著者
有賀 祥隆 浅井 和春 山本 勉 武笠 朗 長岡 龍作 津田 徹英 泉 武夫 瀬谷 貴之 井上 大樹
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

三か年の期間中に、東北(岩手・宮城)、関東・甲信越(群馬・千葉・東京・神奈川・山梨)に加え、範囲を関西(京都・奈良)と中国地方(広島)にも一部広げ、都合、寺院・神社24ヶ所、34件46躯1箇1片、公共機関6ヶ所、8件20躯1双1柄、個人1ヶ所、1件1躯の物件を調査し、詳細な写真と基礎データを収集した。この成果は刊行準備中である。
著者
久井 貴世
出版者
北海道大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2016-08-26

本研究の目的は、歴史資料を用いた調査から、江戸時代の日本に生息していたツル類各種の生息実態のうち、特に渡りに関する生態を明らかにすることである。江戸時代の幕府・藩の公用記録、博物誌資料、地誌、紀行・旅行記などを対象としてツルに関する記録を収集し、ツルの渡来地・渡来時期を示す記録を用いて、GIS(地理情報システム)によって種別、月別の分布図を作成した。これにより、江戸時代におけるツルの分布と渡りを視覚的に把握することを可能とした。本研究では、ツルの種による渡来状況や移動傾向の違い、現在日本では繁殖しないマナヅルやナベヅルの繁殖、あるいは北海道外でのタンチョウの繁殖の可能性を明らかにした。
著者
北谷 和之
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

セラミド量の変動は卵巣がん転移の重要因子である可能性が考えられる。本研究では卵巣がん転移におけるセラミドおよび生成・代謝酵素の意義を明らかにした。まずマウス卵巣がん転移モデルから4株の易転移性卵巣がん細胞を樹立した。これらのセラミド量を定量したところ、易転移性細胞ではセラミド量およびセラミド合成酵素 2発現が低下することを発見した。さらに卵巣がん腹膜播種マウスモデルにおいて、セラミド合成酵素2の発現を抑えることで播種転移が有意に抑制された。したがって、セラミド合成酵素の発現抑制およびセラミド量低下が卵巣がん転移の原因であると考えられる。
著者
村田 道雄 佐々木 誠 安元 健
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

マイトトキシンは、植物プランクトンである渦鞭毛藻が生産する分子量3422のポリエーテル化合物であり、天然物中最大の分子量と非常に強い毒性によって、現在最も注目されている海洋天然物である。われわれは、1993年にマイトトキシンの平面構造とエーテル環が連続している部分の立体化学を明らかにしたが、その他の鎖状部分に関しては未解明の部分が多い。本一般研究Bにおいて、エーテル環をつなぐ部分の立体配座(F-G環の間の2個の不斉炭素とM-N環の間の2個の不斉炭素)を主に有機合成化学的手法により決定することができさらに、C1-C14とC134-C142の側鎖部分に関して立体化学と回転配座を求めた。新たに開発したNMRのスピン結合定数(^<2,3> J_<C,H>と^3 J_<H,H>)と分子力場計算を併用した方法をこの部分に適用した結果、側鎖に存在するすべての不斉炭素を推定することができた。さらに、推定立体構造を有する合成フラグメントと天然物のNMRデータを比較することによって確認作業を進め、同時に、エナンチオ選択的なフラグメントCの合成を行ない、天然の分解物と比較することによって絶対構造を決定することができたので、ここにマイトトキシンの完全構造決定が完成した。
著者
松尾 知之
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、これまで困難とされてきた投球動作中の肩甲骨の動きを計測することを可能とした。複数肢位のキャリブレーション姿勢において、肩甲骨体表部に半径3mm の小型反射マーカーを2.5cm間隔で8行7列貼付し、その凹凸や角度、高さ情報から重回帰分析によって数学モデルを生成した。従来型のマーカークラスター法(AMC法)と比較すると、AMC法ではリリース付近で明らかなノイズが出現したが、そのノイズは消失しており、投球全域に亘って計測可能なことが確認された。この肩甲骨可動モデルをつかって、キネマティクスの算出を試みた結果、肩関節のnet forceのピーク値は、むしろ増加したことが明らかとなった。
著者
宝来 聰 潘 以宏 斎藤 成也 石田 貴文 PAN I-Hung
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

本研究は、2年間にわたる台湾先住少数民族の人類遺伝学的調査である。これら先住民族は、高山族(現地では山胞)と総称されているが、過去における言語・風俗の違いより、さらに9種族(プユマ族、ルカイ族、パイワン族、ブヌン族、アミ族、ヤミ族、タイヤル族、ツオウ族、サイセット族)に分類されている。この研究では、これら9族すべてを網羅した、各種遺伝マ-カ-を指標とした人類遺伝学的研究により、各種族の遺伝的特徴を明かにすると共に、高山族間の遺伝的関係さらには、他の人類集団との比較分析より高山族の遺伝的位置づけを解明することを目的としている。さらに、中国人や高山族間での混血化の進むいま、リンパ球の株化により人類遺伝学的に貴重な試料の永久保存もひとつの目的としている。平成2年度の調査は予想以上に進展し、台湾本島南部5種族(プユマ族、ルカイ族、パイワン族、ブヌン族、アミ族)および蘭嶼島のヤミ族に関しても調査、採血を終了することができた。従って平成3年度は、本島中北部の3種族(タイヤル族、サイセット族、ツオウ族)の調査・採血を行ない、当初予定した高山族9種族の研究調査が完了することが出来た。さらに、一種族あたり40名ぐらいの採血予定であったが、いずれの種族でもこの数を上回る検体が収集でき、9族で総計661名より血液試料を得ることができた。内訳は、プユマ族・64名、ルカイ族・54名、パイワン族・60名、ブヌン族・88名、アミ族・72名、ヤミ族・78名、タイヤル族・100名、ツオウ族・81名、サイセット族・64名である。2年間の調査研究によって台湾少数民族9種族の試料を分析することが可能になった。既に各種族ごとに血液型の分布を明らかにした。血液型は日赤医療センタ-との共同で、10形質についてすでに分析を終了したが、学術上極めて注目すべき結果が得られた。ミルテンバ-ガ-型は、東南アジア、中国においては約10%の抗原頻度を示し、日本においては1%以下の抗原頻度しかない。しかし、蘭嶼島のヤミ族では50%、本島海岸部のアミ族では90%と今までの人類集団では報告のない高い抗原頻度を示した。さらに、ブヌン族、パイワン族ではこの抗原は全く見いだされず、プユマ族、ルカイ族では10%以下と、高山族の各族で顕著に抗原頻度が異なることが明かとなった。さらに各種族ごとにHTLVー1抗体の陽性の頻度を検索したが、タイヤル族の1個体のみが陽性であった。さらに陽性個体に関してはウイルスゲノムの解析した。ミトコンドリアは、3%(タイヤル族)から46%(ヤミ族、ツオウ族)まで集団によって大きく異なる結果であったが、高山族全体では28%となり、いままで報告のある東アジア集団(日本人、韓国人、中国人)では一番の高値を示した。また、ミトコンドリアDNA・Dル-プの塩基配列を各種族より数個体で決定した。これらの塩基配列のデ-タは、大型コンピュ-タで処理し、種族内および種族間での遺伝的変異を定量化した。さらにミトコンドリアDNAの分子系統樹を日本人、中国人を含む他集団のデ-タを加えて作成し、高山族の遺伝的位置づけを行なった。ミトコンドリアDNAおよび血液型の調査結果からは、高山族全般には南方系モンゴロイド集団の特徴を示すことが明かとなった。しかし、9種族の族間の多様性が顕著に観察されたことより、比較的最近まで種族間において遺伝的隔離があったものと考えられる。また日本側班員のもつ最新のDNA分析技術の台湾への導入も国際学術研究としての大きな目標のひとつであった。さらにセルライン化した試料は先住少数民族の貴重な遺伝子資源として、将来台湾および日本間での様々な共同研究に応用できると考えられる。
著者
田中 英樹 竹島 正 (2013-2014) ZHAO XIANG HUA ZHAO. X.M ZHAO X.m
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

近年、日本の精神保健医療福祉政策は、従来の入院中心の精神医療から地域生活を支えるための地域精神保健医療へと転換しているところである。このような地域精神保健医療の充実は国際的な方向であるが、欧米の脱施設化過程で経験されているように、地域で生活する精神障害者に十分な支援が届かない場合、ホームレス状態に陥る可能性が出てくる。実際、精神障害者の地域ケアを政策課題として掲げている日本、中国、韓国においても精神疾患を持つホームレスの存在が確認され、克服すべき社会問題として浮上している。このような背景をもとに、本研究では欧米のホームレス支援の文献研究を踏まえ、東アジア諸国である日本、中国、韓国で展開されているホームレス支援の実態と課題を把握し、精神障害者のホームレス化の予防とホームレス状態からの脱却に向けた支援プログラムの検討を行った。「ホームレス」の定義は国によって異なり、欧米では「安定した住まいがない人」と広義に取らえられているが、日本、中国、韓国では一定の条件を満たす者に限られている。精神障害のあるホームレス支援においても、アメリカでは精神科病院やシェルターなどの通過施設から、恒久的な住宅支援である「ハウジング・ファースト」へと展開されているに比べ、日本、中国、韓国では医療中心や一時的問題解決の支援に止まる傾向があった。精神障害のあるホームレスには、「障害」「医療」「生活困窮」が相互に絡み合っていることから、一人暮らしをしてからも十分な支援が届かない場合、再度ホームレス状態に陥るリスクが高く、多職種による継続的な支援が欠かせない。精神障害者がホームレス状態から脱却し、安定した地域生活を継続するためには、①支援者との出会い、②恒久的な住まいの確保、③仲間(地域生活をしている元路上生活者)④地域住民の理解と受け入れ、⑤専門家による支援の継続性が不可欠であると思われる。
著者
森本 壮
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

研究代表者は、網膜神経節細胞(RGC)に対して電気刺激が神経保護作用を有することを初めて見出した。以来、RGCが障害される難治性視神経症に対する新しい治療法として電気刺激治療の確立を目指してこれまで研究を継続してきた。難治性視神経症は眼科疾患のうち未だ治療法が確立されていない疾患の一つで中途失明原因の上位を占める。本研究ではこれまでの研究をさらに発展させ電気刺激治療の確立を目指した。 本研究の結果、電気刺激によって網膜の血流に変化が生じた。また実際に多くの患者に対し電気刺激治療を行い、視力や視野が改善することを見出した。この成果は、難治性視神経症に対する電気刺激治療の確立につながると考える。
著者
宇都木 昭 キム ミンス 神長 伸幸
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

韓国語(朝鮮語)は日本の多くの大学で第二外国語科目となっており,多くの学習者によって学ばれている。韓国語学習の特徴の一つは,「ハングル」という新たな文字を学ぶ点にある。韓国語教員の視点からみると,経験的にいってハングルの習得には個人差がある。しかし,どのような個人差があるのか,なぜ個人差が生じるのか,習得の困難さが他の能力と関係しているのか,といった点は明らかにされていない。本研究課題では,これらの疑問に挑む。
著者
村瀨 陸
出版者
奈良市教育委員会文化財課埋蔵文化財調査センター
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2018

本研究は、近世鋳造技術の解明に繋がる近世刀装具鋳型の製作技法を明らかにすることを目的とした。これを達成するためには、まず鋳型がどのようなものであるのかを把握し、かつ第三者に図示する必要があった。これを成し得る方法としてSfMによる三次元計測が有効であると考え実験した。その結果、肉眼観察では確認できない細部の特徴を抽出することに成功し、基礎資料として提示することもできた。次にSfMによる計測で得られた基礎データをもとに、奈良町遺跡出土近世刀装具鋳型の製作技法を検討した。その結果、込型技法による鋳造を行ったとみられる痕跡を確認し、それによる鋳造工程の復元を行った。ただし、これはあくまで本研究で対象とした奈良町遺跡(HJ第688次)出土資料から得た結果であり、近世における刀装具の鋳造方法が全て込型技法であるとは言えない。この点は今後分析を継続し明らかにすべき課題である。また、本研究ではSfMを用いた計測により多くの情報を得ることができたが、この方法が埋蔵文化財行政において、どういった場合に有効であるのかを検討した。その結果、全ての資料に対して有効であるものではないことを前提としつつ、従来自分の手で図化することが困難であった大型資料や、本研究で対象としたような複雑な構造をもつ資料などを自らの手で表現することができる方法であることを明らかにした。これらの資料は委託による図化がこれまで行われてきたことや、そもそも図化を断念する場合も多くあったため、研究が進んでいない資料が多数ある。こういった資料に対して、研究者自身の手で第三者に図示する方法を得たことは、今後の研究に大きく影響を与えるものと考える。以上をふまえて、埋蔵文化財行政における実現可能な三次元計測の導入についてを検討した。
著者
関根 由莉奈 山田 鉄兵 南川 卓也 松村 大樹 深澤 倫子
出版者
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

放射性廃棄物の安全かつ低コスト処理法の確立は、原子力分野における重要な課題の一つである。産業や鉱山開発において発生する放射性元素種や汚染環境は多岐にわたり、各々に適した処理・処分法の確立が強く求められる。本研究では、家畜骨を原料とするバイオナノアパタイト界面を活用して、陽・陰イオン性を含む様々な元素へ適用可能なグリーン・サステイナブルな環境浄化材料及びシステムを実現することを目的とする。
著者
古澤 拓郎 清水 華 小谷 真吾 佐藤 正典 シブリアン リクソン アムリ アンディ
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

アジア・太平洋には多毛類生物いわゆるゴカイ類を好んで食する社会があるが、その近隣社会では釣り餌などにすぎず食料としては醜悪とみなされる。なぜ特定の社会だけがゴカイ類を好むのかを、生存、文化、楽しみという3点から研究した。ゴカイ類はタンパク質に富むが頻度と量は限られており、生存に必須であるとは判断できなかった。一方、生物時計により正確に太陽周期と太陰周期に一致して生殖群泳を行うので、それに合わせて儀礼を行うことで、田植えの季節を正確に知ることができる社会があった。また皆で採取し、共食を行い、祭りをすることが人々の楽しみになっていた。食料選択において栄養素以外の文化や楽しみの重要さを明らかにした。
著者
菅野 太郎
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

危機対応における多組織連携をタスク,ヒューマン,ネットワークの観点からモデル化し,危機対応システムを評価するシステムの開発を目指した.上述の3要素を考慮した計算モデルを作成し,シミュレータの開発を行った.具体的には,1)連携におけるタスクモデル構築,2)ヒューマンモデルの構築,3)ネットワークモデルの構築,4)3要素を考慮した連携モデルを構築した.下層の連結性が上層の実行条件となるように実装した.また,各モデルの設定インタフェースとして拡張PCANSモデルを用いた表現,記述を可能にした.各モデルのパラメータを変化させたシミュレーションを行い,以下のこと等が示された.情況依存ルールの有無によって連携パフォーマンスは大きく影響を受ける.既存の規範ルールをベースとしたコミュニケーションライン被害への対応は最適とはならない場合が多い.既存の災害対応訓練のシナリオはしばしば現実性が低い.本研究の結果,今後,訓練シナリオのみならず災害時の医療ネットワークといったコンテキストを絞った危機対応システムを対象することで,より詳細なシミュレーションモデルの構築と現場との連携への展開を図る目途がたった.
著者
山口 範晃 駿河 和仁
出版者
長崎県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

高脂肪食を摂食させたマウスは、標準食を摂食させたマウスよりも脂肪組織重量が増大したが、それと同時にビタミン A (all-trans レチノイン酸: ATRA)を経口投与したマウスは、脂肪組織重量の増加を抑制した。さらに、呼気分析によるエネルギー消費量を測定したところ、ATRA を投与したマウスは、脂質由来のエネルギー消費量が増大した。このことから、ATRA は、高脂肪食の摂食による体脂肪の蓄積を抑制することが示唆された。
著者
藤原 俊義 黒田 新士 吉田 龍一 田澤 大
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、テロメラーゼ依存性アデノウイルスOBP-301(Telomelysin)に多機能がん抑制遺伝子であるp53を搭載した次世代型武装化ウイルス製剤 OBP-702(Pfifteloxin)の膵癌間質細胞による免疫抑制機構への効果を検証し、臨床試験用ロットの大量製造が進む本製剤の難治性膵癌を対象とした実用化を目指す。特に、がん関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblast; CAF)の免疫抑制分子であるTGF-β発現調節や免疫活性化に繋がるPTENがん抑制遺伝子の膵癌細胞での発現調節に着目してin vitroおよびin vivoでの解析を進める。
著者
松井 誉敏
出版者
財団法人地球環境産業技術研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、種々のポリイミド膜のCO2/CH4およびCO2/N2混合ガス透過において、ブロッキング効果とそれを生じさせる要因となるナノ構造、特に未緩和体積の大きさとの関係を明らかにすることを目的としている。これらの結果をもとに、高いCO2選択性を示す膜選定のための指針を与えることが、この研究の主目的である。今年度は膜素材となる合成したポリイミド(合計9種類)の一部について、ガス透過性能測定および、17年度導入した高圧ガス収着測定装置を用いてCO2収着性能測定を行った。ヘキサフルオロイソプロピリデンテトラカルボン酸二無水物(6FDA)を酸成分に、テトラメチル-p-フェニレンジアミン(TeMPDA)、トリメチル-m-フェニレンジアミン(TrMPDA)あるいはp-フェニレンジアミン(PDA)をジアミン成分に用いたそれぞれのホモポリマー膜の気体透過性を異なる温度で測定した。その結果、6FDA-TeMPDA、6FDA-TrMPDA膜についてはCO2の透過の活性化エネルギーが負となったことから、ブロッキング効果を示す膜であることが示唆された。一方で、6FDA-PDA膜は通常の高分子に見られる正の活性化エネルギーを示し、ブロッキング効果を示さないことが示唆された。また、CO2収着量測定結果から求めたガラス状態にある未緩和体積(C'H)は、6FDA-TeMPDA、6FDA-TrMPDAで約55cc(STP)/cc(polymer)と、有機蒸気などによるブロッキング効果を示すとされている一部の置換アセチレン系高分子膜に近い値を示した。一方で6FDA-PDA膜では、通常のブロッキング効果を示さないガラス状高分子と同程度であった。これら6FDA-TeMPDA、6FDA-TrMPDAとPDA系の共重合体、ブレンド膜において、CO2に対してブロッキング効果を示す構造の遷移領域が存在するものと考えられる。この遷移領域での膜の状態、CO2に対する収着・透過性能を解析することで、最も適した分子設計指針が得られるものと期待される。
著者
仁科 浩二郎 小林 岩夫 山根 義宏 KOBAYASHI Iwao
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

本研究の目的は, 原子炉燃料臨界安全モニターの開発にあり, 昭和57〜59年度の3年間に引き続き, Cf-252利用の3検出器雑音法を実際的方法を目指して改善, 確立することである. この方法では, Cf内蔵の検出器1個と, 中性子検出器2個を体系周辺に配置し, これらの検出器出力の相互, または自己パワースペクトルを信号処理によって得る. これらの量から作った比(スペクトル比)を確率過程論によって体系の中性子増倍率に関係付ける.本研究3年間の主な成果を以下に列記する(1)上述のスペクトル比が, 見かけ上, 如何に検出器配置に依存するか予測する理論式を導き, 実験における検出器配置に対して指針を得た.(2)この式を, 原研のTCA装置で実験的に検証することを試み, 一部のデータで理論式と一致する傾向を得た.(3)モデル化円柱体系に対するモンテカルロ法シミュレーションコードを作成し, スペクトル比の検出器位置依存性に関し, 上記(1)の理論式の妥当性を明らかにした.(4)同じモンテカルロ法コードにより, Cf中性子源強度に対する, スペクトル比の依存性を調べ, この依存性が少いという結論を得た.(5)相互干渉系(2コニツト体系)への本方法の適用を考え, 2点炉近似に基ずく理論式の導出を行った.(6)遅発中性子がスペクトル比に及ぼす効果を定量的に調べ, 10Hz以上の周波数域では, この効果は考慮する必要がないと結論できた.今後は, a.上記(2)の実験の続行, b.再処理燃料中に必ず存在するプルトニウムの核分裂が, 結果に及ぼす影響の検討, c.測定統計改善のための検出器改善, d.同じく統計改善のためのCf以外の外部中性子源使用の効用検討 などの課題がある.
著者
石川 信一 菊田 和代 三田村 仰 酒井 美枝 大屋 藍子
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は,児童青年の不安とうつに対する認知行動療法(CBT)の有効性をランダム化割付比較試験において検討することであった。電話による簡易スクリーニングと,事前査定の結果,包含基準に合致し,かつ参加に同意した51名を対象とした。対象者はランダムに先に介入を実施するCBT群と,後から実施するWLC群とに割り付けられた後,8回の介入を受けた。事前,事後,3ヶ月,6ヶ月にアセスメントを行った。分析の結果,主診断から外れる割合と重篤度について,事後においてはCBT群の方がWLC群よりも改善していることが示された。以上のことから,CBTによって児童青年の不安とうつの問題が改善することが示された。