使用し,海産物,肉,野菜と料理に使用する素材が豊富,ヨーグルトやオリーブオイルの使用など,本当に多様である。中でもヨーグルトは,日本では隣国のブルガリアが有名であるが,発祥の地とも考えられている。本稿では,ヨーグルトを始めとしたトルコ特有の発酵食品とその利用方法についてご紹介いただいた。
著者
仙⽯ 学
出版者
ロシア・東欧学会
雑誌
ロシア・東欧研究 (ISSN:13486497)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.50, pp.59-71, 2021 (Released:2022-06-11)
参考文献数
24

The article documents and compares the childcare support policy reforms in Central Eastern Europe implemented after the Global Financial Crisis. On the one hand, Estonia and Poland have maintained or expanded their childcare support policies after the crisis. Especially, Poland has expanded both cash benefits for families and public childcare during this period. On the other hand, Hungary and Slovenia have decided to cut back on childcare support measures during this period. While Slovenia was forced to cut back on childcare support due to the financial crisis, Hungary has intentionally adopted policies of focusing on the middle class with children by expanding tax credits and reducing cash benefits. As a result of these policies, the employment situation for women improved in Estonia, but it worsened in Slovenia, and the situation remained largely unchanged in Hungary. As for Poland, despite the expansion of measures to support childcare, the employment situation of women has not improved. This situation is provably caused by the fact that the ruling party of Poland, Law and Justice (PiS) emphasizes on the traditional role of women based on Catholic values.
著者
片田 彰博
出版者
日本喉頭科学会
雑誌
喉頭 (ISSN:09156127)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.101-106, 2006-12-01 (Released:2012-09-24)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1
著者
中野 典子 森奥 登志江 小川 安子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.411-417, 1986-06-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
4

1) 被検者15名の心拍数と酸素摂取量間の相関係数はおのおの0.9以上であった.2) わさび, にんにく, 辛子, カレー粉, 赤唐辛子等の刺激のある香辛料の香りをかいだときと, バニラエッセンスのような甘い香りをかいだときを比較すると, わさび, にんにく, 辛子, カレー粉, 赤唐辛子等のような刺激性のあるものの場合は1分間あたりの心拍数が90~100回, 平均心拍数97回であった.これに対し, 甘い香りをかいだときは平均心拍数86回であり, 刺激性のある香辛料の香りをかいだときには心拍数は高い値を示した.また, カレー粉の香りをかいだときの消費エネルギー量は, HR-VO2法およびRMR法よりの算出値は, 休息状態での消費エネルギー量にくらべ両方法において高値となった.3) 白飯摂取時1分間あたりの心拍数は平均89回であったが, 白飯にカレー粉をまぜて摂取すると心拍数は平均102回となり, 白飯に赤唐辛子粉をまぜて摂取すると平均心拍数は99回であり, 刺激性の強い香辛料の存在により心拍数は高値を示した.4) 平常食事と刺激性の強い調理品を摂取したときの1分間あたりの心拍数は, 平常食事時では80~90回台であるのに対し, 刺激性の強い調理品摂取時は90~100回台に心拍数が集中しており, 刺激性のある調理品を摂取するときには心拍数は高くなった.5) 消費エネルギー量は平常食事では, 体重1kgあたり1分間, 平均0.037kcalであり, 刺激性の強い調理品摂取時は平均0.056kcalとなり, 刺激性の強い調理品摂取においては, 消費エネルギー量測定値は高く示された.したがって, 食事中の消費エネルギー量は, 刺激性のある調味料の存在と料理の献立により変化することが考えられる.
著者
後藤 博三 嶋田 豊 引網 宏彰 小林 祥泰 山口 修平 松井 龍吉 下手 公一 三潴 忠道 新谷 卓弘 二宮 裕幸 新澤 敦 長坂 和彦 柴原 直利 寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.471-476, 2008 (Released:2008-11-13)
参考文献数
22
被引用文献数
1

無症候性脳梗塞患者に対する桂枝茯苓丸を主体とした漢方薬の効果を3年間にわたり前向き研究により検討した。対象は富山大学附属病院ならびに関連病院を受診した無症候性脳梗塞患者93名で男性24名,女性69名,平均年齢70.0±0.8才である。桂枝茯苓丸エキスを1年あたり6カ月以上内服した51名をSK群,漢方薬を内服せずに経過を観察した42名をSC群とし,MRI上明らかな無症候性脳梗塞を認めない高齢者44名,平均年齢70.7±0.7才をNS群とした。3群間において,開始時と3年経過後の改訂版長谷川式痴呆スケール,やる気スコア(apathy scale),自己評価式うつ状態スコア(self-rating depression scale)を比較した。また,SK群とSC群においては自覚症状(頭重感,頭痛,めまい,肩凝り)の経過も比較検討した。その結果,3群間の比較では,自己評価式うつ状態スコアにおいて開始時のSK群とSC群は,NS群に比べて有意にスコアが高かった。しかし,3年経過後にはNS群は開始時に比較し有意に上昇したが,SK群は有意に減少した。さらに無症候性脳梗塞にしばしば合併する自覚症状の頭重感において桂枝茯苓丸は有効であった。以上の結果から,無症候性脳梗塞患者の精神症状と自覚症状に対して桂枝茯苓丸が有効である可能性が示唆された。
著者
平川 南
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.5-24, 1996-02-29

近年、古代史研究の大きな課題の一つは、各地における地方豪族と農民との間の支配関係の実態を明らかにすることである。その末端行政をものがたる史料として、最近注目を集めているのが、郡符木簡である。郡司からその支配下の責任者に宛てて出された命令書である。この郡符木簡はあくまでも律令制下の公式令符式という書式にもとづいているのである。したがって、差出と宛所を明記し、原則として律令地方行政組織〔郡―里(郷)など〕を通じて、人の召喚を内容とする命令伝達が行われるのであろう。これまでに出土した一〇点ほどの郡符木簡はいずれも里(郷)長に宛てたもので、例外の津長(港の管理責任者)の場合は個人名を加えている。このような情況下で新たに発見された荒田目条里遺跡の郡符木簡(第二号木簡)は、宛所が「里刀自」とあり、三六名の農民を郡司の職田の田植のために徴発するという内容のものである。まず第一に、刀自は、家をおさめる主人を家長、主婦を家刀自とするように、集団を支配する女性をよぶのに用いている。宛所の里刀自は、上記の例よりしても、本来の郡―里のルート上で理解するならば、里を支配する里長の妻の意とみなしてよい。第二には、行政末端機構につらなり、戸籍・計帳作成や課役徴発を推進する里長と、在地において農業経営に力を発揮する里長の妻=里刀自の存在がにわかにクローズアップされてきたと理解できるであろう。これまで里刀自に関する具体的活動の姿は皆無であっただけに、今後、女性と農業経営の問題を考察する格好の素材となると考えられる。
著者
下谷内 奈緒
出版者
日本平和学会
雑誌
平和研究 (ISSN:24361054)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.119-142, 2022-10-15 (Released:2022-10-13)
参考文献数
38

1990年代以降、世界各地で過去の戦争や数世紀前の植民地支配の責任を追及する動きが広がっている。本稿では、この時期に訴えが表面化することになった要因を明らかにし、被害者から提起されるこれらの動きを、より広範な社会的な和解につなげる条件について考察する。近年の責任追及の動きを特徴づけるのは、被害者個人が相手国や第三国にある法律事務所を介して政府や企業を提訴する形態をとっていることである。本稿ではその背景として、冷戦終結とともに国家間の戦略的妥協としての和解を支えた構造的要因の消失と、個人による責任追及を可能にする3つ条件(①民主化、②国際人道法の発展と国際的な被害者の権利の伸長、③新独立国の経済成長)を指摘する。そして過去の植民地支配や戦争の責任を追及する訴訟のうち、原告に有利な判断が出された例外的な2つの事例(インドネシア独立戦争期のオランダ軍による住民虐殺[ラワグデ事件]に関するオランダ・ハーグの地方裁判所判決[2011年]と、ケニア独立闘争[マウマウ団の乱]時の拷問被害者からの訴えに裁判所の管轄権と審議入りを認めたロンドン高等法院の判断[2011年、2012年])を、対日戦後補償裁判と比較分析することで、加害国の側で社会の広範な関心を喚起する出来事の有無が、広範な国民的議論を喚起し社会的な和解に繋げるうえで重要な要因となっていることを明らかにする。
著者
小橋 京子 平野 勉
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.661-668, 2014 (Released:2015-08-04)
参考文献数
28

糖尿病治療の根幹は食事,運動療法であるが, 目標の血糖コントロールが達成されない場合には薬物療法が開始される.欧米ではビグアナイド(以下BG)薬が第1選択薬となっているが,日本では特に治療ガイドラインがないため第1選択薬は実地診療医に一任されている.このような現状の中,われわれは東京都内における医師を対象に,症例に則した糖尿病治療薬の処方動向を専門医,一般医に分けて調査した.2013年1月~6月にかけて,東京都内で勤務する医師に対して以下の1)~3)の項目についてアンケート調査を行った.1)現在の糖尿病診療の状態:診療人数と治療内容の割合,食事・運動療法中の2型糖尿病患者さんに対して薬物投与開始を考えるHbA1c(NGSP値)の目安について.2)患者の状況別治療方法の選択; 4症例に対しての第1,第2,第3選択薬について<症例1>56歳,女性,BMI 23.9kg/m2,HbA1c 7.2%<症例2>56歳男性,BMI 26.0 kg/m2,HbA1c 7.2%<症例3>56歳,男性,BMI 22.9kg/m2,HbA1c 8.5%<症例4>67歳男性,BMI 23.9kg/m2,HbA1c 8.5%.3)DPP-4阻害薬の処方状況について; DPP-4阻害薬処方後にHbA1c悪化症例に対する対処方法について.各質問項目について専門医,一般医に分けて解析した.回答した1086名の(回収率85.5%)医師の内訳は専門医290名,一般医796名であった.アンケート1)専門医でインスリン治療の使用率が高かった.薬物治療を開始するHbA1cの目安は専門医,一般医とも7%であった.アンケート2)BMI<25m2/kg未満の症例で血糖コントロールが比較的良好例に対する第1選択は専門医ではBG薬,一般医ではDPP-4阻害薬であった.少量のスルホニル尿素(以下SU)薬は,一般医,専門医とも第3選択薬であった.症例3,4のHbA1c 8%以上のコントロール不良糖尿病例に関しては専門医,一般医ともDPP-4阻害薬が第1選択薬であった.少量のSU薬に関しては,専門医では血糖コントロール不良例に対しても選択しない傾向が判明した.アンケート3)第1選択は「食事・運動療法を再徹底する」が最も多く,第2選択としては「BG薬を追加する」が多かった.専門医では非肥満例に関してもBG薬の処方が選択される傾向があり,少量のSU薬は血糖コントロール不良例に対しても選択順位が低下することが判明した.DPP-4阻害薬の処方選択順位は様々な症例に対して高まっており,その傾向は専門医より一般医に強く認められた.
著者
坪井 貴司 原田 一貴 中村 匠 大須賀 佑里
出版者
Japan Society of Neurovegetative Research
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.226-229, 2022 (Released:2022-07-16)
参考文献数
13

小腸上皮内に存在する小腸内分泌L細胞から分泌されるグルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide-1: GLP-1)は,インスリン分泌を促進し,食欲を抑制する.このGLP-1分泌は,消化管管腔内の様々な物質や血中に含まれる神経伝達物質やホルモン,さらには腸内細菌叢が産生する様々な代謝物などによって制御されているが,その詳細な制御機構は不明である.そこで本稿では,特にアミノ酸や腸内細菌代謝物などがGLP-1分泌に及ぼす影響について紹介する.
著者
増田 亜希子 伊東 孝通 和田 麻衣子 日高 らん 古江 増隆
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.353-355, 2016-08-01 (Released:2016-12-15)
参考文献数
8

27 歳,女性。小児期よりアトピー性皮膚炎に罹患していた。初診の 6 年前より夫の精液付着部位に蕁麻疹と瘙痒を認めた。その後,避妊具なしで性交した際に全身に蕁麻疹を認め,呼吸困難も出現した。同様のエピソードが過去 2 回あった。避妊具を使用した性交渉では同様の症状を生じたことはなかった。近医を受診し,精漿アレルギーの疑いで当科を紹介され受診した。10 倍から1000 倍に希釈した夫の精漿を用いたプリックテストでは,検査した全ての濃度で紅斑と膨疹が出現した。本疾患は精漿中に存在する前立腺由来の糖蛋白に対するⅠ型アレルギー反応であると考えられている。精漿アレルギーの患者の半数以上にアトピー性皮膚炎の既往があると報告されており,皮膚バリア機能の障害による経皮感作が発症に重要な役割を担っていることが推察される。本疾患は皮膚科領域での報告は比較的稀であるが,アトピー性皮膚炎関連アレルギー疾患の一つとして位置づけることができると考え報告した。