著者
増田 敦子 須永 清
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.11-17, 1985-03

正常なICR系マウスの7週齢の雌を用いて,摂食量を増加させることなく肥満化をもたらす因子として,摂食時間の制限及び摂食時間帯について検討した。まず,制限摂食群の体重,摂食量,体比重及び腹腔内脂肪量について調べ,24時間摂食群(対照群)と比較検討し,次のような結果を得た。1)マウスの場合,1日1回の摂食で開始時の体重を維持するには最低3時間必要であった。2)1日の摂食時間を3時間以上にした場合,制限摂食群では1日総摂食量は対照群の90〜70%に減少するが,両群ほぼ同じ体重維持を示した。制限摂食群の1時間当たりの摂食量は対照群の0.5g以下に対して,0.5g以上2.7gまでと逆に数倍の増加を示した。3)体比重は対照群に比べて,いずれの制限摂食群も低下が見られ,肥満化の傾向を示した。4)腹腔内脂肪量は摂食回数が1日1回の制限摂食群では対照群に比べて減少を,1日2回,3回,4回の制限摂食群では増加を示した。このことは体比重のみで肥満化を判定することには問題があると考えられる。次に,制限摂食の場合の摂食時間帯について検討し,次のような結果を得た。同じ摂食時間,摂食回数でもその摂食をより活動期後半の時間帯,特に就眠期直前に行わせた方がより強い肥満化傾向を示した。
著者
津森 伸一 磯本 征雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.106, pp.47-51, 2006-06-10
参考文献数
3

テストは、学習者の理解状況を把握する手段として、学校等の対面授業だけでなくCAIやe-Learning等の学習援用システムにおいても広く活用されている。一般にテストは、高得点であるほど成績がよいと解釈されて合否決定や順位決定に使われているが、点数の数値から理解状況の意味を読み取るには曖昧な点が多い。しかし、CAIやe-Learning等の学習援用システムにおいては、教師不在の状況下でテストが実施されることも多いため、採点評価結果は学習者側にも明確に解釈されるものであることが望まれる。そこで筆者らは、テストの採点評価を知識の"広さ"及び"深さ"の観点から行う方式の実現を試みている。本稿では、穴埋め問題を対象とした採点評価方式の提案と、初級システムアドミニストレータ試験対策用システムへの適用について議論する。
著者
遊間 義一 金澤 雄一郎 遊間 千秋
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.149-168, 2012 (Released:2013-03-18)
参考文献数
39

本研究は,遊間・金澤・遊間(2010)に2年分のデータを追加して1974年から2008年までの,日本全国で起きた少年による殺人事件の発生率に対する完全失業率の効果及びその構造変化の有無を共和分回帰及び誤差修正モデルを用いて検証したものである.その結果,遊間・金澤・遊間では,見いだせなかった構造変化が,年長少年(18・19歳)において確認された.つまり,年長少年においては,完全失業率が上昇(下降)すれば殺人発生率も上昇(下降)するという正の関係が認められ,この効果の強さは調査期間を通じて変化がなかったものの,殺人発生率は2000年を境に急激に減少する傾向が認められた.他方,中間少年(16・17歳)では,遊間・金澤・遊間とほぼ同様の結果が得られており,完全失業率と殺人発生率との間に正の関係が認められたが,構造変化は見いだせなかった.年長少年の急激な減少について,1998年以降急増した自殺率や1990年代後半からの犯罪や少年非行への厳罰化傾向との関連から考察した.

3 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1914年10月16日, 1914-10-16
著者
新井 泰弘
出版者
岩波書店
雑誌
経済研究 (ISSN:00229733)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.17-27, 2012-01

本稿では音楽市場における民間機関の著作権保護についてゲーム理論的なフレームワークを構築し,作曲家が楽曲の違法利用を防止するために自発的に著作権協会を組織した場合,社会厚生にどのような影響を与えるか考察を行った.日本音楽著作権協会(JASRAC)が現実に作曲家との間に締結している信託契約を考慮に入れ,作曲家の自発的参加と協会内における利潤分配交渉を含む2段階ゲームを定式化することで次の結論を得ることができる. まず,取締費用がそれほど高くなく,著作権協会に参加する作曲家のパフォーマンスの差が十分大きい場合,著作権協会の存在により社会厚生が増加することが示せる.次に全作曲家が著作権協会に参加するならば,著作権協会が楽曲使用料を統一に設定する方が,著作権者に楽曲利用料を決定させるよりも社会的に望ましい事が示せる.We consider non-governmental copyright protection in a music market in a game theoretical framework. Music composers voluntarily form a non-governmental association to prevent illegal uses of music and to impose music fees collectively. We find that the formation of an association increases social welfare when differences in composers' abilities are sufficiently large. We also show that a uniform pricing rule, as currently employed by the association in Japan, is more desirable from the social point of view than a non-uniform pricing rule whereby members can set music fees individually to maximize their private profits.
著者
高橋 栄美 硲 光司 新谷 知久 本間 英司 深田 靖久 松居 喜郎
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.257-262, 2004 (Released:2005-05-27)
参考文献数
11

心不全末期の拡張心に対する新しい左室縮小形成術(Overlapping cardiac volume reduction operation ; OLCVR, 松居法)10症例の麻酔を経験した. 低濃度のセボフルランと静脈麻酔で行った. 体外循環離脱時には経食道心エコーで左室壁運動や容積の変化を観察しながら, 適切な前負荷を保つことと後負荷の軽減に重点を置き, カテコラミンおよび血管拡張薬の使用法に留意することが重要である.
著者
ニラシュ アグネス
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.71, no.608, pp.181-188, 2006

In order to re-locate 'Megastructure' proposals of the Japanese 'Metabolism' group in the international context of post-war architecture and urbanism, it is necessary to re-evaluate them in terms of their spatial characteristics and, based on it, to expound the general concept of 'Megastructure'. For this re-evaluation, however,'Bay Projects' by Kenzo Tange around the turn of the 50's and 60's, namely MIT Boston Harbor Project, 1959 and A Plan for Tokyo, 1960 are of great significance. MIT Boston Harbor Project, 1959 is taken here as the earliest presentation of the concept of A-framed 'Megastructure' to link the individual building to the city through a three-dimensional circulation system. Its spatial characteristics are outlined through its analysis in terms of the interrelations between structural and spatial elements and compared with its supposed ancestors in the first half of the twentieth century in order to lead to a discussion on the general concept of 'Megastructure'.

3 0 0 0 OA 建築年鑑

著者
建築学会 編
出版者
建築学会
巻号頁・発行日
vol.昭和13年版, 1940
著者
長谷川 公一
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.354-373, 1983

対立や紛争はどのような社会現象か。そこでは、主体はどのような課題に直面するのか。従来の紛争研究は、主体間の目標達成の両立不可能性に焦点をあてる社会関係論の視角からするものと、社会システムの不均衡状態に焦点をあてる全体システムの視角からするものとに大別できる。本稿は前者の系譜をふまえ、ダイアド関係を動態的にモデル構成し、そのうえで、紛争化過程および紛争過程における紛争当事者の課題を論じたものである。まず、ダイアド関係の利害連関は、対立、結合、分離の三状相に分節される。資源動員能力の格差にもとつく優位な主体の側の劣位者側への意思決定の貫徹可能性に注目すると、相互行為のパタンは、紛争、抑圧的支配、互酬的支配、協働、並存の五過程に分節される。ダイアド関係は、これらの問を移行する動態的な過程である。紛争過程への移行に際しては、対立状相の意識化に次いで、紛争行動を選択するか、紛争回避行動を採るかの意思決定が課題となる。選択を規定するのは、劣位な主体では相対的剥奪感であり、一般には報酬・コストのバランスである。両当事者の紛争行動の選択によって、紛争過程は開始される。紛争行動の実施にあたって、当事者は、 (1) 資源の動員可能性、対抗行為の (2) 戦略的有効性および (3) 規範的許容性、これらの検討を課題とする。とくに劣位な主体は、対抗集団の組織化などによる、対抗力の拡大と資源動員能力の格差の克服とを緊要な課題としている。
著者
大出 晃
出版者
三田哲學會
雑誌
哲学 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
no.43, 1963-10

Il s'est dit traditionellement qu'il n'existe pas la quatrieme figure dans le classement aristotelicien des syllogismes assertoriques. Ce qui ne signifie pas, comme il est bien connu, qu'Aristote ne reconnaisse les syllogismes de la quatrieme figure pour valides. Le philosophe examine tous les syllogismes de la quatrieme figure et les admet pour valides, mais il ne les classe pas dans une figure particuliere qui est nommee au cours de temps la figure galenique. Pourquoi donc n'existe-t-il pas la quatrieme figure dans son classement ? Les explications donnees par des commentateurs, me semble-t-il, n'eclaircissent pas beaucoup ce probleme. Au congres de l'association japonaise pour philosophie des sciences tenu au mois de mai 1959, j'ai propose une explication qui le concerne. Mon argument en est suivant Le classement ordinaire des syllogismes aristoteliciens suppose qu'Aristote lui-meme le fasse selon la meme methode que celle-ci: [table] Mais a mon avis cette supposition ne trouve aucune justification dans l'interpretation fidele du texte d'Analytica Priora. La methode de classement authentiquement aristotelicien est plutot suivante: [table] En bref, elle est lineaire et de ce point de vue la non-existence de la quatrieme figure est bien naturelle, Les phrases d'Analytica Priora, surtout 25b 32-37, 26b 34-39, 28a 10-15, justifient entierement cette explication. Recemment M. Kneale a propose la mene explication dans son excellent ouvrage "The Development of Logic". J'ai developpe dans cet article l'argument plus detaile qui est favorable a la nouvelle explication.
著者
桂山 康司
出版者
京都大学高等教育研究開発推進センター
雑誌
京都大学高等教育研究 (ISSN:13414836)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.99-106, 2009-12-01

Many words now generally viewed as indispensable academic terms for university science majors are also favorites among the most canonical English authors, notably William Shakespeare and John Milton. This paper not only gives some background of that astonishing coincidence, which is never without good reason, but also accounts for the intriguing relationships of the origin and use of vocabulary used by science majors with those used by their literary counterparts. These relationships are illustrated by referring to the epoch-making publication of The Kyoto University Data-based List of 1,110 Essential Academic Words (Kenkyusha, 2009) 『( 京大学術語彙データベース 基本英単語1110』研究社), featuring, among others, "moiety," "combustion," "follicle," "blot," and "dissect."
著者
石川 真一 高橋 和雄 吉井 弘昭
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.11-24, 2003
参考文献数
33
被引用文献数
8

群馬県内利根川中流域における外来植物オオブタクサ(Ambrosia trifida)の分布状況を調査した結果,県南端に位置する明和町から,県北端の水上町(源流から約30km下流)の範囲において,大きな個体群が30地点で確認され,このうち最大のものは約687万個体からなり,年間約17億の種子を生産していると推定された.またこの30地点はすべて工事現場や採石場周辺などの,人為的撹乱地であった.温度-発芽反応実験の結果,オオブタクサは寒冷地に分布すると,より低温で発芽し,高温では休眠するようになる可能性が示唆された.水上町の個体群と群馬県南部の伊勢崎市の個体群において残存率調査と生長解析を行った結果,オオブタクサは北の低温環境下においても南部と同等かそれ以上の相対生長速度を有していたが,エマージェンス時期が遅くて生育期間が短いため,個体乾燥重量は小さくなった.しかし水上町では,伊勢崎市に比べて個体乾燥重量あたりの種子生産数と残存率および個体群密度が高いため,単位面積あたりでは伊勢崎市より多くの種子を生産していた.これらの結果から,オオブタクサが今後も低温環境下において勢力を拡大する危険性があるとことが示唆され,拡大防止の一方策として,河川周辺における人為的撹乱の低減と,種子を含む土壌が工事車両によって移動することを防止する必要性が提言された.
著者
田中 宏明
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.101-126, 2009

マーサ・ヌスバウムは、社会正義の三つの未解決の問題のひとつとして、正義をすべての世界市民に拡大するという問題を取り上げている。ヌスバウムは、この問題に対してケイパビリティが国際的な重なり合うコンセンサスの対象となりうる構想を提唱する。この構想がヌスバウムのグローバル正議論である。ケイパビリティ・アプローチには人間の尊厳に基づいた人の権原という構想が中核にあり、グローバル正議論はケイパビリティ・アプローチをグローバル化するアプローチである。ケイパビリティ・アプローチをグローバル化する際に制度が重視され、グローバル構造のための十原理が提起される。この十原理は、不平等な世界において人間のケイパビリティがいかに促進されうるかについて少なくとも考える手助けとなるものである。ヌスバウムのグローバル正議論はコスモポリタン正議論と見なしうる。ヌスバウムは、ロールズの政治的リベラリズムを受け継ぐにもかかわらず、ロールズの正議論と国際正議論には批判的である。ロールズの正議論において正義の主体が人間であるのに対して、ロールズの国際正議論においては民衆が主体となり、ロールズの正議論と国際正議論ともに、社会契約論にヒュームの正義の環境を結びつける理論に基づいて、契約の形成者と正義の主要な主体を合成するために、相互利益が得られるおおよそ平等ではない当事者を正義の主要な主体とは数えないという問題がある。ヌスバウムのグローバル正議論に対する社会科学者からの批判を検討する。最後に、コスモポリタン正議論としてのベイツ、ポッゲ、そしてヌスバウムの理論を検討し問題点を指摘する。