著者
上原 禎弘
出版者
兵庫教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、小学校低学年(2・3年)の8学級の体育授業を対象とし、学習効果(態度得点)を高めた学級とそうでなかった学級の教師の発言を品詞分析により分析した。その結果、低学年期においても高学年期と同様に特定の8つの品詞の用い方が認められた。また、中学校期(2年)の事例的検討においても同様の結果が認められた。これらのことから、義務教育段階においては、学習成果(態度得点)を高める体育授業の<文法>が存在するものと考えられた。
著者
佐々木 睦子
出版者
香川大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

双胎妊婦と双子の母親に,妊娠中の胎児への思いと要望についてインタビュー調査した.結果より,双胎妊娠中は,双子に関する制度や出産育児情報の提供,さらには双子をもつ母親との交流等,双胎妊娠中の心理的特徴を考慮した支援の必要性が示唆された.また,要望に沿って保健指導に活用できる,双胎妊娠・分娩の経過,異常の早期発見,多胎育児準備チェックリスト,産後のサポートに関する情報パンフレットを作成した.さらに,双胎妊婦と双子の母親の交流の場作りをめざして,地域の多胎児子育て支援団体と連携を続けている.
著者
中森 亨
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

沖縄県石垣島、鹿児島県奄美大島、高知県大月町で現生造礁サンゴ群集の観察と写真撮影を行い,そこに生息する造礁サンゴのリストを作成した。同じ海域において,海水を採取し,海水のpH,全炭酸,全アルカリ度と自動センサーを用いて水温と光量子フラックスを測定した。これらの化学成分の変化を元に群集の有機,無機炭素生産速度を計算した。これらの二つの生産を、水深と緯度の関数としてモデル化した。
著者
松村 勝弘 川越 恭二 井澤 裕司 平田 純一 富田 知嗣 澤邉 紀生 村山 嘉彦 荒川 宜三 豊原 紀彦 荒井 正治 八村 廣三郎
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

(研究・教育システム)われわれは,立命館大学において.経済・経営・理工の学部横断的な研究・教育システムづくりの一環として,ファイナンス・インスティテュートを設置し,一昨年来その研究教育システムの開発に取り組んできた。これは,現代企業に突きつけられている複雑な課題を文理総合型の新たな仕組みの中で,その解決策を発見できないかと考えたからである。このような取り組みは,学際的な研究教育の仕組み作りを必要とした。(データ・ベース)そこで,ファイナンス分野での研究・教育をすすめるために,現存のマクロ・データ,株価データ,企業財務データなどのデータを総合的に分析するための研究・教育用ソフトウェアを,バックグラウンドを異にする研究者の協力共同のもとで,開発した。と同時に,別途資金により日経クイック社の協力を得て新たなデータ・ダウンロードのためのもう一つの仕組みも完成させ,これも併用している。これらは学生初学者用ウェッブ・ページ版と中級上級用バッチ処理版およびアクセス対応版の三本立てでデータベースへのアクセスをする仕組みを完成させるとともに日経クイック版とあわせ,これらの研究・教育の両面からの利用を進めてきた。それぞれ一長一短がある。今後もこれらの改善すすめる予定である。ここで最大の問題は,環境その他日進月歩でできあがったものがすぐに陳腐化してしまうことである。そこで,科研以外の資金も活用しつつ,かつ日経クイック,大和SBをはじめとする資金力のある外部機関との共同の取り組みでこれに対応しようとしている。(教育プログラム)教育プログラムとしては,2000年度開講の『金融市場分析実習』の内容となるものを共同して研究し,これを教育に活用したが,なお改善の余地があると考え,現在さらに改善しテキストにしようとしている。その第一の内容は,証券アナリスト資格要件の一つとして,財務分析,の学習が課されており,これを含んで,実際のアナリスト業務を行うにあたっての素養としての企業分析の実習を内容とする。第二は,ファイナンシャル・エコノミクスに基づいた金融市場分析を内容とする。これについては,別途大和SBが開発したPoet-SBを活用した教育を進めてきている。これらについても一定その成果を別途冊子にまとめた。(研究プログラム)現在,まずはこれまでの研究を基礎に,前者を内容とするテキスト作りを進めている。これと並行して,日本の金融システムと企業財務戦略に関する研究を深めるという作業を行っている。成果の刊行はすでに終えたものの他,なお継続中のものもあるが,これまでの成果をさしあたり別途冊子にまとめた。
著者
千葉 慶
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、石坂洋次郎原作の映画作品を主な対象として、戦後日本映画において「民主主義」がどのように表現されたのか。そして、時代的変化に応じて、その表現がいかに変化していったのかを考察した。本研究では、石坂洋次郎映画における「民主主義」表現の原則を明らかにした。それは、第一に自己決定権の拡張であり、第二にその結果必然的に生じる他者との軋轢を解消する手段として暴力ではなく対話の精神で応じることである。時代的変化によって後者はだんだん曖昧化してゆくものの、前者が維持されていたことが明らかとなった。
著者
谷口 守 石田 東生 岡本 直久 堤 盛人 谷口 綾子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

現在、エクメーネは荒廃が続いており、その構造面からの修復を本気で考えねばならない段階にある。特に都市域のコンパクト化やスマートシティ化といった政策や、およびエコロジカル・フットプリントなど適切な評価指標の開発も必要である。本研究ではそれら諸課題に主に統計的な観点から対応するとともに、対応する都市計画制度や意識改革に至るまで、次の時代のための新たな解決策の提示を行った。
著者
小田 久美子
出版者
ノートルダム清心女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、輪郭線を利用した活動の開発を目指し、臨床応用するための検証を行った。まず幼稚園教諭と研究者との連携により造形プログラムを計画立案・実施し、次にデータ整理と分析を行った。結果、鑑賞活動と表現活動が自然に融合することにより子どもの絵画表現への内発性に刺激を与え、その活性化を促す傾向が見られると判断された。現在まで特に教育的な価値が与えられていなかったが普及率は高く、子どもに好まれる塗り絵遊びに着目し、輪郭線を取り入れた教育実践を検討することは、幼児教育・美術教育において未開拓の領域であると言える。したがって教育現場にとって、新しい指導援助の方法として大きな意味を持ち得ると考えられる。
著者
鶴田 健二 小山 敏幸 尾形 修司 兵頭 志明
出版者
岡山大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

本特定領域研究を通して, 複数の空間スケールをつなぐ新しいシミュレーション手法・アルゴリズムを開発・高度化し, 機能元素材料科学の学理構築に資する新しい計算科学手法・ツール開発を大きく進展させた。また, ナノ計測班ならびにプロセス班との連携において, 本領域における共通試料であるアルミナの転位・粒界構造の微視的構造と電子状態, 元素偏析の安定性と局所電子状態の定量的解明に上記新規手法を適用し, その適用性を実証した。
著者
林 農 HIGUCHI H. KLICK Heiko LAMPARD D. LICHTAROWICZ エー CLAYTON B.R. CHOI KwingーS 田辺 征一 若 良二 河村 哲也 望月 信介 大坂 英雄 LAMPARD Desmond HIGUCHI Hiroshi
出版者
鳥取大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

本国際共同研究は、イギリス、ドイツ、及びアメリカの研究グルプと、本年13周年を迎えた西日本乱流研究会の研究者達が協力して、それぞれが既に研究成果を挙げ十分なデータを蓄積している運動量、熱及び質量輸送に関する実験結果を相互に交換して、これらに共通する基本原理を明らかにすることを目的としたものである。本共同研究の開始に先立つ4年前、研究代表者の林は文部省在外派遣研究員として、1991年8月から4ヶ月間ドイツ・ルール大学ボフム校に滞在し、K.Gersten教授及びHeiko Klick氏と遷移境界層中に発達する温度境界層に関して共同研究を行った。引き続き、1991年12月から4ヶ月間イギリス・ノッチンガム大学に滞在して、Kwing-So Choi博士とリブレット平面上に発達する境界層内の伝熱促進に関して共同研究を行った。その際、ノッチンガム大学のB.R.Clayton教授及びルール大学のK.Gersten教授の勧めもあって、3国間での資料交換についての国際共同研究を申請することに合意し、国内外研究者の組織化を進めた。その結果、幸いにも、平成7年度文部省科学研究費補助金国際学術研究に採択いただき、国際共同研究を実施する運びとなった。国際学術研究・共同研究では、国内の研究者グループと国外の研究者グループの対等の立場での研究者交流が重要な柱となっているので、本共同研究においても、研究経費は各研究機関の負担によることとし、研究者の交流による討論及び外国研究機関での研究に主眼をおいて学術交流を推進した。本共同研究の目的である討論をより深めるためには、各々の研究者が国内外の各地に点在する大学や研究所を訪問し互いの実験結果を比較し検討するよりは、経費と時間を有効に使うためにワークショップなりセミナーの形式を採用して多くの研究者が一堂に会して、課題の本質について討議することの方が能率良く且つ実り多い結果が得られると感じられたので、共同研究の実施期間である平成7年度中に、2度の 「質量,熱,運動量輸送の乱流制御」 に関する国際会議を開催した。一つは、1995年10月6日に鳥取大学において開催した国際交流セミナー 「質量,熱,運動量輸送に関する乱流制御」 であり、B.R.CLAYTON教授、Kwing-So CHOI助教授及びHeiko KLICK博士の3名に加えて、国際的学者である東京大学・笠木伸英教授及び名古屋大学・中村育雄教授、国内の研究グループである西日本乱流研究会の多くの研究者達が討論に加われるように配慮して、検討を十分掘り下げることができた。他の一つは、1995年8月22日にイギリス・ノッチンガム大学において開催したOne-day Colloquium 「Techniques in Turbulence Management of Mass,Heat and Momentum Transfer」 であり、西日本乱流研究会からも特別講師として、研究代表者の林農教授、研究分担者の大坂英雄教授、河村哲也教授、田辺征一教授が招かれて、ノッチンガム大学のスタッフのみならず、イギリス各地の大学、研究所、企業から集まった乱流制御問題に関心のある研究者達及び別途日本から参加の岐阜大学・福島千尋助手及び日本原子力研究所の秋野詔夫主任研究員らを交えて活発な意見交換が成され,十分な成果をあげることができた。また、河村哲也教授は、短期間であるが共同研究の相手先であるノッチンガム大学工学部機械工学科に滞在して、リブレット付き平板上に発達する境界層の数値シミュレーションに関する研究を行った。研究分担者の鳥取大学・若 良二教授もノッチンガム大学短期滞在中に乱流計測技術の調査研究についての成果を得た。今回の共同研究の結果として、本研究に加わったイギリス・ノッチンガム大学及びアメリカ・シラキュース大学と鳥取大学との大学間交流協定を締結する準備が進展している。したがって、ノッチンガム大学とはリブレット付き平板上の境界層の発達と熱伝達促進に関する共同研究を、シラキュース大学とは円柱後流の干渉とウェーブレット解析に関する共同研究を、大学間協力研究として、近い将来の文部省科学研究費補助金国際学術研究に申請するよう計画しているところである。
著者
檀浦 正子 小南 裕志 高橋 けんし 植松 千代美 高梨 聡
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

環境変動予測のためには、陸域炭素循環において大きな役割をもつ森林の炭素循環解析およびモデルの確立が必要である。そこで、炭素同位体パルスラベリングをアカマツ、コナラ、ミズナラ、マテバシイに適用し樹木内の炭素移動速度および樹木内滞留時間の樹種間比較を行った。アカマツにおける移動速度は広葉樹と比較して遅く、樹木内滞留時間には季節変動がみられ特に冬季は顕著に遅くなった。ミズナラ・マテバシイについては大きな違いは見られなかった。コナラの葉に固定された炭素は4日程度でそのほとんどが幹へと移動した。しかしラベリングから長期間経過後も13Cが残存し、同化産物によって滞留時間が異なることが示唆された。
著者
平間 充子(平間充子)
出版者
桐朋学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

当時の正史・儀式書・記録類の記述から、古代日本の儀礼では「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どのように」演じ、またそれを視て聴いていたのかを明らかにし、更にそれらは「なぜ」だったのかを政治的背景から考察した。具体的に扱ったのは、葬送儀礼、行幸、大嘗祭、正月の大饗、旬儀、五月五日および相撲節の芸能である。その結果、日本では古来在地の芸能は土地の霊力の象徴とされ、それを視て聴くことが支配者たる必須要件であったこと、律令制と同時に中国から支配者の徳を流布するための芸能とその概念が導入された可能性が高いこと、そして前者の概念は近衛府の、後者のそれは雅楽寮の芸能が其々表象していたことを指摘した。
著者
斉藤 隆 多根 彰子
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012

T細胞の活性化は、副刺激シグナルによって正に負に制御されている。特に負の制御は、活性化が過剰になり自己免疫疾患にならないようにフィードバック制御として重要な役割を果たす。抑制受容体として重要なPD-1によるT細胞活性化のダイナミックな抑制制御のメカニズムを解析した。T細胞活性化は、TCRミクロクラスターによって誘導されることを明らかにしてきたが、抑制受容体PD-1は、T細胞活性化に伴ってTCRミクロクラスターと共存し、TCRがcSMACを作ると、PD-1もCD28と同様にcSMAC(CD310w領域)に集結した。PD-1は活性化に伴ってリン酸化され、SHP2をリクルートしてTCRミクロクラスターに集結したTCR直下のシグナル分子の脱リン酸化を誘導した。PD-1による活性化抑制がTCRミクロクラスターに共存することが必須かを解析するために、細胞外領域の長さを変えた種々のPD1変異分子を作製発現させて、その局在と機能を解析した。細胞外領域の大きな分子は、TCRミクロクラスターとも共存できず、SHP-2をリクルートせず抑制活性を持たなかったのにたいして、Igドメインが2つまでの小さな分子では、ミクロクラスターに存在しSHP-2をリクルートして、活性化抑制を示した。このPD-1ミクロクラスターを介した活性化抑制を、より生理的条件下で誘導されているか、を解析した。抗原ペプチドにて頻回免疫したマウスのT細胞は、PD1を高発現し、抗原刺激への反応が抑制されたアナジー状態にある。PD-L1存在下で刺激するとPD-1はTCRミクロクラスターに局在し、SHP-2をリクルートして活性化抑制をするが、抗PD-L1抗体でブロックすると、ミクロクラスター局在も抑制活性も見られなくなった。これらより、PD-1は活性化にともなってダイナミックに動態し、PD-1がミクロクラスターに存在することによってSHP2を介して、PD-1によるT細胞活性化の抑制制御に重要であることが判明した。
著者
永田 暢子
出版者
埼玉医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、急性白血病患者の抱く希望の内容、希望に作用する要因および希望を支える看護師の関わり方を明らかにすることである。初発の急性白血病患者に対して半構成的質問紙を用いた面接調査を行った。急性白血病患者にとって重要な希望は病気の治癒であった。患者は不安を抱えつつも治療を重ねることで自分なりの対処方法を獲得し、治癒へ向かっていることを実感していた。看護師は、患者が安楽に治療を受けられるよう環境調整を行う必要がある。
著者
渡辺 真澄
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

失語症は、左大脳半球の言語関連部位の損傷で生じ、言語の色々な面に障害が現れる。例えば自分の考えを「文」にすること、ものや絵の「呼称」が困難になる。文の中心は動詞である。そこで動詞活用を検討した。動詞の活用型は語尾で決まり、健康な人では五段か一段か判別できない語尾の動詞活用が困難だった。また動詞には自他対応動詞がある(閉まる/閉める)。失語症では自他対応動詞の理解が苦手で、中でも自動詞が難しかった。音が似ているのと、自動詞文の構造が複雑なことが原因であろう。健康な人には簡単に見える発話も、実は難易があり、失語症ではその難易度が増幅されて現れたと考えている。さらに呼称の促進要因についても検討した。
著者
由本 陽子
出版者
大阪大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

今年度は、日本語の複合動詞形成に焦点を当て、語彙概念構造(LCS)と項構造の関係について考えた。日本語では、「動詞+動詞」の複合が非常に生産的であるが、どのような動詞の組み合せでも自由なわけではない。国語学の先行研究においては、2つの動詞の意味関係にどのような型が認められるかという分類が示されるか(cf.長嶋1976他)、もしくは、2つの動詞のうちどちらが複合動詞の格を支配しているかについての分類を示す(cf.山本1984)に留まっており、どのような組み合せが許されるのかが予測できるような、複合動詞形成を支配する原則の探求には至っていない。これに対し、Kageyama (1989)では、日本語の複合動詞には統語部門で形成されるものと語彙部門で形成されるものとがあるとし、さらに影山(1993)では、後者にも項構造の合成によるものとLCSの合成によるものという区別を認めた上で、各々がその形成されるレベル・部門に適用される原則に支配されていることが示されている。本研究では、このうち特に語彙部門で形成されると考えられているものに焦点をあて、小説・新聞・逆引き辞典などから収集した複合動詞を調査し、可能な動詞の組み合せは、(1)複合動詞のLCSにおいて、それを構成する2つの下位事態が全体として単一の事態と認識され得るような関係づけをなされていること (2)2つの動詞の主語が同定されること (3)複合動詞の項構造と格素性がBurzioの一般化に従っていること という3つの制約によって予測可能であることを示した。(1)については5つのパターンを認めたが、これはLi(1990,1993)の中国語の複合動詞の観察とほぼ一致しており、おそらく普遍的に限定されるであろう。-方(2)は中国語にはない制約であり、また、前項が非能格動詞、後項が非対格動詞の場合にも成立することから、影山の主張に反し、語彙部門での複合動詞がすべてLCSの合成によることを示唆する。(3)は、複合動詞の格素性が主要部優先を原則とする浸透の原理により導かれることと、項構造がLCSから結び付けの規則により派生すると仮定した場合、(1)(2)では説明できない動詞複合の制約を説明するものである。結論として、日本語の語彙部門における複合動詞形成に関してはLCSのレベルですべてが説明でき、項構造のレベルはLCSから派生するものとして促えた方が良いと思われる。また、複合動詞について得られた知見から、動詞のLCSはPustejovsky(1991)らが主張するように、event structureを含むものであるべきことが明らかとなった。
著者
高田 良太
出版者
駒澤大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

クレタ島では、13世紀から17世紀までの長きにわたってヴェネツィアが、ギリシア系住民を支配する状況が続いた。そうした支配=被支配の関係の構築プロセスを1300年前後の政治・社会的状況に基づいて考察し、以下の2点を明らかにした。一点目は、クレタ島の旧宗主国であるビザンツと、クレタとの関係の変化である。ビザンツは島内のギリシア系住民とのコネクションを保ちつつ、ヴェネツィアのクレタ領有を認める方策をとった。二点目は、島内の変化である。13世紀末に台頭したギリシア系有力者のアレクシオス・カレルギスの介在によって、ギリシア系住民にヴェネツィアの意図する支配が理解され、平和が構築されることになった。
著者
畠山 力三 金子 俊郎 加藤 俊顕
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

シリコン基板上への高品質グラフェン直接合成法を開発することに成功した. 拡散プラズマを利用して, シリコン基板表面に薄膜状に堆積させたニッケル内部の炭素拡散を促進させることで, ニッケルとシリコン基板界面に高品質グラフェンを直接合成することを実現した. また, 同様の拡散プラズマを利用することで, グラフェンエッジのみに選択的に窒素原子をドーピングすることに成功した. これにより, グラフェンの電気伝導特性をp型からn型に自在に制御する手法を確立した
著者
安部 治彦 安増 十三也
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

神経調節性失神の治療法として、薬物治療と非薬物治療(ペースメーカやトレーニング治療)がある。しかしながら、薬物治療に関する種々のプラセボコントロール研究では、いずれの薬剤の有効性も証明されていない。また、ペースメーカ治療はペースメーカ植込み手術によるプラセボ効果によるものであることが判明した。そのような科学的背景から現在の神経調節性失神の治療では、トレーニング治療を中心とした非薬物治療が最も有効であると考えられている。本研究ではこのトレーニング治療の有効性を検討した。方法・対象:Head-up tilt検査において失神が誘発され、神経調節性失神と診断された患者13名に1)失神の病態生理や予後、予防法の教育指導、ならびに2)自宅あるいは職場でおこなうトレーニング法(起立調節訓練:1日1回30分)の2つを行ない、治療1ヶ月後に再度head-up tilt検査を行ないタスクホースモニターにて血行動態を中心にその予防効果を検討した。結果:control head-up tilt検査において、全例で失神が誘発されたが、治療1)、2)施行1ヶ月後には、全例で失神の誘発は不可能であった。Head-up tilt検査時の血行動態ではコントロール時と変化を認めなかった。結論:神経調節性失神のトレーニング治療効果には、トレーニングによる教育効果が大きいことが判明した。
著者
鈴木 洋昭
出版者
大阪樟蔭女子大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究によって得られた研究成果は次の通りである。1.海外日本人学校での勤務による教員の異文化体験は、実に91.6%の教員の教育観を変化させている。国際理解教育に対する教育観の変化は、帰国後の活動の中に現れている。2.日本人学校で勤務を経験した教員の異文化体験を活かすには時間が必要である。帰国後の教員は仕事内容の変化と3年間の海外生活による日本社会への順応に苦労するが、そんな状況でも異化体験を活かすべく努力している。3.異文化体験が現在の勤務校において活かされている教員は、実に様々な場で活躍されている。反対に活かされていない教員も異文化体験を活かすべく努力している。国際理解教育の場で勤務経験を活かしたいとほとんどの教員が思っている。4.異文化体験よりも、帰国後の受け入れ状況が、態度変容に大きな影響を与えている。受け入れ側の対応により、帰国教員の異文化体験を充分に活用できない状況がある。そのため、日本人学校における勤務経験を公にしない教員が存在する。また、その家族についても、派遣教員が帰国後の心配をしなくてすむ配慮が必要である。今後は、海外在留邦人子女教育機関が、いかに現地の社会や文化に国際貢献をしているかという新しい視点から、海外日本人学校の真の姿を明らかにしたい。
著者
林 信太郎
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ジオパークで活用可能な地学教育教材としてキッチン・ジオ実験を開発した。(1)ヒアリングにより各ジオパークのニーズを明らかにした。(2)「コンデンスミルクのアア溶岩実験」,「砂糖の黒曜石実験」など,各ジオパークの地学現象を実感を持って理解させるための実験を11種類開発した。(3)さらにジオパークに所在する学校で実践的検証を行った。その結果,これらの実験は小学校高学年児童に理解可能であり,大きな教育効果を持つことが明らかになった。