著者
西川 朋美 細野 尚子 青木 由香
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.163, pp.1-16, 2016 (Released:2018-04-26)
参考文献数
11

本稿では,日本生まれ・育ちの日本語を第二言語とする(以下,JSL)子どもの中にも,日本語モノリンガル(以下,Mono)にとっては“簡単な”和語動詞が十分に使いこなせていない子どもがいることを指摘した西川他(2015)の報告に,JSL・Mono各グループ内の学年間の語彙力の違いに関する検証を加える。研究1では,小2~中1のJSL163名とMono1,333名について,合計得点の変化を量的に分析し,JSL・Mono共に概ね学年とともに得点が上昇するが,JSLはMonoに追いついてはいないことを明らかにした。研究2では,Mono幼稚園児60名のデータも加え,各アイテムの正答率の変化を検証した。JSL・Mono共に,自身の経験が乏しい動作に対応した動詞・用法が苦手だが,JSLの場合は,経験に伴う自身の経験の蓄積が,Monoのようには日本語語彙の習得には結びついていない例があることを明らかにした。
著者
安部 厚志 若旅 正弘 石橋 清成 岡本 善敬 内田 武正 山本 哲
出版者
脳機能とリハビリテーション研究会
雑誌
Journal of Rehabilitation Neurosciences (ISSN:24342629)
巻号頁・発行日
vol.22, no.JPN, pp.222402, 2022 (Released:2022-12-30)

This study reports a case of a paraplegic stroke patient who had difficulty walking with an ankle–foot orthosis, but was able to walk independently with a short knee–ankle–foot orthosis (semi-KAFO). A 34-year-old man presented with right hemiplegia due to left putaminal hemorrhage. At 143 days after the stroke onset, he could not obtain sufficient support for the paralyzed leg and required assistance during his walk with an ankle–foot orthosis because the knee joint of the paralyzed side was always flexed due to knee flexor hypertonia. Conversely, he was able to walk with a semi-KAFO under observation. He practiced putting on and taking off the semi-KAFO, standing, sitting, walking, and toileting with a semi-KAFO for three weeks. At 164 days after stroke onset, he was able to walk and toilet independently with a semi-KAFO. This study’s results indicate that a semi-KAFO is useful as a daily living orthosis for hemiplegic stroke patients who have difficulty walking with an ankle–foot orthosis due to increased knee joint flexor muscle tone.
著者
中尾 悠利子 石野 亜耶 國部 克彦 田中 優希 西谷 公孝 岡田 華奈 奥田 真也 Weng Yiting 増子 和起 越智 信仁 牟禮 恵美子 大西 靖 北田 皓嗣
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

既存のAI(人工知能)を活用したESG(環境・社会・ガバナンス)評価研究では,ESG投資を既存の財務投資のパラダイムの下で発展させることは可能であっても,ESG投資の本来の目的である社会や環境への貢献を目指した投資の側面を発展させることには大いに限界がある。そこで,本研究では,ESG投資の本来の目的に立ち返り,どのようにすれば,AIによって,このようなESG投資のために情報開示における多様性をさらに発展させて,社会の改善につなげることができるのかを学術的問いとし,探求する。
著者
杉山 康司 青木 純一郎
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.173-180, 1990-06-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
44
被引用文献数
1

本研究の目的は高酸素気吸入トレーニングが平地での全身持久力に及ぼす効果を明らかにすることであった.日常規則的な持久性のトレーニングを行っていない男子体育学部生12名を被験者とし, 正常気吸入トレーニング群 (正常気群) および高酸素気吸入トレーニング群 (高酸素気群) に2分した.高酸素気群のトレーニング強度は高酸素 (60%酸素) 吸入時に得られたVo2maxの85%, 正常気トレーニング群の強度は空気吸入時に得られたVo2maxの85%とした.トレーニング時間は高酸素気群を10分とし, 両群の仕事量を等しくするために, 正常気群は10分22秒から11分30秒とした.また, トレーニングの頻度および期間は両群とも週3日および4週間であった.この結果, 正常気群ではオールアウトタイムが17分18秒±1分37秒から19分7秒±1分53秒および乳酸閾値が19.6±4.3ml/kg・分から23.0±4.5ml/kg・分にそれぞれ有意に向上した.Vo2max, 最大換気量およびトレーニング中の心拍数には変化は認められなかった.一方, 高酸素気群ではオールアウトタイムが17分56秒±1分24秒から19分33秒±1分41秒および乳酸閾値が19.7±3.0ml/kg・分から24.9±4.0ml/kg・分に有意な向上を示したことに加え, Vo2mmxおよび最大換気量にそれぞれ46.1±4.6ml/kg・分から51.0±4.3ml/kg・分および117.3±13.8l/分から135.1±18.4l/分の有意な増加が認められた.さらに, トレーニング中の心拍数については有意な減少が認められた.以上の結果から, 高酸素気吸入トレーニングは全身持久力のうちVo2maxを指標とする呼吸循環機能を改善させるのに正常気吸入トレーニングよりも効果的であると結論された.
著者
前川 圭一郎 荻野 昌秀 田中 善大
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.105-118, 2023 (Released:2023-10-13)
参考文献数
17

本研究では,中学校において学校規模ポジティブ行動支援(SWPBS)の第1層支援に加えて,データに基づく学年規模ポジティブ行動支援(GWPBS)を1年生に対して実施し,その効果を検討した。GWPBSを効果的に実施するために,米国の管理職への規律指導に関する照会(Office Discipline Referral: ODR)を基にした生徒指導記録の件数のデータを用いて支援に関する意思決定を行った。GWPBSとしてキャンペーン形式の第1層支援に加えて第2層支援を実施した。GWPBSの効果を検討するために,生徒指導記録件数の測定に加えて,生徒の適応・不適応に関する質問紙尺度を実施した。GWPBSを実施した結果,対象学年(1年生)の生徒指導記録件数が減少し,特にSWPBSのみでは十分な減少が見られなかった標的行動に十分な減少が見られた。質問紙尺度については,GWPBSの対象学年において,他の学年では見られなかった不適応の指標の改善が確認された。結果から,本研究で実施したデータに基づくGWPBSが,対象学年の生徒の不適切な行動の減少と,それに伴う主観的な不適応の改善に効果があったことが示された。【インパクト】本研究は,米国の学校規模ポジティブ行動支援(SWPBS)で標準的に実施されているデータに基づく意思決定を含む形での学年規模ポジティブ行動支援(GWPBS)の実践を日本の学校において実施し,その効果を検証したものである。日本の学校におけるデータに基づくGWPBSに関する実践研究は,これまでに例のないものであり,本研究の結果は,今後日本におけるSWPBSの普及,発展にとって重要なものである。
著者
糟谷 大河 丸山 隆史 保坂 健太郎
出版者
The Mycological Society of Japan
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.5-15, 2022-05-01 (Released:2022-07-07)
参考文献数
31

日本新産の2種のザラミノシメジ属菌,Melanoleuca alboflavida(アシボソザラミノシメジ,新称)およびM. griseobrunnea(ネズミザラミノシメジ,新称)を,形態的特徴の記載と図を添えて報告した.細長く直立し,軟骨質で白色を帯びる柄と,フラスコ形から紡錘形の側シスチジアおよび縁シスチジアがM. alboflavidaを特徴づける形質である.一方,M. griseobrunneaはかさが淡灰褐色を帯びる点,柄の基部の肉が淡灰色から褐色を帯びる点,そして縁シスチジアが長首フラスコ形で結晶を有する点により特徴づけられる.核rDNAのITS領域を用いた分子系統解析により,これら2種の同定結果が支持されたとともに,M. alboflavida はMelanoleuca亜属に,M. griseobrunneaはUrticocystis亜属に位置することが示された.
著者
佐藤 智美
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.185-206, 2021-07-07 (Released:2023-04-08)
参考文献数
19

学校女性管理職比率は,1990代に小学校を中心に本格的な上昇を示していたにも関わらず,2000年代半ば以降停滞・低下している。 本稿の目的は,女性管理職比率の停滞・低下の要因について,「教育改革」下における女性教員の意識や経験の変容とそれらが管理職志向にもたらしている影響を明らかにすることである。 調査対象とした大分県の小学校女性教員のライフヒストリー・インタビューを分析した結果,以下のような知見が得られた。 ①「教育改革」下の多忙化は,男性教員より家庭責任の重い女性教員の方により多くの困難をもたらしていた。そのために,女性教員は,管理職試験の準備や昇任後の家庭との両立に危惧をもち,管理職志向を低下させていた。②女性教員は,「教育改革」下の管理職を,権威的な「管理者」「評価者」とみなし,それに対する親和性が低いため,管理職志向を低下させていた。③「教育改革」下の管理職の重責化に対して,女性教員は自らを力量不足と見なし,管理職志向を低下させていた。彼女たちは,男性教員の倍以上の努力や成果を示さなければ認められなかった経験を通して,女性管理職に対する厳しい視線を強く意識し,優秀な女性でなければ管理職は務まらないと見なしていた。 これまで,「家庭との両立」「キャリアパスや登用過程」の側面から論じられてきた女性管理職の低比率や停滞の要因に,「教育改革」という政策の影響を付加することができたと言えよう。
著者
古幡 博
出版者
The Japan Academy of Neurosonology
雑誌
Neurosonology:神経超音波医学 (ISSN:0917074X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.31-35, 1999-02-28 (Released:2010-10-14)
参考文献数
5
被引用文献数
2 1

From the viewpoint of safety, it is necessary for the diagnostic ultrasonic equipment used in clinical practice to satisfy the FDA 510 (k) requirement track III. The new requirement requires medical doctors and staff to have a greater understanding of ultrasonic bioeffects as indicated by the mechanical index (MI) and the thermal index (TI), on the real-time display of recently developed diagnostic ultrasonic devices.This article describes the significance of MI and TI and the variables in clinical use. Also it is noted that the ultrasonic examiner should uphold the principle of ALARA (as low as reasonably achievable) in clinical use.
著者
北森 俊行
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測と制御 (ISSN:04534662)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.382-391, 1980-04-10 (Released:2009-11-26)
参考文献数
7
被引用文献数
5
著者
大谷 道輝 佐久間 博文 高山 和郎 小滝 一 澤田 康文 伊賀 立二
出版者
一般社団法人 日本医療薬学会
雑誌
病院薬学 (ISSN:03899098)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.11-18, 1997 (Released:2011-08-11)
参考文献数
24
被引用文献数
11 9

Six kinds of well-prescribed admixtures of commercially available ointments and/or creams were selected from the prescribed sheets in our hospital. The skin permeability of corticosteroid from these admixtures was investigated by in vitro experiments using hairless mice skin. The permeability of corticosteroid through skin after adaptation of corticosteroid creams (Lidomex®) alone was approximately 9-fold larger as compared with that of the ointments only.The pemeability of conicosteroid in the admixture of Nedsona Universal®cream or Lidomex®ointment and urea ointments respectively was 3-and 5-fold larger than that from the cream and ointments alone. However, urea ointments did not influence the permeability of the drug in Lidomex®creams.This suggested that the w/o-type urea ointments more greatly enhanced the permeability of corticosteroid as compared with the o/w type urea ointments. The extent of the stability of the emulsion after mixing was related to the permeability. These results suggest that admixing ointments and/or creams should be carried done among bases having similar physicochemical characteristics.
著者
山西 貞 内田 温子 川島 洋子 藤波 大和 宮本 眞紀子
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1974, no.41, pp.48-53, 1974-06-20 (Released:2009-07-31)
参考文献数
7
被引用文献数
1

さやまみどりの煎茶製造には萎凋操作を加えて,独特の芳香を発揚することが行なわれている。この現象とさやまみどりの特殊香気の本質について研究し,次のことが明らかとなった。1)さやまみどりはやぶきたに比べ,リナロール,α-テルピネオ~ル等のモノテルペンアルコールは少ないが,甘い花香を有するネロリドールが著しく多い。2)さやまみどりには木のにおいをもつ1種の未知物質が存在するが,萎凋によりこれはエステル(菊またはセリ様の香)に変わる。3)インドールはさやまみどりに多く,これが多すぎると不快なにおいになる。萎凋により,インドールは減少する傾向があり,この処理により香りのバランスが好ましいものになると考えられる。4)酸の中,不快臭であるカプロン酸は萎凋によって著しく減少し,好ましい香りのエステルに変わる。