著者
阿蘇 司 原 正憲 藤原 進 平野 祥之
出版者
富山高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は、量子化学・分子動力学計算による知見を組み込んだDNA損傷の確率的計算モデル開発を目的としている。今年度は、(1)開発シミュレーションソフトウェアでの間接作用の影響を評価するためのラジカル発生と、その拡散・再結合相互作用の評価、(2)空間クラスタリング法を用いたDNA損傷の確率モデル検証、(3) 分子動力学計算を用いたDNA分子置換に起因する分子構造変化の影響評価、(4)ガンマ線照射による重水中DNA分子の水素置換評価実験を解析するための量子科学計算の導入を実施した。以下に概要を示す。(1) 間接作用では、ラジカル発生からその拡散・再結合を追跡して時間的な空間分布を計算してDNA分子の空間形状との対応によりDNA損傷の有無を判断する。計算アルゴリズムは試作したが、計算時間が長く精密な計算を行うことが容易ではないことがわかった。現在、文献調査等を通じてアルゴリズムの改良に着手している。(2) 空間スラスタリング法を利用して、直接作用と間接作用の両方を考慮したDNA損傷が評価できる状況にある。このソフトウェアを用いて、多様な条件でのシミュレーションを行なっている。また、(1)のシミュレーション開発のアルゴリズム改良に際しての参考に用いている。(3) DNA分子置換が生じた後に、DNA損傷に至る過程を分子動力学計算で評価を行なっている。また、トリチウム水の水分子がDNA分子構造にアクセスする様子を調べるために、水分子とDNA分子構造を入力した分子動力学計算によって、確率的なアクセス頻度を計算できる状況となっている。(4) 重水へのガンマ線照射により、DNA分子構造の水素が重水素に置換する可能性を調査している。ガンマ線照射実験で得られた赤外線吸収スペクトルを量子化学計算により解析して、置換反応の有無を評価している。
著者
齋藤 秀之 瀬々 潤 小倉 淳
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

ブナ目を代表してブナのゲノム構築法について検討を行い、ドラフトゲノムを構築した。ゲノム配列をアセンブリするソフトウェアはPlatanusが最良であった。ブナゲノムは対立する遺伝子座のヘテロ配列が大きく頻度が高い特徴をもつことが示唆された。RNA-seqのDe novoアセンブリは遺伝子の配列決定において配列数が収束せず、遺伝子推定にはゲノム配列情報が必須と考えられた。遺伝子ファミリー内での遺伝子の機能予測には、塩基配列情報に加えて遺伝子発現パターンが補助情報として有用であることが示唆された。最終的に523Mbp(カバー率96.9%)が完成した。
著者
細川 育子 細川 義隆 中西 正
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、ヒト口腔上皮細胞(TR146細胞)やヒト歯根膜由来細胞(HPDLC)を用い、炎症性サイトカインおよびケモカインに及ぼすCarnosic acid(CA)の影響を明らかとすることを目的に実験を行った。その結果、CAはIL-27が誘導したTR146細胞のCXCL9,CXCL10およびCXCL11の産生を抑制すること、また、IL-1βが誘導したHPDLCのIL-6,CXCL10およびCCL20の産生を抑制することが明らかとなった。これらのことより、CAは歯周炎病変局所にてケモカインや炎症性サイトカインの産生を抑制することにより、歯周炎の炎症を調節している可能性が示唆された。
著者
前川 佳代 森 由紀恵 宍戸 香美 宮元 香織
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究の目的は、多様な日本古代菓子について日本と大陸での実態を明らかにし、古代菓子を再現して活用することである。日本古代菓子の起源、伝来、実相、展開と変質を実証的に研究し、古代菓子の大陸におけるルーツと大陸に対して甘味料の甘葛煎は日本独自という由来を解明する。その過程で得られた情報から古代菓子を再現する。甘葛煎は菓子だけでなく平安時代に利用された薫物を再現する。再現した古代菓子や甘葛薫物の活用と普及を目指す。菓子は大陸の儀礼や行事とともに伝来した。その用法を食儀礼や修法を含め検討する本研究は、東アジアの食膳研究解明の第一段階である。次いで食膳形態や箸匙の使用法へと発展が見込まれる。
著者
中川 隆之 飯田 慶 喜多 知子 西村 幸司 大西 弘恵 山本 典生
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

哺乳類とは異なり、鳥類の聴覚器官である基底乳頭では、有毛細胞再生が自発的に誘導され、聴覚機能も再生される。鳥類とは異なり、哺乳類では有効性が期待できるレベルの聴覚機能再生は報告されていない。近年、鶏に関する遺伝子情報が充実し、網羅的遺伝子解析手法を用いて、これまで困難であった鳥類における有毛細胞再生に関連する遺伝子およびシグナルの詳細な分子生物学的解析が可能となった。鳥類における旺盛な有毛細胞再生機構を哺乳類における有毛細胞再生活性化に応用し、哺乳類蝸牛における有毛細胞再生効率を向上させ、新しい感音難聴治療薬開発につなげる。
著者
杉浦 正利
出版者
名古屋大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、日本人英語学習者がインターネット上の英語を読む際に、どのような情報を必要しているかを調査し、オンライン辞書を試作し、オンライン語学学習ツール開発のための基礎的な研究を行った。●研究実績(1)英語WWWページの収集:名古屋大学及び国内の大学の大学生が各自のホームページからリンクを張っている英語のページを調査し,1,000ページを収集しファイルして保存した(約2MB)。57,106行、326,849単語、2,153,141文字であった。(2)語彙頻度分析:上記ファイルを頻度分析し、アルファベット順、頻度順のリストを作成した。異なり語数は24,107語であった。(3)辞書ファイルの作成:語彙頻度の多い単語上位1万語に日本語訳をつけた。これは、総単語数中の93%に該当し、頻度が一回の単語(その多くは固有名詞)10,781語(3.3%)を除くと、事実上約96.4%の単語に日本語訳をつけたことになる。(4)辞書検索プログラムの作成:本研究専用WWWサーバをたちあげ、CGIを使い、Per1により辞書検索プログラムを作成した。(5)使用実験:実際に学生に利用させ、日本語訳の不十分さと、例文の必要性が判明した。日本語訳の充実は、試作開発である本研究の範囲を越えるので今後の課題とする。(6)例文検索プログラムの作成:(1)で作成したファイルの中から例文を検索表示するプログラムをCGIを使い、Perlで作成した。(7)インターネット用日本人英語学習者向けオンライン辞書の試作完成●研究結果日本人英語学習者が読みたいと思う英語のWWWページ中の96.4%の単語の日本語訳が出る辞書検索プログラム、及び、その単語が実際に使用されている例文を表示する例文検索プログラムを統合し、目的とするオンライン辞書の試作を完成させた。本プログラムは研究代表者のホームページよりインターネット上に公開されている。
著者
川村 清志 葉山 茂 青木 隆浩 渡部 鮎美 兼城 糸絵 柴崎 茂光
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は,被災地域における文化的支援が地域の生活文化の復旧に貢献しうるのかについての可能性を検討し,文化的支援の新たな可能性を、フィールドワークを通して検証することができた。東北地方太平洋沖地震後,有形・無形の文化財を救援してきた文化財レスキューは,改めて活動の意味・意義・活用が問われ,被災地の生活を再創造するための手法の確立が求められている。この要請から本研究は,レスキューした被災物についての知識の共有、活用を通じて,文化的支援のモデルを確立する。具体的には民俗学・文化人類学が被災地で果たす文化的支援モデルを構築し,地域文化へのアプローチの手段を深化させるものとする。
著者
横谷 明徳 赤松 憲 藤井 健太郎 渡邊 立子 漆原 あゆみ 鹿園 直哉
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

本研究では、放射線の直接効果によるDNAの損傷過程を、DNA中の特定元素を狙い撃ちができるシンクロトロン軟X線ビーム(以下軟X線)を用いることで解明することを目的としている。本年度はDNA塩基の蒸着薄膜試料を作成し、短寿命の塩基ラジカルをESRにより測定した。その結果、薄膜にわずかに水分子が吸着すると塩基ラジカルの収率が減少することを、窒素及び酸素のK吸収端の軟X線を利用することで新たに見出し、損傷過程においてDNAと配位水層との間の電荷交換相互作用が介在することが示された。一方、これまでに軟X線を用いて実験的に得られているDNAの1本鎖切断、2本鎖切断及びFpgなどの塩基除去修復酵素との反応で可視化された酸化的塩基損傷の収率について、モンテカルロシミュレーションによる理論的な解析を進め、特定元素の内殻吸収によりクラスター化した複雑なDNA損傷が生じることを明らかにした。さらに、軟X線と同様に高密度励起・電離を与えるイオンビームについても、研究当初には予定されていなかったが同様な実験を進め高LET放射線によるDNA損傷収率を得ることができた。また細胞レベルでの修復応答を調べるための新しい実験方法として、大腸菌の塩基除去修復酵素欠損株に損傷を含むDNAを適当なベクターで導入し、修復反応をさせた後に再び細胞からDNAを回収して損傷の修復度合いを測定する方法を確立した。この方法により、ふたつの塩基損傷からなるクラスター損傷により、修復欠損株では突然変異率が極めて増大することが明らかになった。さらにDNAとタンパク質がクロスリンクするタイプの損傷を調べる目的で、アミノ酸の薄膜に対する軟X線照射及びHPLC法による照射生成物の分析を行ない、光学異性アミノ酸に関する円偏光軟X線二色性スペクトルの測定に世界で初めて成功するとともに、アミノ酸同士が重合した二量体が生成することを確認した。
著者
横谷 明徳 渡辺 立子 秋光 信佳 岡 壽崇 鵜飼 正敏 福永 久典 藤井 健太郎 服部 佑哉 野口 実穂 泉 雄大 Hervé du Penhoat Marie-Anne
出版者
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

X線照射したEGFPプラスミドを“非照射”の細胞導入し、ライブセル観察によりEGFP蛍光の発現速度の低下から難修復性のクラスターDNA損傷が生じていることを示した。また軟X線を照射しながら水和デオキシリボース(dR)からの脱離イオンを測定し、水分子が分子の激しい分解を抑制すること、またその理由がdRから配位水への高速のプロトン移動によることを分子動力学計算により示した。さらに放射線トラックエンドで生じる多数の低速2次電子は、発生位置から数nm以上離れたところに塩基損傷を誘発し、修復過程を経てDNAの2本鎖切断に変換され得るクラスター損傷を生成することを示した。
著者
横谷 明徳 黒川 悠索 鵜飼 正敏
出版者
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

突然変異等など放射線による遺伝的変異の主要な要因であるDNAの分子損傷のメカニズムを、物理化学的観点から解明する。このため、DNAの電子状態に焦点を当て、ミクロな世界を支配する量子的性質と分子損傷の相関を実験と理論の両面から探る。特にハロゲンなど重い元素をDNAに取り込ませた生体に現れる高い放射線感受性のメカニズムを解明し、量子的観点から放射線増感剤の効果を制御するための技術開発に資する知見を得る。
著者
三辺 義雄 森 則夫 武井 教使 中村 和彦 豊田 隆雄
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

覚醒剤の乱用者数は世界中で増加している。覚醒剤の使用により、幻覚妄想状態、うつ状態、攻撃性の亢進など、様々な精神症状が惹起されることが知られている。さらに、これらの症状は覚醒剤の使用中止後もしばしば遷延することが報告されている。これまでの動物実験により、覚醒剤はセロトニン神経に対する傷害作用を有することがわかっている。そこで我々はポジトロン・エミッション・トモグラフィー(PET)を用いることにより、セロトニン・トランスポーター(5-HTT)密度を測定し、これらの変化と臨床的特徴との関連について検討した。なお、本研究は浜松医科大学倫理委員会で承認を得ており、研究の詳細を説明した後に文書による同意を得た者のみを対象とした。対象は覚醒剤使用者12名及び健常者12名である。精神症状評価には、攻撃性評価尺度、ハミルトンうつ病評価尺度、ハミルトン不安評価尺度、簡易精神症状評価尺度(BPRS)を用いた。トレーサは、5-HTTへの選択性の高い[^<11>C](+)McN5652を用いた。動脈血漿及び脳内から得られた時間放射能曲線を用いて[^<11>C](+)McN5652 distribution volumeイメージを作成し、これらのイメージをもとにvoxel-based SPM全脳解析を行った。覚醒剤使用者では、健常者と比較して、脳内の広範囲における5-HTT密度が有意に低下していた。また、眼窩前頭前野、側頭葉、前帯状回皮質における5-HTT密度の低下が攻撃性の増強と密接な関連があることが明らかとなった。これらの結果とこれまでの動物実験の結果とを勘案すると、覚醒剤使用者ではセロトニン神経が傷害されている可能性があることが示唆された。セロトニン神経は攻撃性や衝動性を抑制する働きを担っていると考えられている。覚醒剤使用者では、セロトニン神経が傷害された結果、セロトニン神経の機能障害が生じ、攻撃性が亢進するものと考えられる。現在この結果は論文受理された。さらにproton MRS studyでは、トルエン患者の基底核の膜代謝異常が、患者の精神症状の程度と相関していることを見出し、論文発表した。
著者
小林 快次
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

「今世紀最大の発見、恐竜全身骨格化石」が,平成25・26年に北海道むかわ町穂別から発掘された.通称“むかわ竜”と呼ばれている全長8メートルを超える巨大恐竜で,平成27年に行われた記者発表は,世界を騒がせた歴史的な発見だった.日本の恐竜研究史の中で,国内から発見された恐竜骨格化石としては,最も完全な骨格であり,恐竜絶滅直前の白亜紀末の恐竜としても国内初の全身骨格である.本研究では,この“むかわ竜”を記載・比較研究することで新属新種として命名し,この恐竜が属すグループである植物食恐竜ハドロサウルス科の進化と移動の解明,そして恐竜絶滅直前の東アジアの多様性の解明を目指す.
著者
池谷 真 上谷 大介 趙 成珠
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

腱・靭帯は再性能に乏しい組織であるため、障害が起こると放置しても治らない。iPS細胞などの幹細胞から腱・靭帯組織を誘導し、損傷部位を補填する方法が1つの手段として考えられるが、これまで腱・靭帯細胞を誘導するロバストな方法は存在しなかった。申請者らは2018年に、世界で初めてヒトiPS細胞から靭帯細胞の前段階の細胞である靱帯節細胞を誘導するプロトコールの開発に成功した。本研究は、この細胞を将来の再生医療に応用するため、目的外細胞の混入、誘導過程での動物由来成分の使用、生体内機能の証明といった課題を、科学的に克服する。
著者
阿部 慶子
出版者
一関工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

コーヒーは,我々に「癒し」や「ひらめき」を与えてくれるとされる日本人にとってもはや一般的になった嗜好品である.さらに,生理的星医学的にも見直され,近年ますますその効果の研究が盛んになっている.毎日の生活の中で取り入れられている嗜好品として,コーヒーはその香味や新鮮な風味を維持しているかがしばしば問われることになるが,コーヒーが飲料の形になるまでは,生産国から輸入した生豆の状態から,選別・焙煎を経て,さらに粉砕という過程を経る.とくに,この時に発生する摩擦熱により,香味や風味が損なわれるとされていることから,本研究では,家庭用の手挽きコーヒーミルでどれほどの熱が発生し,美味しさや成分にどのような影響があるのかを解明することを目的とした.本研究では,新鮮な焙煎豆をグラインドし,その時に発生する粉砕熱を熱電対により測定したコーヒーミルにはカリタKH-3を使用し,粒度のサンプルをとった.次に,実験装置の構築のために3D-CADでミルをトレースした.なお,コーヒーメーカーにより抽出したコーヒー飲料に含まれるクロロゲン酸成分を,高速液体クロマトグラフィーを用いて測定することを予定していたが,装置の都合により,粉砕熱を測定するところまでを実施した.測定の結果,2人分のコーヒー豆26gを,特に意識しないスピードで粉砕する際に,ミルの粉砕物が堆積する底部において5℃程度の温度上昇が確認できた.なお,本研究は国内の企業から研究協力をいただき,コーヒー起源伝説に関しての研究へと繋げることができた.その研究においては,コーヒー果実にもカフェインが含まれていることが明らかになり,コーヒー果実を煮出した液体と果実を搾った液体に含まれているカフェイン量をそれぞれ調べた結果,含有量はコーヒー飲料には及ばないものの,人体に覚醒効果をもたらすことができる十分な量と推測できた.(782字)
著者
太田 考陽
出版者
静岡大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

本年度も引き続き、脊椎動物種々の肝臓構造の比較、その違いを生み出す分子進化の研究を行い、その成果を学会等で発表し学術論文の執筆を行った。比較ゲノム解析により、進化的保存された転写調節領域(ECR)の候補を同定したが、肝臓進化には直接関わらない領域であると予想され、予定していたゲノム編集を用いたECR領域の機能解析は断念した。その一方で、jag1の分子進化・ゲノム進化に関しては引き続き解析を進めた。その結果、真骨魚類特異的なJag1重複遺伝子間では、様々な観点で保存傾向と革新傾向を示すことが明らかとなり、この傾向は重複直後の決定ではなく、各系統群間の進化の中で別々にその傾向が決定していることが明らかとなった。これらのバリエーションの違いが真骨魚類の多様性を引き起こしている可能性があり、これらに関して論文の執筆を行っている。また、本年度は、肝臓の起源・進化に迫るため、原始的な肝臓の探索を目標に行った。哺乳類から系統的に離れている円口類ヌタウナギとスナヤツメ、軟骨魚類イヌザメの肝臓が、形態学的・遺伝子発現的に哺乳類の肝臓と類似しているのかin situ hybridization法を用いて調べた。その結果、円口類の肝臓でも、肝機能を担う“肝細胞”と、胆汁を運ぶ胆管を構成する“胆管上皮細胞”は、哺乳類同様の遺伝子発現差で区別することができた。このことから、形態学的でも分子レベルでも顎口類と円口類の肝臓は類似していると明らかにし、脊椎動物は同一起源の肝臓を保持していると予想された。また、イヌザメの胚を使用した発生の比較解析では、軟骨魚類は哺乳類の肝発生様式と非常に類似した発生様式を有することが明らかとなった。このことから、軟骨魚類と哺乳類の肝発生システムは同一起源である可能性が高く、少なくとも顎口類誕生前後には哺乳類での肝発生システムと同様のシステムが確立していたことが予想された。
著者
山口 陽子
出版者
島根大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

我々ヒトを含む脊椎動物の大半は、鰓や腎臓の働きにより、体内の水分とイオンのバランスを常に一定に保つ「調節型」生物である。この体液調節能力の起源を明らかにするため、現生脊椎動物で唯一、体液組成が海水と等しい「順応型」のヌタウナギに着目する。ヌタウナギの鰓・腎臓および筋肉で、各種物質輸送に関わる分子群やホルモン受容体の局在パターンを調べ、個体レベル(鰓・腎臓)および細胞レベル(筋肉)での体液調節機構を検証する。これにより、「調節型」と「順応型」の違いを生み出す分子基盤を解明する。
著者
繁宮 悠介
出版者
長崎総合科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

交尾器破壊が起こらず多回交尾が可能なゴミグモでは、オスはメスの交尾歴に基づくメスの選択を行わず、交尾器破壊が起こり1回交尾と考えられるミナミノシマゴミグモでは、春世代に限れば未交尾のメスが選ばれやすかった。オスが糸を弾いて送る振動信号(求愛歌)は、種間の違いはあるものの、ミナミノシマでメスの1回交尾の機会を獲得するためにオスが行動を進化させている証拠は見つからなかった。どちらの種でも、メスの網に2匹のオスが同時に侵入した場合にもオス間の闘争は見られず、メスはどちらのオスとも交尾するなど、メスによる選択も起こらないようだ。
著者
米田 誠 田中 雅嗣 小坂 浩隆
出版者
福井県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

「橋本脳症」は、慢性甲状腺炎に伴う自己免疫性精神神経疾患で、免疫治療が奏効する。橋本脳症の中には幻覚・妄想を呈する患者も多く、統合失調症の中に橋本脳症が潜在する可能性がある。本研究では、①抗NAE抗体を用いて統合失調症と診断されている患者から橋本脳症を抽出し、②その臨床的特徴(臨床情報・症候、脳画像MRI、脳還流SPECT)と背景遺伝子多型(免疫関連)を明らかにし、最終的に③診断指針を作成する。