著者
石川 真之介
出版者
国立天文台
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

研究代表者は、宇宙科学研究所のグループと三菱重工業と共同で、太陽X線集光撮像観測ロケット実験 FOXSI-2 のフライト検出器の開発を行った。この検出器は、65 μm という極めて微細な位置分解能を持つ。また、エネルギー分解能も1 keV 以下を達成し、~4 keV という低いエネルギーからの観測が実現できることとなった。FOXSI-2 ロケットに前述の研究代表者が開発した CdTe 検出器を搭載し、打ち上げを行って太陽を観測した。検出器は正常動作し、集光撮像による硬X線観測で、世界で初めて太陽の活動領域を複数同時検出することに成功した。1000万K を超える高温プラズマは、硬X線以外の波長では観測が難しく、活動領域における高温プラズマの分布はあまり明らかになっていなかった。FOXSI-2 の高感度と、ひので衛星のX線望遠鏡をはじめとする多波長の同時観測により、コロナのプラズマの温度構造、空間構造をこれまでにない精度で明らかにすることができた。太陽フレアのエネルギー源である太陽大気の磁場を観測するため、太陽彩層上部・遷移層の磁場を簡素するロケット実験 CLASP に向け、波長板モーターの開発と評価試験、CLASP ロケットの組み立てと波長板モーターの取り付けを行った。また、ロケットの組み上げ、波長板モーターの取り付けを無事完了し、共同研究期間である NASA が開発した CLASP 搭載 CCD カメラのフライト品とのインターフェース確認を行い、予定通り偏光観測を行うことができることを確認した。
著者
丸山 貴之 森田 学 友藤 孝明 江國 大輔 山中 玲子 竹内 倫子
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

近年、生活習慣病の対策として、成人に対する食育の重要性が注目されている。本研究では、食育活動の実践頻度と生活習慣病に関する検査値との関連性、早食いの主観的評価と客観的評価の関連性について調査し、食育活動が低い(早食いを自覚している)と判断された者を対象に、早食い防止啓発パンフレットの配布や食行動記録を行うことで、食育活動の改善がみられるかについて検討した。さらに、食育の知識とう蝕との関係について、歯科保健の立場から調査した。
著者
小林 廣美
出版者
兵庫大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、リウマチ患者の笑いを生みだす要因として重要な「地域における患者同士の支援体制」に関して、「リウマチ患者同士が語る会」で参加者の語りを分析し効果を明らかにすることである。方法は、A町役場と連携をとり、リウマチ患者同士の交流会を開催した。結果、リウマチの「悪化・進行」、「日常生活動作の低下」、「薬の副作用や合併症」に関して、関節保護の工夫、薬の飲み方、最新の生物学的製剤に関する情報を共有していた。リウマチ患者の笑える要因に関連していた「痛みのコントロール」においては、好きなことや楽しいことをしている時は痛みを感じないことがわかり、笑いの効果と同じ結果となった。研究結果は「あなたと共に歩むリウマチ看護-痛みの緩和と笑いの効用-」のタイトルで書籍を出版した。今後は地域における患者同士の交流会の効果を、行政、プライマリ医師と連携し広めていく必要がある。
著者
永浜 明子
出版者
大阪教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

【目的】本研究の目的は,大学で体育実技に参加する障がいのある学生の状況を把握することであった.また,学生本人及び体育実技担当教員からの聞き取りにより,大学及び義務教育課程における障がいのある児童生徒の体育のあり方を検討することも目的とした.【対象と方法】対象は、滋賀県内の大学で障がいのある学生が参加する体育実技の学生(1クラス),障がいのある学生本人,体育実技を担当する教員3人であった.対象者には,研究の目的を十分に説明し,同意が得られた者のみを対象とした.対面式インタビュー,自由記述及びグループディスカッションを行った.障がいのある学生本人には,これまでの体育への参加方法,大学での体育実技参加に対する思いや不安,参加した感想を聞き取り,障がいのない学生には,障がいのあるクラスメイトと共に体育実技を行った意見・感想を自由記述及びディスカッションで表現してもらった.体育実技担当教員には身体的あるいは知的な障がいのある学生を担当した経験,障がいのある学生を担当した時の気持ちや困った点,障がいのある学生と障がいのない学生がともに「体育実技」に参加することのメリット・デメリットなどを述べてもらった.分析は質的記述的分析手法を用い,障がいのある学生及びクラスメイトの体育実技に対する思い,参加への阻害要因などをまとめた.調査期間は,平成19年4月〜平成19年9月であった.【結果と考察】障がいのある学生は,これまで体育実技に参加したことはなく,ほとんどが別室学習を行っていた.自身が体育実技に参加できる(その能力や機会がある)ことへの驚きが多く語られた.反面,他者に対する心配や不安(迷惑をかける)も述べられた.一方,クラスメイトの多くからは戸惑いが語られた.力加減や怪我をさせるのではないかという心配が戸惑いの一番の原因であった.しかし,障がいのあるクラスメイトが楽しんでいる姿を見て,一緒にしたい,一緒にできることを探したいというように変化したとの意見も多く見られた.実技を担当する教員からもやはり怪我に対する戸惑いが語られた.また,障がいのある学生を障がいのない学生が共に実技させたいと思う反面,障がいのない学生の運動量が減ってしまうことに対するジレンマも語られた.これらの心配や不安は,障がいに関する情報や障がい児者と接した(特に体育)経験の少なから生じると考えられる.学生・教員共に障がいのある学生とない学生が共に体育実技を行うことの意義は十分に感じており,幼少期から全児童生徒が共に体育実技を行うことが児童生徒のみならず,教員の授業展開に役立つことが示唆された.
著者
小川 朝生
出版者
独立行政法人国立がん研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

化学療法の発展に伴い長期的な予後が期待できるようになった一方、化学療法後に慢性的に中枢神経系有害事象(認知機能障害)が生じる可能性が指摘されるようになった。この認知機能障害はchemo-brainと総称される。しかし、認知機能障害と化学療法との関連性、その機序に関する検討は未だ途上である。そこでわれわれは、化学療法前後を通して、脳構造画像の変化を非侵襲的に評価する測定系を構築し、抗腫瘍薬と脳機能との関連性、療養生活の質(QOL)との関連の検討を開始した。症例の集積は予定通り進み、追跡調査が終了次第、解析を行う予定である。
著者
東野 正幸
出版者
鳥取大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

本研究はモバイルエージェントのデバッグの困難性を軽減するシステムの構築を目的としている。モバイルエージェントとはネットワークに接続された計算機間を移動できる自律的なソフトウェア部品である。モバイルエージェントは、自律的に計算機間を移動可能であることから、自律性に基づいた柔軟なシステム構築が可能となる反面、ネットワークやソフトウェアの規模が大きくなるにつれて、どの計算機でどのような処理を行っているのかを把握すること難しくなり、バグの原因特定が困難となる課題がある。当該年度では、モバイルエージェントのバグ原因の特定を支援することを目的として、モバイルエージェントの軽量化と、モバイルエージェントに関連する様々なパラメータを組み合わせてシステム内からバグの疑いのあるモバイルエージェントを検索を行うシステムの構築を検討した。モバイルエージェントの軽量化に関して、モバイルエージェントは移動時にプログラムコードを持ち運ぶことから通信量や移動時間が増加し、そのオーバーヘッドが大きくなる場合がある。デバッグが困難となる環境、すなわちソフトウェアとネットワークの規模が大きい環境においては、モバイルエージェントのデバッグ時に必要な情報を収集する際にも、このオーバーヘッドがデバッグの効率上の問題となる。そこで、モバイルエージェントの移動時の通信量の削減手法を提案し、その効果を確かめた。また、モバイルエージェントが持つ特有の性質である移動性に着目して、モバイルエージェントの検索に必要となるパラメータを検討し、そのパラメータを用いて大規模なネットワーク内から効果的かつロバストに当該モバイルエージェントを見つけ出すための通信プロトコルの課題を分析した。また、提案デバッガのテストベッドとして、モバイルエージェントを用いた分散型e-Learningシステムなどの具体的なアプリケーションの試作を進めた。
著者
吉田 光演
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、ドイツ語指示詞der、英語this/that、定冠詞der、日本語指示詞コソアに着目し、先行研究の検討とWeb上のデータの比較を通じて、それらの意味の共通性と相違を考察し、次の点を明らかにした。(1)発話場面の直示と文脈照応の機能は指示表現という点で統一的に把握できる。(2)近接・遠距離の対立はドイツ語では明示的ではなく、近接と非近接のdieser, derの対比がある。(3)日本語のソ系とドイツ語derは、距離と無関係に話者の視点に応じて指示対象が変動する。それは、話者が直接に操作できない間接的参照視点が介在する変項解釈や、人称代名詞との対比で話題転換を導入する役割を果たす。
著者
八木 久義 酒井 徹朗 大橋 邦夫 山本 博一 門松 昌彦 堺 正紘 有馬 孝禮
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本研究によって、文化財修理用資析調査及び需要予測、高品位材の市場調査及び供給能力の予測、フィールド分布調査を整理した上で、分布台帳を作成するとともに、必要資材量について検討し、檜皮の剥皮実験を行った。その結果、1.文化財建造物の保存にとって修理技術者の育成と修理用資材の確保が不可欠であること、2.建造物文化財は、既指定数が増加傾向にあり、修理件数は必然的に増加すること、3.修理用資材を木材に限定した場合、その需要に対して重要な材は、樹種では、ヒノキ、スギ、マツ、ケヤキ、クリであり、材質等では大径材、高品位材、特殊材であること、4.一般市場に出回る木材は、規格材の生産に止まり、文化財修理に必要な木目の細い木目の詰んだ材は既に確保が困難な状況となっていること、5.大径材等については、天然林において修理用資材を採取出来る立木の確認が必要であり、これらの立木を育成できる森林を確保し、そのための育林方法の確立を図る必要があること、6.大径木のフィールド分布調査によると文化財修理用資材の安定的確保と言う観点からみて、大学演習林では十分な資源量とは言えないこと、7.供給サイドからはアカマツが資源として厳しい状況にあること、8.修理用資材の供給源の確保や整備を行うためには、修理用資材に求められる形質を明らかにし、立木の状態で選別できる基準を設定する必要があること、9.大経木のフィールド分布調査の対象を国有林や公有林に広げる必要があること、10.文化財の修理用資材確保を目的とした備林を設定する必要があること、11.文化財修理の資材調達の困難さの実状を社会的に明らかにし、森林所有者とともに、林業、木材業界全体の協力体制を大学演習林が率先してモデルを構築することが必要であり、それらを基礎に大学演習林を中心にして地域の関係者との体制作りへと進むべきであること、が明らかになった。
著者
森 英樹
出版者
福井県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、意味変化を分析する際に語彙的視点と構文的視点という2つの視点を想定することによって、同一構文の意味変化であっても、視点の違いによって文法化と見なせたり語彙化と見なせたりすることを示した。日本語と英語等の他言語における命令形表現を中心に、共時的・通時的データを収集・分析し、ケーススタディとして国内外での学会発表や論文を通して本分析の妥当性を検証した。本研究の成果は、今後、構文の概念を重視する認知言語学、構文化を扱う最新の意味変化理論といった関連分野における研究として発展させることができる。
著者
持田 徹 垣鍔 直 堀越 哲美 桑原 浩平 窪田 英樹 松原 斎樹 くわ原 浩平
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

世界の二大指標であるISO-7730のPMV指標と,ASHRAE(米国暖冷房空調学会)の基準であるSET^*指標の長所・短所を整理した。そして,平均皮膚温およびぬれ面積率と心理量の関係を,熱伝達論および人体の温熱生理特性から検討し,椅座の被験者実験の結果から,新しい温冷感の評価法を提案した(持田・桑原・窪田・長野)。また,屋外における夏服と冬服の着用実験から,著者らが提案した日射の影響を組み込んだSET^*が屋外においても適用可能であることを確認すると共に,屋外熱環境評価のための新しい温熱指標として予想温冷感ETSを開発した。札幌・名古屋での温冷感・快適感申告データから,SET^*の温冷感中立域・快適域を決定した(桑原・堀越・持田)。汗による水分吸収により着衣の電気抵抗が変化すると考え,着衣面の電気抵抗を測定することにより吸汗量を推定する方法を実験により検討した。また同方法を用い,軽装時において,冬期と夏期に40℃に曝露したときの胸部,上腕部,大腿部の局所の放熱過程を測定した結果,皮膚面の受熱量は着衣の表面温度が低下し始めてから,冬期の実測では約10分,夏期の実測では約6分遅れて低下することを確かめた。(垣鍔)。さらに,人体と環境との対流熱交換量を正確に算定するために,椅座・立位時の対流に関与しない面積(非対流伝熱面積)の実測を行った。姿勢による部位別の対流伝熱面積の違いを明確にし,対流伝熱面積を考慮した立位と椅座時の平均皮膚温算出用の重み係数を提案した。全体表面積に比し,対流伝熱面積が小さいほどHardy-DuBoisの平均皮膚温との差が大きいという姿勢に依存する特性を示した(松原)。
著者
村田 厚生 早見 武人 山本 豪志朗
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では,ドラーバーの安心感を高めるための警報システムの人間工学的設計基盤技術,居眠りによる自動車事故防止のための基盤を確立し,ドライバーの反応の正確さ・迅速さを保証するための触覚警報提示方法を同定した。また,ベイズ推定,多項ロジスティック回帰モデルを用いた居眠り予測ロジックを提案し,運転シミュレータを用いた検証実験によって, 90-96%の高い予測精度を得た。
著者
岡田 謙介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-07-18

本研究は、熱帯半乾燥地域の中でも近年稲生産国として着目されているタンザニアを例に、圃場試験・モデリングおよび経済分析の各手法を統合することにより、灌漑水田・天水低湿地・天水畑地間の最適資源配分の導出方法を開発し、延いては安定的な米供給の実現に資することを目的とするものである。平成29年度には現地への訪問は行わなかったが、タンザニアにおける天水ネリカ普及JICAプロジェクトであるTANRICEの長期専門家から、まず2017年8月にスカイプで研修内容に関する詳細な聞き取りを行った。次に解析に必要なデータについては、2017年8月と2018年3月にメールを通して情報を入手しモデル解析を実施した。すなわちタンザニアにおける同プロジェクトの2013以降5年間に渡るタンザニア全土の各地におけるのべ29回のネリカ栽培研修会における詳細なデータを入手した。その中には各研修会に参加したのべ1179名の参加者の農地における収量等の栽培データが集積されている。現在、それらのデータを統計的に解析を行うとともに、これを用いて各地・各年にAPSIM-Ozyzaを完全天水畑地と仮定して走らせ収量解析を実施している。一方でタンザニア各地においてネリカ導入を、農民における既存栽培作物のネリカへの置換ととらえた場合の、ネリカの収量だけではなく、既存作物の種類および収量、およびそれらの各作物の販売収入についても考察の対象として、本当にネリカ導入に対する農民の意欲を測定する手法について、文献調査も含めて検討を行いつつある。
著者
大野 出 松宮 朝 島田 健太郎 平野 多恵 小平 美香 加藤 みち子
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究の最終年度にあたり、これまでに送付し、返信を得られた寺院からの回答を各宗派ごとに、その回答を数値化し、なおかつグラフ化し、その回答を整理かつ分析を行った。宗派別に言うと、天台宗、真言宗、曹洞宗、臨済宗、黄檗宗、日蓮宗、法華宗である。その結果として、最も御籤に対して積極的な関与をしている宗派が天台宗であることが判明した。ついで御籤に積極的に関与しようとしている宗派が、真言宗であることも同時に判明した。
著者
山下 裕 黒岡 武俊
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、微分・代数方程式(以下、DAE, differential-algebraic equation)で与えられた非線形システムの制御系設計問題について研究した。非線形の場合、線形のディスクリプタ形式と異なり行列演算だけで冗長度の無い常微分方程式系に変換することができず、非線形代数方程式を解いて冗長度を消去する作業は一般に困難である。そこで、本研究では非線形代数方程式を解くことなく、冗長度を持ったまま制御系設計を行う方法を示した。まず、index 1のDAEシステムに対し、入出力線形化・オブザーバ設計を行った。その際の大域的安定化条件を示した。そこでは冗長度が消えるように、オブザーバのダイナミクスにおいて代数方程式からなる不変多様体に有限時間整定する設計を採用した。次にhigh indexを持つ系に対し、インパルスモードを持つ場合を含めて、冗長な常微分方程式系に変換する方法を2つ示した。一つは、インパルスモードの数に応じた積分器を入力に付加し代数方程式を順次微分する方法である。もう一つは、状態フィードバックを用いるKumarらのrugularizingを改良した方法である。オブザーバを使う場合は、必然的に前者の方法を使わざるを得ない。これを用いてindex 1のDAEシステムと同様にhigh index DAEシステムに対し、入出力線形化・オブザーバ設計を行った。入出力線形化は冗長常微分方程式系に対してそのまま設計すればよい。入出力線形化に限らず、可制御性を要求しない制御手法であれば適用できるであろう。しかし、冗長常微分方程式系に対してオブザーバを設計すると、設計条件が厳しくなる。そこで、index 1の手法をhigh index DAEシステムに対し拡張し、さらに、付加積分器の状態変数が既知であることを用いて、設計条件を緩和した。得られたオブザーバは冗長な全ての状態量を推定し、かつ代数方程式の拘束を有限時間で満たすように動作する。
著者
六本 佳平 ダニエル フット IWAI Hiroshi DOI Tadashi KURIYAAM Hiromichi KOMEDA Mototane
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1)法報道の概念および研究分野としての意義について考察した。2)法報道の量の増大について数量的なデータを得るべく、朝日新聞縮刷版により60年、80年、00年の各偶数月の法報道(一定の基準を設定)記事の内容・大きさ・頻度等を調査し、40年間に記事の数が3倍近く増えていることを確認した。3)法律の専門知識とジャーナリズムの専門性とにまたがるこの分野に対する報道機閧の体制について内外の関係者に若干のインタビュー、研究報告により、現状を考察した。4)アメリカ大統領選挙におけるTV報道とその役割について、六本およびフットの報告・討論を行い、メディアの法報道が重要な政治的役割を果たす過程を具体的に分析した。
著者
山田 稔
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

1998年から2006年の9年間で日本海裂頭条虫症は27例(年平均3例)であった。しかし2007年から2010年の3年間では55例(年平均18例)と2007年頃から増加に転じ, 2009年20例, 2010年13例, 2011年5例であった。患者発生は一年を通して見られるが,特に5-7月の初夏がピークで,全年齢層に見られた。2007年から若年齢層や女性感染者が増加し,生サケの摂食が成人男性中心から全年齢層に拡がっていることが挙げられる。2010年は14例中13例が日本海裂頭条虫, 1例がロシアで感染した広節裂頭条虫と同定された。日本海裂頭条虫13例のうち9例がゲノタイプA, 4例がゲノタイプBであった。2011年は5例とも日本海裂頭条虫で, 4例がゲノタイプA, 1例がゲノタイプBであった。またサケ属魚類79尾を調査し, 2009-2010年度65尾中8尾から幼虫が検出された。2011年度は14尾検査したが,全て陰性であった。陽性サケ1尾当りの寄生数は1-7虫体でほとんどがゲノタイプAであったが,ゲノタイプA, Bが混在した個体もあった。
著者
有安 真也
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

血中循環癌細胞 (CTC) の回収は癌の超早期診断や癌の個別医療化につながる。しかし、現状では CTC の検出に留まり、無傷での回収は実現されていない。そこで本計画では、癌細胞の大きさを利用したサイズ選択マイクロ流路と光切断反応を利用した光応答性抗体修飾シリコン基板を作製した。本計画で作成した光応答性抗体修飾シリコン基板は、基板上の抗体により、細胞混合液からモデル細胞を選択的に捕捉可能であり、その後、光照射によって、細胞を生きたまま回収できることを明らかとした。
著者
松本 涼子
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

脊椎動物の進化史の中で、水から陸へ(両生類から爬虫類へ)といった生活圏の移行は重要な転換期である。ここで起きた重要な変化の1つが捕食様式である。水中では水流を用いた吸引が可能だが、陸上では顎を用いた咬合になる。吸引と咬合では頭骨にかかる力や作用する筋に大きな違いがあると予想され、それぞれに適した頭骨デザインがあると考えられる。これを解明する事で、捕食様式の変遷を示す鍵となる形態進化を系統に沿って追う事が可能になる。そこで、本研究では脊椎動物が水から陸へと適応進化する過程でどのような力学的制約のもと頭骨のモデルチェンジが起き、脊椎動物の頭骨形態が多様化したのかを明らかにする事を目的とする。平成24年度は、国立科学博物館・真鍋真研究主幹の下で、本研究のモデルケースとして用いるオオサンショウウオを含む多様な両生類の頭部と頸部の3次元骨格データを集積した。本研究に用いられた標本は、受け入れ研究機関の国立科学博物館だけでなく、日本国内(3箇所)の研究機関が所有する両生類の液浸・冷凍標本を用いた。その結果、現生両生類の主要な分類群を網羅し、本研究に必要な90標本の三次元頭骨データが得られた。これらの標本は、受け入れ研究機関が所有するマイクロCTスキャンを用いて撮像し、その後、3次元画像構築ソフト(Avizo使用)を用いて立体構築を行った。今後、補食様式のシミュレーション力学モデル解析を行う予定である。また、平成24年2月、3月に北九州市立いのちのたび博物館を訪れ、生きているオオサンショウウオの他4種の両生類が捕食している様子を、ハイスピードカメラ(HASL1)を用いて撮影した。30回の実験により、様々な角度からオオサンショウウオ等の捕食画像が取得出来た。今後、得られた画像データは、動画解析ソフトを用いて数値化することでシミュレーションモデルの枠組みを形成する予定である。
著者
吉田 豊
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年筆者は日本において14世紀頃中国江南で制作された8点のマニ教絵画を発見した.それらははマニ教の宇宙論や終末論を絵画化したものや,マニの伝記を描いたものである.これらはマニ教研究にとって重要な資料となるでだけなく,中世イラン語のマニ教文献の解明にも資するものである.というのも中国のマニ教は,7-8世紀頃イラン語圏から伝道されたものであり,これらの絵画は究極の情報源であった中世イラン語で書かれたマニ教文献の内容と密接に関連しているからである.この3年間の研究の成果として,こららのマニ教絵画の精密なカラー図版と,それらの絵画の内容とイラン語のテキストとを比較した研究を一冊の本にまとめて発表した.
著者
山本 直美 登喜 和江 澁谷 幸 矢田 眞美子 澁谷 幸 日坂 ゆかり 山添 幸
出版者
千里金蘭大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、無症候性脳血管障害患者のQOL支援する包括的看護活動の探求を目的とした。方法1は、未破裂脳動脈瘤で自然経過観察患者の生活体験に注目した。その結果、『動脈瘤を忘れる』『生活を変えない』『病気ではない』という認識の一方で、患者の背景ごとに特有な体験も明らかになった。方法2は、脳卒中看護に関わる看護師91名に質問紙調査を実施した。看護師は未破裂脳動脈瘤の発見を良い傾向と認識し、自然経過観察患者の「心理的サポート」「生活改善」に関心が高いことが分かった。結果より、看護師と患者の認識には若干の乖離を認めた。今後は看護プログラムの個別化や医療と患者のつながりを維持するシステムの検討が示唆された。