著者
市坪 信一 秦 正治 冨里 繁 西 正博 新 浩一
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

携帯電話システムの無線回線設計のためにマイクロセル内にある傾斜地での伝搬損失の推定方法を検討した。基礎データを取得するために、岡山市内の2地区、広島市内の3地区、北九州市内の4地区で傾斜地の伝搬損失を測定した。送受信の角度をパラメータとした4つの推定法を提案した。測定データを用いて提案方法の有効性を検証し、大まかな推定ができることを明らかにした。今後の推定精度向上のためには実際の傾斜地の状況をさらに推定法に反映させることが必要であることも明らかになった。
著者
杉内 博幸 松嶋 和美 安東 由喜雄 安楽 健作
出版者
熊本保健科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

我々はカチオン系界面活性剤とポリエチレングリコール修飾酵素をコレステロール測定系に加えるとHDL3-Cを選択的に可溶化することを見いだし、分離操作が不要で簡便なHDL3-Cのホモジニアス測定法を開発した。尚,HDL2-Cは総HDL-Cから差し引いて求めることとした。本法の同時再現性は,HDL3-Cが10~30 mg/dlの範囲でCV%2.0%以下であり,本法と超遠心法との相関はn=20 回帰式y=0.884x+4.807,r=0.841となった。本法は自動分析装置を用いてHDL3-Cを微量検体で簡便・迅速に測定できることから,動脈硬化性疾患の治療・予防に大きく貢献できるものと考えられる。
著者
井上 知泰
出版者
いわき明星大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

Si(100)基板上の二酸化セリウム(CeO2)薄膜のエピタキシャル成長において、表面電位分布制御により成長面方位が選択可能な方位選択エピタキシの研究を進めた。電子ビームを照射して局所的に表面電位を変化させる方法を採用し、Si(100)基板上にCeO2(100)と(110)領域の複合面方位構造の形成に成功した。この2つの面方位領域間に両方位成分を含んだ遷移領域が存在し、その幅がSi基板の比抵抗の対数に比例して縮小することが分かった。この結果から、絶縁基板上Si層にリソグラフィーにより溝を設けてSi島を形成し、それらの間を電気的に絶縁し、複合面方位領域間を完全分離する手法の検討を開始した。
著者
宇沢 美子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は20世紀前半のアメリカ演劇・文学における東洋人表象の変遷を扱い、従来はハリウッド映画との関係のみで論じられてきたイエローフェイスの営みを広くアメリカ文化全般に開くことを目的とする。舞台からラジオ、映像へと多ジャンルへ展開したイエローフェイスは異人種装による社会批評、実験演劇、政治プロパガンダと同時にそれに対するパロディをも準備する手法としてアメリカ文化の主要な文化作用を担った。
著者
加藤 昇平 本間 昭 遠藤 英俊
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究課題では、高齢者の発話音声に着目し、音声韻律特徴ならびに脳血流解析を用いた認知機能障害のスクリーニング技術を研究した。音声情報のみを用いた1次スクリーニングと、近赤外分光法により認知課題中の脳機能を計測する2次スクリーニングからなる、音声-脳血流ハイブリッド認知症スクリーニングを開発した。この技術に加えて、MCIをさらにサブタイプ分類(健忘を伴うMCI(A-MCI)および伴わないMCI(N-MCI))できる脳血流解析技術を開発した。健常群12名とMCI群19名の被験者を対象とした予備研究で、日常会話の認知活動において健常群とA-MCI群の脳血流賦活に有意な差を確認した。
著者
石黒 大岳
出版者
独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

クウェートとバーレーンを対象に、議会における野党勢力の政府に対する説明責任要求と、それに対する政府の対応を中心に、議事録や各種報告書、報道等のテキスト分析と関係者への聞き取り調査を行い、成果として、権威主義体制下であっても、議会での野党勢力の要求を通じて、汚職対策政策を中心に、政府の対応としてガバナンス向上への取り組みを引き出しうることが確認された。しかしながら、政府の対応の程度については、議会の権限、政府の政策にどの程度拒否権を行使しうるか、制度的な制約に加え、政治の司法化によって、司法の独立性にも左右さつつある点について留意する必要があり、引き続き、今後の課題としたい。
著者
長 哲郎 松岡 英明 内本 喜一朗 鳥居 滋 野中 勉 鈴木 周一
出版者
東北大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

本研究は重点領域研究「有機電気化学の新展開」の総括班としての機能を有し、実施グループ5名と評価グループ6名から構成され、評価グループの助言を得ながら、4つの班相互の連絡を緊密にして研究計画全体の効果的推進を計った。1.研究項目と成果電子移動反応場の設計と制御(A01)、超活性反応種の創成(A02)、メディエーター反応の展開(A03)と錯体電子移動系の展開(A04)の4研究項目を設け、計画班員29名(3年間同数)、公募班員平成7年度91名(平成5年度55名、6年度87名)により研究の推進を計った。平成8年10月の総括班による評価では、各研究項目は何れも顕著な成果を挙げ、有機電気化学の格段の発展に繋がるとともに、他の方法では実現できない有機反応系を発展させ、さらに錯体化学、生物電気化学と有機電気化学との境界領域を築く成果も得られ、当初の目的を充分達成した。2.全体会議、公開シンポジウム等の開催6回の全体会議、5回の公開シンポジウム(第2回全体会議から全体会議に続けて実施)、11回の総括班会議、17回の実施グループ会議、10回以上の班会議、4回の班組織を越えた横断的研究会議を開き、班員相互の情報交換、班員同士の協力研究や横断的研究の実施、研究計画全体の効果的推進、報告書の作成打ち合わせ等を進めた。3.印刷物の発行各年度未に研究成果報告書(各班員和文2ページ、英文2ページ)および3年間の研究成果報告書(各班員英文4ページ)を刊行した。また、全体会議、公開シンポジウムの際には要旨集を、さらに12回のニュースレターを班員等に配布し、研究の目的、研究の進行状態等の周知徹底を計った。平成10年2月には英文図書“New Challenges in Organic Electrochemistry"を出版するべく一般学術図書の補助金申請を行い準備を進めている。
著者
荻原 文弘
出版者
佐久長聖中学・高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

教員の大量退職・大量採用, 学校小規模化や教員の多忙化により, 校内職員研修の在り方が問題視されている。こうした現状を踏まえた本研究の目的は, 若手教師が授業を対象化・省察をしながら継続的に授業を改善する自己研鑽法を開発することである。研究の方法は, 指導観の意識化を促す学習指導案の作成, オン・ゴーイング法と対話リフレクションなどの活動を融合した授業分析と内省的記述, メンタリングなどを組み合わせた自己研鑽法を開発し, その自己研鑽法による継続的な若手教員の実践を質的な方法で分析する。なお, 本研鑽法の一部は, 教育実習生対象にも実践し, 教育実習プログラムとしての効果も検証する。開発した自己研鑽法は, 授業観や授業を参観して学ぶ力, 学習指導力, 教材研究力の育成を意図し, 主に次の活動で構成される : 授業DVDを用いた自己分析, 目的を定めた授業参観及び授業者との対話リフレクション, オン・ゴーイング法と対話リフレクションの活動, 指導教員との定期的なメンタリング, 熟練教師と共同での教材開発と実践及び分析その結果, 次の4点が明らかになった : ①学習指導観と授業分析力には相乗性があり, 双方からのアプローチにより教科指導力が高まる, ②「理想の授業」の具現を意識し, 他者や自己の授業を観ることで分析力は高まる, ③同年代の教員の職能成長は自己の授業改善を目指す動機づけとなりうる。④オン・ゴーイング法と対話リフレクションの活動は時間的制約に厳しいが, ICTの活用でその課題を克服する可能性は高まる。開発した本研鑽法は, 指導教員の負担を軽減しつつも, 効果的な若手教員の教科指導に係る職能教育プログラムに繋がる可能性が高い。
著者
関川 伸哉 勝平 純司
出版者
東北福祉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

疑似体験用具の使用は,高齢者の移動動作上の不自由さを理解する上で有効な手段であるといえる.しかし,現状の疑似体験用具は補装具などを用い,関節可動域の運動制限を与えることを主体とした静的な構造になっており,高齢者の動作が正しく疑似できているとは言い難い.そこで,従来の受動的な運動制限主体の静的構造を超えた,新たな能動的要素を付加した疑似体験用具の開発を行うことを目的とする.本研究では,高齢に伴う身体アライメントの変化に着目し,疑似体験用具装着者が高齢者の運動を実態に即した形で体験でき,かつ装着の再現性・容易性を実現した用具の開発を目指すものとする.
著者
高木 潤野
出版者
長野大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

音韻表象の不完全さが、ダウン症児の構音の誤りの一貫性の低さや発話の不明瞭さに関わっている可能性が指摘されていることから、目標とする語からの異なり方の大きい刺激と小さい刺激を用い、ダウン症児・者がどのような反応を示すかを検討した。その結果、正答率は「異なりなし条件」90.5%、「異なり小条件」19.0%、「異なり大条件」52.4%であった。このことから、ダウン症児・者は誤り方の大きいものと比較して誤り方の小さいものでは誤りを認識することが困難であることが明らかとなった。これは、ダウン症児・者の音韻表象が不完全であることによる可能性が考えられた。また音韻表象の不完全さはダウン症児の一貫性の低い構音の誤りや発話の不明瞭さの要因の1つである可能性が示唆された。
著者
佐藤 康邦 谷 隆一郎 三嶋 輝夫 壽 卓三 山田 忠彰 勢力 尚雅 高橋 雅人 熊野 純彦 下城 一 船木 享 湯浅 弘
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

哲学的概念としての「形態」に関する問題は古くて新しい。形態という概念は、内容に対して事物の表面に漂う外面的なものを指す一方で、「かたち」という和語からして、かたいもの・確固とした真理という含意もある。西洋思想では、プラトンのイデア、アリストテレスのエイドスなど、古代ギリシアに遡りうる概念である。近世以降、機械論や還元主義を特徴とする自然科学の立場から、形態概念は排斥されがちであったが、美的形態や有機体の形態を扱うカントの『判断力批判』は、近代思想における形態論の先行例といえる。その形態論的発想は、むしろ、現代では、最先端の科学において見出される。構造主義生物学、ゲシュタルト心理学、認知心理学、量子論、熱力学(シナジェティクス)、複雑システムなどの多領域において、形態論の復権の動きが認められ、自然科学と人文科学との積極的対話の可能性が開かれつつある。倫理学においても、この観点から新たに検討されねばならないだろう。本研究では、形態という概念を手がかりに、人文科学としての倫理学の独自の意義と使命とを問い直すことを意図した。倫理思想史上の諸学説を形態論の観点から再考しつつ、応用倫理学や規範学という狭い領域に限定せず、現代の科学論における形態論復権の動向に対応する新しい倫理学の可能性を探究した。(1)古代ギリシア思想(2)古代ユダヤ思想(3)中世キリスト教思想(4)カントの形態論(5)近代思想(ドイツ観念論・イギリス経験論)(6)現代思想(7)科学論(8)藝術・文藝(9)日本近代思想(和辻哲郎・西田幾多郎・三木清)。以上の分野を専門とする研究分担・協力者を(若手研究者の研究発展にも寄与すべく特に留意)組織し、毎年度数回の全体会議において、各々の個別研究をふまえた対話・討論を行った。以上の研究成果は、最終年度に論集(成果報告書)としてまとめられたほか、別項11にある各員の業績を通じて公表された。
著者
大塚 正之 井出 祥子 岡 智之 櫻井 千佳子 河野 秀樹 Hanks William. F.
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、主客非分離、自他非分離の場の理論に基づき、言語及び非言語コミュニケーションが場の影響を深く受けていること、日本語は、場の影響が大きく場内在的な言語であり、英語は場の影響が小さく場外在的な言語であり、それが日英翻訳を困難にしていることが明らかとなった。また日本語のコミュニケーションでは、複雑系における自己組織化現象が多く起きていること、当初場の影響を強く受けて活格、能格であった言語が場の影響が小さくなるに連れて対格言語化したこと、異文化コミュニケーションを行う上で、それぞれ文化が持っている場の違いがコミュニケーションの障害となっていることなどの点もある程度分かってきた。
著者
福岡 久邦
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

メニエール病は回転性めまいと難聴・耳鳴・耳閉感の症状が同時に重なる症状を繰り返す内耳疾患であり、 内リンパ水腫が原因であることが示唆されているが、その発症メカニズムに関しては良く分かっていないのが現状である。 本研究では、 低音障害感音難聴を呈するメニエール病の原因となる遺伝子多型を同定するために、信州大学が中心となって行っている「難治性内耳疾患の遺伝子バンク構築研究」と連携し、すでにインフォームドコンセントを取得のうえ、採血にて得られたメニエール病患者約200例のDNAサンプルを使用して遺伝子相関解析を行った。その結果、1次解析では19SNPsのうち5SNPsで有意差が認められた。1次解析で有意差の認められたSNPsに関して症例を追加して2次解析を行ったところ、メニエール病患者群とコントロール群との間に有意差は認められなかった。
著者
五島 政一 小林 辰至 熊野 善介 下野 洋 品川 明 平田 大二 岡本 弥彦 三宅 征夫 鳩貝 太郎 立田 慶裕 田代 直幸 笹尾 幸夫 清原 清一 日置 光久 加納 誠 藤岡 達也 田口 公則 小川 義和 市川 智史
出版者
国立教育政策研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

子どもが主体的に学び、科学を好きになる教育実践プログラムを多数開発した。そして、その教育システムを開発するために、指導者である教の資質・能力を育成する生涯学習プログラムのモデルを開発した。
著者
岡崎 浩幸 加納 幹雄
出版者
富山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、英語教員の長期派遣者がどのような研修を受け、経験をいかに現場に活用してきたか、また、還元の妨げになっていたのは何かを明らかにし、今後の海外研修のための示唆を得ることである。その結果、研修内容には概ね満足し、帰国後使命感をもち、現場への還元にも取り組もうとするものの、得られた経験が他の英語教員のために十分に還元できていないことが明らかになった。還元を妨げていたのは「成果と現場とのギャップ」「研修への理解者不足」「還元機会の欠如」であった。今後の研修については「帰国後サポート体制」「英語教員への還元」「事前の目標設定」が研修成果を広げていくために必要であることも明らかになった。
著者
牧野 幸志
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の目的は,現代の児童・生徒を対象とするコミュニケーション・スキル訓練を開発し,実施することにより,スキルを高め,不登校やいじめなどの問題が発生することを予防することであった。スキル尺度を作成し,児童・生徒を対象としたスキル訓練を行った結果,訓練後に,生徒の多くのスキルが向上していた。また,参加者の8割の生徒は,訓練前よりスキルが上がっていた。また,コミュニケーション・スキルの高い生徒ほど,友人関係が良く,友人関係に満足しており,精神的健康状態も良かった。
著者
遊佐 敏彦
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

空き家の所有者、空き家利用者、および地域住民の間には、中山間地域特有の関係性がみられる。予めトラブルを避けつつ、段階的に信頼関係を築くために、適切なプロセスデザインが重要とされる。その際には、過去の集落再編成において、課題とそれを解決した成果が参考になる。今後は、それらをもとに、地域外の移住希望者に対し、段階的に使える空き家を提供し、移住を促すことが、持続的な空き家の整備と集落再編に繋がる。
著者
山田 孝子 園田 節子 王 柳蘭 藤本 透子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

多文化空間に生きる越境者集団における共同性再構築のメカニズムを、地域間比較のもと、チベット難民、中国系カナダ人、タイ北部の雲南系ムスリム、カザフ人帰還者の諸事例を人類学的・歴史学的視点から実証的に分析した。その結果、越境者の共同性再構築には、越境者ネットワーク、無私/慈悲の精神にもとづく個人や宗教者のリーダーシップの存在、ホスト社会との政策を最大限活用する共生の戦略、祝祭と宗教実践をとおした「伝統」の主張などが重要な道筋となることが明らかにされた。また、あらたな地域空間の創出を理解する上で、「下からの共生」という視点が重要となることが提起された。
著者
成田 智哉
出版者
利府町立菅谷台小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

○研究目的2012年度に開発した簡易で持ち運び可能な鉢等を利用したバタフライガーデン学校キット(以下BGSK)」は, 勤務町内の全小学校及び県内の小中学校計16校で活用された。企図する時期に卵付き苗を配布可能にすることで, 実物を用いた児童の観察機会を更に多くしたり, ICTを活用して児童の精密な観察眼を育成する授業プログラムを開発したりすることが本研究の目的であった。○研究方法1 BGSKを活用してチョウの蛹を前年度に確保し, 次年度羽化させた成虫を飼育し, 効率的に産卵させる方法を検討した。実物の活用とICTの活用を融合させながら, 児童にチョウの生活環や形態・生態等をとらえさせ, 精密な観察眼を育成する授業プログラムを開発し, 実践を通してその有効性を検討した。○研究成果1 BGSKを活用して, 前年度の晩秋にモンシロチョウの蛹を確保した。翌春羽化した成虫を飼育し, 産卵させる方法を検討した結果, 狭小な網製の飼育容器内で, モンシロチョウが交尾し, 食草に多数産卵させることができた。このことにより卵付き苗の配付が可能になるとともに, BGSKの周年活用のサイクルが出来上がった。2 児童の自然への関心を高め, 精密な観察眼が育成されることを期待して, 教員を対象としたBGSKの植栽方法や活用法の伝達を目的とした研修会を開催した。このことにより, 多くの児童に卵や幼虫等の実物, 及び羽化の瞬間を観察させることができた。また, 生物や自然への関心を高めることができた。3 モンシロチョウでの産卵方法をオオムラサキにも適用し, 複数産卵させることに成功した。そこで得た幼虫を用い, タブレッド端末や画像の無線転送装置を活用しながら, 互いの観察結果を共有する授業プログラムを開発した。
著者
永井 玉藻
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-26

本研究「フランシス・プーランクのオペラ作品におけるドラマトゥルギー」は、20世紀フランの作曲家、フランシス・プーランクのオペラ《カルメル会修道女の対話》を題材に、作品の資料調査とその分析を行うことで、作品のドラマトゥルギーの変遷とその意義を考察するものである。当該作品は、これまで多くの研究が行われてきた一方で、最も基礎的な資料研究が完全に欠落していた。そのため、作品の一次資料に関する情報が正確でないだけでなく、作曲中に繰り返し行われた変更や、改訂の詳細が、全く明らかになっていなかった。にもかかわらず、先行研究では繰り返し、作品の書法研究などが行われてきたのである。こうした状況に基づき、平成26年度には、2014年5月に資料調査(イタリア・ミラノのブライデンセ国立図書館リコルディ・アーカイブにおける調査)を行った。これにより、作品の一次資料に関するほぼ完全なデータを収集することができた。これらの結果は、2014年11月に行われた日本音楽学会第65回全国大会にて発表し、作曲家の自筆楽譜資料に基づいた分析を発展させた実証的な論を展開することができた。発表では、これまで公開されていなかったプーランクの自筆譜を、日本で初めて紹介することができ、その資料的価値を改めて検証することができた。一方、昨年度に複数行った海外での研究発表で出会った海外の研究者とは、年度を通してさらに密な関係を築くことができた。こうした活動を元に、博士論文の本格的な執筆が順調に進み、執筆の大筋が終了した。現在は、フランス語の訂正と本文の見直しを行い、また審査員の先生がたにもアドバイスをいただくなどしている。