著者
木之内 誠 平石 淑子 大久保 明男 橋本 雄一
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

近代百年を通じてロシア、中国、日本の諸勢力がせめぎあい、多元重層的な文化の場を形成した植民都市大連の過去、現在を景観のうちに透視し、ここに生きた人々の場所をめぐる集合的な記憶を都市文化の未来への展望につなぐ歴史地図を制作した。各種の旧地図などの歴史的な文献資料と、現地調査結果を総合して描かれた立体鳥瞰図的な多色表示による、五千分の一縮尺を基本とした二十枚ほどの区分図によって、この地図は構成される。建物の建造年代別の色分けや道路の起伏の表示など、現地を歩く利用者にとって使いやすい、直感的な了解をたすける可視化の手法を追及した。
著者
栗原 良将 加藤 潔 石川 正 藤本 順平 近 匡
出版者
高エネルギー加速器研究機構
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1999

本グループにより開発されている、GRACEと呼ばれるファインマン振幅の自動生成プログラムを改良し、QCD(強い相互作用を記述する場の量子力学的理論)の高次補正効果を取り入れたイベント・ジェネレータ(仮想事象生成プログラム)を作成するための研究を継続して行った。平成14年度までに、QCDの高次効果を含む計算を効率よく行うためのGRACEの改良を行い,3点相互作用までのループ補正を含んだ実効相互作用関数をGRACEに加えるとともに、QCDに特有の赤外発散を取り除き安定した数値計算を行うための「主要対数項差し引き法」を開発した。引き続き,平成15年度においては4点ループ補正(ボックス・グラフ)の計算を行うための開発を行った。4点ループ積分では,次元正規化法により赤外発散を取り除く方法を採用し,そのための積分公式を用意した。これは,複雑な分子を持つループ積分を解析的に行い,超幾何関数で表現するもので,この超幾何関数を次元正規化法による特異点(極)の周りで展開することにより,必要な積分の値を得ることができる。従来の方法に比べ、計算時間が短く、数値的に安定となる利点がある。また,GRACEによる散乱振幅の生成も,次元正規化法に適合するように改良し,ボックス・グラフを含むループ補正の振幅を自動的に生成できるようになった。現在,この方法を,格子+ジェット生成反応や重いボソン(Wボソン・Zボソン)+ジェット生成反応に応用し,ループ補正を含んだイベント・ジェネレーターの開発を行っている。また,ツリー近似によるイベント・ジェネレーターであるGR@PPAにおいても,取り扱うプロセスの数を増やして,より実用的なものにして,広く実験グループに公開した。
著者
竹尾 治一郎
出版者
関西大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

1.フランツ・ブレンターノおよびブレンターノ学派の哲学の一般的特徴は、客観主義的実在論である。これとは対照的に、時代を同じくするもう一人の重要なオーストリアの哲学者であるエルンスト・マッハの科学哲学における実証主義は主観主義的傾向を代表する。これらの思想の間の緊張関係を、バートランド・ラッセルの1910年代の現象論から同20年代の中性的一元論への移行に注意を払ひながら、これとの関連において研究した。2.ブレンターノにおける、「志向的内在」の概念による心的現象の特徴づけ、および彼自身によるこの見解の否認に到る経過を跡づけた。更にブレンターノによる心的現象の分類と、これに基づく哲学の諸領域の区分を明瞭にした。また一方、心的現象についてのブレンターノのもとの見解が、マイノングの対象論においてどのやうに発展せしめられたかを、その主要な論点について追求した。その上で、ブレンターノとマイノングの存在論,認識論,倫理学の思想を比較研究した。3.マイノングとラッセルの論争をふり返り、それを通じてマイノングの対象論を、現代のたいていの論理学者によって受け容れられてゐる存在論に照らして検討した。その際、クワインやフリー・ロジックの研究者達の存在論的立場とマイノングのそれとの相違を明らかにした。われわれはなぜマイノングが彼の対象論において非有の対象を認めざるをえないと考へたか、またさうした(非有の)対象がわれわれの観点からどのやうに評価されるかを考察した。われわれはまた、ブレンターノ,G・E,ムーア,ラッセル,新実在論者といったオーストリアと英米の哲学者達が、いはゆる「主観主義の論証」を構成する各命題にどのやうに反応したかを考察し、観念論的認識論に対する彼等の個別的な反論がいかなる主張を含むかを明らかにした。
著者
淺間 一 太田 順 土屋 和雄 伊藤 宏司 矢野 雅文 青沼 仁志 大須賀 公一 高草木 薫 太田 順
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

計画班および公募班が,本領域の特徴とする生工連携がスムーズにかつ効果的に行えるように,班間の連携を促進した.また,国際シンポジウム,ワークショップの開催,非公開シンポジウムの開催,内部評価の実施,国際会議・国内学会講演会などでのオーガナイズドセッションの企画,移動知教科書シリーズ出版企画,若手の会の支援,ホームページの更新,研究成果・活動記録に関するデータベースの作成などの広報,報告書の作成などを行った.
著者
吉野 浩司
出版者
長崎ウエスレヤン大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2017年9月にチェコのブルノとプラハの2都市で調査を行った。①ブルノではドゥシャン・ヤナーック氏にインタビューを行った。ブルノ学派の創始者であるブラハに関すること、チェコ社会学史とソローキンとの関係に関することを中心に、聞き取り調査を実施した。ブラハとソローキンの社会学方法論の類似性をお互いに確認しあえたのは収穫であった。また同地のマサリク大学を訪問し、東欧出身の社会学史研究家たちとの意見交換の場を持つことで、新たなネットワークを構築できた。ソローキンのチェコでの亡命生活を調査する中で、亡命ロシア人のプラハでの仕事の重要性について知ることができた。当時ロシア人たちが住んでいた地域の調査が、今後の課題として浮上してきた。②プラハではチェコ科学アカデミーのマレク・スコヴァジュサ氏に、近著『チェコ共和国の社会学』について詳しく話を聞き、議論を行った。またカレル大学のズデニエク・ネシュポル氏には、チェコ社会学に関する聞き取りを行った。自身が編集に携わったチェコ社会学関連の雑誌をデータベース化したCD-Romや社会学辞典などを見せてもらい、学ぶところが多かった。またネシュポル氏は亡命ロシア人の実情にも詳しく、チェコ科学アカデミーのスラブ研究所を紹介してもらい、施設を利用する便宜をはかってくれた。③プラハではいくつかの施設を訪れた。国立図書館のスラブコレクションでは、ソローキンの著作を含む文献・資料をコピーした。ネシュポル氏紹介のスラブ研究所ではアーカイブから、いくつかの貴重な雑誌を発見し、コピーをすることができた。また滞在中に、チェコ国立文学研究所が開催している亡命ロシア人展「エクザイル」開催の情報を得、実際に会場に足を運ぶことができた。④2017年8月および同年年末から2018年年始にかけて、利他主義研究の日本的展開として、山陽・山陰の妙好人に関する現地調査を実施した。
著者
中里見 敬 太田 一昭 波多野 真矢 田村 容子 松浦 恒雄 藤野 真子 森平 崇文 長嶺 亮子 平林 宣和 三須 祐介 加藤 徹 西村 正男
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

1.昨年決定した戯単の解説執筆の分担に基づき、戯単解説の執筆を進めた。原稿の完成した6点の解説は、中里見敬・潘世聖編『「『春水』手稿と日中の文学交流――周作人、冰心、濱一衛」国際シンポジウム論文集』(第3冊資料編)に収録し、あわせて中国語訳も掲載した。2.濱文庫所蔵のレコードについて、基礎的なデータの採録をほぼ終えた。レコードの音声をデジタル化する作業については、音質その他の技術的な問題があり、作業が中断している。早期に開始できるよう対策を講じたい。3.濱文庫に所蔵される冰心の詩集『春水』(1923)が、作者自筆の手稿本だと判明した。さらにこの手稿が周作人から日本人留学生・濱一衛に贈られた経緯も明らかになり、『中国現代文学研究叢刊』2017年第6期(総第215期)に中里見敬「冰心手稿藏身日本九州大学:《春水》手稿、周作人、濱一衛及其他」として発表した。その後、周家・濱家双方の尽力により、書簡15通が発見された。さらに周作人から濱一衛に贈られた書4点(周作人、銭玄同各1点、兪平伯2点)も見つかり、九州大学附属図書館に寄贈されることとなった。このように、周作人と濱一衛の交流に関する研究は短期間のうちに大きな進展を見せた。4.研究会・シンポジウムを2回開催した。(1)研究集会「演劇アーカイブの最前線:イギリスと中国」平成29年6月17日(九州大学伊都キャンパス)発表者:三須祐介、松浦恆雄、太田一昭。(2)「『春水』手稿と日中の文学交流――周作人、冰心、濱一衛」 国際シンポジウム、平成30年2月6日(九州大学新中央図書館)基調講演:周吉宜、趙京華、小川利康、李莉薇。学術シンポジウム:顧偉良、平石淑子、佐藤普美子、濱田麻矢、松岡純子、牧野格子、岩﨑菜子、宮本めぐみ、虞萍。あわせてシンポジウム論文集(全3冊、554頁、28名執筆)を刊行し、戯単をはじめとする濱文庫資料の展示を行った。
著者
中村 亮一
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では,これまでの手術ナビゲーション・デバイス・ロボット研究の成果を踏まえ,胎児内視鏡下手術および等張液充填式腹腔鏡下手術(WaFLES)の確立を目指し,統合的ナビゲーション内視鏡外科システムの基盤形成を図る研究を実施した.具体的には①100ms以下の誘導情報更新速度を有する術中3次元リアルタイム超音波ナビゲーション,②腹腔内で大型化する把持鉗子・超音波陰影のない弾性リトラクタ等の水腔内臓器操作用高機能「変形駆動式」手術器具,③距離マップによる安全制御を導入したナビゲーション誘導下レーザ治療システムを通じた,統合的ナビゲーション内視鏡外科システムの基盤形成を図る研究を実施した.
著者
中村 亮一 五十嵐 辰男 川平 洋
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では,治療部位への精密誘導治療を行う「軟組織に対応したリアルタイムナビゲーション技術」と,外科的手技における組織臓器へのダメージを低減する革新的な内視鏡下手術「水中手術 “WaFLES”」の技術を統合的に研究開発し,「効用の最大化と副作用の最小化」を実現した次世代の超低侵襲精密外科医療技術を開発した.具体的には①術前CT画像と術中3D超音波画像の術中レジストレーション法の開発とナビゲーションへの実装,②内視鏡画像処理による臓器運動計測・補償を用いた精密レーザ照射システム,③治療工程分析技術による手術環境・技能評価法と臨床教育手法の開発を達成した.
著者
中村 亮一
出版者
千葉大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-04-01

今年度は計算解剖学モデルと術具ナビゲーションログ情報を用いた手術工程・技能分析アルゴリズムの検討として,①手術技能を定量的に評価する術者スキルレベルの推定と,②手術工程評価のための手術プロセスモデルの構築と評価について研究を実施した.今年度も内視鏡下手術で最も一般的である胆嚢摘出術を基本対象とし,ファントムと内視鏡トレーニングボックスを用いた模擬的腹腔鏡下胆嚢摘出術25例のデータを用いて研究を実施した.昨年度までに開発した術具位置ログと工程分析用臓器モデルとの干渉解析により手術作業のステージを同定し,各ステージでの鉗子作業の定量解析指標(各工程の作業時間,作業進捗度,術具先端移動速度,ログ分布近似楕円面積,ログ分布近似楕円重畳率,ログデータの分布密度)を自動抽出するアルゴリズムをベースに,以下の開発評価を行った.①技能評価:上記の定量解析指標を用い,重回帰分析を利用して各作業工程の作業特性に応じて各解析指標が技能レベルに与える影響度を算出した.その結果を用いて各解析指標からその影響度を加味して最終的な定量的技能レベル値を算出する回帰モデルを開発した.②工程評価:手術ワークフロー解析の基礎として手術プロセスモデルを構築・比較する手法を構築した.手術ナビゲーション情報から取得した術具先端の通過領域 a,作業進捗度 p,術具先端速度 v,術具種類 i のパラメータを用いて手術中の一連のアクティビティの配列となる手術プロセスモデルを定義し,配列アラインメントを応用して手術プロセスモデルを整列・比較した.その結果.手術プロセスモデルは作業工程中の作業動向を忠実に表していることが示唆された.
著者
小松崎 俊彦
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は,騒音の存在する自由音場において,高指向性スピーカを利用して局所的に騒音を低減し,無指向型スピーカでの場合のように,周辺空間に余分な音の増大を招くことなく静音化を実現する能動騒音制御システムの開発を目的とする.本年度は,前年度に検討したパラメトリックスピーカの指向性,および干渉音場の実験結果を踏まえて,それらを数値的に予測する理論モデルを構築し,さらに,必要な空間だけを局所的に静音化する能動騒音制御システムの実証実験を行った.まず,数値的検討については,パラメトリックアレイに関する理論モデルに基づき,波動方程式による数値計算モデルを構築した.生成される音圧の空間分布および騒音源との干渉音場特性について数値的に予測し,実験結果との定性的な一致を得た.本モデルによって,音波の高指向性をある程度再現可能であることが示されたが,実測値ほどの高指向性の再現は困難であった.これは計算過程を簡略化するための近似が主な要因であると考えられる。さらに,以上の結果を踏まえて,騒音源を模した無指向型スピーカから制御対象音を出力し,パラメトリックスピーカを制御音源として,目標点に設置したマイクロホンにおける音圧値を最小にするように制御音を生成可能なシステムを構築した.パラメトリックスピーカの再生音が非線形効果によるものであることを考慮して,非線形特性を同定可能なニューラルネットワークを採用した.周期的騒音の発生を想定した制御実験を行い,干渉音場計測により周辺音場への影響などについて調べた.制御音源として無指向型スピーカを用いた場合と比較して,目標点周辺への影響が少ない制御が可能であることが実験的に示された.
著者
内田 庸子 大場 謙一 塚原 富士子 村木 篁
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

肥満遺伝子(ob-gene)産物のレプチンは、脂肪細胞から分泌され、視床下部に局在する受容体に結合し、摂食抑制およびエネルギー代謝の亢進をきたす。一方肥満病態においては、血中レプチン濃度は高値を示すにもかかわらず、摂食が抑制されず、余分な脂肪が体に蓄積する。即ちレプチンによるネガティブフィードバックが作動せず、レプチン抵抗性が認められるが、その機序の詳細はいまだ不明である。そこで本研究では、肥満病態モデル動物(MSG肥満マウス:monosodium-L-glutamate投与)を用いて、平成12年度に、視床下部に発現するレプチン受容体のうち情報伝達機能を果たすというlong formのOB-Rbの発現低下を介するレプチン作用不全の1つの可能性を示した。平成13年度は、1)UCP familyの遺伝子発現をもとに、末梢エネルギー代謝促進作用に差異が認められるかどうか。2)産熱性β3アドレナリン作用薬によるレプチン抵抗性改善が認められるかどうかについて検討し下記の結果を得た。動物はICR系雌性マウスを用い生後1,3,5,7,9日目にMSG2mg/gを隔日5回皮下投与、対照マウスには生理食塩水を投与し4-15週齢で屠殺採血後、視床下部を切り出し、直ちに液体窒素にて凍結した。全RNAをIsogenにて抽出し、RT-PCRを行いUCP-1、UCP-2、UCP-3の発現を調べた。1)褐色脂肪に特異的に発現するUCP-1は、MSG肥満により減弱の傾向を示すが、外因性に投与した産熱性アドレナリンβ3作用薬により、発現が増大した。2)UCP-2の遺伝子発現は、脂肪組織(褐色、白色)および骨格筋において、発現に差異は認められず、又、MSG肥満による変動も観察されなかった。3)UCP-3の遺伝子発現は、骨格筋において高発現を示し、アドレナリンβ3作用薬により対照マウス、MSG肥満マウス共に発現増大が認められた。以上の結果より、MSG肥満マウスのレプチン抵抗性は、視床下部のレプチン受容体OB-Rbの発現低下が、原因の1つと推測される。一方、持続的レプチン高濃度下に曝露されている状況でも、外因性の産熱刺激(BRL37344投与)に対して反応性が残存しており、MSG肥満マウスのレプチン抵抗性には中枢性要因が大であることが推測される。
著者
吉田 倫子
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

助産師の経験知の中に、乳腺炎を起こす予兆として乳児が授乳を拒否する行動があり、その理由の1つには母乳の味の変化があると言われている。そこで本研究は、第1に、乳児が示す授乳拒否と乳房トラブルとの関係を明らかにすることを目的に母乳育児の経験を持つ母親に対してアンケート調査を行った。その結果、乳児の授乳拒否と乳房トラブルには関連があり、授乳拒否は乳房トラブル発症の予知として重要であることが明らかとなった。第2に、味覚センサによる母乳の味分析により、母乳の味の基本情報と、乳腺炎に関連した母乳の味の変化、乳児が示す授乳拒否に関連する母乳の味の変化を検討した。その結果、母乳の味の基本情報として、乳房トラブルのない正常な母乳において、左右の母乳の味は相関していること、母乳の味は初乳から成乳となる過程で、苦味が増加し、塩味と旨味は低下するが、成乳となった後は味の変化はみられないことが明らかとなった。乳腺炎時の母乳では、塩味や旨味の増加、酸味や苦味、渋味の低下があった。乳児が授乳拒否を示す母乳の味は、授乳拒否を示さない母乳に比べて、旨味が増加し、苦味や渋味が減少する傾向が認められた。本研究により乳腺炎に関連した母乳の味の変化が示唆された。今回の研究で乳腺炎群の8割の児に授乳を拒否する行動が観察され、児は鋭敏にこのような味の変化を認知していると推定される。
著者
越智 啓太
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、主に大学生カップルにおける、デートバイオレンス、デートハラスメントを対象にしてその予測と対処策についての研究を行った。まず、学生相談所などの機関の調査を行い、現在の大学生においてデートバイオレンス、デートハラスメントが大きな問題となっていることを明らかにした。つぎに、これらの行動を測定するための尺度を構成した。三番目にこれらの行動を引き起こす加害者の属性、性格、交際の特徴について明らかにし、これらのデータからデートバイオレンス・ハラスメントを予測するための式を構成した。最後にそれぞれのデートバイオレンス・ハラスメント行為における適切な対処方略を明らかにした。
著者
川崎 良孝 吉田 右子 小林 卓 三浦 太郎 呑海 沙織 安里 のり子 久野 和子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は19世紀中葉から21世紀にいたる図書館の歴史的展開を、新たな視点で解明している。「サービスの提供」という基本的価値に、1960年代から「資料や情報へのアクセスの保障」と「図書館記録の秘密性の保護」という価値が加わり、これらの3つの価値は思想的、実践的に20世紀末に向けて深められていった。しかし21世紀に入り、「アクセスの保障」と「秘密性の保護」という価値は、社会や技術の変化を受けて揺らぐとともに、それらを意識した図書館の理論や実践が生まれている。本研究は広範な一次資料の発掘や実践の研究を通じて、こうした歴史的展開を実証的に解明し、一般図式を提供した。
著者
岩崎 千晶 村上 正行 山田 嘉徳 山本 良太
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

研究課題①「正課と学習支援の連環によるディープラーニングを促すデザイン要件の提示」に関しては、日本語ライティングにおいてライティングセンターを活用した学習者の個別傾向を分析し、リピーターへとつなげるための学習支援の手立てを検討した。また学習の深化を目指し、ICTを活用したライティング指導の実践研究を行った。学習支援には、個別指導に加えて、自主学習用の教材開発も含まれるため、英語・日本語ライティング教材を開発し、正課と学習支援の連環による学びの深化に取り組んでいる。「研究課題②多様なアクターが関わるラーニング・コモンズにおける学びのプロセスモデルの提示」では、各大学がどのように学習者の学びを評価しているのかについて調査を行った。具体的にはCiNiiを活用し、ラーニング・コモンズの評価を扱う論文66件を分析した。調査の結果、質問紙調査、観察調査、インタビュー調査の順で調査法が採用され、量的な調査が75%を占めた。今後、学びのプロセスや成果を明らかにするためには、質的な調査やラーニング・コモンズにおける理念(育むべき学習者像)に関する議論の重要性を示した。特に学習成果に関しては汎用的な能力が評価指標となっていたため、本研究で指摘した学習者にとっての学習概念の更新を促す「照射」の概念を取り入れる必要性を確認した。「研究課題③学習支援を提供する組織における学生スタッフを含めた教職員を対象としたSD・FD研修プログラム・eラーニングの開発と評価」では、教育の質保証、授業設計、評価方法、ICT活用、学習環境をテーマに研修プログラムを開発し、運営・評価をした。またライティング研修の中から、ライティングの理念・学習支援の歴史等のプログラムをeラーニング教材として提供するための資料教材を完成させた。またライティングの学習支援に関する指導モデルを提供するため、eラーニング教材を開発した。
著者
上岡 真紀子
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、教授・学習支援を担当する専門的図書館員のモデルを示し、その養成プログラムのあり方を検討することである。昨年度までに、文献調査に基づいて、全学的な教授・学習の質的改善の取り組みを実施して成果をあげ、かつ、その取り組みに図書館員が深く関与している事例を抽出し、事例としてトリニティ大学、パデュー大学等への訪問調査を実施し、データを収集している。 今年度はこれらケーススタディのデータを検討し、1) 全学的教授・学習の改善プログラムにおいて、 図書館員は、学習環境デザイン、および情報リテラシーの専門家としてプログラムの計画と実施に関与している、2) プログラムの実施の局面では、授業やカリキュラムの到達目標、アクティビティ、課題、評価の中に、情報リテラシー獲得のための要素をどのように組み込むかについて、教員に対する支援を提供し、授業改善やカリキュラム改革に貢献している、という結果を得た。また今年度は、上記プログラムに参加する図書館員への聞き取り、および文献調査に基づいて、教授・学習支援を担当する図書館員を養成するプログラムの事例調査を開始した。事例として、米国図書館協会によって提供されている、情報リテラシーの専門家養成プログラムについて情報を収集するとともに、開発に関わってきた図書館員数名を訪問し、背景などの聞き取り調査を実施した。今後、プログラムの詳細な内容を検討する予定である。
著者
植村 八潮 野口 武悟
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、学校図書館において導入可能な電子書籍の利用環境構築のモデルを提示することを目的とする。そのためには、電子書籍が円滑に学校および学校図書館に導入できる環境(システム)の構築が不可欠である。一方、デジタル教科書の検討が進んでおり、電子書籍への関心も高まりつつある。しかしながら、学校および学校図書館において、電子書籍の取扱い環境やシステムについて検討は十分になされていない。そこで、学校図書館とベンダー(事業者)を対象に調査を行い、学校図書館における図書館基幹システムと利用インターフェースについて、現状と課題を明らかにした。まず、学校図書館における図書館基幹システムの導入やその運用状況に注目し、学校図書館業務の情報化の状況を調査し、現状を明らかにした。さらに、学校図書館において導入しやすく、かつ図書館基幹システムとも連携可能な電子書籍システムのモデルとして、学校図書館とベンダーを対象とした調査を基に、専用端末によるスタンドアロン型と、パソコンやタブレットPCを用いたクラウドサーバー型の2タイプのモデルを提案した。前者はインターネット環境のない学校向けで、セキュリティ対策やメンテナンスが学校の負担とならない設計である。後者はある程度の規模・利用数にも柔軟に応じられるシステムで,アクセシビリティへの対応も考慮した設計である。この二つのモデルを協力を得た学校図書館で、教師並びに児童生徒に実際に使用してもらい検討した。さらに、システムベンダー(事業者)を対象に訪問によるインタビュー調査と、システム導入学校図書館へのインタビュー調査を行い、学校図書館における図書館基幹システムと利用インターフェースについて、現状と課題を明らかにした。
著者
田村 俊作
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では,フィールドワーク・訪問調査・関係者へのインタビューを通じて,レファレンスサービスの下で図書館員が実際に行っていること,および重要と認識していることを分析・解明し,インターネット環境下で保持,発展させるべきサービスの構成要素と,その展開方策を検討することを目的としている。本年度は,(1)昨年度開始した関東地方のある公共図書館でのフィールドワークを継続すると共に,(2)米国図書館協会年次大会に参加し,関係セッションで米国におけるレファレンスサービスの動向を探った。また,(3)公共図書館の訪問調査を継続した。その結果,(1)については,レファレンスサービスの遂行能力が正規職員の能力の重要な一部と見なされている一方,嘱託員はレファレンス質問や依頼を頻繁に受けているが,あくまでも補助的な職務と位置づけられていることが明らかになった。正規職員では,ベテランを中心に,庶務系以外の事務職員も担当しているのに対し,司書資格を持つ職員でも,経験が浅い場合や有期職員である場合には,レファレンスカウンターを担当させず,補助的な職務に留めていることが観察された。(2)については,米国においてレファレンスサービスが継続されているものの,その職務内容や重点とされていることは変質していることがうかがえた。これは関連文献からも確認することができた。(3)については,レファレンスサービスを重視し,レファレンスサービスを核にサービスの展開を図る動きに対し,イベント等の多彩な事業展開によりサービスの拡充を図る動きのあることがうかがえた。
著者
村上 晴美
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

研究の全体構想は「Web上の人物を選択するためのインタフェースの開発」であり、「Web上の人物を要約する手法の開発」を目的とする。具体的には、人物の「要約」手法(キーワード、件名、概要、概要文)とインタフェース(表と概要文)を開発する。また、人物選択のためにどの情報・インタフェースがどのように有用か明らかにする。 本研究における要約とは人物を選択・理解するために有用な情報の抽出、生成、あるいは付与である。平成29(2017)年度の主な成果は(1) Wikipediaの第一文風の概要文の作成と、(2) Wikipediaの導入文の調査と、(3) NDLSHの付与である。(1) Wikipediaの第一文風の概要文の作成では、平成28(2016)年度の成果の中から主要部分を抽出し、国際会議で発表した。(2) Wikipediaの第一文風の概要文の作成手法の妥当性を明らかにするために、Wikipediaの人物ページの導入文の調査を行った。本研究で抽出する属性情報(よみ、生年月日、没年月日、出身地、職業、所属、役職)が概ね妥当であること、職業の出現頻度が高いことを確認した。(3) NDLSHの付与では、Web上の人物検索結果(HTMLファイル群)に国立国会図書館の件名標目表であるNDLSHを自動付与する手法を検討した。検索ランキング、文書内の位置、同義語、文書頻度の4種類を組み合わせた405パターンについて比較実験を行った。上位10件、人名の前後100文字、同義語を利用、文書頻度で重み付けする方法の結果が良かった。成果を国内学会と国際会議で発表した。