著者
石川 洋行
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.81-93, 2014 (Released:2020-03-09)

J. ボードリヤールの消費理論において余暇と自由時間の不可能性が繰り返し論じられているのは単なるニヒリズムからではない。『消費社会』をはじめとするその初期の仕事では、外部性を喪失した自己準拠的システム、超越性の解体、記号的なコミュニケーションの跋扈、そして構造=関係的因子の過剰による主体性の消滅といった問題点が呈示され、その各々に貨幣、記号論、人類学、精神分析などの諸理論が援用されることで、多様な思想史的射程を背景に消費社会のシステム論的読解が試みられる。翻ってこれらの問題は、余暇領域において時間の強迫観念的な交換価値化、「気遣い」の過剰、主体性の裂開という様々な矛盾をもたらすことになる。逆に言えば現代的な余暇活動に積極的意義を見出すならば、そのような単一な自己準拠的システムからの脱出が試みられる限りにおいてに他ならないのである。ボードリヤールは、資本=科学の駆動があらゆるモノを可換化し、人間学的に形成された様々な象徴秩序を解体させていく様子をその外側からリアリスティックに描こうとする。それは、聖俗の秩序が完全に消失し、平板化した記号的現実の日常のもとに演ぜられる、擬態的なシミュレーションの世界の到来を予測させるものであった。
著者
宮崎 勝彦 宮崎 佳代子 銅谷 賢治
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.95-100, 2013 (Released:2017-02-16)
参考文献数
28

セロトニン神経系による予測と意思決定の制御機能の1つとして衝動性との関わりが考えられる。これまでの研究から,中枢セロトニン神経系は将来起こりうる罰・嫌悪の予測に基づいて動物の行動を抑制することに関与することが示されている。行動抑制の障害は衝動性の亢進を引き起こすと考えられる。しかしながら,これまでの研究からセロトニンの関与が示された衝動性の中には,セロトニンの嫌悪刺激に基づく行動抑制としての働きで説明が困難なものも存在する。我々のグループはラットを用いた実験から,遅延報酬を獲得するための待機行動にはセロトニン神経活動の活性化が必要であることを見出した。我々は報酬獲得の目的のために辛抱強く待つことを「報酬予期に基づく待機行動」と定義し,セロトニン神経は「報酬予期に基づく待機行動」と「嫌悪予測に基づく行動抑制」の両方に関与しているという仮説を提案する。
著者
金 恩淑
出版者
愛知教育大学社会科教育学会
雑誌
探求 (ISSN:13429434)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.6-13, 2009-02-14
著者
渡辺 正仁 由留木 裕子 有末 伊織 藤田 浩之 出田 めぐみ 西井 正樹 築山 邦男 渡辺 克哉
出版者
保健医療学学会
雑誌
保健医療学雑誌 (ISSN:21850399)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.160-174, 2020-10-01 (Released:2020-10-01)
参考文献数
40
被引用文献数
1

今日,一般に「酸化ストレス」と言われる活性酸素種による障害が種々の疾患に関与することが明らかになってきている.生理学的に酸素を使う中で,活性酸素種は発生する.他方,これまで生体にとって不活性で機能を持たないと考えられてきた分子状水素がヒドロキシラジカルやペルオキシナイトライトなど,特定の活性酸素種と反応することが発見されて以来,多くの研究成果が蓄積されつつある.本稿では活性酸素種と水素療法に関するこれまでの知見を概観し,水素療法理解の基礎としたい.
著者
島田 充彦
出版者
The Japan Society of High Pressure Science and Technology
雑誌
高圧力の科学と技術 (ISSN:0917639X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.151-160, 1993-05-20 (Released:2009-08-07)
参考文献数
64

Deep-focus earthquakes occur at depths from the earth's surface up to 680 km (corresponding to pressure of 24 GPa). They occur only in the restricted areas in the earth, or the subduction zones. There have been many studies on the nature of the deep-focus earthquakes, but they have not been widely accepted since each model has both advantage and disadvantage to explain the observation facts and the physical, chemical and mechanical properties of rocks and minerals. Recently, two new models are proposed based on the high pressure experiments, to - gether with our understanding of the structure of the subduction zone. One is the transformation faulting (or anticrack faulting) model, and the other is the amorphization model. In this article, these new models inferred from high pressure experiments are reviewed with the brief history of the finding of deep - focus earthquakes and of the studies of their mechanism.
著者
白山 肇
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.131-141, 1973-05-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
41
被引用文献数
2
著者
石井 延久 高波 真佐治
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

現在、勃起神経の局所の損傷を正確に診断できる神経機能検査はない。今回われわれは低周波電気刺激による勃起の誘発と神経の伝導時間の測定方法を検討した。先ず、現在インポテンスの神経学的検査として行なわれている球海綿体誘発筋電図による潜時(bulbo-cavernosus reflex latency time:BCR-L)についてインポテンス343例の臨床成績を検討した。結果は勃起が可能であった若年症例のBCR-Lに延長がみられたり、明らかに勃起神経に損傷を有する症例のBCR-Lが正常範囲であったり、必ずしもBCR-Lの成績と臨床像が一致しないことを明らかにした。そこで、われわれは低周波電気刺激装置を使用して勃起の誘発と陰茎背神経までの伝導時間の測定を試みた。方法は麻酔科領域で疼通治療に使用されている硬膜外脊髄電気刺激法による勃起の誘発と脊髄-陰茎背神経の伝導時間の測定を試みた。症例は重症感電による下肢の痙性疼通と排尿障害を伴うインポテンス患者である。この症例では脊髄陰茎背神経の伝導は障害されており、電気刺激による勃起は誘発できなかった。しかし、脊髄神経の刺激により、下肢の痙性疼通と排尿障害は改善した。本法は脊髄刺激の方法を改善することによりインポテンスの治療に応用するつもりである。このように脊髄刺激による陰茎背神経の表面電位の変化が容易に測定できることからインポテンス22例に経皮的に仙髄部に低周波電気刺激による陰茎背神経の表面電位変化の測定を試みた。結果は22例中17例に仙髄電気刺激による陰茎背神経の表面電位の変化が測定された。その結果、仙髄-陰茎背神経の伝導時間は平均7.79msecで、所家の報告とほぼ一致するデータであった。本法は経皮的に電気刺激するため侵襲がなく、外来で容易に施行できるよい方法と考えられた。
著者
山口 裕之 阿部 智和
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
pp.20220801-2, (Released:2022-08-01)
参考文献数
58

ビジネスモデルの逸脱的変化を巡る先行研究では,ビジネスモデルの慣性が前提に置かれることで,一時的な変化プロセスが注目され,継続的な変化プロセスは看過されてきた.この間隙を埋めるべく,支配的なビジネスモデルからの逸脱を継続的に果たした事例を対象とした経時的事例分析を行う.この分析からは,慣性をもたらすと考えられてきた要因によって逸脱的な局所変化が誘発・波及・増幅されていくダイナミクスが明らかとなる.
著者
蔦島 譲治 高宮 考悟 内田 琢
出版者
宮崎大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

「児童虐待」は重大な社会問題となっている。この研究では、親の「恐怖記憶」が子供に遺伝し、子供の行動に影響を与えるかを検証する。本研究による成果は、「虐待を受けた親」と「児童虐待」との関連を動物行動実験により、「恐怖記憶の遺伝」という生物学的根拠とそのメカニズム解明により、虐待の連鎖を阻止することにある。申請者の予備実験では、音と電気刺激による恐怖条件付けした親マウスを交配させ、誕生した仔マウスに音を聞かせると恐怖反応(freezing)を示した。すなわち、親の「恐怖記憶」が仔に遺伝したことを示唆する結果を得た。さらに用いたマウスを使用し、「恐怖記憶の遺伝」を分子レベルで解析したい。
著者
長谷川 修司
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.75, no.9, pp.576-579, 2020-09-05 (Released:2020-11-18)
参考文献数
2
被引用文献数
2

物理教育は今国際物理オリンピック過去問シリーズ考える実験試験――国際物理オリンピック2006の実験問題
著者
吉田 直久 内藤 裕二 小木曽 聖 廣瀬 亮平 稲田 裕 半田 修 小西 英幸 八木 信明 柳澤 昭夫 伊藤 義人
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.3810-3815, 2014 (Released:2014-11-28)
参考文献数
14

【目的】大腸内視鏡検査における高濃度ポリエチレングリコール(PEG)であるモビプレップ®の服用量減少の検討を行った.【方法】対象患者は前日に検査食,ピコスルファートナトリウム20mlを,当日はモビプレップ®1L+水0.5Lを服用した.洗浄時間,内視鏡的洗浄度,服用前後の血液検査を検討した.なお従来PEG服用123名を比較対象とした.【結果】モビプレップ®投与111名において平均洗浄時間は165±53分であり従来PEGの192±72分に比し有意に短時間であった.良好な内視鏡的洗浄度が得られた割合は右側結腸で85.8%であった.血液検査で投与後血清Cl値の有意な低下を認めた.【結語】モビプレップ®は前日の検査食,緩下剤を併用することで服用量を減量しえた.
著者
小沢 真
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.248-261, 1981-07-31 (Released:2008-12-25)
参考文献数
39
著者
山岸 功 三村 均 出光 一哉
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.166-170, 2012 (Released:2019-10-31)
参考文献数
9
被引用文献数
2 8

福島第一原子力発電所事故の収束に向けた取組みにおいて,2011年12月にステップ2の完了が宣言された。原子炉の冷温停止状態を支える循環注水冷却に関しては,仮設の水処理設備が稼動しているが,恒久的な水処理設備の設置,汚染水処理で発生した2次廃棄物の保管・処理・処分への取組みも求められている。本稿では,汚染水処理の現状を整理し,吸着剤の性能,今後の処理・処分に関わる技術的課題を解説する。
著者
奥村 為男
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.62-69, 1992-01-10 (Released:2008-04-21)
参考文献数
17
被引用文献数
12 10

Reactivity or degradation of 135 pesticides was investigated in waters containing residual chlorine and ozone to clarify their behaviors in water purification processes, and discussed with respect to their molecular structures (or functional groups).The pesticides were divided into two groups according to their reaction behaviors to chlorine and ozone. One group was for pesticides reactive with chlorine and more reactive with ozone, and another included pesticides undegradable by chlorine but easily degradable by ozone. Function groups or chemical structures reactive with both chlorine and ozone were thiophosphoryl, sulfide, dithiocarbamate, thiocarbamate, uracil and phenol. Ether bond such as aliphatic hydrocarbon (Al)-O-Al and aromatic hydrocarbon (Ar)-O-Al and Cl-unsubstituted C=C (double) bond were degraded not by chlorine but by ozone. Ar-O-Ar ether, ClC=C (double) bond, phosphoryl groups, dinitroaniline and dinitrophenol were undegradable by both chlorine and ozone.With respect to molecular structure, triazine, acid-amide, carbamate and diphenylether were basically stable against both chlorine and ozone. Reactivity of pesticides including any these structure seemed to be derived from inner side-chain(s) with reactive site(s) for chlorine or ozone.The results showed that there were much more pesticides reactive with ozone than those with chlorine.
著者
浜村 保次
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.7, pp.364-370, 1963-12-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
39
被引用文献数
3 4